活動報告

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中小企業全体に届く支援こそ/大企業内部留保課税を財源に/参院予算委で田村議員、「構造的賃上げ」提起

 日本共産党の田村智子議員は1日の参院予算委員会で、日本を「賃金が上がらない国」にしてしまった政府の非正規雇用拡大政策の転換とともに、大企業の内部留保に課税し、中小企業全体を支援する「構造的な賃上げ」政策に踏み出すよう求めました。また、敵基地攻撃能力を保有する大軍拡は断じて許されないと追及しました。

 田村氏は、岸田文雄首相の言う「物価高騰に負けない賃上げ」には、労働者数で7割を占める中小企業全体への支援がカギだと強調。ところが政府の中小企業むけの賃上げ支援策である業務改善助成金は、昨年度の実績で全中小業者の0・1%しか利用されず、中小企業全体を対象としていません。

 田村氏は「(中小企業)全体に届く賃上げ支援策がいま求められている」として、地方の最低賃金審議会が中小企業への社会保険料・税負担の軽減策を要望していることを紹介。最賃引き上げとセットで中小企業の社会保険料を減免し、賃金上昇が続いているフランスなどの例を示し「中小企業全体への支援策に踏み切った国は賃金上昇が続いている。地方審議会の要望に応え日本でも検討すべきだ」と求めました。

 岸田首相は「慎重な検討が必要」などと述べるだけでした。田村氏は、アベノミクス以降に積み増した大企業の内部留保に課税し、中小企業の賃上げ支援にあてる党の政策を紹介。内部留保が積みあがる一方、国内投資には回らず、労働者の実質賃金は下がり続けるゆがんだ構造にメスをいれてこそ「構造的な賃上げ」になると迫りました。

 その上で田村氏は、政府が派遣労働の規制緩和など非正規雇用拡大の旗を振り、正規雇用から非正規雇用への置き換えが構造的に進められたことが、日本の賃金が上がらない最大の要因だと指摘。「非正規労働者の多くがスキルアップの機会も与えられていない。非正規雇用を政策的に拡大したことで、賃金が上がらないだけでなく経済成長をさせる力も奪ってきた」とただしました。

 岸田首相は「ライフスタイルにあわせた働き方を選択する。こうした面から非正規労働者が増えた」などと繰り返し、無反省な姿勢に終始。田村氏は「労働者個人の責任にしている」と批判しました。事務職、医療や福祉職、公務職(教師や保育士など)も現に低賃金で短期契約の非正規雇用に支えられているとして「日本の雇用の構造はこのままでいいのか」と追及。「最低賃金1500円、安定した働き方を希望する人に無期雇用を保障する。これは最低限の政治の責任だ」と求めました。

 

統一協会被害者救済新法案/寄付勧誘めぐる規定/配慮義務でなく禁止に/田村氏指摘

 

 日本共産党の田村智子議員は1日の参院予算委員会で、統一協会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済のための新法案について、寄付勧誘で「自由な意思を抑圧しない」「適切な判断が困難な状態にしない」などの規定は、法人の配慮義務ではなく「禁止規定」にすべきだと指摘しました。

 田村氏は、統一協会被害の特徴は、正体隠しなどの不当な勧誘によって教義を植え付けられ、自由な意思が抑圧された状態で献金してしまうことだと説明。「マインドコントロール下での献金を明確に禁止する法規制が求められている」と強調しました。

 岸田文雄首相は、禁止行為の対象とするには要件の明確化が必要であり「不適当な寄付はさまざまなものが想定され、一概に要件を規定できない」と答弁。田村氏は、被害者とその家族、被害救済に尽力してきた全国霊感商法対策弁護士連絡会の意見を反映し、「実効性のある法規制となるよう努力してほしい」と訴えました。

 田村氏は、統一協会の反社会的活動への「対策」と「被害者救済」がこれほどまでに遅れた背景には、自民党と統一協会の癒着があると改めて指摘し「うみを出し切る責任が首相にはある」と主張しました。

 

論戦ハイライト/内部留保で賃上げを/大軍拡でなく外交努力/田村智子議員の質問/参院予算委

 

 日本共産党の田村智子議員は1日の参院予算委員会で、物価高騰に負けない賃上げ実現のための方策を示すとともに、大軍拡ではなく、外交努力をつくして戦争の心配のないアジアをつくるよう提案しました。しかし、岸田文雄首相はまともに答えず、賃金が上がらない構造的な問題に手を付ける姿勢も、軍事費2倍の大軍拡を見直す姿勢も示しませんでした。

中小企業支援/田村・労働者の7割中小企業、全体に届く支援は可能/首相・「生産性向上への支援」に終始
 田村氏は、「異次元の金融緩和では、賃金は上がらなかった。異常円安を引き起こし、日本経済の出口が見えず、行き詰まりに陥っている。これを打開するには、首相の言う『物価高騰に負けない賃上げ』だ。どうやって実現するのか」と岸田首相に迫りました。

 田村 事業者数で99・7%、労働者数で7割を占める中小企業、小規模事業者への賃上げが鍵だと思う。
 首相 補正予算案では賃上げにつながる生産性向上などへの支援の大幅拡充を盛り込んでいる。

 中小企業を対象に生産性向上の取り組みを支援する「業務改善助成金」は昨年度、コロナ対応で対象を広げても4000件弱しか助成金が交付されておらず、事業者全体の0・1%にすぎません。田村氏は「そもそも中小企業全体を対象にしていない」と指摘し、次のように迫りました。

 田村 中小企業全体に届く賃上げ支援策が求められている。
 西村康稔経済産業相 補正予算案では「事業再構築補助金」やものづくり補助金などを活用して、生産性向上に取り組む。

 田村氏は、西村氏が挙げた「事業再構築補助金」が今年度分では中小企業の約0・5%しか交付されておらず、公募で申請件数の約半数がはじかれていることを指摘。「全体に直接届く支援策は可能」とし、最低賃金の改定に当たって全国の地方審議会のうち9府県が中小企業への社会保険料・税負担の軽減策を要望しており、これらの声に応えて地方審議会と協議・検討を行うよう求めました。

 さらに、田村氏は、最低賃金の引き上げと中小企業への支援策をセットで行ったフランスなどの例を挙げ、「中小企業全体への支援策に踏み切った国は、労働者全体の賃金上昇が持続している。地方審議会の要望に応えて、日本でも検討すべきだ」と要求しましたが、岸田首相は「慎重な検討が必要だ」と述べるにとどまりました。

 田村氏は、大企業の内部留保を活用した中小企業支援など、日本共産党の賃上げ政策を紹介。日本の労働者全体の賃金が下がる一方で、内部留保が大企業の中で積み上がっていくという「ゆがんだ構造」にメスを入れるよう求めました。

雇用/田村・「賃金が上がらぬ国」は非正規増大の政治責任/首相・「デフレ悪循環」理由に無反省
 「岸田首相は『構造的な賃上げ』というが、日本が賃金が上がらない国になった構造的な問題をどう分析しているのか」―。田村氏は、厚生労働省が公表した最新の「労働経済白書」が「パート、非正規雇用が労働者数でも割合でも30年間で増大した」ことを示していると指摘し、「これが日本の賃金が上がらない最大の要因ではないのか」と迫りました。

 なぜ非正規雇用がこれほど増えたのかについて田村氏は、政府が「雇用の流動化が経済を成長させる」と旗を振り、規制緩和として派遣労働の対象業務を拡大してきた責任をパネル(右)を示し追及。その下で、企業が派遣労働者を社会保険料の負担もボーナスや退職金の支払いも必要ないとして活用してきたと批判し、次のように迫りました。

