国会会議録

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対象外の検証も必要/ストーカー規制法案で田村智子氏
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(写真)質問する田村智子議員=8日、参院内閣委

 相手の所持する物に、承諾なくGPS機器をつけて位置情報を取得したり、拒まれても文書を連続して送る行為などを規制対象に追加するストーカー規制法改正案が9日、参院本会議で採決され、全会一致で可決し、衆院に送付されました。

 日本共産党の田村智子議員は8日の参院内閣委員会で、過去の法改正が、被害者の命が奪われる重大事件を契機にしているとして、現行法で対応できない相談や事例を重大事件にしないための検証や対策について質問。とりわけ、規制対象が恋愛感情等を動機とする場合に限られていることに被害者からも問題提起があることを示し、「法規制の対象とならなかった相談事例について具体的な検証が必要ではないか」と求めました。

 小此木八郎国家公安委員長は「警察にあるこれまでの経験もふまえ、ストーカー事案の情報を収集し、規制のあり方を適切に判断していく」と述べました。また田村氏は、加害者への更生プログラムの実施強化や更生プログラムに加害者をつなぐ支援を求めました。



2021年4月17日(土)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 内閣委員会 第10号 令和3年4月8日】

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 法案では、ストーカー行為をした者への禁止命令等を送達で行うこととしています。書類を送るという意味ですけれども、これまでと同様に直接交付、その場で禁止命令を手渡すということが最も迅速な対応であり、被害防止にとっても望ましいと考えます。
 これまで対応できないケースのために送達を導入するのであって、迅速な対応のためには、原則としては、まずは直接交付による命令が引き続き行われるべきだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 現在、禁止命令等は、国家公安委員会規則において定めるところにより、禁止命令等の対象者に対する処分の感銘力や抑止効果を踏まえて、禁止等命令書を交付して行っているところでございます。
 今回の改正後、禁止命令等は書類を送達して行う旨を明文で規定するとともに、禁止命令等の対象者の住所及び居所が明らかでない場合には公示送達を可能とするものであるところ、禁止命令等の対象者に対する感銘力や抑止効果を踏まえまして、引き続き原則として当該命令書を交付して行うことを検討してまいりたいと考えております。
○田村智子君 是非お願いしたいと思います。
 次に、付きまとい行為として文書の連続的送付行為が加わります。これまでは、既に連続して電話を掛けたりファクスや電子メールを送付する行為というのは規制の対象なんですね。文書が入っていなかったのかと私もちょっと驚いたんですけれども、法改正に向けて行われた有識者検討会の報告書でも、文書の連続的送付行為はストーカー行為における典型的な行為の一つと指摘をされています。
 なぜこの規制がこれほどまでに遅れたんでしょうか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 ストーカー規制法の制定当初、文書の送付について規制されなかった理由につきましては、手紙に比べて電話やファクスの手段の方が相手方に対して連続して掛ける又は送付することが容易に行い得ると考えられるため、法の制定時において電話やファクスが規制の対象とされたものではなかろうかと考えられるところでございます。また、その後のストーカー事案の実情を踏まえまして、電子メールやSNSメッセージが法改正で規制の対象に追加されたものと承知してございます。
 文書を送付する行為を今般規制することとした趣旨でございますけれども、ストーカー事案におきまして、相手方が行為者からの電話、ファクス、電子メール等による連絡を拒絶したため、代替手段として文書が送付されるといった実情があり、文書の連続送付が典型的な手口として行われていることから、こうした状況を踏まえまして、文書の連続送付行為を規制の対象に加えることとしたものでございます。
○田村智子君 確認いたしますが、その文書というのは白紙であっても、相手や自分の名前だけでも、あるいは文字ではなく記号であっても対象となりますか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 今回の改正案第二条第一項第五号に規定されている文書とは、文字や記号で人の思想を表したものでございまして、例えば送付する相手方や送付した行為者の氏名のみが記載された場合も文書に含まれ得ると解されますけれども、白紙につきましては文書に当たらないと考えているところでございます。
○田村智子君 白紙だと誰が送ったか分からないということかもしれないんですけど、推測もできるわけですから、この件も是非考えていただきたいんですね。
 メールは、文章のない空メールであっても既に規制の対象です。有識者検討会の議論を見ますと、加害者が警察からメールの送付をしては駄目だと言われたので手紙を送ることにしたという事例が出てくるわけですね。ですから、これ、文書については抜けがあったというふうに言わざるを得ないんです。
 ストーカー規制法は、一九九九年に起きた桶川事件を契機として議員立法によって成立しました。これまでに二度改正されていますけれども、二度目の改正も逗子事件が契機となったものです。被害者の命が奪われる重大事件が起きてからの対応ということなんですね。現行法での対応ができない限界事例があるのに、法規制が間に合わずに重大事件の発生に至ってしまう。これをどうやって防ぐのかということが引き続き問われていくと思います。
