国会会議録

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子ども子育て支援法・児童手当法改定案 /田村議員の質問要旨/ 参院本会議

 日本共産党の田村智子議員が12日の参院本会議で行った子ども子育て支援法・児童手当法改定案についての質問の要旨は次の通りです。


 法案は、待機児童解消のため、今後4年間で14万人分の保育の「受け皿」を整備する財源確保のためだとされています。

 多くの保護者が望むのは、安心して預けられる「保育所」です。安倍政権のもとで7万人の「受け皿」として企業主導型保育が増えましたが、保育の責任を放棄した事業者が大問題にもなりました。

 「受け皿」という言葉は、保育の質を脇に置いた待機児童対策を象徴しています。「待機児童ゼロ」を掲げた小泉政権以来、定員超過、園庭のない保育所、株式会社参入を促す規制緩和が行われてきました。こうした「詰め込み」保育は、新型コロナ感染症のもとで深刻な矛盾をもたらし、保育現場からは「密を避けられる状況にない」と苦悩する声が寄せられています。

 2歳児以降の子ども1人当たり「たたみ1畳分」が保育室面積の最低基準です。感染症対策を考慮した基準に改善すべきではありませんか。待機児童対策は保育の量とともに質の向上をめざすべきです。

 「新子育て安心プラン」では、保育士確保策として、短時間保育士の活用が打ち出されました。保育士は常勤を充てるとしてきたのは保育の質を担保するためではありませんか。今回の規制緩和を図る通知でも「子どもを長時間にわたって保育できる常勤の保育士をもって確保することが原則であり、望ましい」と述べています。

 規制緩和は臨時的と言いますが、常勤保育士を確保できず、自治体が認めれば、待機児童がいる間は、延々と容認されるのではありませんか。

 常勤から置き換えても、公定価格は減額されないため、事業者に短時間保育士の活用を促すことも懸念されます。短時間勤務を保育士配置に持ち込めば、処遇改善に逆行し、保育士不足を加速させるのではありませんか。

 児童手当法改定法案では、政府試算で61万人の子どもに対して児童手当がゼロになります。日本は子どもに対する現金給付も現物給付も水準が低すぎます。児童手当は、全ての子どもを対象とした現金給付の唯一の制度であり、求められるのはその拡充です。

 高校授業料無償化に所得制限が持ち込まれようとしていた2013年、子どもの貧困対策を求める集会で、定時制の高校生が「学ぶことを権利としてほしい。高校に授業料という言葉も、教科書代という言葉もなくなることを希望します」と表明しました。この声に応える決意です。



2021年5月13日(木)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 本会議 第21号 令和3年5月12日】

