活動報告

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「こども施策に反省なし」/関連法案、田村議員が反対討論/参院本会議

 参院本会議で15日、政府提出のこども家庭庁設置法案と与党提出のこども基本法案の採決が行われ、両案は自民、公明などの賛成多数で可決・成立しました。日本共産党は両案に反対しました。

 反対討論で日本共産党の田村智子議員は、岸田政権は子どもの権利条約と国連子どもの権利委員会からの勧告に真摯(しんし)に向き合わず、10代前半での自殺の増加、いじめ、不登校など子どもの深刻な現状への分析的な認識や、これまでの施策の検証、反省が示されなかったと指摘。こども家庭庁が、政府の施策を権利条約の4原則(子どもの生命・発達に関する権利、最善の利益、意見の表明・尊重、差別禁止)に照らして分析・評価、改革しなければ、何のための設置か厳しく問われると指摘しました。また、子ども施策の予算の増額について具体的に示さない一方、「骨太の方針2022」では5年以内の防衛力の抜本強化を掲げており、大軍拡はやめるべきだと指摘。政府から独立した子どもの権利擁護機関である「子どもコミッショナー」が制度化されていないのは重大だと批判しました。

 田村氏はさらに、こども基本法案に、「家庭を基本」とあることや、プライバシー権を脇に置いて子どもの情報の利活用を掲げていることの問題点を指摘し、反対を表明しました。


2022年6月16日(木) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 私は、日本共産党を代表し、こども家庭庁設置法案及び同法整備法案に対し、反対の討論を行います。

 第一に、こどもまんなか社会の実現といいながら、子どもの権利条約にも、国連子どもの権利委員会からの勧告にも真摯に向き合わず、これまでの施策の検証や反省が岸田政権から全く示されていないことです。

 日本の子供の現状について、私は法案審議で繰り返し政府の認識をただしました。G7諸国の中で最悪の自殺率、しかも十代前半での自殺の増加傾向、いじめ、不登校の実態などから、日本の子供がストレス状態に置かれているのではないかと、岸田総理、野田大臣、そして文科大臣政務官にと重ねて質問しましたが、子供の深刻な現状に対する分析的な認識は何一つ示されませんでした。

 特に、学校教育について、安倍政権によって悉皆調査とされた全国学力テストが自治体と学校の平均点競争をあおっている、テスト対策のためのテスト、宿題の負担、学校は子供たちにとって楽しい場所になっているのか、子供の自己肯定感を損ねているのではないかなど、具体の問題を指摘してただしましたが、何度問うても、政府の答弁には子供の姿はありません。岸田総理に至っては、全国学力テストも子供の最善の利益を第一として行っているという認識を示しました。

 国連子どもの権利委員会は、一九九八年の日本政府に対する最初の勧告で、競争的な教育システムが子供から休む時間、体を動かす時間、ゆっくり遊ぶ時間を奪い、子供の発達をゆがめているという懸念を示しました。二〇一九年にも、生命と生存の権利について、社会の競争的な性格により子供時代と発達が害されることなく、子供が子供時代を享受することができるようにすることを日本政府に求めました。ところが、この勧告に対する政府の認識は、条約上の明文規定がないから答弁困難というのが岸田総理の答弁でした。

 こども家庭庁の任務には、子どもの権利条約の四つの基本原則、一、生存と発達の権利、二、子供の最善の利益、三、意見表明権、四、差別されない権利が不十分な文言ながら盛り込まれました。ならば、政府の施策、中でも文科省行政が四原則に照らして分析、評価、改革されるかどうか、そうでなければ何のためのこども家庭庁設置なのかが問われる、このことを厳しく指摘するものです。

