活動報告

活動報告
日本共産党議員の国会質問/こども関連法/子どもの意見表明権を/影響する全行政・司法で/田村智氏/参院内閣委

 田村智子議員は10日の参院内閣委員会で、こども家庭庁設置法と与党提出のこども基本法に関連し、子どもに影響を与える全ての行政、司法、立法で子どもの意見表明権を考慮するよう求めました。

 田村氏は、基本法2条2項のこども施策は、子どもへの直接の施策に限定されていないと指摘。道路の安全や公園整備、都市計画も子どもの生活環境に影響を与えるとして、こども家庭庁は道路行政や国家戦略特区など同法がこども施策と定義していない行政も子どもの意見を尊重し「最善の利益」を考慮して運営すべきだと迫りました。野田聖子担当相は、道路行政にも「強い司令塔機能を発揮する」と答えました。

 田村氏はさらに、基本法提出者が「こども施策には定義上、教育が含まれる」として、子どもに直接、間接に関わることへの意見を尊重し、最善の利益を優先すべきだと答弁していたと指摘し、文部科学省が校則の制定や教育カリキュラムの編成は「意見表明権の対象ではない」と答弁したのは、子どもの権利条約への曲解だと批判しました。

 鰐淵洋子文科政務官は「子どもたちの意見も適切に受け止めながら学校運営が行われるよう取り組む」と答弁。田村氏は校則など、学校で子どもが自由に意見を言える仕組みが必要だと強調しました。


2022年6月17日(金) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 五月二十四日の礒崎議員の質疑で、子供の意見表明に関わって、基本法第三条三号と四号についての議論、これは条文の解釈として重要な点ですので、改めて確認したいと思います。

 それぞれの意味するところ、その違いについて、提案者からの説明をお願いいたします。

○衆議院議員(勝目康君) 田村委員の御質問にお答えをいたします。
 こども基本法第三条三号は、児童の権利に関する条約第十二条第一項におきまして、その児童に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保すると、こうありますのを受けて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会、この確保について定めたものでございます。

 これに対しまして、法案の第三条第四号でありますが、自己に直接関係する事項以外の事項でありましても、子供の意見はその年齢及び発達の程度に応じて尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるということを定めたものでございます。

○田村智子君 三号は、子供が自分に直接関わることは意見の表明の機会を確保する必要があると。四号は、自分に直接関わることにとどまらず、子供の意見は尊重され、子供の最善の利益が優先して考慮されるということになります。意見が尊重されるということですから、何らかの意見の表明がなければ尊重はできませんよね。

 それでは、国や地方公共団体が実施する子供施策について子供は意見表明をすることができるというふうに解釈いたしますが、どうでしょうか。

○衆議院議員(勝目康君) まさに、その三号の基本理念、子供施策の基本理念として、この意見を表明する機会を確保するということを規定しているわけでありますので、この基本理念にのっとって子供施策というのは行われるというのがこの法案の意味するところであります。

○田村智子君 では次、通告の三問目と五問目を併せてお聞きいたします。
 意見表明に対しては、子供の成長や発達段階を考慮に入れた応答が必要となります。まずは意見を受け止める。発達段階によっては、泣きわめくというように行動で意見を示すこともあるでしょう。これをわがままとは決め付けずに、まずは受け止めると。そして、意見あるいは行動の理由を踏まえる。全てを受け入れることができない場合には、その発達段階にふさわしく、子供が理解できるような応答が必要になると。

 基本法が求めているのはそのようなことではないかというふうに理解いたしますが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(勝目康君) まず、子供さんというのは、年齢あるいはその発達段階、例えば自閉症の子供で言葉の発達が遅いような場合であっても、様々な手段を通じてその意思の表明というのはしているわけであります。そして、この基本法案の基本理念、四号では、文字どおり、全ての子供と、こう規定をしているわけであります。条約ですとかあるいは児童福祉法、これと同一の趣旨を規定するということを意図いたしまして、年齢、発達の程度に応じて子供の意思表示を尊重すると、そしてその最善の利益を優先して考慮をする、このことを子供施策の基本理念として規定しているものでございます。