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 本法案は、待機児童解消のため、今後四年間で十四万人分の保育の受皿を整備する、その財源確保のための改定だとされています。
 これまで私は待機児童問題を何度も国会で質問してきましたが、政府の説明にはいつも違和感を持ってきました。なぜ待機児童対策として受皿という言葉を使い続けるのでしょうか。
 東京都の保育ニーズ調査では、保護者が希望したサービスは、複数回答で、公立認可保育所が五割を超え、次いで私立認可保育所が約四割、幼稚園三割、その他施設やサービスは一割台以下です。多くの保護者が望んでいるのは、子供を安心して預けることのできる保育所であることは明らかです。安倍政権の下で七万人の受皿として企業主導型保育が急速に増えましたが、不正に補助金を受けた上、保育の責任を放棄した事業者が大問題にもなりました。
 もう受皿という言い方をやめて、保育所等整備と言うべきではないでしょうか。なぜ受皿と言い続けるのか、その理由と併せて厚労大臣の答弁を求めます。
 受皿という言葉は、保育の質を脇に置いた待機児童対策を象徴しています。初めて待機児童ゼロを掲げた小泉政権以来、定員超過、園庭のない保育所、株式会社参入を促すための基準緩和など、規制緩和が次々と行われてきました。こうした詰め込み保育は、新型コロナ感染症の下で深刻な矛盾を保育現場にもたらしています。
 これまでも、お昼寝では頭がくっつき合うほど狭い、そういう保育室でいいのかが問われてきましたが、新型コロナの下では子供の命と安全を守る基準と言えるのか、真剣な見直しが求められています。保育現場では、お昼寝のたびに保育室のテーブルや椅子を別の場所に移動させるなどの努力が続いていますが、密を避けられる状況にない、感染症対策でますます保育にゆとりが失われていくと苦悩する声が多々寄せられています。
 二歳児以降の活発に動き回る子供に対して、一人当たり一・九八平米、つまりは畳一畳分、これが保育室面積の最低基準です。一九四八年に定められてから一度も改善されていません。感染症対策を考慮した最低基準の見直し、とりわけ面積基準の改善は早急に行うべきではありませんか。厚労大臣、お答えください。
 また、待機児童対策は、保育の量とともに保育の質の向上を目指すことを政府としても明らかにすべきと考えますが、厚労大臣の認識をお聞きします。
 菅政権の下で作成された新子育て安心プランでは、保育士の確保策として短時間保育士の活用が打ち出されました。
 まず、確認します。従来、最低基準上必要とされる保育士について、常勤を充てるとしてきたのはなぜですか。保育の質を担保するためではありませんか。
 今回の規制緩和を図る通知でも、保育の基本は乳幼児が健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境の中で健全な心身の発達を図ること、保育所等の利用児童数が年々増加する中で従来にも増して保育士の関わりは重要、保護者との連携を十分に図るためにも、子供を長時間にわたって保育できる常勤の保育士をもって確保することが原則であり望ましいと述べています。子供の成長発達、保護者との信頼関係築く上で、保育士が入れ替わり立ち替わり働くことは本来望ましくないということではありませんか。
 ところが、この規制緩和によって、例えば、ある保育所で常勤保育士を確保することができず、やむを得ないと自治体が認めれば、全て短時間保育士とすることができるのではありませんか。政府は、臨時的、特例的な取扱いとしていますが、事業者に期限を区切って解消を求めることになっていますか。また、この特例には期限があるのでしょうか。待機児童がいる間は、延々と規制緩和が容認されるのではありませんか。
 常勤保育士を短時間保育士に置き換えても、公定価格は減額されません。これまでも、人件費割合が異様に低い保育所があることは国会で問題にされてきました。月給で働く常勤から時給の保育士に置き換えた方が人件費が安くなることは明らかで、事業者に短時間保育士の活用を促すインセンティブになることも懸念されます。そうならないという歯止めはどこにあるのでしょうか。
 そもそも、保育士不足は、その責任の重さに比べて保育士の処遇が低過ぎることが大きな要因ではありませんか。三月の予算委員会でも指摘しましたが、保育は女性が多く働く職種であり、家庭での子守の延長のように扱ってきた、そうした歴史的、構造的な問題にも切り込んで処遇改善が求められているのです。専門職にふさわしい処遇、経験が評価される処遇とすることこそ必要です。短時間勤務を基本的な保育士配置の中に持ち込むことは、こうした処遇改善に逆行し、逆に保育士不足を加速することにもなるのではありませんか。
 以上、厚労大臣の答弁を求めます。
 次に、児童手当法の一部改正法案について、坂本少子化対策担当大臣に質問します。
 本法案では、待機児童対策の財源確保を理由に、児童手当の特例給付に所得制限を設けることとしています。政府の試算では六十一万人の子供に対して児童手当がゼロになるのです。子供のための予算を削って待機児童対策に充てるというのは、子育て支援策として矛盾しているのではありませんか。子供に対する予算の財源は、社会全体の応能負担によって確保すべきではありませんか。
 また、そもそも日本は、子供に対する現金給付も現物給付も、子育て支援策の予算規模も、欧州などと比べて水準が低過ぎる、経済的負担への支援の弱さが、日本の少子化が改善されない大きな要因の一つだという認識はありますか。
 児童手当は、全ての子供を対象とした現金給付として唯一の制度であり、求められるのはその拡充です。現行制度は、三歳児までが月一万五千円、それ以降は一万円、そして中学卒業で打切りです。子供の年齢に伴う費用負担を見れば、子育ての経済的負担の実態にかみ合っていないとの指摘もあります。なぜ三歳を超えると減額なのか、なぜ中学生までで打ち切られるのか、少子化対策として抜本的な拡充の検討は行わないのか、坂本大臣の答弁を求めます。
 民主党政権で、子ども手当、高校授業料無償化を所得制限なく実施したことは、子供に関する施策の在り方を前進させるものだったと私は受け止めています。安倍政権によってこれらの制度が目の敵にされたことはとても残念です。また、幼児教育無償化、高等教育の低所得世帯への無償化が逆進性の強い消費税増税を財源とされたことも、子供支援策に分断を持ち込むものであったと思います。
 高校授業料無償化に所得制限が持ち込まれようとしていた二〇一三年五月、子供の貧困対策を求める集会で、定時制に働きながら通う高校生が次のような意見を表明しました。
 ほかの高校生の負担で、僕たちの授業料が無料になるというのはおかしい、学ぶことを権利としてほしい、高校に授業料という言葉も教科書代という言葉もなくなることを希望します。
 子供の基本的な権利を保障する施策は、平等に全ての子供を対象として行われるべきだと高校生が私たちに呼びかけたのです。この声に応える政治への決意を述べ、質問を終わります。

