日本共産党の田村智子議員は13日の参院内閣委員会で、「新子育て安心プラン」で打ち出す短時間保育士の活用に関し、常勤保育士から短時間保育士への置き換えに歯止めがなく、常勤保育士の確保に逆行すると批判しました。
田村氏は、従来は保育の質担保のため最低基準上必要な数の保育士は常勤を求めていたと指摘。短時間保育士活用の条件である常勤保育士の募集さえすれば「全員を短時間保育士にできるのか」と質問しました。厚生労働省の大坪寛子大臣審議官は「自治体が総合的な状況を判断する」と答弁。田村氏は「十分に指導できない自治体もあり、危険だ」と批判しました。
田村氏が、常勤保育士確保の努力をせずに短時間保育士を活用した場合に自治体は是正命令できるのかと問うと、大坪審議官は「是正対象にならない」と答弁。田村氏は、歯止めのない今回の規制緩和は常勤保育士の負担増や雇用の不安定化をもたらし、「保育士不足に拍車をかける」と批判しました。
田村氏は、子ども・子育て支援法、児童手当法の改定案で、児童手当制度の「特例給付」に所得制限を設けて223億円を削減する一方、少子化によって児童手当の国庫負担は約237億円減少したと指摘。自然減分を少子化対策にあてれば、特例給付の一部廃止は必要ないと強調しました。
2021年5月20日(木)しんぶん赤旗
【第204回国会 参議院 内閣委員会 第18号 令和3年5月13日】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
菅政権は、新子育て安心プランによって、二〇二一年度から二〇二四年度までの四年間で十四万人分の保育の受皿を確保するとして、その財源確保のために本法案が提出されました。本会議でも指摘したんですけど、本当にいいかげん受皿という言い方はやめてほしいですね。
そもそも、認可保育所への入所を申請しても認められなかった子供さんが待機児童なんですよ。ほかのサービスを利用したいという方は、別に待機児童に最初から入らないわけですよ。だったら、その待機児童は受皿じゃなくて保育所をつくっていくということを基本に据えなきゃいけないのに、受皿、受皿と言い続けることで、あたかも代替措置でもいいと言わんばかりなんです。言葉というのは政策の本質を表します。これ真剣に考え直していただきたいということをまず冒頭申し上げておきたいと思います。
それで、この待機児童対策として必要となる予算の増額分は四年間で一千四百四十億円だとされています。そのうち、事業主拠出金で一千億円、児童手当の特例給付削減によって四百四十億円を確保するというんですね。
初年度で見ると、総額で五百二十九億円、うち税財源として二百二十三億円ということですので、この二百二十三億円というのが今年度の特例給付の削減分という理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
今般、待機児童問題につきましては、四年間で十四万人分の保育の受皿を整備することで最終的な解決を図ることとしておりますが、この運営に毎年度必要となる追加費用約一千四百億円につきましては、社会全体で子育てを支援していくとの大きな方向性の中で、企業から一千億円を追加拠出でいただくとともに、四百四十億円につきましては今般の児童手当の見直しにより生じた財源等を活用して所要額を確保していくとしております。
なお、児童手当の見直しは令和四年十月支給分から実施するものでございますので、令和三年度の追加費用の財源とするものではございません。
では、令和四年度からの、令和三年度の財源は何かということでございますが、その間は、令和四年度からの不妊治療の保険適用の財源として充当予定の消費税増税分を一年限りで一時的に活用するということを想定しているところでございます。
○田村智子君 だから、すぐに充てる分でもないということですよね。特例給付を削減しても、すぐに充てる分でもないんですよ。そうすると、何の説明をされているのかなと私たち分からなくなりますね。だって、待機児童対策のために使うお金というのは今年度から増やします、そのための特例給付の削減です、だけどすぐに充てる分ではありません。