 田村 正社員から非正規雇用への置き換えが構造的に進められた。この「構造」をどう評価するのか。
 首相 デフレの悪循環のなかで厳しい雇用状況になったことと合わせて、労働者のニーズも変化し(非正規雇用が)増加した。
 田村 政策によって非正規雇用を増やしてきた。そこへの反省が何もない。

 昨年度、能力開発・スキルアップ教育を非正規労働者に行った事業所は3割、正社員に行った企業は7割と、大きな格差があります。田村氏は、非正規雇用がいまや4割近く、女性労働者の5割を占めるなかで、「最初から教育の対象外、将来を期待しないと言っているのに等しい」「これで経済が成長するのか」と批判しました。

 田村 事務職、窓口業務、接客業、医療や福祉、公務などが、低賃金で短期契約の非正規雇用に支えられている。この「構造」はそのままでいいのか。
 首相 非正規を望まない方に対しては、さまざまな支援の制度を用意している。

 田村氏は「短期間の雇用契約は人生を細切れにされているのと同じで、生涯にわたり大きな影響を与えてしまう」「最低賃金1500円、安定した働き方を希望する人に無期雇用を保障する。これは最低限の政治の責任だ」と強調しました。

大軍拡/田村・「ミサイル防衛で軍縮」、むしろ安全保障厳しく/首相・現時点で確定的に答えられない
 軍事・外交分野に質問を移した田村氏は、軍事費の2倍化、トマホーク500発購入計画、「敵基地攻撃能力」の保有を「不可欠」とする政府有識者会議の報告書提出―など、大軍拡に突き進む岸田政権の姿勢を痛烈に批判。有識者会議報告書は、「憲法9条に基づいて歴代の政府ができないとしてきたことを百八十度転換する、まるで『軍事国家』『戦争国家』づくりの青写真だ」と断じました。

 その上で田村氏は、「安全保障環境が厳しさを増す状況」の背景に日本が進めてきた「ミサイル防衛」の開発・配備があると指摘。日本共産党の赤嶺政賢議員が2001年6月の衆院安全保障委員会で、「ミサイル防衛」により「軍拡競争が再燃する」と警告したことに対し、中谷元防衛庁長官(当時)が「(ミサイル防衛で)軍縮につながる」と答弁していたことを紹介し、「ミサイル防衛」は軍縮につながったのかとただしました。

 首相 現時点では確定的に答えられない。
 田村 (北朝鮮の)核開発も止まらず、軍縮どころか安全保障環境が厳しくなった。

 田村氏は、相手国を攻撃できるミサイルを配備する「敵基地攻撃能力」の保有で、周辺国の日本に対する見方を変えてしまい、想像を絶する大軍拡競争を招き、深刻な「安全保障のジレンマ」に陥ると警告しました。

 田村氏は、軍事力の強化ではなく、外交で戦争を防ぐ国際社会の取り組みに言及。トルコのイスタンブールで先月開かれた「第11回アジア政党国際会議」で全会一致で採択された「イスタンブール宣言」が、軍事ブロックで分断、相手を排除する「ブロック政治を回避」「対話と交渉こそが紛争解決唯一の道」と明記したことを紹介しました。

 田村 「ブロック政治を回避」との文言に賛同するか。
 首相 国際社会は分断でなく団結することが重要だ。
 田村 排除でなく「包摂的」にまとまろうというのが宣言だ。

 田村氏は、岸田首相が参加した先月の東アジアサミットで、朝鮮半島情勢について「すべての関係当事国の平和的な対話の継続」「関係当事国間の平和的対話に資する空気の増進」が議長声明に盛り込まれたことを指摘し、「賛同するか」と質問。岸田首相は、「カンボジアが議長国の権限で発したもので、個々の文言に答える立場にない。『対話の道』は重要との姿勢は一致する」と答えました。

 田村氏は、議長が勝手にまとめたものでなく、首脳が集まり協力し話しあった上で出された声明だと主張。大軍拡の中身や財源も示さないのは「認められない」と述べ、軍拡ではなく外交努力をつくした平和の追求を説きました。


2022年12月2日(金) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 統一協会の被害者救済法案が本日閣議決定をされます。当初の案ではマインドコントロール下での寄附について救済されないと、被害者、弁護士の皆さん、私たちも指摘をいたしました。これを受けて、寄附の勧誘を行うに当たって、自由な意思を抑圧し、寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることのないようにすることなど、三つの配慮義務が新たに盛り込まれることとなりました。

 しかし、この案に対し、十一月二十九日、全国霊感商法対策弁護士連絡会は、配慮義務を課すだけでは迅速な被害防止、救済は実現できないなど、更なる修正を求め、昨日の立憲民主党、石橋議員の質問に総理は検討を続けていると答弁をされました。
 総理、更なる修正は行いましたか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 新法案では、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限、禁止行為や取引権の対象といたします。

 具体的には、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止するとともに、不適切な勧誘行為を受け困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため、取消しを認める制度といたします。そしてさらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務、委員御指摘のこの配慮義務を規定するという二段構成を取ります。これにより、配慮義務に反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償が容易となり、更に実効性が高まると考えております。

 そして、この配慮義務につきまして、禁止行為の対象にするべきだという御指摘があったことを承知しておりますが、禁止行為の対象とする場合、行政措置や刑事罰の適用にもつながるものであることから、現行の日本の法体系に照らせば、要件の明確化が必要となります。他方、不適当な寄附のありようは様々なものが想定され、一概に要件を規定できません。このため、禁止行為と配慮規定の二段構成を取ることで実効性を高めることとしている次第であります。

○田村智子君 今のような答弁を受けて、更なる修正を要請しているわけですよね。
 統一協会の被害の特徴は、正体隠しなど不当な勧誘によって教義を植え付けられ、自由な意思が抑圧された、あるいはゆがめられた状態に陥ったままに献金をしてしまうということ、このいわゆるマインドコントロール、洗脳下での献金、これを明確に禁止するという法規制を求めて、更なる修正ということを求めているわけなんですよ。

 少なくとも、三つの配慮義務、やはり禁止規定にしていくこと必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君) それらを禁止規定にできないのは、今総理から御答弁されたとおりでございます。
 しかし、この寄附の勧誘に当たっての配慮義務などを規定することにより、配慮義務に反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、更に実効性が高まるものと考えております。

○田村智子君 本当に、被害者や家族、そして弁護士連絡会の意見が反映されて実効性のある法律となるようにということを私たちみんなが願っているわけなんですよ。そこは本当に努力をしていただきたい。これは法案審議の中でも私たちも求めていきたいと思います。

 同時に、統一協会の反社会的活動への対策、被害者救済がこれほど遅れた、その背景にある自民党との癒着のうみを出し切る責任、それが総理にはあるんだということを、この場では指摘にとどめます。

 次の質問に進みたいと思います。
 物価高騰対策についてお聞きします。
 アベノミクスから十年が経過をいたしました。当時の安倍総理は、幾度となく賃上げの成果ということも強調されました。しかし、結局、実質賃金は下がっていったと。総理、これはなぜなんでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) この十年を見ると、アベノミクス以降、デフレではない状況をつくり出し、二%程度の賃上げを実現したものの、女性や高齢者等パートタイム労働者を中心に、相対的に賃金水準の低い非正規雇用労働者が増加したこと等を背景に、平均の実質賃金が伸び悩んだものと認識をしております。

 一方で、雇用全体が増加する中で、二〇一五年に正規雇用労働者が増加に転じ、二〇二一年までに二〇一四年と比べ約三百万人増加しています。また、国民みんなの稼ぎである総雇用者所得は、二〇二二年九月時点において、名目でも実質でも二〇一三年の水準を上回っております。