 そしてまた、その意見が表明があったときにどう対応するかということでありますけれども、御指摘のように応答するということも一つの形であろうと思いますけれども、これは意見の尊重がどういう形で行われるのか、あるいはその内容がどうなのか、性質、場所がどうなのかというところに応じてそれは様々なんだろうと思います。それぞれに応じた適切な形で尊重していくということが求められるんだろうと考えております。

○田村智子君 参考人質疑で、名古屋大学名誉教授中嶋哲彦参考人から、子供の意見表明権を認めるということであれば、自治体や学校がつくった場面で意見を言うことでは済まないはずだという指摘がありました。期待されていない場所で歓迎されない意見を言う権利、大人が子供からそんなことを言われたくないということを子供が言えるようにしなければ、子供の本当の幸福は出てこないという指摘で、これはとても大切な指摘だったというふうに思います。

 子供に意見を言うことをためらわせるような権威主義であるとか管理主義、予定調和の押し付け、意見を言っても仕方がないという雰囲気、これらを除去すること、そして、どんな意見も言えるし、まずは受け止めてもらえるという子供の安心を醸成することなくして、意見の尊重とはならないと考えます。子供の意見は取りあえず聞けばいいんだとか、その意見に蓋をするとか、こういう状況をなくしていくということが三条四項が求める意見の尊重の趣旨というふうに考えますが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(勝目康君) 今ほど申しましたとおり、意見の尊重の在り方、これ自体は様々なんだろうと思うんですが、この三条四号の条文全体を読んでいただきますと、まさにその意見の尊重とともに最善の利益が優先して考慮されると、こういうところまで規定をされているわけでございます。

 そしてまた、更に申せば、この意見の尊重を基本理念として掲げているだけではなくて、この基本施策として、十一条におきまして、国、地方公共団体の子供施策の立案、実施、評価における子供の意見の反映のために必要な措置を講ずると、こういう規定もあるわけでございます。こうした措置により、子供の意見を聞くだけで終わらないようにという趣旨でございます。

○田村智子君 この基本法第四条、国の責務、第五条、地方公共団体の責務では、意見表明権を踏まえるよう求められるのは子供施策に限定する条文となっています。しかし一方で、子供施策を定義する第二条は、子供への直接の施策に限定しているとは言い難いですね、子育てということが入ってくると、そして子育ての環境に関わることも対象になるというふうに読めます。そうすると、例えば道路の安全であるとか、公園の整備であるとか、都市計画というのも子供の生活環境に関わってまいります。

 例えばなんですけれども、我が党の東京都議団が痴漢被害についてのアンケートを実施しましたが、高校生から通学電車での深刻な被害実態が寄せられています。一方で、この東京都、今、国家戦略特区によって更なる超高層ビル建設が次々と行われる予定なんですね。これは、体が密着するような電車の混雑を一層深刻にするのではないかと私は危惧をしております。

 それから、司法や立法、これは子供施策を実施するわけではなくて、基本理念に沿った行動を条文上は規定されていません。しかし、こどもまんなか社会を目指す、それが基本法だというのであれば、子供に影響を与える全ての行政、司法、立法について、子どもの権利条約の四原則を掲げる基本法の基本理念、これを踏まえた対応が必要になってくると考えますが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(塩崎彰久君) ただいま委員から御質問がありました点でございますが、こども基本法におきまして、子供施策、これは子供に関する施策及びこれと一体的に講ずべき施策という形で非常に広く定義をされております。そういった意味で申し上げますと、今委員もお話しになりましたように、この施策の基本理念というのは、これは行政ということに限られるというよりは、立法、そしてまた司法の分野に関する施策、こういったものにも当てはまってくるものというふうに考えております。

 また、子供施策に厳密に含まれないものが出てくるのではないかという御懸念もお話しいただきましたけれども、今申し上げましたように、非常に広範な定義をしております観点から申し上げれば、やはり子供に関する施策、子供に影響する施策、こういったものであれば、やはりその本法案の趣旨、精神、こういったものを踏まえて立案されていくことを期待するものでございます。

○田村智子君 これらの答弁を踏まえて、大臣にお聞きいたします。
 こども家庭庁の設置によって新たに置かれる特命大臣は総合調整行うこととされています。そうすると、道路行政、私が今言った国家戦略特区によって満員電車は一層ひどくなって高校生の痴漢被害が起きるんじゃないかということも危惧されるわけですね。

