参院内閣委員会は7日、こども家庭庁設置法とこども基本法に関連して参考人質疑を行いました。
意見陳述で東京都三鷹市の清原慶子前市長は予算について、独自財源を確保するよう求めました。泉房穂・兵庫県明石市長は市独自の「五つの無料化」として18歳までの医療費、第2子以降の保育料、中学校給食費、遊び場を所得制限なしで無料にするとともに、1歳までおむつは自宅へ無料で宅配し、喜ばれていると発言。子どもの医療費無料化制度を拡充すると国がペナルティーを科すのは「嫌がらせだ」として中止を訴えました。
中嶋哲彦・名古屋大名誉教授は、衆院で政府参考人が子どもの意見表明権について、学校の校則やカリキュラムの編成は「子どもの権利条約の対象にはならない」と発言したことについて「非常に疑問だ」と指摘。国連は子どもの社会参加を促進する中で意見を述べる権利を保障しているとした上で「(発言は)子どもの権利条約の趣旨から逸脱する」と述べました。
質疑で田村智子議員は、国連は政府から独立した子どもの権利擁護機関が必要だと勧告しているとして、見解を求めました。
中嶋氏は「成長途上にある子どもの権利を子ども自身が行使するためのサポート役を果たす」「おとなも、子どもの権利利益について認識を誤るか間違って捉えることがあるため、第三者的な立場から助言する組織が必要だ」と述べました。
2022年6月17日(金) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
大変勉強になりました。お三方の参考人の皆さんにまず感謝申し上げたいと思います。
それで、これまで皆さん述べられたとおり、本当に単なる省庁再編的なことで終わっては駄目で、何のために子どもの権利条約の四原則を書き込む法律が二つできるのかということだと思います。それで、やっぱり政策、行政のスタンスを変えなきゃいけない。その上で、その点で、この間ずっと質問してきているんですけど、やはり余りにこれまで子供に対する責任を家庭に対して求め過ぎたのではないのかと。
所得制限の話は大変、泉参考人の話、刺激的でした。だけど、この国は、就学援助や高等教育に対する支援は、やはり真に必要なというふうに区切るわけです。それから、その真に必要なところである児童扶養手当については、やはり自立を促すということとセットで手当の支給が行われているということで、ここにはやはり家庭にとても重い責任を負わせてきた行政の姿がある。それは、子育てをする側にとってはとても重い負担で、追い詰められる状況があるし、子供にとっては、その家庭が幸せな居場所ではなくても逃れられなくなるという問題にもなってくると思います。
そうすると、やはり、いろんな危惧の声があったんですけれども、こども家庭庁と家庭が入ったこと、それから、こども基本法のところにも理念のところに家庭を基本としという文言が入ったこと、私、ここに果たして本当に変わるんだろうかということを危惧せざるを得ないところがあるんですけれども、まずこの点について、中嶋参考人にまず御意見をお聞きしたいと思います。
○参考人(中嶋哲彦君) ありがとうございます。
私は、家庭が基本であるという文言、これ、どういう解釈されていくのかなということを懸念しつつも、家庭が基本であるということは、それとして重要なことではないかなと思っています。それは、例えば、日本がスパルタ、かつてのギリシャ時代のスパルタみたいな国になっちゃいけないわけで、個人個人あるいはそれぞれの家庭の自由と自治が保障される社会でなくてはいけないと思います。その意味では、家庭が基本であるということ、これは大事だと思います。
ただ、その場合、家庭が基本というのは、それぞれの家庭にはいろんな価値観があり、その中で家庭を営んでいるわけですよね。だから、そのことを尊重するという意味で家庭は基本であるべきだと思います。
ただ、現実にはそれぞれ社会的な地位が違います。所得も違います。ですから、同じようにはできないんですよね。同じようにしろと言ってもできないです。そういう中で家庭を支えていく、そういった家庭を支える、これは公的な役割として必要だと思います。
以上です。
○田村智子君 同じ質問で、その所得制限をなくされた明石市の場合、この子育てがどうあるべきかということの議論は所得制限なくすに当たって行われたのでしょうか。どのように行われたのか、お聞きできればと思うんですけれども。
○参考人(泉房穂君) 済みません。