○田村智子君 何か聞いていてむなしくなっていってしまうんですけどね、このグラフを見ながら聞いていますと。

 結局、異次元の金融緩和では賃金は上がらなかったんですよ。それどころか、異常円安を引き起こし、日本の経済は出口が見えない行き詰まりに陥っているというのが現状だと思います。これ、しっかり見ること必要だと思います。

 今日は前向きな議論をしたいんです。これを打開するには、総理の言う物価高騰に負けない賃上げだと私も思います。それをどうやって実現するのか。事業者数で九九・七%、労働者数で七割を占める中小企業・小規模事業者への賃上げ支援、これが鍵だと思いますが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) おっしゃるように、目下の物価上昇に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することであると考えています。

 このために、短期的には、来年春の賃金交渉に向けて、物価上昇を特に重視すべき要素として掲げ、これに負けない対応を私から労使の皆様方にお願いするとともに、政府としてもその取組を後押ししてまいります。さらに、中長期的には、賃上げと併せて労働移動の円滑化、学び直しやリスキリングなどの人への投資、この三つの課題を一体的に改革を進めていく、この構造的な賃上げ、これを実現してまいりたいと思います。

 そして、御指摘の中小・小規模事業者ですが、中小・小規模事業者においてもこうした賃上げの取組は重要であり、補正予算では賃上げにつながる生産性向上などへの支援の大幅拡充を盛り込んでいます。また、価格転嫁を強力に進めるために、公正取引委員会、中小企業庁において大幅な増員を行い、独禁法や下請法などの執行体制、これを緊急に強化してまいりたいと考えています。

○田村智子君 中小企業においてもと言われたんですけど、労働者数の七割ですからね、ここが鍵だという認識で私は政策立てていくこと必要だと思いますね。

 現在行われている中小企業向けの賃上げ支援策、これは業務改善助成金です。概要と実績示してください。

○政府参考人(鈴木英二郎君) 業務改善助成金でございますが、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げるとともに、生産性の向上に資する設備投資などを行いました中小企業・小規模事業者に対しましてその設備投資等に要しました費用の一部を助成するものでありまして、直近五年の交付決定件数及び執行額は、平成二十九年度、七百九十八件、八・四億円、三十年度、八百七十件、五・三億円、令和元年度、五百四十二件、三・〇億円、二年度、六百二十六件、六・六億円、三年度、三千八百五十九件、二十八・九億円でございます。

○田村智子君 昨年度はコロナ対応で対象を広げて四千件弱なんですね。
 それでは、日本の中小企業・小規模事業者数、総数はどれくらいですか。

○政府参考人(小林浩史君) お答え申し上げます。
 総務省と経済産業省が実施、公表いたしました平成二十八年経済センサス活動調査からの集計では、同年六月時点における小規模事業者を含む中小企業者数は約三百五十八万社となっております。

○田村智子君 そうすると、昨年度の実績でも事業者全体の〇・一%と。これ、助成制度そのものは利用できるようにすればいいと思うんですけれども、そもそも中小企業全体を対象にしてもいません。

 総理、全体に届く賃上げ支援策、今求められていると思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、中小企業における賃上げ、極めて重要であるというふうに思っております。

 経産省、厚労省とも連携しながら対応しておりますけれども、賃上げできる環境整備に向けて、価格転嫁対策とそして生産性向上をしっかりと取り組んでいきたいと思っております。具体的には、パートナーシップ構築宣言の拡大、それから、先ほど総理からありましたけれども、公取とも連携しながら、価格交渉促進月間の実施とそのフォローアップ調査、それを踏まえて親事業者への指導、そして公取とも連携して取り組んでおるところであります。

 また、今回補正予算で、事業再構築補助金やものづくり補助金、これらはもう既に何万社と使われておりますが、これらを活用して生産性向上に取り組むということで賃上げにつなげていきたいと思いますし、賃上げする中小企業には、このかさ上げ、補助率や補助上限を引き上げるといったインセンティブを取りながら、中小企業全体で賃上げが進むような取組、進めていきたいと思っております。

○田村智子君 今言われた、例えば事業再生補助金、今年度分で見ると、中小企業の約〇・五%なんですよ。しかも、公募で申請件数の約半数をはじいていますよ。これ、全体に直接届く支援策、これは可能です。

 今年、最低賃金の改定に当たって、中小企業への社会保険料、税負担の軽減策を要望した地方最低賃金審査会、幾つありますか。

○政府参考人(鈴木英二郎君) 令和四年度の地域別最低賃金の改定に当たりまして四十七都道府県の地方最低賃金審議会により出された答申のうち、事業主の税、社会保険料の減免を求めるものは九ございました。

○田村智子君 そのうち、京都府、高知県の審議会、国にどういう要望をしていますか。

○政府参考人(鈴木英二郎君) まず、京都地方最低賃金審議会の答申におきましては、特に賃上げを促進するための業務改善助成金について、サービス業を始めとする労働集約型の産業分野にも生産性向上の設備投資を求めるなど、最低賃金引上げの原資の拠出自体が難しい状況にある中小企業・小規模事業者に対する助成制度としては極めて不十分であり、原材料等の高騰にも対応したものとするなど現場の声を反映した実態に適した真に使いやすい制度となるよう、国の責任において更なる抜本的な改善を喫緊に図るべきである。

 あわせて、中小企業・小規模事業者の生産性向上、経営力向上のための減税、社会保険料の負担軽減措置や取引条件の改善を始めとする適正な価格転嫁対策など、中小企業の負担を直接的に軽減する方策の推進を図っていくことも極めて重要であるとされております。

 また、高知県の地方最低賃金審議会の答申におきましては、最低賃金引上げの影響を受ける企業にとって社会保険料の増額部分については大きな負担である、例えば、中小企業・小規模事業者に対する一時的な減免措置などの可能性を検討していただきたいとされております。

○田村智子君 この高知県の審議会では、こうした要望事項について協議、検討を早急に開始していただきたい、協議、検討の結果については、毎年、各地方最低賃金審議会にフィードバックを行っていただきたいともあるんですよ。
 総理、応えるべきではないですか。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、社会保険料の減免に関しては、従前から申し上げておりますように、社会保険の加入により労働者が安心して就労できる基盤の整備が事業主の責任であること、また、労働者の健康の保持及び労働生産性の増進が図られることが事業主の利益にも資することから、事業主に保険料負担を求めているわけであります。

 賃金の直接補填について、また、企業の生産性や稼ぐ力を向上させない限り企業収益の拡大につながらず、長期的な賃上げや事業の継続に結び付かない。まさに持続可能な形にしていくためには、その企業の生産性向上を支援をしていく。また、先ほど経産大臣からありましたが、価格転嫁の実現など中小企業が賃上げしやすい環境整備を総合的に取り組む必要があると考えております。

 先ほどありました業務改善助成金の改善については、既に九月段階において、原材料費等の高騰の影響を受けている事業者へとして、利益率が一定以上低下した事業者に対して助成の対象となる経費を拡充する、あるいは最低賃金が相対的に低い地域の事業者への支援として、事業場内最低賃金が低い事業者に対して助成率の引上げなどを行ったところであります。

 また、今回の補正予算が成立をさせていただければ、特に最賃引上げが困難と考えられる事業場規模三十人未満の事業者に対する助成上限額の引上げ等、こうした措置を講じていきたいと考えております。

○田村智子君 今ある支援策では足りないから直接の支援を協議、検討してほしい、そうやって言っているんですよね。だけど、その協議も検討もしないんでしょうか。フィードバックも求めているんですよ。できません、やりません、そうやってフィードバックするつもりなんでしょうかね。

