国会会議録

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違法ボーガンを防げ /田村智子氏 流通で手だて要求
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(写真)質問する田村智子議員=15日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は15日の参院内閣委員会で、クロスボウ(ボーガン)の一般的な所持を禁止し、販売等に規制を設ける銃刀法改正案について質問しました。

 クロスボウを凶器とする重大事件は過去10年、毎年のように発生しています。田村氏は、銃刀法によるクロスボウ規制が2008年に国会で提起されたと指摘。「慎重な検討が過ぎたのではないか」と対応の遅れをただしました。小此木八郎国家公安委員長は「批判は甘んじて受けなければならない」としつつも、昨年、家族4人がクロスボウで殺傷された事件によって法改正をすることにしたと答弁しました。

 クロスボウの入手、販売の多くはインターネットを介して行われています。田村氏は、改正法施行前にクロスボウがフリーマーケットアプリ等に出品され、違法な所持につながる流通がおきかねないと指摘し、フリマアプリ等の業界の自主規制頼みとせず、違法品の流通を防ぐ手だてを講ずるよう求めました。

 小此木氏は「国民への広報のほか、フリマアプリ等の関係団体に、クロスボウが銃刀法の規制対象になったことを説明し、出品禁止に協力を働きかける」と述べるにとどまりました。



2021年4月30日(金)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 内閣委員会 第12号 令和3年4月15日】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 今回の銃刀法の改正でクロスボウを一般的な所持の禁止対象とすると、これはもう重大犯罪が起きていますので、私たちも当然のことだと考えます。
 その上でお聞きしたいのは、なぜ今国会までこうした改正の提案がなされなかったのかということです。既に皆さんからも指摘があったとおり、あの矢ガモ事件は一九九三年と。東京の石神井川で背中に矢が刺さった状態のオナガガモが発見され、連日ニュースで報道されたことは私も大変記憶をしているところです。当時の報道は動物愛護ということが焦点だったとは思います。しかし、警察としては、クロスボウの危険性、やっぱり認識をされていたのではないかというふうに私には思えるんですね。
 いただいた警察庁の資料で、二〇一〇年以降で三十二件の検挙件数ということでいただいたんですけど、じゃ、各年ごとで見てみると、二〇一〇年に傷害事件起きています、一件。一一年に殺人事件二件、強盗傷害一件。二〇一三年にも殺人、強盗致傷、脅迫、これ二件。二〇一五年には殺人未遂三件、脅迫、建造物損壊、それぞれ一件。これ、毎年のように、生命、身体を害する事件は発生していたわけですよね。
 昨年六月、宝塚市での本当に重大な事件で三人が亡くなられてしまったと。これで検討会の議論が行われたということなんですけれども、先ほどの質問の中で、それまでに検討されなかったのかという質問がなされて、していませんでしたという御答弁でしたので、私が聞きたいのは、何で検討がなかったのか、そこについても答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 警察におきましては、クロスボウを使用した犯罪の発生状況を踏まえつつ必要な対応を行うこととしておったところでございまして、そのクロスボウを使用した犯罪の発生状況について見ると、確認できる範囲で申し上げれば、平成十四年から平成十八年の五年間の刑法犯事件の検挙件数は六件となっており、その罪種は傷害や器物損壊等であったということでございます。
 これに対しまして、平成二十一年、いや、二十二年一月から令和二年六月までの間のクロスボウが使用された刑法犯事件の検挙件数は二十三件と多数の事件が発生しており、しかも殺人や殺人未遂等の故意に人の生命、身体を害する罪の事件が半数を超えていたところでございます。そして、令和二年に入って、同年六月に兵庫県宝塚市でクロスボウを使用して三人を死亡させ、一人に重傷を負わせる大変痛ましい事件が発生し、その後、同年七月、八月と殺人未遂事件が相次いで発生したところでございます。また、クロスボウの威力につきまして警察庁科学警察研究所において実験を行ったところ、銃刀法上規制されている空気銃等の威力に匹敵することが確認されたところでございます。
 先ほど、検討を行っておらなかったという趣旨のお話ございましたけれども、それは検討会という形の開催をしていなかったというものでございまして、私どもとしては発生状況を踏まえつつ必要な対応を行っていくこととしておったところでございます。そういった状況下にあったものですから、私ども、クロスボウが使用された凶悪事件が相次いで発生した状況を踏まえ、今回の法案を提出させていただいているところでございます。
