田村智子議員は8日の参院国土交通委員会で、外環道の掘削工事を止め、「再検証せよ」と迫りました。
田村氏は、今年2月に東京地裁が工事差し止めの仮処分を決定し、外環道の半分以上の区間で工事ができなくなっているが、NEXCO東日本が1日に大泉ジャンクションの工事を再開したことを批判。やるべきは事業再評価だと指摘するとともに、地盤補修工事を含む事業費はどれくらいかと質問しました。
国交省の丹羽克彦道路局長は、「家屋への補修、地盤補修は、事業費の増加要因になる可能性がある」と述べ、総事業費については答えませんでした。
田村氏は、2020年9月の事業再評価で事業費は当初の1・8倍、費用便益費(B/C=便益/費用)は1・01のぎりぎりの数値であるとして、「B/Cが1を割り込んでもいいということか」とただしました。
丹羽局長は、「事業を継続するかどうかはB/Cだけで判断していない」、斉藤鉄夫国交相は、「総合的に判断する」と答弁しました。
田村氏は、「恣意(しい)的なやり方が公共事業でまかり通ることになる」と厳しく批判し、「立ち止まって再検証を」と求めました。
2022年11月20日(日) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
前回に続いて、まず東京外環自動車道についてお聞きします。
調布市での陥没、空洞事故を受けて、東京地裁は、東名ジャンクションから北へ約九・二キロの区間について工事差止めの仮処分決定をしています。東京外環は約十六・二キロ、その二分の一を超える区間での工事差止めです。しかも、再び陥没の危険性があるとして、事故以前と同じ工法による工事の中止も命じられています。
大泉ジャンクションからの本線工事も、掘削を始めた途端にシールドマシンが故障をして止まり、地上から大きな穴を掘ってシールドマシンの補修をするしかなかったんですね。こちらは、修理が完了したとして十一月一日に工事が再開されました。しかし、トンネルはつながるめどが立ちません。今や東京外環道は深刻な行き詰まり状態で、やるべきは事業再評価です。
そこで、まず確認をいたします。
調布の大規模な地盤補修、この事業費についてはどれくらいを見込んでいるんでしょうか。
○政府参考人(丹羽克彦君) お答えを申し上げます。
調布市での陥没事故を受けまして、陥没、空洞地域で影響を受けた家屋への補修、また地盤補修への対応、また有識者委員会で取りまとめられました再発防止対策の実施、これには事業費の増加要因になるという可能性があるというふうに認識をいたしております。
一方で、今後ともコスト縮減に努めることとしておりまして、現段階で総事業費を見通せる状況にはなってございません。今後、この事業を進める中で、現場状況の変化によりまして事業費の変更が見込まれる場合には、適切に事業評価を実施をしてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 大変な地盤補修工事をやるのに、事業費が増大する可能性があると、こんな説明ですか。まあ、二週間前に求めた調布市への提出資料についても、一切提出がないどころか、私のところに説明さえ一言もないと。本当にね、こんな状況で事業を進められるのかということもちょっと指摘しなければなりませんね。
今後、難工事は更に続くと見込まれています。一体、僅か十六キロの東京都内の自動車道に幾ら掛けるつもりなのかということが問われてきます。
六月十日、参議院本会議で我が党の吉良よし子議員が、二〇二〇年九月の事業評価で、事業費は当初の一・八倍、費用便益比、BバイCは一・〇一、事業として妥当と評価されるぎりぎりの数値であり、その後の相次ぐ事故への対応でBバイCは更に悪化すると指摘をして、工事の中止を求めました。斉藤大臣の答弁は、BバイC以外にも様々な効果があると、BバイCも含め適切に事業評価を実施する旨の答弁でした。
これは、つまりBバイCは一を割り込んでもよいということになるんでしょうか。
○政府参考人(丹羽克彦君) お答え申し上げます。
事業評価におきましては、この費用便益比というのは重要な要素な一つでございます。で、事業評価というのは、これに限らず、災害時における人の、人や物資の輸送の確保といった、貨幣換算、これが困難な多様な評価も、効果も含めて総合的に評価するものでございまして、事業継続の方針等の対応に当たっては、こういった評価の結果を踏まえて対応するものと考えております。
○田村智子君 答えていないです。大臣の答弁で聞きました。
BバイCは一を割り込んでもよいという認識なんですか。
○政府参考人(丹羽克彦君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますけれども、これからコスト縮減を努めることとなっておりまして、総事業費、費用便益比を見通せる状況では現在なっておりません。
○田村智子君 答えていない。
BバイCは一を割り込んでもよいということなのかと聞いています。
○政府参考人(丹羽克彦君) 事業を継続するかどうかというのはBバイCだけで判断しているものではございません。
○田村智子君 それは、BバイC一を割ってもいいのかという私の問いに対するその答弁はね、それは一割っていいということになりますよ。聞いたことないですね、こんなこと。一体何のためのBバイCなのかと。事業評価の重要な要素なんでしょう。一割っていいんですかって聞いて、そうではないって否定しないじゃないですか。大臣、どうなんですか、そこは。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 費用便益効果比、BバイC、それに対して、その効果、費用効果比というものもございます。総合的に考えて、その掛かるコスト、そして得られる社会的な利益等も考えて総合的に判断するものと思っております。また、コストについてはこれからコスト削減について努力をするということでございます。
○田村智子君 これはとんでもない答弁ですね。こんなことが成り立ってしまったらね、特定事業者の利益の奉仕をするような恣意的なやり方が公共事業でまかり通ることになってしまいます。
東京外環道というのは、長年の住民の反対運動があって、地上部には影響を与えないと何度も国会答弁が繰り返されて工事着工されました。ところが、地上も地中も壊されているんですよ。BバイCももう一割ってもいいかのような答弁だと。
こうなると、建設の大前提は次々と破綻しています。少なくとも今は立ち止まるべきです。大泉ジャンクション、北側からの掘削はやめて、まず事業の再評価、再検証する、それが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 東京外郭環状道路は、先ほど道路局長が答弁したとおり、開通時期や総事業費、費用便益比について現段階で見通せる状況にはございません。
いずれにいたしましても、首都圏三環状の一翼を担う東京外郭環状道路は、首都圏の渋滞緩和、環境改善や円滑な交通ネットワークを実現する上で重要な道路と認識しており、引き続き、地域住民に対して丁寧に説明するとともに、安全に注意しながら工事を進めてまいります。
○田村智子君 つながる見込みもないんですから、まずは一旦止める、検証する、このこと強く求めます。