じゃ、児童手当の国庫負担、これそのものの額で見てみたいんですけど、昨年度の予算額と今年度の予算額、これ、それぞれ幾らになりますか。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
児童手当の国庫負担における予算額は、事業主負担分を除きまして、令和二年度予算額が約一兆一千四百九十六億円、それから令和三年度予算額が約一兆一千二百五十九億円となっております。
○田村智子君 これ、差額が四百億ぐらいになるんでしょうか、三百数十億から四百億円ぐらいになるでしょうか。
○政府参考人(嶋田裕光君) 今申しました数字引き算いたしますと、二百三十七億円というふうな計算になります。
○田村智子君 この二百三十七億円の減額というのは、児童数が減っていることで結局支給がされない、だから、支給する子供の数が減る、少子化による自然減ということになるわけですよね。
それで、今後も同じぐらいで恐らくしばらくの間は減っていくということも見込まれるんじゃないかと思うんです。そうすると、特例給付を六十一万人の子供に対して支給しない、そのことで児童手当の予算減らしていく、これ、ほぼ同じぐらいの規模になるんじゃないんですか。少子化で結局児童手当の総額が減っていくその額と特例給付で減っていく額というのはほぼ同じぐらいになるんじゃないでしょうか。これ分かります。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
児童手当は児童数に応じて支給するものでございますので、基本的には、先生がおっしゃったように、児童数、児童が減少した場合には給付額の総額は減少することとなります。
今般の特例給付の見直しにつきましては令和四年十月の支給分からの対象となるということでございますので、議員の御指摘のとおり、令和四年度の給付額の総額について見直しの影響というのは出てくる、こうした制度的な見直しのほか、あと、児童数が減少した場合には自然減の影響を受けるということになります。ただ、それがどのぐらいの数になるかについてはちょっとまだ精査しておりません。
○田村智子君 これ、うちの事務所の方で試算するとほぼ同じぐらいじゃないかなというふうにも思われるんですけれども、これ、事務費なども含めた児童手当の国庫負担は、二〇一五年度比では九百十五億円ももう減っているんですよ、今年度ね。給付総額では一千三百七十億円も減っているわけですよ。
そうすると、この少子化による自然減の予算というのを予算として減らさずに子供の分として取っておけば、これ待機児童の解消のために充てていけば、こんな、児童手当を六十一、二万人分に支給しませんなんということをやらなくとも財源確保できるんじゃないかというふうに思うんですけれど、どうしてそういう考え方、そういう予算編成をされないんでしょうかね。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
高齢化が進む中で社会保障関係費全体の増加は進んでいるところでございます。そうした中で、新子育て安全プランに基づく保育所等の運営費につきましては毎年度必要となる予算でございまして、そのための安定財源については恒久的財源である制度改正に基づいて確保する必要があるというふうに認識しております。
また、今般の特例給付の見直しについては少子化社会対策大綱等を踏まえて検討をしてきたものでございますので、あわせて、結果的に生じる財源について新プランの財源に充てることとしたものでございます。
○田村智子君 こういうふうに聞くと、今度は高齢化で予算の確保が必要だという言い訳をする。だけど、少子化は国難だ、少子化の対策のためにお金が必要だ、それで、子供のためのお金はその少子化で減っていくのに、それをただただ減らしちゃうのかということで、ちょっとこれ、大臣にもこの考え方やっぱりしっかりさせなきゃいけないと思うんですよ。
先ほど来指摘あるとおり、児童手当の予算額というのは二〇一一年の民主党政権時が最も多いんですね。子ども手当から現在の制度になったのが二〇一二年度、所管が厚生労働省から内閣府に移ったのは二〇一五年度、この二〇一二年度以降、給付額も国庫負担額とも一貫して減っているんですよ。
子供に対する現金給付、予算総額が欧州などと比べて水準低いんじゃないですかという、私、本会議で昨日聞きましたら、潔く坂本大臣、そうだというふうにお認めになられました。