明石市というか、私が市長になったときからの公約は変わっていなくて、全ての子供たちを町のみんなで本気で応援する、これを言い続けています。そのことが明石の町にプラスなんだということが理念、哲学です。ポイント、二つ。全ての子供です、子供を分断しない。そして、応援するのは、家族のみならず町のみんなで子供を応援する。町のみんなで応援するということは、みんなからお預かりしている税金をしっかりと活用して子供に予算を付けるという意味になります。
そういった町づくりを徹底してやってきましたので、先ほどもお伝えしましたが、当初五年間ぐらいは大変反対が強かったですけど、もう昨年ぐらいからはもう全会一致で、その方針で市議会も応援いただいている状況に変わったと理解をしているところです。
○田村智子君 次に、子供の権利擁護機関についてお聞きをしたいと思います。
中嶋参考人の後ろの方で、恐らく時間の中で話し切れなかった分の資料もあろうかと思います。これ、この部分が国連の日本政府に対する最終所見や勧告の中でも、オンブズパーソンが自治体に置かれていることは踏まえた上で、なお子供の権利擁護機関が独立した機関として必要であるという勧告が繰り返されているというふうに思います。
どのような機関がなぜ必要なのか、少しお話しいただければと思います。
○参考人(中嶋哲彦君) これ、国連は、子供に限らず、大人も含めて人権擁護機関が必要で、それが独立性を持つべきだということを言っているんですね。子どもの権利委員会は、特に子供に関してIHRICが必要なんだということを言っています。
それが必要なのは、やはり子供の権利を擁護していくためには、子供はまだ、何というか、成長途上にあるんですよね。だから、成長途上にある子供に、自分の権利を自分で行使しなさい、さっきの権利のための闘争を自分でしろというのは無理なんですよ。だから、そこでサポートが必要です。その役割を果たすべきだということ。
それから、もう一つは、子供だけじゃなくて、大人も学ばなければいけないんだと思います。私たちの社会は子供の権利をしっかりと、大人も含めて認識できているんだろうかということです。それは、大人もひょっとしたら子供の権利についての認識が誤っている、あるいは子供の利益の所在を間違って捉えているということがあり得る。それに対して第三者的な立場からアドバイスをするということがIHRICに求められていると思います。それが必要なんだろうと思いますね。
○田村智子君 もう一点、今のに加えてなんですけど、例えば海外の事例ですね、どのように機能させているのか、少し御紹介いただければと思います。
○参考人(中嶋哲彦君) 例えば、イギリスとかニュージーランドでは子供コミッショナーという名称で設置しています。それから、北欧ではオンブズマンとかオンブズパーソンという言い方をしているんですね。これ、非常に多様なんです。それぞれの国が多様なやり方をしています。やはり、オンブズマン、オンブズパーソンとかコミッショナーという、行政機関から独立したものをつくるとなると、やっぱりそれぞれの国のそれまでのいろんな経緯があって、なかなか合意も難しいところがあるんですよね。日本だけではありません。その意味で、いろんな工夫をしながらされているということです。ですから、一つの形があるというふうには考えない方がいいかもしれません。日本流にやっていくということですね。
もう一つ申し上げたいんですが、事前にお配りいただいた中で、私も執筆している「子どもの権利をまもるスクールロイヤー」という書物の私の執筆部分を紹介していただきました。
これは、スクールロイヤーという言い方しているんですが、ここで私たちが期待しているのは、スクールロイヤーには、子供の権利を擁護するために学校に対して、あるいは校長、教育委員会に対してアドバイスできるそういう弁護士、これを置くべきなんだということを強調しています。
今、文科省の政策の中では、逆に学校側の顧問弁護士として機能してしまうような、つまり権利を抑える側で動いてしまうようなスクールロイヤーをつくっている自治体もあるんですよね。それ、非常に問題だと思いますので今後問題にしていただきたいなと思いますし、これも、このスクールロイヤーという一つのオンブズパーソンの、あるいはコミッショナーの一つの形として、これ学校に限定されるものではあるんですけど、考えていく、こういう試みを積み上げていくということも今後必要かもしれません。
○田村智子君 清原参考人、こども基本法を作ってほしいということで様々なロビー活動もされてこられて、その中でもやはり子供コミッショナー必要だということで、いろいろお話も伺ったという記憶がございます。
三鷹でオンブズマンの制度があるということも踏まえて、やはり子供コミッショナーということが必要だとお考えになるその部分、少しお話しいただければと思います。