 第二に、子供施策の予算がいつ、どれだけ増えるのか、子供に関わる専門職の抜本的な増員と処遇の改善がどうなるのか、何も具体的に示されなかったことです。

 政府の答弁は、まずこども家庭庁を設置して、必要な施策をしっかり議論した上で体系的に取りまとめ、さらに、費用負担の在り方を社会全体で議論するというものです。必要な施策でも、財源確保がなければできないということになります。保育関係者からは、こども家庭庁設置というなら、七十年以上見直されていない四、五歳児の保育士配置基準を始め保育の最低基準を直ちに改善してほしいと要望が出されています。保育士配置基準の改善は、消費税増税の理由とされました。ところが、その約束をいつ果たすのかという質問にも財源確保が必要というのは余りにも無責任です。

 また、少子化が進行する下で、児童手当の必要額、小中学校の教員数など、人口減少をそのまま反映していますが、これを減らさずに子供施策の充実に充てる、学校の少人数学級やスクールソーシャルワーカーなどの常勤化に充てるなどは直ちにできるはずです。ところが、自然減を減らさないということさえも約束されませんでした。

 一方で、先週閣議決定された骨太の方針二〇二二では五年以内に防衛力の抜本的な強化を掲げ、わざわざ、NATO諸国では国防予算を対GDP比二%以上とする基準という文言を盛り込みました。財源についての言及はありません。自民党も提言する対GDP比二%とは、五兆円以上の増額です。内閣府が所管する児童手当、保育所、幼稚園などに関する子ども・子育て支援給付、高等教育の修学支援は合わせて三・八兆円弱、これをはるかに上回る防衛予算、軍事費の増大に踏み出せば、子供施策の予算倍増など望むべくもありません。大軍拡はやめるべきです。

 第三に、家庭という文言を入れたことです。

 家庭で虐待を受けた経験のある方々から、家庭と入ることへの強い危惧が示されました。子供個人の尊厳や権利に目を向けてほしい、家庭だけでなく社会全体で子供を育てる国になってほしいとの声は、子供施策の立脚点は子供の権利の尊重であってほしいとの強い要望でもあります。

 これまでの政治は、子育ての自己責任を家庭に重く担わせてきました。児童扶養手当は離婚件数の増大を理由として所得制限が強化され、母子家庭の母親は働いているのに貧困から抜け出せない苦しみの中にいます。高過ぎる大学、専門学校の学費は、全ての家庭と子供への重い負担となっています。低所得世帯への高等教育無償化さえ厳しい条件を課しています。こうした自己責任の政治を改め、子育ての家庭の荷を軽くすることこそ求められており、その点からも家庭の強調には問題があります。

 また、政府から独立した子供の権利擁護機関、子供コミッショナーが制度化されなかったことも重大です。

 子どもの権利条約の批准から三十年以上が経過しても、文部科学省は、校則の制定、カリキュラムの編成などは児童個人に関する事項とは言えないので意見表明権の対象となる事項ではないという認識を示しました。子供の意見表明権は、子供に直接関わる事項で保障されることはもちろん、その他影響ある事柄においても子供の意見の尊重が求められます。

 参考人質疑では、意見表明権とは、大人が期待していない場所で言われたくないことを言える権利との指摘がありました。こうした権利を保障する仕組みがないことが問題です。日本の重大な遅れを打開するには、子供の意見を代弁し、個別事案の権利救済を行う子供コミッショナーは必要不可欠です。野党はもちろん、与党の一部からも強く求められていたにもかかわらず、自民党内の圧力に屈して法案には制度化もその検討もないことは大きな問題です。

 こども基本法案についても、理念に家庭を基本とあること、また、子供のプライバシー権を脇に置き、情報通信技術を用いた子供の情報の利活用を掲げていることなどから、賛成できません。

 最後に、本法案の審議を通じて、子どもの権利条約について正面から議論されたこと、また、こども基本法は教育施策も対象としており、校則や教育カリキュラムについても子供の意見表明の機会が保障されるものと解される答弁があったことは重要です。答弁にとどめず、子供が自由に、恐れることなく、不利益を受けることなく意見を言える、そして、その意見が尊重される実質的な仕組みが求められます。

 日本共産党は、子どもの権利条約の全面実施へ、多くの市民の方々、そして子供たちと力を合わせ奮闘する決意を述べ、討論を終わります。(拍手)


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