○田村智子君 二〇〇八年には衆議院内閣委員会で泉健太議員が、クロスボウなどを凶器として幾つも事件が起きていると、報道を読むと、頭をぶち抜くなど非常に凶悪で凄惨な事件なんだということも紹介しながら質問されているんですよ。銃刀法での規制が必要ではないかという問題提起に、警察庁の答弁は、犯罪の発生状況などをよく踏まえた上で必要性を慎重に検討ということだったんですね。これ二〇〇八年ですから、国家公安委員長、慎重が過ぎたんじゃないかというふうに率直に指摘せざるを得ないんですけど、いかがですか。
○国務大臣(小此木八郎君) これ、批判があることは甘んじて受けなければならないと思いますけれども、やはり慎重というのは、一方では法律をしっかりと作る、まとめ上げるという中では必要なことだとも思います。
 一方で、何度も繰り返され、この委員会でも取り上げられましたけれども、昨年の非常に悲惨な心の痛くなる事件について、改めて政治がそこに思いを致して、今日御議論をいただいているということにつながっておると思います。
 なお注視をして、今日までいただいた様々な皆様方の御提案、御提言やら御意見も伺いましたので、そういったことも注視をして、取り組むことがあればしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。
○田村智子君 先ほど必要な対応もしてきたところだということなんですけど、有識者会議の報告書を読みましたら、矢ガモ事件を契機に、クロスボウを販売する業者などが安全普及協議会をつくり、その自主規制にまずは任せたと。しかし、協議会は活動していない、クロスボウの輸入、製造、販売の全体を統括する業界団体も存在していない、普及の自主規制は個別の事業者任せで危険である、こういうことが指摘されているんですね。どういう必要な対応をされてきたんだろうかなというふうな疑問にもなるわけですね。
 これ、もう今回規制するということですから、やはり命が奪われてからの規制だったということも踏まえて、やはり今後の対策ですよね、今度これで法改正やったら、やっぱり適切に、クロスボウを使われた事件が起きないようにという対策求めていきたいと思うんです。
 そのためにお聞きしますが、現在国内に流通しているクロスボウの数、法施行後所持を許可されると思われる数、これどれくらいになるのかは分かりますか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 国内におけるクロスボウの販売につきましては、主にインターネットを通じて行われているものと承知しております。
 現在クロスボウの販売に関して法律上の規制が特段設けられておらないことから、国内に流通しているクロスボウの正確な数量につきましては明らかではございませんが、関係団体によりますと、射撃競技のためにクロスボウを所持している者は約百名程度であり、競技以外で用いられるクロスボウにつきましては、年間千数百本販売している業者は一社認められますけれども、その他の業者につきましては年間数十本販売しているというふうなことでございました。
 なお、現在、国内においてクロスボウを製造している事業者は把握しておりませんで、国内で販売されているクロスボウのほとんどは海外から輸入されたものと見られ、これを国内の販売事業者が販売している状況を私どもとして把握している状況でございます。
○田村智子君 実態がよく分からないところで規制を掛けるわけですから、これなかなか大変だと思うんですね。
 法施行後、そうすると、違法な所持とならないように、どういうふうに呼びかけて、どうしてくれということになるんでしょうか。特に廃棄などはどういうふうにするんですか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 改正法につきましては、国民への十分な周知等に要する期間として、公布の日から起算して九か月を超えない範囲内で政令で定める日から施行することとしております。
 その上で、改正法の施行時に現にクロスボウを所持している者につきましては、施行日から六か月間は例外的に所持を認め、その間に所持許可を申請していただくか、適法に所持することができる方に譲り渡していただくか、廃棄するかの措置をとっていただくことにしております。
 これにつきましては、警察においては、改正法の公布後速やかに広く国民の皆様方にホームページ、SNS、ポスター等によりまして、今回の法改正によってクロスボウの所持が原則禁止され、許可制となること等を周知するとともに、現にクロスボウを所持している方に対しまして、業界団体等からも協力を得て、施行日から六か月以内に許可の申請や廃棄等の処分をするよう呼びかけることとしておりまして、円滑な施行に向け取り組んでまいりたいと考えております。