 ストーカー事案の相談、対処事例など、警察庁は各都道府県との交流や指導、助言も通じて情報収集をしていると思います。どんな被害が起きていて、現行法で対応できるのか否かについて常々の検討ということが求められていると思うんですけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 警察庁におきましては、通常の業務を通じまして都道府県警察において対応したストーカー事案を把握しているほか、必要に応じて有識者検討会を開催するなどして、法改正の検討に資することとしてきたところでございます。
 引き続き、ストーカー事案に対する規制の在り方につきまして適切に判断できるよう、ストーカー事案に係る実態を的確に把握してまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ、大臣についてもお聞きしたいんですね。ストーカー事案に関する相談件数は毎年二万件を超えています。一方で、ストーカー規制法に基づく禁止命令等は直近で年間一千五百四十三件、警告は二千百四十六件なんですね。もちろん、問題になりそうな行為は何でもかんでもとにかく広く規制しろということではないんですけれども、小さな違反事例、また現行法では対応できない相談事例などは収集をして、検討会で関係者を交えて議論していくということが必要だと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(小此木八郎君) 先ほども申し上げましたけれども、警察のこれまでの経験の中での様々な取組があったり、いろんな犯罪に対する着手があったと思います。これまでも必要に応じ、それらを、有識者検討会を開催するなどしてストーカー事案の実態を踏まえた効果的な規則の、規制の在り方について議論を行い、法改正に資することとしてきたところと承知しています。
 警察として、ストーカー事案の実態について引き続き情報収集や分析を行って、必要に応じて検討会を開催するなど、その規制の在り方について適切に判断してまいりたいと存じます。
○田村智子君 今日、議論が集中していますストーカーとは何かということもまさにそういう検討の中に入ってくると思うんですけれどもね。
 これ、自らもストーカー被害を受けた文筆家の内澤旬子さんが発起人となって、評論家の荻上チキさんらがストーカー被害のインターネット調査や政策等を提言するプロジェクトを行っていて、この中でもこのストーカーとは何かということの問題提起もされています。
 内澤さんが受けたGPSによる監視行為への規制は今回の法案にも盛り込まれましたけれども、特定の者に対する恋愛感情、好意の感情、それらが満たされなかったことによる怨恨の感情を充足する目的、これに限定されないよねという問題提起は、やはり実際に被害に遭った方々からも問題提起があるということなんですよね。
 今日も議論されて、私も非常に興味深く皆さんの質問も聞いていたんですけど、恋愛感情を動機としたというこの歴史的経緯を振り返れば、やはり警察が痴話げんか扱いをしたということは大きかったと思います。痴話げんかではないんだと。恋人同士、交際相手、あるいは夫婦間のトラブルもそれは夫婦の中で何とかしてねと対応したと。そういうこともあって、議員立法の中で、やはり恋愛感情、好意、こういうものを当事者の問題にしてはいけないよということは、当時、法案の中に相当やっぱり意識されたものだとは思うんです。
 しかし、やはり様々な事件が起きているということを考えてみても、やはり、さっきも言いました相談事例の中で、直近、二〇二〇年にはストーカー規制法に抵触しない動機が八百十六件というふうに示されているんですね、いただいた資料の中で。やっぱり増えているんですよ。そうなると、この八百十六件というのがどういうものなのか、どういう規制が行われていけば重大事案に発展していかないのか。こういうことはやはり検討、具体的に必要だと思うんですよ、一般的に検討しますではなくて。八百十六件あると。いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) このストーカー規制ということについての立法当時の話は、様々してきたということを先ほど申し上げました。
 ですから、委員のおっしゃっていることを挙げれば、例えば自分に振り返っても、これ選挙に出ているわけですから、様々、人に嫌われていないかなとか、いろんなことを考えながら、地域での活動もあります。余りしつこく迫ってもいけないんじゃないかとか、これはこの辺にしておこうかというものがある。その例が入るわけではありませんけれども、ただ、その中には、先ほどもちょっと触れたのですけれども、余り私権といいますか、そこを制限するようなものに入っていいものかどうかというものも考えなきゃいけないということ、犯罪を犯してはならないということ、悪いやからはしっかりと許さないという気持ちを持たなきゃいけないということは、強い思いとして私もございますし、警察の中にもございます。
 ですから、今言われたようなことについての、慎重という言葉がここに入りますけれども、ここは非常に意味のある言葉としても、私、委員長としても捉えている中で、様々な経験値も活用しながら取り締まっていくように、取締りに当たるように警察を指導しているというところであります。
○田村智子君 ストーカー規制法は刑事罰を科すという法律ですから、私も慎重な検討は必要だと思います。ただ、この本法案が成立しても、GPSによる監視は恋愛感情などとは無関係の怨恨が動機となった場合にはやっぱり規制の対象にならないわけで、それでいいのかという議論は確かにあると思うんですね。
 この議論は、一昨日参議院に送付をされましたデジタル改革関連法案にも関わってくると思います。プライバシー権、個人の情報の保護、これがどう行われるのか。今、与野党を問わず問題意識がこの法案で示されましたので、非常にプライバシー権含めた充実した審議がデジタル改革関連法でもできるのではないかということも期待したいというふうに思います。
 それから、加害者への更生というのも私も問題意識を持っています。それで、法務省にお聞きしたいんですけれども、ストーカー規制法によって懲役刑を受けた場合に、加害者には刑務所での更生教育は行われているのではないでしょうか。
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
 刑務所等の刑事施設におきましては、ストーカー規制法違反により服役している受刑者はその絶対数が少なく類型化が困難であることなどから、ストーカー規制法違反、これに特化したプログラムというのは実施していないところでございます。