 定義上、子供施策ではないこういう行政についても、子供が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現のためには総合調整を行うことができるし、子供の意見が尊重され、最善の利益を考慮した行政運営が行われるべきだというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) お答えいたします。
 こども家庭庁設置法案、ここで第三条において、こども家庭庁の任務として、子供の年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とすることなどを規定し、その任務を達成するため、第四条第二項において、子供が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向けた基本的な政策に関する事項などの企画立案、総合調整を行うことと規定しています。こども家庭庁は、これらの規定に基づき、政府部内の総合調整の観点から、必要に応じ、関係省庁の様々な政策に関与することができます。

 今の痴漢の話も、決して大人だけの話ではなくて、通学電車の中での小学生の被害も当然あるわけですし、道路行政においても、通学路で交通事故も、幼い大切な命が犠牲になってまいりました。ということを考えれば、道路行政も、子供が利用する公共の場所でありますから、そういった意味で、常に子供の視点に立ち、子供の最善の利益を第一に考え、こどもまんなか社会の実現に向けて強い司令塔機能を発揮してまいります。

○田村智子君 それでは、文部科学省がどうなるかです。
 文部科学省は、四月二十七日、衆議院内閣委員会で、児童の権利に関する条約の第十二条第一項に関しましては、校則の制定、カリキュラムの編成などにつきましては児童個人に関する事項とは言えないので、十二条一項で言う意見を表明する権利の対象となる事項ではないというふうに解していると答弁をしました。

 文科省の答弁は、子どもの権利条約を余りに狭く、曲解とも言えるような解釈であって、私は到底受け入れられないんですけれども、ここでは条約の解釈を論ずるのは脇に置きます。あくまで今私がやり取りをいたしましたこども基本法案に即してお聞きをいたします。

 校則や教育カリキュラムは子供を直接対象としたものです。自己に直接関わる事項ということは明らかです。こうした子供を対象とした施策から更に範囲を広げて子供の意見を尊重するというのが基本法の趣旨だというのは、今答弁聞いてお分かりだと思います。

 これまでの質疑では、このこども基本法が対象とする子供政策には教育が含まれているということも明言をされています。ということは、文部科学省、都道府県・市町村教育委員会、学校においても基本法の理念を踏まえることが求められるのは明らかです。

 文科省に確認いたします。
 こども基本法にのっとれば、校則や教育カリキュラムは子供の意見表明の機会が確保される対象であり、表明された意見が尊重され、最善の利益が優先されることになると考えますが、いかがですか。

○大臣政務官(鰐淵洋子君) お答えいたします。
 校則やカリキュラムの性質について御質問いただいております。

 まず、これまでも御答弁させていただいておりますが、校則につきましては、最終的には学校運営に責任を有する校長が定めるものでございます。しかし、その制定や見直しの過程で児童生徒自身が関与することは、自ら校則を守ろうとする意識の醸成につながり、身近な課題を自分で解決する経験となるなど、教育的な意義があると考えております。このため、これまで文部科学省では、校則の見直しに関与する教育的意義や見直しに取り組む先導的な事例につきまして周知徹底を努めてまいりました。

 また、学校における教育課程につきましては、国が学校教育法体系の下で定める学習指導要領に基づきまして、校長の責任におきまして編成されるものでございます。その上で、各学校における教育課程の編成、実施に当たっては、児童生徒の発達の段階や特性に応じ、例えば児童生徒が自ら学習課題や学習活動を選択する機会を設けたり、また、高等学校等におきまして生徒の選択を生かした教育課程編成の工夫を行ったりすることなどによりまして、児童生徒の意見を考慮していくことも考えられております。

 文部科学省としましては、今後とも、各学校におきまして、教育的な観点から、子供たちの意見も適切に受け止めながら学校運営が行われるように取り組んでまいります。

○田村智子君 まあ半歩ぐらい前進かなと思うんですけれども、今のは、教育的意義は語られました。教育的観点と言われました。それから、子供が関与することには意義があると言われました。しかし、それは意見を表明する機会を確保するということとは異なります。

 この間、ツーブロック禁止などの校則をめぐって校則見直しを求める社会的な運動が起きて、我が党も子供の人権に関わる問題として国会や地方議会で取り上げてきて、校則の見直しが現実に進んでいます。