 中小企業への社会保険料負担の減額、社会保険適用外の小規模事業者には賃上げ助成を行うなど、賃上げによって事業者の負担が増えないように支援策を行う、これとセットで最低賃金を千五百円に短期間に引き上げる。私たちも、二〇一四年からこの政策を繰り返し政府に提案してまいりました。

 これらは海外で試され済みの政策なんですよ。アメリカ、二〇〇七年に大幅な最低賃金引上げを決定、あわせて、中小企業への五年間の大規模な減税を実施。フランス、二〇〇三年、最低賃金の大幅引上げとセットで、三年間で二・三兆円規模での中小企業の社会保険料を減額と。

 総理、今度お答えください。中小企業全体への支援策に踏み切った国は賃金の上昇が持続しているんです、持続しているんです。地方審議会の要望に応えて、日本でも検討すべきではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほど来の地方審議会の御指摘については、先ほど厚生労働大臣からお答えしたとおりであります。社会保険料の減免についても、賃金の直接補填についても慎重な結論が必要で、検討が必要であると考えております。

 そして、持続可能な賃金の引上げが重要だという指摘についてはそのとおりだと思います。だからこそ、今回の総合経済対策の中にあって、この短期的な賃上げと併せて中長期的な構造的な賃上げが重要だということで政策を用意をしている、こうした次第であります。

○田村智子君 いや、本当に今賃上げどうするかと、中小企業にどう届けるのかと。私たちは中小企業支援に充てる財源も提案をしています。増え続ける大企業の内部留保のうち、アベノミクス以降で積み増した分に二%、五年間限定の課税で十兆円と。これを全て中小企業の賃上げ支援に充てる。大企業の自社の賃上げと再エネ、省エネなどグリーン投資に内部留保を活用した分は課税控除をすると。

 これ見てください。内部留保は企業にとって必要だと思いますよ。しかし、国内投資にも回らず、日本の労働者全体の実質賃金は下がる。ただただ内部留保、とりわけ現預金が大企業の中に積み上がっていくんですよ。これは健全な経済の在り方でしょうか。このゆがんだ構造にメスを入れてこそ構造的な賃上げと言えるんじゃないでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国では、二〇一二年からコロナ前の二〇一九年までの間に、実質設備投資は約十三兆円、労働者全体の所得である実質雇用報酬は約二十一兆円増加するなど、投資、雇用者所得とも増加をしてきました。他方、賃金については、長引くデフレ下において、企業による賃金の抑制、消費者による支出の抑制の悪循環により、他国と比べて伸びが小幅となってきた、これが現実でありました。

 そして、御指摘の内部留保でありますが、内部留保については、大企業を中心に高水準の企業収益を背景として増加をしています。新しい資本主義の実現のためには、こういった企業収益を現預金として保有するだけではなく、賃上げ、人への投資、設備投資等の形で未来に向けてしっかり活用していただくことが重要であると考えています。そのための賃上げ税制であり、また上場企業への人的投資に関する非財務情報の開示の義務付け、これも重要であると考えますし、また円安環境を生かした国内投資促進策、こうしたことを促進することによって未来への投資を促していく、こうした取組が重要であると考えています。

○田村智子君 賃上げは今求められているんですよね。それで、今、中小企業全体に直接届く支援策がないんですよ。環境をつくっていって、いつ賃上げできるのかって。今できる策がこれだけ示されている。地方審議会からも求められている。それに対して、できない理由だけ並べるのかと、いつまで慎重な検討をするのかと。ここを本当に真剣に捉えて、せめてね、せめて地方審議会の要望については協議、検討を早急に行っていただきたいと強く求めるものです。

 次に進みます。
 その構造的な賃上げというんですけれども、もう一度お聞きしたいんです。じゃ、長いスパンで見たときに、なぜ日本は賃金が上がらない国になったのか、その構造についてどう分析をしておられますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国は、バブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国と比べて低い経済成長が続きました。この間、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷しデフレが継続する、こうした悪循環になりました。こうした中で、企業に賃上げを行う余力が生まれにくくなったことから、賃金が伸び悩み、他国より低い賃金水準になったと考えております。

○田村智子君 景気が悪かったという以外、どう理解したらいいのかなというふうに思ったんですけれども。
 厚労省の労働経済白書二〇二二年版、賃金が上がらない要因を様々に分析をしています。その一つとして示されているのがこのグラフなんですが、説明いただけますか。

○政府参考人(中村博治君) お示しいただきましたグラフにつきましては、一九九三年比の現金給与総額の推移とその変動の要因を分析したものでございます。

 現金給与総額につきましては、二〇〇二年以降、パートタイム労働者比率の上昇や一般労働者の特別給与の減少により、一九九三年と比べて減少して推移する一方で、二〇一三年以降、一般労働者の所定内給与や特別給与の増加により、減少幅は縮小したところでございます。さらに、二〇一九年以降、一般労働者の特別給与のマイナス寄与が拡大し、再び減少幅が拡大している状況でございます。

○田村智子君 これ、明らかなんですけどね、このオレンジ色のところ、これが、低賃金のパートの労働者の人数がどんどん増えていって、それが全体の賃金を押し下げていくという、この要因になっていったという分析なんですね。

 ほかにも、第二次産業、製造業で賃金が比較的高い一般労働者、正社員の割合が激減し、第三次産業、飲食、販売などのサービス業、非製造業でパートタイム労働者の割合が増大したことも賃下げ要因だというふうにしています。

 パート、非正規雇用が労働者数でも割合でも三十年間でどんどん増大していったと、これが日本の賃金が上がらない最大の要因である、総理はこのことをお認めになりますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) バブル崩壊以降、そのパートタイム労働者を中心に相対的に賃金水準の低い非正規雇用労働者が増加をし、賃金の平均値を押し下げたことは事実ですが、近年では雇用者全体が増える中にあって、正規雇用労働者数も七年連続で増加をしています。

 また、非正規雇用労働者増加の背景には女性や高齢者の就労参加があり、ワーク・ライフ・バランスの観点から自らパートタイム労働を選択するケースなど、労働者のニーズにより増加してきた面もある、これも考えておかなければなりません。

○田村智子君 まあ最初にそれは事実だというふうにお認めになったと。ちょっと、女性が増えるのが非正規が増えて当たり前というような答弁が続くのは、私はちょっといかがなものかというふうに思うんですけれども。

 なぜ非正規雇用がこれほど増えたのかと、これ政策との関係でも見解をお聞きしたいんですね、なぜ増えたのか。

○国務大臣(加藤勝信君) 今総理からもお話がありましたが、非正規雇用労働者増加の背景には、まさにこの間、どういう方の非正規が増えているかを見ますと、やはり高齢者の就労の参加、これがかなり増えてきているということがあろうと思います。また、ワーク・ライフ・バランスの観点から自らパートタイム労働を選択するケース、まあこれは普通の正規が長時間労働だという、こういったこともあるんだとは思いますが、そうした様々な要因がその背景にあると思います。

 また、ただし、その非正規雇用労働者は正規雇用労働者と比べて賃金が低いこと、あるいは各種手当の支給が十分ではないこと、さらには能力開発の機会が乏しい、こうした課題がある、こういったことを認識をしているところでございますので、特に非正規から正規になりたい、こうした方々をしっかりと応援をしていきたいと考えています。