 なお、クロスボウの廃棄に当たりましては、警察に持ち込んでいただければ無償で廃棄を行うこととする予定でございまして、この点につきましてもしっかりと周知を図ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 先ほど来指摘があるとおり、クロスボウは国内で製造がされていないので、ネットで買った人がほとんどじゃないかと思われるんですよ。そうすると、やっぱり、皆さん指摘されたとおり、法施行前にネットで売っちゃうということが相当に考えられるわけですよね。
 やっぱりここは注意喚起やっていくんだということなんですけれども、やはり今から、今買っちゃったら違法な所持になることになりますよということがばんばんネットのところに出てくるとかいうようなことも含めて求められてくるというふうに思うんですけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 改正法を円滑に施行し、現在流通しているクロスボウを含め不正な流通を防止するためには、改正法の施行前から国民一般の方々や関係方面からの御理解と御協力をいただくことが必要であると認識しております。このため、警察におきましては、改正法の公布後早い段階から国民一般に対する広報、その際には、経過措置、施行後の経過措置期間経過後は不法所持に該当することも含め、しっかりとこの改正法の内容についての周知を図るとともに、また、クロスボウの廃棄に当たっては警察に持ち込んでいただければ無償で廃棄を行うことの周知を図りたいと考えております。
 また、個人間取引に利用されることが想定されますフリマといったアプリ等の関係団体に対しましては、クロスボウが銃刀法上の規制対象となったことを説明の上、出品の禁止についての協力を働きかける、こういったことなどを通じましてインターネット上での違法な個人間売買の防止に努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 これは、出品者に対しても、警察などに持ってきてくださいという呼びかけが必要だと思うんですよね、安全に廃棄するから。だから、粗大ごみでぽんと捨てられて、何か中身が見えるような捨てられ方で、あっと興味持って拾われちゃったりとかということも私はとても怖いと思うんですよ。持っていたら駄目だと言われたら簡単に捨てる。だから、警察などに持ってきてください、安全な廃棄が必要ですということも含めての注意喚起を是非やっていただきたいというふうに思います。
 国家公安委員長にお聞きしたいのは、実は、こういう個人が所有するものを買うということを営業として行うことは古物営業法の規制の対象なんですよね。警察にその業の届出をして、営業許可を必要とします。
 しかし、ネットでこの個人が買い取るそのサイトを運営する、これもある意味営業だと私は思うんですけれども、個人売買の営業のようなものだと思うんですけれども、これはもう古物営業法の対象外になっていて、前回、古物営業法の審議をしたときにも、改正の審議をしたときにも、果たしてこのメルカリのようなものが全くその、実際は古物の売買なのに何の規制もなく行われていていいんだろうかと、それは違法物の売買とか盗難品の売買に使われることにはならないかということが議論になったんですね。
 やはり、今回このクロスボウのこともあって、改めて問題提起をしたいと思います。古物営業法の改正でネットの売買をどうするのかということも是非検討の必要があると思いますけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) 銃刀法において、不正な売買を防止するため、インターネットによる取引を含め、個人間の売買の際に相手方から所持許可証の提示を受けてからでなければ譲り渡してはならない規制を設けております。
 昨今、個人間における売買ではフリーマーケットアプリ等が利用されることが多いと承知しておりますが、警察では、違法な流通を防ぐため、改正法の公布後早い段階から、国民一般に対する広報活動のほか、フリーマーケットアプリ等の関係団体に対し、クロスボウが銃刀法上の規制対象となったことを説明の上、出品の禁止について協力を働きかけることとしております。
 また、今後、クロスボウの所持者が古物営業者に対し買取りを求めることも想定されるところ、古物営業者に対してもクロスボウが銃刀法上の規制対象となったことを踏まえた適切な対応をするよう働きかけ、これを行ってまいりたいと思います。
 このような関係方面とも協力した対策のほか、サイバーパトロール等を通じ、インターネット上での違法な取引が行われているか、その状況把握を行うなどしてインターネット上で違法な個人間売買の防止に努めてまいります。

○田村智子君 古物営業法とネットの関係というのも是非今後検討していっていただきたいというふうに思います。


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