 文科省も、昨年六月八日、事務連絡を出しています。しかし、その中身は、校則内容の見直しは最終的には教育に責任を負う校長の権限ですが、見直しについて、児童生徒が話し合う機会を設けたり、PTAにアンケートをしたりするなど、児童生徒や保護者が何らかの形で参加する例もあると言うにとどまっているんですね。

 こども基本法にのっとれば、学校教育に関わって子供が自由に意見を言える仕組みが求められてくるのではないかというふうに考えますが、いかがですか。

○政府参考人(淵上孝君) お答え申し上げます。
 校則は、学校教育法体系に基づきまして、学校教育法の下で学校運営に責任を有しております校長が最終的にこれを策定するということは変わりはないと思いますけれども、他方で、その校則の中身というものは、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的な範囲でなければならないということでございますし、また、社会の常識、時代の変化などを踏まえて絶えず積極的に見直す必要があるというふうに思います。

 したがいまして、各学校におきましては、その見直しを積極的に行うとともに、その際、校則の意義などについて子供たち自身でもしっかり考えてもらう、あるいは保護者なども巻き込みながら考えていくということが大切だというふうに考えております。

 先ほどお話ございました昨年六月の事例などでも、子供たちが生徒会活動などを通じて積極的にそういった取組を行っているというふうな事例も紹介をしているところでございまして、引き続きこうした事例の提供などを通じまして校則の運営が行われるように取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 事例というか、意見を表明する権利をどうするかということが問われているんですよ。子供に直接関わることですから。

 それで、実は、その校則の問題等、あるいは問題行動を起こした子供に対するその指導等について、文部科学省は生徒指導提要というものを示しています。これは、生徒指導に関する学校教職員向けの基本書として文科省が示しているもので、平成二十二年に策定をされたものが今使われていて、改訂が協力者会議で議論されているんですね。

 私も改訂案をホームページに示されていたので読んでみたんですけれども、その中で児童の権利条約の四原則がまとめて書かれているということは評価をしたいというふうに思うんですけど、しかし、具体の指導の中でいかに意見表明の機会をつくっていくのか、その意見を尊重するとはどういうことか、最善の利益とはどういうことかと、こういう考察は見受けられないんですよ。もっと言いますと、児童生徒に対する懲戒処分についてさえ、対象となる子供の意見表明については何ら記述はなく、保護者からの意見については記述があると。これは、こども基本法が制定されたら、私は変えていかなきゃいけないというふうに考えるんですよね。

 文科省の立場、変えていかれるべきだというふうに思いますけど、この点いかがでしょうか。

○政府参考人(淵上孝君) 御指摘の生徒指導提要につきましては、現在、専門家会議におきましてその試案が検討されている状況でございます。これ、最終的な結論を得ますれば、それを踏まえまして、各学校あるいは教育委員会等に周知を図ってまいりたいというふうに思います。

○田村智子君 だから、その協議が、こども基本法が作られるということを踏まえたものでなければ私はおかしいと思いますよ。これ、すぐ施行されるんだから、成立したら。それを踏まえて、子供の意見の表明というのをどうやって生徒指導、学校の中で保障していくのか、その機会をつくっていくのかと、これを踏まえたものとして私は作られていくべきではないかなというふうにも思いますね。それにはやはり、そういう議論に参加している方々がやっぱりこの法案審議の中身をどう理解されるのか、もっと言うと、子どもの権利条約をどう理解して議論を深めていくのか。文部科学省もそうです、学校も教育委員会もそうだと思います。そういうことが求められてくるというように思うんですね。

 そうすると、教職員が子供の意見を受け止め、発達段階を踏まえて応答する力量、それからその時間、これ求められてくるでしょう。子供たちは、権利の行使とはどういうことかというのを学校の中で実践的に学び、大人は、子供の意見の尊重、最善の利益の優先とはどういうことかをやはり実践的に理解することが求められていくと思います。