ならば、子供が減りました、児童手当の必要額も減りました、だからどうぞお返しします、政府全体で使いましょうと、この考え方自体を私変える必要あると思いますよ。こんなことをしていたら、残念ながら少子化傾向というのはすぐに歯止めが掛からないんですから、そうすると子供関係の予算は、一方ではまず子供の人数が減るから減りますよということが大前提になっちゃうんですよ。その上で、少子化対策でどこかから財源持ってきましょう、で、今度みたいに子供の分を別から取ってきて付け替えるなんてばかな話になっちゃうんですよ。
少子化だから減ると、自然減だから減ると、それで予算枠ごと預けちゃってどうするんですかなんですよ。それは少子化対策に充てずしてどうするかというふうに私は思いますが、いかがですか。
○国務大臣(坂本哲志君) 家族関係支出につきましては、国によって国民負担率などが異なることから単純に比較することは適当ではありませんが、我が国の家族関係社会支出の対GDP比は欧州諸国と比べて低水準となっていると指摘されていることは昨日も御答弁したとおりでございます。
総合的な少子化対策を大胆に進めていくためには、必要な安定財源を確保しつつ、効果的な少子化対策にできることから速やかに着手するということが重要であると考えております。
政府では、これまでも、幼児教育、保育の無償化、高等教育の修学支援など、子育て世帯全体の支援を充実をさせてきたところでございます。さらに、今般、不妊治療助成の拡充を含む妊娠、出産への支援、待機児童解消のための新子育て安心プランの実施、そして男性の育児休業の取得促進など男女共に仕事と子育てを両立できる環境整備など、ライフステージに応じた支援策を全体として充実させることとしております。
引き続き、少子化社会対策大綱に基づきまして、必要な安定財源を確保しつつ少子化対策を全体として確実に進めてまいります。
○田村智子君 いや、私の質問にお答えになっていないんですよ。
安定財源の確保はいいですよ。それはそれで努力しましょうよ。だけど、子供の数が現に減ることによる予算減をそのまま認めちゃうのかということなんですよ。そんなことやっていたら、まず減ることが前提で、それからまた安定財源という話になるじゃないですか。
元々この児童手当である予算枠は子供が減ったとしても別のところで子供のために使いますよという大きな考え方貫かなかったら少子化対策にならないんじゃないですかと聞いているんですよ。
○国務大臣(坂本哲志君) これは言い訳ではなくて、先ほど事務方から説明したとおりでございますけれども、高齢化が進む中で社会保障関係費全体の増加が進んでおりまして、そうした中で、御指摘の児童手当あるいは新子育て安心プラン、こういったものに基づきまして、少子化社会対策大綱に沿いながら政策を進めてまいりたいというふうに思っております。
これまでも、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化、高等教育の修学支援を実施するなど、子育て世帯全体の支援を拡充してきておりまして、我が国の家族関係社会支出の対GDP比は、平成二十五年の一・一四%から平成三十年には一・六五まで着実に上昇してきているところでございます。
ですから、効果的な予算というものを、しっかりと安定的な財源を確保しながらこれからも少子化対策を進めてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 やっぱり少子化による自然減をそのまま予算減にしないという方針持った方がいいですよ。高齢化に対してどうするかって確かに問われますけれども、そこで子供の数が増えていかなかったらまさに社会全体の危機に陥っちゃうわけでしょう、だから国難なわけでしょう。それは本当に真面目に考えていただきたい。
それで、この現金給付で、本会議でも指摘しましたけれども、児童手当というのは、全ての子供に対して与えられる現金給付の制度、ただ一つ、これしかないんですよ。私は、もちろん、一人親の家庭が非常に経済的に困窮していて、児童扶養手当の拡充ということも必要だと思います。特に、二人目、三人目というのが一人分じゃなくて加算という扱いになっていて、これは非常に重い負担になっているというお声聞いていますので、いらっしゃっているので三原副大臣にも是非今後検討してほしいと思うんですけど、通告していないから要望だけにしますけれども。