○田村智子君 これ、政策的なこと全くなく、何か労働者が非正規になったんだというだけの答弁ですよね、今の、いやあ。

 これ見てください。政府は、やっぱりバブル経済崩壊後、人件費削減、コスト削減が競争に勝ち抜くために必要だと、そして雇用の流動化が経済を成長させると旗を振ってきたじゃありませんか。そのための規制緩和として派遣労働の対象業務を拡大していった。社会保険料の企業負担もない、ボーナスや退職金の支払の必要もない、この派遣労働を企業は活用しました。それは派遣にとどまらず、事務職、窓口業務、飲食、アパレルなどを派遣、契約社員が当たり前にしてしまったんじゃないでしょうか。先ほどから女性労働者が増えたからという答弁がありましたけれども、それは、特に女性が多く働いてきた職業が正社員から非正規雇用へと置き換えが構造的に進められてきたからではないんですか。

 この構造を総理はどう評価しますか。企業の競争力を強化したと思いますか。日本の経済を成長させたと言えますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、先ほど申し上げたように、日本の経済、デフレとの悪循環の中でこの厳しい雇用状況になった、こういったことは先ほど申し上げた次第でありますが、それと併せて、先ほど申し上げたように、自らライフスタイルに合わせてパートタイムを選択する方もいるなど、労働者のニーズも変化をし、そして増加をしてきた、こうした面もあるということは御理解いただきたいと思います。

 こうした中で、非正規雇用が増加するだけでなく、正規雇用も増加することで雇用者数は約五百二十万人増加した。こうしたことの結果、労働者全体の所得である雇用者報酬は二〇一二年から二〇一九年までの間に名目で三十五兆円、実質で二十一兆円増加をし、その間、企業の経常利益も三十二兆円増加し、二〇二一年度においては日本企業の経常利益は過去最高水準七十八兆円を記録している、こうした経済の変化が生じているわけであります。

 是非、この日本経済、これ一段高い成長経路に乗せるために努力をしていかなければいけない、そしてそのためにも人への投資が重要だということで政策を訴えさせていただいています。是非、この人への投資、これを充実させることによって、先ほど言った負の循環ではなくして、成長の方向へ循環が回っていくことを日本の経済においても実現していかなければならないと考えています。

○田村智子君 過去の政策についてお答えになっていない。これを見て、これまでやってきたこの雇用政策が非正規雇用を増やした、そのことで日本の経済成長できなくなっているんじゃないですかと聞いています。(発言する者あり)

○委員長(末松信介君) 不規則発言ないように。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほど申し上げたように、非正規雇用についての増加ももちろん御指摘のとおりでありますが、この正規雇用も増加する形で雇用者総数増えている、こうしたことを申し上げています。その結果として日本企業の経常利益は過去最高水準になっている、こうしたことについて説明をさせていただいています。

 様々な取組の積み重ねの結果、様々な政策が積み上げられて、そしてこうした状況にある、これは事実だと考えています。ただ、これを負の循環ではなくして成長の循環に切り替えていくためにも人への投資が重要であるということで政策を未来に向けて発展させていかなければならない、こういったことを説明させていただいています。

○田村智子君 明らかに割合が倍近く増えましたね。問題ないということですか。

○国務大臣(西村康稔君) 先ほど来、岸田総理答弁されているとおり、一つは、長年デフレの中で企業は人件費を抑えるということで非正規を増やしてきたと、これは事実です。他方、女性や高齢者など、多様な働き方を求める、柔軟な働き方を求める方々も多い、そのニーズに応えてきたという面もあります。

 ただし、我々は、できるだけ正規にしたいと、特に不本意非正規と言われる、正規を望んでいるけれども非正規にとどまっている方をできるだけ減らしたい、正規にしたいということで、同一労働同一賃金も入れましたし、そして厚生年金も拡大していく、さらには厚労省や我々の補助金で、正規化、賃金を上げていく、そういう企業を応援してきた、中小企業を応援してきたということであります。

 ですので、我々としては、不本意非正規は減らしたいと、できるだけ多くの方に正規になっていただきたい。今回、補正予算でもキャリアアップのための一気通貫の支援策を用意しておりますので、非正規の方も含めてキャリアアップして所得が向上できるように我々取り組んでいきたいというふうに考えております。

○田村智子君 事実は政策によって非正規雇用を増やしてきたんですよ。そこへの反省が何もない。
 この非正規雇用の労働者、能力開発、スキルアップの教育を行った事業所、これは三割未満なんです。正社員に対して行った企業は七割。大きな格差があります。最初から教育の対象外、将来を期待しないと言っているのに等しいですね。今や、先ほども言っているとおり、非正規雇用四割、女性労働者の五割ですよ。その多くがスキルアップの機会も与えられていないということになります。

 これで経済成長するのか。非正規雇用を政策的に拡大させたことが、日本は賃金が上がらないだけでなく、経済を成長させる力を奪ってきた。この政策との関係でお答えいただきたい。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 非正規雇用のありようについては、今日までのありようについては先ほど来説明しているとおりであります。

 企業がこの賃金に割り当てる余力がないことによって非正規雇用が増えた、こういった事実もありました。また、自らのライフスタイルに合わせた形で働き方を選択する、こうした面から非正規労働者が増えた、こういった面もあった。こういったことを申し上げてきましたが、しかし、未来に向けては、この非正規雇用者、望まれる方には正規雇用に移っていただこう、こういったことで今回の総合経済対策の中にも様々な政策を用意した、これが政府の考え方であります。非正規労働者の方を含め、誰もが意欲とやりがいを高めて働くことができる、こういった労働市場を整備していかなければならない、こういったことであります。

 そして、企業において、その社員のスキルアップに努力している企業が少ないのではないか、こういった指摘もありましたが、求職者支援訓練等のこの仕組みの中で、例えば一定の給付を受けながら職業訓練を受ける、こうした取組によって意欲があればスキルアップを目指せる様々な仕組みを用意していく、これも重要なことでありますし、是非、今回の総合経済対策の中にあっても、リスキリングを始めとする一気通貫の様々なその訓練を得られる仕組み、また非正規から正規に移ったことを後押しする企業をしっかり支援する政策、こういったものをしっかり活用することによって、非正規労働者の方の中で望む方には正規、できるだけ正規に移っていただけるような体制をつくっていきたい、これが政府の基本的な考え方であります。

○田村智子君 それは労働者の個人の責任にしていますね。
 個別の支援策は必要ですよ。だけど、私が問いかけているのは、日本の雇用の構造のことを聞いているんですよ。事務職や窓口業務、接客業、医療や福祉、公務、学校の先生や保育士、栄養士、図書館司書、自治体やハローワークの窓口などが現に今、低賃金で短期契約の非正規雇用に支えられている。自治体の公務員は約三十万人が今年度で切られようとしている。この構造をそのままでいいのかと聞いています。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) ですから、非正規雇用の方々にもいろいろな考え方で働いている方がおられる。その中で、自ら正規化を望む方々には正規雇用に移っていただけるような社会をつくっていこうということで、総合経済対策等、政策を用意している、こういった説明をさせていただいています。それを望まない方、その非正規を望まない方に対しては様々な支援の制度を用意している、こうした政府の姿勢について説明をさせていただいています。

○田村智子君 例えば、新しい図書館ができました。募集される司書は非正規なんですよ。非正規しか募集がないんですよ。こういう構造を聞いているんです。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 各自治体、そして、それぞれの企業のこの判断というものはあるかとは思いますが、より正規化を進めようとする雇用主体を増やしていこうという考え方において政府として支援を行っていこう、こうした政策を用意させていただいているということであります。

○田村智子君 公務も、国だってそうなんだから。ハローワークの窓口、半分もう非正規ですからね。それでいいのかってことなんですよ。そうやって正規で働けるポストをどんどん減らされてきたんですよ。

 短期間の雇用契約というのは人生を細切れにされているのと同じで、生涯にわたって大きな影響を与えてしまいます。一九九三年から二〇〇五年に新卒で就職活動をしたいわゆる就職氷河期世代は、過去の同じ世代と比べたときに給与の落ち込みが大変激しくなっています。彼ら、彼女らが就職難で苦しんでいるときに、政府は派遣労働の規制緩和を続け、非正規雇用を広げたんです。公務の職場でも正規のポストを減らし続けたんですよ。