 提案者にお聞きします。
 基本法十五条、国は、こども基本法と子どもの権利条約の趣旨、内容を周知し、その理解を得るように努めるというふうにしています。それは、知識として広めるにとどまらず、意見を言ってもいいんだよ、その意見は尊重されるんだよということが学校教育でも子供に周知する、それはもちろんのこと、実践的にも子供も大人も理解し、その実践力を付けていくということではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(木原稔君) 田村委員からは、今、このこども基本法の精神とか理念とか、あるいは子供政策の内容、どうやって周知させ、また広報していくかと、そんな御質問をいただいたところですが、おっしゃるように、本基本法十五条においては、「国は、この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。」と定めておりまして、その趣旨は、このこども基本法と児童の権利に関する条約の内容や考え方を子供を始め広く国民に周知させることにあるわけであります。

 広報活動等の具体的な方法あるいは対応などはこれから様々な運用に委ねられるというふうには思いますが、子供に対する周知の場として学校が含まれ得るということについては、私ども提案者としてもそれ想定をしているところであります。また、この点については、先ほど委員おっしゃったように、生徒指導提要改訂が議論されているところですが、これは衆議院の審議においても議論されて、政府からも答弁があったところですが、教職員が児童の権利に関する条約の理解を深めるために、その改訂試案に同条約の四つの原則が盛り込まれたこと、これは評価をしていただいているということでありますが、また、校則の制定、見直しに児童生徒の意見を尊重する取組について、これを肯定的に捉えているといったことが示されたというふうに衆議院では議論をされたと承知しております。

 私ども提案者としても、このような取組などを含めて、政府においても、子供にも、また教職員などの大人にも、本法案とこの児童の権利条約の趣旨及び内容について理解を深めていただくための取組が進められることを期待をして、この法案を提出しております。

○田村智子君 私、やっぱりこれ、縦割りの問題とかというのは、それは不合理なところは合理的に事務が行われるように解決していけばいいというふうに思うんですけれども、やっぱり子供ど真ん中で基本法作ってということであるならば、この子供の権利ということについて、子供も大人も実践的にいかに理解を深めていくのか、そして教育行政も、そのものはこども家庭庁の中に入らなかったとしても、やっぱりこのこども基本法という基本理念にのっとってどうしていくのかということが、やはり文科省の中でこそよく議論されて見直しがされていかなければならないということは求めておきたいと思います。今後、また議論していきたいと思います。

 最後に、学校における部活動についてもお聞きしたいと思います。
 ヒューマン・ライツ・ウオッチが、日本の運動部活動について調査を行い、二〇二〇年、報告書を出しました。五十人以上へのインタビュー、オンラインアンケート、スポーツ団体へのデータ提供依頼、通報相談窓口への問合せなどに基づいた調査です。

 この報告書の中では、日本の子供がスポーツの場でいまだに暴力、暴言等の被害を受けていることが明らかになった、また、この問題に対する対処と予防の遅れの原因となっている制度上の不十分な点も明らかになったというふうにしています。

 例えば、ちょっと報告書、長い引用なんですけれども、スポーツ庁からも、日本スポーツ協会及び日本オリンピック委員会等の統括組織からも、明確かつ包括的な子供の保護に関するプロトコル、基準及び手続が示されない中で、各スポーツ団体は、スポーツをする子供への暴力の防止、通報、調査、処分を行う体制づくりを任されている。このような分断され不明確な権限構造により、スポーツをする子供の保護の制度は一貫性に欠ける不十分なものとなっているという指摘があるんですね。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチがいろいろ調査をすると、窓口を設置しているところもあれば設置していないところもあると。実際に暴力、暴言が認定された場合の処分の基準についても、全競技間での統一もなされていないと。加害者である指導者の多くが、子供が自死に至ったとしても、今なお指導を続けているということも指摘をされているんですよ。

 文科省は、この報告書の指摘や改善提案をどのように受け止めておられますか。

○政府参考人(星野芳隆君) まず、文部科学省といたしましても、スポーツにおける暴力は許されるものではなく、断固として根絶していく必要があると考えております。

 このため、文部科学省では、運動部活動での指導のガイドライン、スポーツ団体ガバナンスコードなどに基づいた様々な取組を進めております。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチの報告書の発表以降も、各スポーツ団体等の暴力、ハラスメントに関する相談窓口を一覧化し、スポーツ庁のホームページで周知するとともに、本年三月に策定いたしました第三期スポーツ基本計画において、スポーツを実施する者の安全、安心の確保を今後五年間に総合的かつ計画的に取り組む施策の柱の一つに位置付けております。