○国務大臣(坂本哲志君) 田村智子議員の御質問にお答えいたします。  児童手当の予算の削減と子供のための予算の確保についてお尋ねがありました。  子育て世帯に対する支援としては、これまでも幼児教育、保育の無償化などを行っており、さらに今般、不妊治療助成の拡充や、新子育て安心プランの実施による待機児童の解消などを行い、子育て世帯全体への支援を充実させてまいります。  このうち、待機児童問題については、四年間で十四万人分の保育の受皿を整備することとしました。  この運営に毎年度必要となる追加費用については、社会全体で子育てを支援していくとの大きな方向性の中で、今般の児童手当の見直しにより生じる財源等に加え、企業からも一千億円を追加拠出していただき、所要額を確保しています。  児童手当の特例給付の見直しについては、このような総合的な少子化対策を進める中で、長年の課題である待機児童問題の最終的な解決を図るものであり、全体のバランスを考えた上での措置であるということを御理解いただきたいと考えています。  子育て支援のための財政支出についてお尋ねがありました。  国によって国民負担率などが異なることから、単純に比較することは適当ではありませんが、我が国の家族関係社会支出の対GDP比は、欧州諸国と比べて低水準となっていると指摘されています。総合的な少子化対策を大胆に進めていくためには、必要な安定財源を確保しつつ、効果的な少子化対策に、できることから速やかに着手することが重要だと考えています。  政府では、これまでも幼児教育、保育の無償化、高等教育の修学支援など、子育て世帯全体の支援を充実させてきたところです。  さらに、今般、不妊治療助成の拡充を含む妊娠、出産への支援、待機児童の解消のための新子育て安心プランの実施や、男性育児休業の取得促進など、男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備など、ライフステージに応じた支援策を全体として充実させることとしています。  引き続き、少子化社会対策大綱等に基づき、必要な安定財源を確保しつつ、少子化対策を全体として確実に進めてまいります。  児童手当の支給額や支給対象児童と、拡充の検討についてお尋ねがありました。  児童手当は、昭和四十七年の制度創設から、支給対象児童や支給額を累次改正し、現在の制度となっています。  平成十九年度には、小学校修了までの第一子及び第二子について月額五千円であったところ、ゼロ歳から二歳について一万円に支給額が拡充されました。また、平成二十四年度には、支給対象児童が中学校修了までとされました。  本法案においては、附則に検討規定を設け、子供の数等に応じた児童手当の効果的な支給及びその財源の在り方や支給要件の在り方について検討することとしているところであります。

○国務大臣(田村憲久君) 田村智子議員にお答えいたします。  受皿という言葉についてお尋ねがありました。  待機児童対策において、保育所等の設備、施設整備だけではなく、幼稚園の預かり保育や居宅訪問型保育事業など様々な保育の提供について受皿という文言を使用いたしております。  いずれにいたしましても、保育の量的拡充と質の確保を両輪として進めてまいります。  感染症対策を考慮した面積基準の見直しについてお尋ねがありました。  感染症対策は施設の面積のみによるものではなく、今般の新型コロナウイルスの感染が拡大する中においても、各保育所では、消毒や換気など、必要な対策を行っていただいております。  面積基準を単に引き上げることについては、これまで保育所を利用していた方が利用できなくなるおそれもあり、現時点ではその予定はございません。  保育の量と質の確保についてお尋ねがありました。  待機児童の解消に当たっては、保育の量的拡充と質の確保を両輪として進めていくこととしており、今国会の厚生労働委員会における私の所信表明においても、待機児童解消について、昨年末に定めた新子育て安心プランに基づき、保育の受皿確保に取り組むとともに、保育の質の確保、向上も図ってまいりますと述べたところであります。  保育所に常勤の保育士を充てることとしてきた理由についてお尋ねがありました。  子供の健全な心身の発達を図るためには、保育士の関わりが重要であり、また、保護者との連携を十分に図るためにも、子供を長時間にわたって保育できる常勤の保育士を確保することが原則であり、望ましいと考えております。  三月十九日付けで自治体にお示しした短時間勤務の保育士の取扱いに関する通知においても、こうした考え方に変わりはない旨お示しをいたしております。  短時間勤務の保育士の活用に関する取扱いについてお尋ねがありました。  具体的な取扱いとしては、常勤保育士が確保できないことにより待機児童が発生しており、市町村がやむを得ないと認める場合に限り、不足する常勤保育士の限りにおいて、短時間勤務の保育士を充てても差し支えないこと、その際、常勤保育士の募集を適切に実施しているかを確認すること、常勤保育士の確保が可能となった場合には、本取扱いについて早期に解消を図ることとしております。  各自治体においては、こうした要件を確認した上で、適切に運用いただきたいと考えております。  短時間勤務の保育士の活用に関する歯止めについてお尋ねがありました。  短時間勤務の保育士を活用する際には、同一労働同一賃金の観点から、同じくグループ担任を務める常勤の保育士の待遇との間に差を設けないなど、短時間勤務と常勤との間で不合理な待遇差を設けないこと、自治体による指導監査において、短時間勤務の保育士に対する処遇の適正性を確認することなどの留意点をお示しをいたしております。  保育士不足の要因などについてお尋ねがありました。  保育人材の確保に当たっては、処遇改善や業務負担の軽減など、様々な取組を総合的に行っていく必要があると考えております。  一方、短時間保育士の取扱いについては、保育士不足で待機児童が発生しているやむを得ない場合の措置であるとともに、保育士が再就業する場合の希望条件として、勤務時間や雇用形態を挙げられている状況を踏まえたものであります。  保育人材の確保と制度の適切な運用に引き続き取り組んでまいります。


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