 一方で、受刑者の改善指導のため、改善更生のため、刑執行開始時調査として、原則全ての受刑者に対し、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門知識及び技術を活用し、個々の資質及び環境の調査を実施しておりまして、この調査結果に基づき、矯正処遇の目標やその基本的な内容及び方法を定めた処遇要領を策定しているところでございます。
 この処遇要領の結果に基づきまして、罪名にストーカー規制法違反が含まれているか否かにかかわらず、その犯罪態様や特性などに応じ、暴力防止プログラム、被害者の視点を取り入れた教育、性犯罪再犯防止指導などの必要な指導を実施しておりまして、今後もこれらの各種処遇プログラムを通した指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 懲役刑まで科される場合って、ストーカー規制法というより、実際の傷害罪とか殺人罪とか、そういうことになる場合が多々あるということなんだろうというふうに思いますけれども、やはりそういう加害者に対する更生教育の効果とか再犯防止につながっているかというのは、是非、法務省と警察庁とやっぱり連携しながら、このストーカーの加害者に対する教育どうしていくのかという検討も私、求められていくんじゃないかというふうに思います。
 加害者が、これまでも指摘があったとおり、付きまとい行為を自らの意思でやめることができるかどうか、これが根本的な被害者の安全確保につながっていくわけですから、そうすると、既に指摘ありましたけど、警告や禁止命令を出すだけでなくて、その出した相手に更生プログラムにどうつなげていくのかということが求められているというふうに思います。
 これについても既にお答えがありましたので、ちょっと加えてなんですけど、ただそのときに、やっぱり警告するのは警察の側で、その警察があなたこういうプログラムを受けたらどうですかと言っても、加害者にとってみたら心理的には敵ですよね、ある意味。その敵から言われて、はい、そうですかとなかなかなりにくいと思うんですよ。
 そうすると、つなげるためには、もっとちょっと違う立場の方、自治体との協力等々がもっと求められていくんじゃないかというふうにも思うんですけど、その辺りいかがでしょうか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 ストーカー加害者の中には、先ほど来お話ありますように、被害者に対する執着心、支配意識などから、警告、検挙等されてもストーカー行為を繰り返す者がいるところでございます。
 警察におきましては、平成二十八年度から、警察が加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性について地域の精神科医等の助言を受けて加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しているところでございます。
 こういった取組を引き続き進めていく中で、加害者に対する精神医学的・心理学的アプローチに関しまして、さらに地域の精神科医療機関等、関係機関等との連携を図りながら、カウンセリングや治療の効果について把握して、加害者の付きまとい等の再発防止に資する効果的な方策について情報収集、検討を行ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 今の医療機関ということなんですけど、例えばギャンブル依存症でも、医療機関での保険診療というのはまだ本当に限定的なんですよ。それで、治療ではなくてカウンセリングというふうになると、費用は一時間で数千円から一万円など本当に重くなってしまうんですね。
 アエラの二〇一九年三月二十五日号の記事で、横浜市のNPO法人、女性・人権支援センター、ステップが、ストーカーやDV加害者への更生プログラムに取り組み、約八割に変化が見られたというふうに取材に答えておられるんです。これ、毎週一回で全五十二回にわたるプログラムなんですね。加害者への費用負担の支援というのは反感招きやすいところもあるんですけれども、しかし被害者を守るために必要な施策として検討が求められると思います。
 そして、今言ったとおり、警察だけが加害者に働きかけるのでは、なかなかカウンセリングや治療にも向かいにくいと思うんです。そうすると、民間団体、自治体といかに連携するかということも求められていると思います。その点で、国家公安委員長、お願いします。
○国務大臣(小此木八郎君) 平成二十八年度からですけれども、警察が加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要について地域精神科医等の助言を受け加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医、医療機関等との連携をまず進めていることはこれまでも申し上げたとおりであります。
 カウンセリングや治療を行うことで加害者によってはストーカー行為の再発防止に結び付いた例もある一方で、再発した例も見られ、どのような場合にどのようなアプローチを行うことが効果的であるのか、十分な科学的知見が得られているとは言い難く、平成二十六年度に実施した調査研究でも、面談を無料としたとしても受診に必ずしもつながるものではなく、個人の個別具体的な状況に即して、受診の動機付けとなるような様々な形での働きかけが必要であるとされているところであります。
 このような状況から、引き続き受診の働きかけの後の治療状況等の把握を行う必要があると考えられ、受診費用の一部の補助については慎重な検討が必要であると考えていますが、今後とも、ストーカー加害者に対して受診の働きかけを行うなど、地域の精神科医療機関等との連携を図りつつ、そのカウンセリングや治療の効果について把握し、加害者のストーカー行為の再発防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行うよう警察を指導してまいります。


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