 一方で、いまだスポーツ指導の場面における体罰が発生していることも事実であり、根絶に向けては腰を据えた継続的な取組が必要と考えております。関係団体と連携し、引き続き、スポーツ界一丸となってスポーツにおける暴力根絶に取り組んでまいります。

○田村智子君 この報告書では、暴力、暴言事件の全件調査を求めています。また、事件を起こした指導者の相応の処分なども求めています。

 性犯罪の加害者を再び教員にしないために、日本版DBSの整備が具体的な検討課題となっています。その前段階として、性犯罪に関わって処分を受けて免許取消しとなった場合の再取得について規制を強化する改正も行われました。

 一方で、部活動については、指導者の暴力、性犯罪の責任が問われていないという実態があります。暴力行為を行った指導者への相応の処分、部活動からは排除されるような仕組み、これは必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(星野芳隆君) 部活動におきましても、指導の一環などと称して指導者が体罰等の暴力行為を行うことは決して許されることではございません。

 このため、文部科学省といたしましては、平成二十五年に、先ほど申し上げました運動部活動での指導のガイドラインを策定し、体罰等の許されない指導の具体例を明示いたしました。

 また、平成三十年に策定いたしました運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの中でも、改めて体罰、ハラスメントの根絶の徹底について明示するとともに、毎年度、教育委員会等に対する通知や教育委員会の担当者が集まる会議において、体罰だけではなくあらゆる暴力行為の根絶に向けた取組を要請し、その徹底を求めております。さらに、平成二十五年の文部科学省の通知では、体罰を行ったと判断された教員等については、体罰が学校教育法に違反するものであることから、厳正な対応を行うことを求めております。

 例えば、令和二年度におきましては、体罰のうち、中学、高校等の部活動関係で懲戒処分等となった件数は九十三件となっております。ただし、処分等を受けた者が引き続き部活動に従事するか否かにつきましては、各学校の設置者等において適切に判断すべきものと考えております。

 なお、高体連、中体連におきましては、体罰により懲戒処分を受けた指導者は、一定期間、主催大会への参加を禁ずるなどの規定を設けていると承知しております。

 引き続き、文部科学省といたしまして、部活動における体罰等の暴力行為を根絶するための取組を徹底してまいります。

○田村智子君 この部活動の指導者の場合、民間の方を迎えている場合もあるんですよね。そうすると、なかなか処分というふうにならなかったり、あるいは勝利至上主義から指導者の言動に意見ができない、問題があっても蓋をする、こういう事例は社会問題にもなって、もう氷山の一角だと思いますね。多々あるんだろうというふうに思います。

 今、教員の負担が余りに重くて、民間の指導者あるいは部活動の地域活動への移行という議論がされています。これは必要なことだと思うんですけど、同時に、その中でやっぱり指導死と言われるようなことまで起きているんですよ、現に。こういう子供の健康、命に関わる、あるいは人権侵害について、部活動やスポーツにおいても相談窓口の整備など、暴力行為、子供に対する暴力行為、こういうものが根絶されるよう、子供の権利擁護のための取組が必要になってくると思いますが、最後、大臣に一言いただいてと思います。

○国務大臣(野田聖子君) お答えします。
 今回、こども家庭庁は、子供政策を我が国社会の真ん中に据えたこどもまんなか社会、この実現に向けて、子供政策の司令塔機能を一本化して、各省庁より一段高い立場から子供政策について一元的に総合調整を行うとともに、子供の権利利益の擁護等に関する事務を自らの事務として実施することとしています。

 子供に対する暴力は絶対あってはならないことであり、委員御指摘の部活動などスポーツ活動における取組については、これまで文部科学省から答弁がありましたが、スポーツにおける暴力等に関する相談窓口に関しては、各スポーツ団体や文部科学省等に相談窓口が設けられているものと承知しています。

 こども家庭庁においては、子供政策の司令塔として、文部科学省と連携して政府全体の取組を推進していくとともに、特に子供を性暴力から守るため、性犯罪歴等についての証明を求める日本版DBSの導入に向けた検討等に取り組むこととしています。全ての子供が安全、安心、健やかに成長することができる社会の実現、これに向けてしっかり取り組んでいきます。

○田村智子君 終わります。


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