○参考人(清原慶子君) 子供の権利の擁護を図る公正で適切な仕組みというのは大変必要だというふうに認識しております。
三鷹市では、御指摘のように、私の前の市長から、福祉オンブズマンを総合オンブズマンに変えて、弁護士を含む複数のオンブズマンに活躍をしていただいてきました。しかしながら、直接的に人権に関わることというのは、オンブズマンに相談されることはそんなに多くはなく、むしろ人権擁護委員さんに活躍をしていただいているというような経験がございます。
そこで、私自身、こども家庭庁設置法案を見させていただいて、こども家庭庁そのものが司令塔機能を果たし、その責務として第一義的に子供の権利利益の擁護、任務として掲げているということに注目しました。したがって、こども家庭庁というのはどういう機能を持つのかといいましたら、先ほども発表の際申し上げましたように、勧告機能も持っているということですし、各府省庁から資料提供も求めるということでございます。
したがって、まずはこども家庭庁のその司令塔機能と、その任務である子供の権利利益の擁護について徹底的に検討していただきたいし、とりわけ、こども家庭審議会が設置されるということでございますので、そこがどのような仕組みをつくることがまさに子供の権利利益の擁護に有効に働くのかということを検討していただけるのではないかなと思っています。
他方で、先ほども発言しました附則の検討規定というところなんですが、「施行後五年を目途として、」というところで、こども基本法については「国は」というのが主語になっています。こども家庭庁設置法案は「政府は」となっておりまして、私はこの「国は」という言葉に注目いたしました。すなわち、政府だけではなくて国会が入っているんだなという意味だと受け止めました。
したがって、このいわゆる子供コミッショナー、子供だけではなくて国民の人権を守る仕組みというのは引き続き国会でも検討していただけるのではないかなと、そんなふうに現時点では受け止めて、期待しているところでございます。
○田村智子君 あと、時間の関係で済みません、中嶋参考人にもう一問なんですけれども、私、大変お話聞いていてちょっと自分も衝撃的に感じたのは、大人の側が子供を権利主体としてみなしていこうよというだけでは足りなくて、子供自身が権利を自覚し、その認識を深めていくことがなければ、本当のその権利の行使にはならないということだということを改めてお話伺って問題意識を深めたところなんですけど、これが決定的に、日本の中でそういう場はどこにあるんだろうかということも含めて、とても大きな課題になってくると思うんです。
先ほど文部科学省の在り方ということも提起がありましたけれども、どうしていけばいいのか、少しお話しいただければなと思います。
○参考人(中嶋哲彦君) 長くなってしまいそうな質問なんですけど、手短にお答えしますけれども。
先ほど、一ノ二憲法というのは、日本の学校でやっていた実践なんですよね。だから、日本の学校には、かつてこういう実践があったということなんですよ。だから、教師たちは、子供の中に、要するに権利意識を育てたいとか、権利意識を基本とした、柱とした社会をつくっていきたい、社会の制度ですね。自分たちでつくったものは自分たちで守っていきたいという、そういう、これ、さっきのイェーリングもそういうことを言っているんですよ。まさにそれを言っているんです。
そういう実践が普通の教師によってなされていたということです。それを取り戻さなきゃいけないんじゃないでしょうか。今、そういう実践が、残念ながら日本の学校では行いにくくなっています。いろんな制限が掛かっている中でできていないです。それが一点です。
もう一つは、子供に自信を持たせていないと思います。
子供は、自分が自信が持てなければ発言できないです。自分に自信があって、これは変えていくんだとか、そういうチャンスを与えてあげないと、子供はいつまでたっても自信が持てない、大人に頼っていく人間でしかないです。
何で今の学校はそれができないのか。抑え付けちゃっているんです。抑え付けて、自信を持たせなければ、やはり自分の意見は出てこないです。そういう社会、私たちは望まないはずですよね。
だから、そういう社会にするために、やっぱり子供に自信が持てるようにしていくという、そのことを、簡単なことではありませんけれども、教師たちの実践が自由にできるようにしていくことが必要じゃないかなと思っています。
以上です。
○田村智子君 恐らくもう時間かと思いますので、ここで終わりたいと思います。ありがとうございました。
ありがとうございました。