 私は、このグラフ見たときに本当に大きな衝撃を受けました。生まれた年が僅かに違うだけで生涯にわたる大きな不利益を抱えてしまう。こういうことを起こさないために政治があるんじゃないんでしょうか。
 総理、これ見てどう思われますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) だからこそ、先ほど、過去の日本の雇用の在り方について政府はどう考えているか、これを申し上げさせていただきました。デフレとの悪循環の中で企業が賃金にこの内部留保等を振り向ける余裕がない、こうした状況の中で賃金が引き下げられ、そして、需要が喚起されずデフレ状態が続く悪循環が続いてきた、こういったことを申し上げてきました。

 是非、この悪循環を変えることによって企業に賃上げに振り向ける余力をしっかり与えることが重要である、そのことが正規雇用につながる、そういった考えに基づいて政策をこれから前に進めていきたい、こういった説明をさせていただいています。この考え方は間違いないと思っています。

○田村智子君 例えば、リーマン・ショックとかが起きた後も、すぐに企業は黒字を回復して、だから内部留保積み上がっていったんですよ、余力がないとか言っていますけれどもね。国や自治体だって、何で非正規、非正規を、ポストを増やし続けたのかと、こういうことが問われてくると思うんですよね。

 就職氷河期を経験し、今も非正規雇用という方は少なくありません。私は、まあ未来にというんだったら、少なくとも最低賃金千五百円、安定した働き方を希望する人には無期雇用を直ちに保障する、これは今なし得る最低限の政治の責任だと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(後藤茂之君) 就職氷河期に学校を卒業して就職できなかった方たちが非常に厳しい状況にあるということは本当に我々も認識しておりまして、この就職氷河期世代が置かれた実情を踏まえまして、二〇一九年に就職氷河期世代支援プログラムというものを作っておりまして、特別に集中的な対策を取り組んできております。

 本年六月の骨太方針二〇二二におきましても、来年度からの二年間を第二ステージと位置付けまして、しっかりとした効果的、効率的な支援を実施していくということで、対策しっかりと取り組んでいきたいと思います。

○田村智子君 個別ではなく全体にどうするかといったら、最低賃金千五百円と、これはどうしても必要なことだと思います。

 もう一点、非正規雇用は女性労働者の五割に達します。男女賃金格差の是正は、賃上げの重要な柱となります。その最初の一歩として、企業の男女別平均賃金の公表が始まりました。女性パート労働者も多いんですけれども、平均賃金の算出方法はどのように示していますか。

○国務大臣(加藤勝信君) 女性活躍推進法に基づき、男女の賃金の差異について、男性の平均賃金に対する女性の平均賃金の割合の公表をこの七月から求めているところでございます。男女それぞれの平均賃金は総賃金を人員数で割って算出をするわけでありますが、パート労働者の人員数は、実際の人員数をそのまま用いること又は正規雇用労働者の所定労働時間で換算した人員数を用いることのいずれの方法であっても差し支えないということにしているところでございます。

○田村智子君 常勤換算でもいいと言うんですけど、それはパートの人が正社員として働いたと想定した計算方法になってしまうんですよ。それは、時給の格差を示すことにはなるんですけれども、実際に受け取った賃金の格差とは大きく異なることがあり得るんです。そうすると、給料の支給額を足し上げて人数で割るという、この当たり前の平均賃金を必ず示すように求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) 先ほど申し上げましたが、男女賃金の差異の算出に当たっては、パート労働者の人員数をフルタイム換算することは、勤務形態の異なる者を比較するための前提をそろえるという観点では一つの方法であるというふうに考えており、実際の人員数をそのまま用いることを必須、先ほど申し上げた、今選択的でありますが、を考えておりません。

 ただ、その上で、男女の賃金の差異の公表に当たっては、算出の前提となる重要事項を注記することが望ましいとされており、パート労働者の人員数をフルタイム換算している場合にはその旨をしっかり注記いただきたいと考えております。

○田村智子君 実際の賃金格差が分かる資料でなければ駄目だと思います。シングルマザーなど、非正規で家計を支えておられるという方も多数おられる。実際の給料格差を明らかにして是正を図ってほしい。そしてまた、最低賃金の千五百円とケア労働の賃金水準を引き上げる、これは男女賃金格差の是正に直結をしますので早急に進めていただきたい。このことも要望して、次の質問に移ります。

 安全保障についてお聞きします。
 防衛予算、軍事費について、二〇二七年度にGDP比二%になるようにと総理は指示されました。GDP比二%、幾らですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) GDP比二%、令和四年度のGDPを基準とすれば、約十一兆円であります。

○田村智子君 現在の防衛予算、軍事費のまさに二倍です。参議院選挙のとき、その後の国会でも、軍事費を二倍にするのかと私たち何度も問いてきました。そのときに総理は、額ありきではない、必要な防衛装備を積み上げると言い続けました。
 では、どういう装備を積み上げたんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 防衛費につきましては、内容と予算と財源と、これを一体的に議論をし、年末に向けて結論を出すと申し上げてきました。

 そして、NSC四大臣会合においては、今年初めから様々な議論を積み重ね、国家安全保障局においては、有識者を始め様々な関係者の議論を聞き、ヒアリングを行い、そして有識者会議等の議論も参考にさせていただきました。様々なこの内容の議論を積み重ねてきました。そして、年末いよいよ迫ってまいりました。予算と財源とセットで結論を出すべく議論を整理していきたいと考えています。

○田村智子君 いや、だから何を積み上げたのかと聞いています。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 中身につきましては、日本のこの防衛力、そして日米同盟の抑止力、対処力を高めるために何が必要なのか、さらには、我が国のミサイル防衛システムを更に補うために必要なあらゆる選択肢についても議論するなど、様々な具体的な議論を今積み上げております。それとセットで、予算と財源との議論を整理した上で、年末結論を出していきたいと思っています。

○田村智子君 いや、セットになっていないじゃないですか。二%、先に指示出しているじゃないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 具体的な内容については今年の初めから議論を積み重ねてきました。予算と財源とセットで結論を出したいと思っています。

○田村智子君 なぜ中身を示さないのか。
 昨日、読売新聞、トマホーク最大五百発購入を検討、十一月十三日のバイデン大統領との首脳会談で方針を確認とあります。トマホーク購入の交渉をしたんですか。

○理事(片山さつき君) まずは担当大臣から。

○国務大臣(浜田靖一君) 反撃能力の保有を念頭にトマホークの購入を検討しているとの報道があることは承知しておりますが、いわゆる反撃能力について現在検討中であり、具体的な内容等は何ら決まっておりません。

 また、十一月十三日の日米首脳会談においては、我が国の防衛力を抜本的強化する方針について米側に説明されたものと承知しております。バイデン大統領から力強い支持を得たと承知しておりますが、外交上のやり取りであり、詳細についてはお答えできないことを御理解願いたいと思います。

 そして、先ほど積み上げのお話がございましたが、我々、今この現状、大変厳しい防衛環境がある中で、防衛力の抜本的強化の実現するべく、整備すべき装備品等の自衛隊の能力の在り方について検討を進めてまいりました。

 具体的には、スタンドオフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開能力、持続性、強靱性といった分野を中心に強化するとともに、防衛生産・技術基盤、人的基盤等の要素を重視して必要な内容をしっかりと積み上げているところであります。

 いずれにせよ、防衛省としては、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、年末に向けて防衛力強化の内容をしっかりと積み上げてまいりたいと考えております。
 以上です。

○田村智子君 首脳会談ですから、総理、バイデン大統領とトマホークのこと交渉したんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 日米首脳会談で確認したことは、日本の防衛力を強化していく、そして日米同盟の抑止力、対処力を強化していく、この点において両首脳で一致をしたということであります。具体的なこのやり取りについては控えます。

○田村智子君 じゃ、何で報道が出るんですかね。
 イラク戦争でアメリカが首都バグダッドへの先制攻撃で使ったのがトマホークです。相手国の領土を破壊することを目的とするミサイルです。ほかにも、報道では、射程三千キロにもなる国産極超音速ミサイルを開発する方針というのも相次いでいるんですね。

 日本の領土、領海から周辺国の領土を攻撃できるミサイルの配備、この本格的な敵基地攻撃能力の保有へ既に政府は動いているということですか。

○国務大臣(浜田靖一君) いわゆる反撃能力についてお尋ねであれば、現在検討中であるため、具体的な内容についてお答えできる段階にはないことを御理解いただきたいと思います。

 その上で、防衛省においては、各国の早期警戒管制能力や各種ミサイルの性能が著しく向上していく中、自衛隊員の安全を確保しつつ、我が国への侵攻を阻止、対処し得るよう、スタンドオフ防衛能力の強化に取り組んでいるところであります。

 いずれにいたしましても、将来にわたり我が国を守り抜くため、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定する中で、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討し、防衛力を抜本的に強化していく考えであります。

○田村智子君 十一月二十二日に提出された有識者会議の報告書、反撃能力、つまり敵基地攻撃能力の保有を不可欠と断言しました。さらに、国内武器産業を育てるために攻撃的武器は輸出できないというルールも取り除く、大学や研究機関を軍事研究に組み込むシステムをつくる、空港や港湾も軍事利用できるように公共インフラを整備するなど、憲法九条に基づいて歴代政府ができないとしていたことを百八十度転換する、まるで軍事国家、戦争国家づくりの青写真ですよ。一方で、安全保障の要である外交戦略については何の提言もありません。

 総理はこの報告書をどう受け止めているんでしょうか。総理から。

○理事(片山さつき君) まず担当大臣。

○国務大臣(林芳正君) 国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議でございますが、このタイトルにもありますように防衛力を中心に議論をいただいた会議でありますけれども、その報告書の中で、外交力や経済力等も含めて我が国の安全を確保する総合的な防衛体制の在り方について本質的な検討も必要である、こういう御指摘もいただいておるところでございます。

 この報告書を踏まえて、与党とも御相談しながら新たな国家安全保障戦略等の取りまとめを進めておるところでございまして、この新たな国家安全保障戦略では、当然今後の我が国の外交政策に関する考えをお示しするということでございます。

○田村智子君 それでは、新たに外交力について有識者会議等での審議をしてもらうってことですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) いや、今外務大臣から答弁させていただきましたように、報告書の中で、外交力や経済力等も含めて我が国の安全を確保する総合的な防衛体制の在り方について本質的な検討が必要である、こういった指摘があります。

 そもそも有識者会議は防衛力を中心に御議論いただいた会議でありますが、外交力や経済力も含めて防衛体制を考えていく必要がある、こうしたこの報告書を取りまとめていただきました。この報告書を踏まえつつ、新たな国家安全保障戦略、取りまとめていきたいと考えています。

○田村智子君 私は、なぜ安全保障環境が厳しさを増すという状況になっているのか、この冷静な分析が必要だと思います。

 北朝鮮のミサイル開発に対して、日本では、九〇年代の後半からいわゆるミサイル防衛の開発が始まり、二〇〇四年度から今日までシステムの導入、整備が行われています。

 二〇〇一年六月十四日、衆議院安全保障委員会で我が党の赤嶺政賢議員が、米国が弾道ミサイルと圧倒的な核戦略を持つ下で、ミサイル防衛が防衛的だなどと主張することは詭弁だ、周辺諸国に多大な懸念、不安を与える、弾道ミサイル防衛を打ち破ることのできる新たな兵器を開発しようという誘惑に駆られ、軍拡競争が再燃することになると、二〇〇一年にこう厳しく批判をいたしました。

 これに対して、当時の中谷防衛庁長官、どのように答弁されていますか。

○国務大臣(浜田靖一君) 委員御指摘の二〇〇一年六月十四日の衆議院安全保障委員会において、中谷元防衛庁長官、当時は、米国の弾道ミサイル防衛構想に関し、現実に、この構想は、現在世界に、四十一か国に拡散しております弾道ミサイルに対して、米国本土を防衛するかということが趣旨でありまして、いわゆる飛んでくるミサイルを撃ち落とすというところに視点が置かれております、もしこれが成功いたしますれば、現在持っているミサイルが無用化をされるということで、軍縮につながることもございますので、是非、この成果がいい方向に展開いたしまして、世界の軍縮が進んでいくように、また核を保有することが無意味であるように、そのように努力していくことを我々は期待をしておりますと答弁しております。

○田村智子君 そのとおりなんですよ、軍縮につながると。二〇〇五年にも大野防衛庁長官が、軍拡という競争、軍拡競争という流れは出てこないというふうに答弁されています。

 では、総理、日米一体で進めたこのミサイル防衛は軍縮につながったんでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) ミサイル迎撃システム等我が国のこの備え、そして今議論を進めておりますあらゆる選択肢を排除せず行う更なる取組、これらは我が国に対するこの攻撃を相手国が思いとどまるという意味で、抑止力を向上させる意味で重要な取組であると認識をしております。

 こうした体制を整備することによってこの抑止力、対処力の向上に努め、そのことが我が国に対する攻撃を思いとどまらせる、こうした結果につながるよう充実した装備を考えていかなければならないと思っています。

○田村智子君 違う、違う。だから、ミサイル防衛やってきたと、それは軍縮につながったのかと聞いています。(発言する者あり)

○委員長(末松信介君) 静粛に。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 軍縮につながったかという御質問でありますが、これは、今の取組は、我が国の国民の命や暮らしを守るためにどうした、どういった取組が求められているか、こういった問題意識に基づいてこの議論を進めております。

 このミサイル防衛が軍縮につながったかということについて、これは現時点で確定的に申し上げることは困難であると考えます。

○田村智子君 いや、事実を見れば明らかで、核開発も止まらなかったし、軍縮になるどころか、むしろ安全環境が厳しさを増すというのが今の現状なんですよね。

 そうしたら、なぜミサイル防衛が軍縮をもたらさなかったのかと、この分析が必要なんじゃないでしょうか。そして、本当にミサイル軍縮のための戦略が必要なんじゃないでしょうか。

○国務大臣(浜田靖一君) 弾道ミサイル防衛システムは、弾道ミサイル等が発射されない限り実際に活用されることはなく、弾道ミサイル等による攻撃に対し国民の生命、財産を守るために必要な純粋に防御的な手段であり、我が国の安全を確保する上で不可欠なものでありまして、こうしたことから、我が国のBMDシステムは我が国の専守防衛の理念に合致するものであり、軍拡競争を招くとは考えられません。

○田村智子君 いや、だから北朝鮮等々の東アジアの中での軍拡が始まっているわけですよね。この軍縮の戦略というのを持たなきゃいけないと思う。なぜこういう状況になっているのかの分析が必要だと思う。しかし、それがない。その上で、今度は日本がかつてない大軍拡にかじを切ろうというんでしょうか。

 これまで保有できないとしてきた相手国内を攻撃するミサイルの配備、この敵基地攻撃能力の保有、それは周辺国の日本に対する見方を全く変えてしまって、想像を絶するような大軍拡競争を招くのではないんでしょうか。それはむしろ日本の安全を脅かし、深刻な安全保障のジレンマに陥るのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今、安全保障の世界においては、どんな国であっても、一国で自分の国を完全に守り切れるというような考えは取っておりません。自らの防衛力、しっかり責任を持って充実させるとともに、多くの同盟国、同志国と連携することによって全体で抑止力、対処力を向上させていく、これが基本的な考え方であります。

 こうした、この同盟国、同志国との協力、さらには周辺国の理解という意味から、我が国の防衛力強化に当たっては透明性を持って説明を果たして、説明をしていくこと、これが重要であると思います。

 委員のおっしゃるこの安全保障上のジレンマ、これを避けるためにも、我が国としての防衛力の拡充の考え方、あるいは実情、透明性を持って周辺国に説明していくことは重要であると考えます。

○田村智子君 昨日の東京新聞で、内閣官房副長官補を務めた柳澤協二氏が、敵基地攻撃について、相手に日本本土を攻撃する大義名分を与えてしまう、確実に戦争を拡大させ、際限のないミサイルの撃ち合いに発展する、武力強化ではなく、戦争を防ぐ新たな国際ルール作りに向け、もっと外交で汗をというふうに述べていますが、総理、どうですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 厳しい安全保障環境の中で我が国の安全を守るためには外交努力がまず第一に求められる、これはそのとおりであります。

 しかし、この関係国と効果的な外交交渉、外交的な働きかけを行うためにも、自らの防衛力の充実、国民の命や暮らしをしっかり守れる体制をつくっておくことは重要であると思います。こういった体制があるからこそ、外交努力におけるその外交の説得力を高めることにもつながる、こうした外交と安全保障の関係についてもしっかり念頭に置きながら、外交・安全保障体制の充実を考えていかなければならないと思っています。

○田村智子君 相手国を破壊できるぞと、こうやって武力で威嚇して外交をやるということなんでしょうかね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国は、自らの国民の命や暮らしをしっかり守れるという体制を示すことが外交における説得力につながると考えて、外交、安全保障を進めていかなければならないと思っています。

○田村智子君 世界を見れば、もっと本当に戦争の心配のない地域をつくる外交の努力は別の形で続けられています。
 十一月十七日から二十日、トルコ・イスタンブールで第十一回アジア政党会議が行われ、三十か国・一地域から政党が参加をしました。議長はトルコの与党議員、中国、ロシア、韓国、インドネシアなど、その国の政府に関わる政党が多数参加をいたしました。全会一致で採択されたイスタンブール宣言は、平和、安全、安定について、ブロック政治を回避し、競争よりも協力を重視する、対話と交渉こそが紛争解決の唯一の道と明記をいたしました。軍事ブロックで世界を分断し、相手を排除する、こういうブロック政治を回避するんだと、同じテーブルで対話と交渉をということですね。

 総理は、このブロック政治を回避するということに賛同されますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、御指摘の会議には日本政府は出席者を出しておりません。採択文書の起草作業にも関与していないため有権的なコメントはできませんが、ただ、当該宣言の文書を見る限り、これは分断を招くような政治への反対を訴えているものだと思われます。

 この点、世界各地で既存の国際秩序が試練にさらされている今こそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の徹底のために、国際社会は、分断でなく、団結することが重要であると考えています。

○田村智子君 これは、誰かを排除してまとまるんじゃないんですよ、包摂的にまとまろうというのがイスタンブール宣言なんですね。このアジア政党会議、参加しておられないと言った。本当に残念です。我が党は第二回から欠かさず参加しているんですけれども、今回、自民党も公明党も参加をしなかったと。

 じゃ、今度は総理が参加されたことについてお聞きします。
 十一月十三日、東アジア・サミットが開催をされました。この参加した国、採択された議長声明での朝鮮半島情勢についての記述を示してください。

○国務大臣(林芳正君) 十一月十三日にカンボジアで開催されました東アジア首脳会議には、日本のほか、ミャンマーを除くASEAN九か国、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、インド、米国及びロシアの計十七か国の代表が参加いたしました。

 議長声明という御指摘ですが、これは議長国カンボジアが議長の権限で発出した声明であり、必ずしも全参加国の合意に基づき採択されたものではないということは申し上げておきたいと思いますが、この声明においては、会議において全参加国若しくは一部の参加国が述べた内容も踏まえまして、北朝鮮情勢について、例えば最近の北朝鮮による弾道ミサイル発射の急増に対する重大な懸念を表明したことや、北朝鮮に対して国連安保理決議の完全な遵守を求めたこと、朝鮮半島の非核化に向けた取組への留意に加えて、当事者による平和的な対話に資する雰囲気の促進や拉致問題の即時解決の重要性に言及があったところでございます。

○田村智子君 全ての関係当事国の平和的な対話の継続の重要性を強調、関係当事国間の平和的対話に資する空気の増進で問題を解決していくと、こういうような議長声明にそれじゃ総理は賛同されていないってことなんですか、今の答弁聞くと。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の東アジア・サミット、EASの今回の声明は議長声明であります。カンボジアが議長国の権限で発出したものであります。日本政府として、個々の文言の意味するところについてお答えする立場にはありません。その上での今の外務大臣の答弁であります。

○田村智子君 いや、じゃ、賛同されないんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国として、基本的に、平和的、外交的に解決に向けて、対話の道、これは重要であると考えています。こうした基本的な姿勢は日本の姿勢と一致をしていると考えています。

○田村智子君 これ、議長が勝手にまとめたものじゃないでしょう。だって、首脳が集まってですよ、ASEAN十か国、東アジア八か国、それで集まって話し合った上での議長声明なんですからね。その中で、関係当事国の平和的対話に資する空気の増進というふうになったんですよ。そうしたら、この東アジア・サミットに参加した国々が協力をして、どうやって問題解決を対話によって進めていくのか、北朝鮮の問題についても、朝鮮半島の非核化についても、これが問われているんじゃないんでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) だからこそ、先ほど申し上げました外交と安全保障の関係は重要だと申し上げています。参加国も基本的に外交努力が重要であると。しかし、その背景として、説得力を増すためにも、自らの国は自らの責任で守る、こういった体制も重要であるということ、こういったことを念頭にそれぞれのその外交について考えているんだと思います。それぞれの国がそういった姿勢で参加をし、今回のEAS会議が行われたと認識をしております。

○田村智子君 日本が相手国を攻撃するミサイルを大量に持つと。この敵基地攻撃能力の保有へ進むということは、この東アジア・サミットの参加国、ここでの話合い、朝鮮半島情勢での議長声明、これとは逆行していくんじゃないでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 新しい国家安全保障戦略において議論しておりますのは、我が国のミサイル迎撃システムを考えた場合に、国民の命や暮らしを守るためにそれで十分かどうか、そういった点から議論をし、あらゆる選択肢を排除せず、反撃能力も含めて議論を進めていく、これが基本的な考え方であります。

 こうした考え方は、決して他国を攻撃するためにこの議論を行っているのではなく、我が国の国民の命や暮らしを守るために、政治の責任を果たすために何が必要なのか、こういった視点で行っているものであります。

○田村智子君 先ほど来言っているとおり、そのミサイル迎撃システムは軍縮ももたらさなかった、安全ももたらさなかった、むしろ厳しい安全環境をもたらしているのが今日じゃないですか。もちろん、北朝鮮のミサイル開発が許されないんですよ。だから、それをやめさせるためにどうするかが問われている。そういう外交戦略を示すべきです。そして、軍事費二倍の大軍拡、この指示を出したのに、中身も示さない、財源も示さない。これでは全く認められない。このことを申し上げて、質問を終わります。

 


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