ただ、子供の貧困問題で私たち議員連盟などでもこの間議論してきたのは、数でいえば圧倒的に二人親家庭の子供の貧困なんですよ。それは世帯数が違い過ぎるから、世帯数は一人親世帯よりも圧倒的に二人親世帯の方が多いですから。そうすると、二人親世帯での子供の貧困の問題を解決しなければ日本全体の子供の貧困問題の解決にならないんですよ。そうすると、二人親世帯であっても、現金給付制度って何ですか、児童手当しかないんですよ。ここをどう拡充させていくかなんですね。
残念ながら、この十年間、単価は変わっていない、先ほど言ったとおり、給付総額は民主党政権の時代から下がり続けていると。だけど一方で、子育てに係る費用というのは、水光熱費も食料品もそれから学習費も、学費も負担は重くなる一方なんですよ。
ここをどうしていくかということを考えたときに、やっぱり、所得制限とかという狭い何かちっちゃな話じゃなくて、もっと児童手当という、全ての子供に対して一人親、二人親家庭も含めて支給されるこの児童手当をどうしていくのかというこの議論をやらなかったら少子化対策にはならないと思うんです。そこはいかがですか。
○国務大臣(坂本哲志君) 今回は、総合的な少子化対策を進める中、全体のバランスを考えた上で児童手当の特例給付を見直すこととしたものであり、心苦しいところではありますが、見直しについて御理解いただきたいというふうに考えております。
今後とも、政府といたしまして強い思いを持って取り組んでいる少子化対策の内容を国民の皆様に御理解いただけるよう、丁寧に説明してまいります。
○田村智子君 御理解し難いですね。本気で考えていただきたい。
それで、次に、短時間保育の問題、私も質問いたします。これ、本会議でも質問したんですけれどもまともにお答えがなかったのでね、ほぼ質問がかぶるんですけれども、是非よろしくお願いします。
従来、保育の質の確保のために最低基準上必要な数の保育士は全て常勤であるということが求められたわけです。それで、本会議でも聞いたんですけれども、先ほども矢田さんもお聞きになっていたんですけれども、これ、保育士を常勤で確保できないと、やむを得ないと自治体も認めたと。そうすると、ある保育所で全員短時間保育士で回していくと、これも容認されてしまうのではないんですかと、それはやっては駄目だという歯止めになるような要件や前提は何か付けているんですか、お答えください。
○政府参考人(大坪寛子君) お答え申し上げます。
先生よく御存じのとおりですが、短時間のこの勤務の保育士の取扱いにつきましては、最低基準の保育士の基準というものは何らいじっておりませんで、その中で、常勤の保育士が確保できないことにより、空き定員があるにもかかわらずお子様を受け入れることができなくて待機児童が発生していると、市町村がやむを得ないと認める場合に限るというふうにしております。
あくまでも、これは常勤保育士確保までの暫定的な対応であります。不足する常勤の保育士の数の限りにおきまして保育資格を有している二名の短時間保育士を充てても差し支えないという考え方をお示ししたものでございまして、歯止めを掛ける要件といいますか留意すべき事項といたしましては、まず、適切に常勤の保育士を募集をしているかどうか、こういった常勤の保育士を確保するための取組、努力、こういったことを行っているかどうかを確認をすること。
こういったものにつきましては、児童福祉法に基づいて実施をしております年一回ございます指導監査、この中で常勤の保育士を確保するための取組の状況などについても確認をすることとしております。
自治体におきましては、このような留意事項に基づいて適切な運用が図られますように努めていただきたいというふうに考えております。
○田村智子君 そうすると、募集さえしていれば全員短時間保育士でもいいということになるわけですか。
○政府参考人(大坪寛子君) お答え申し上げます。
まずは、そこで待機児童が確実に発生をしていること、それから、空きがあるにもかかわらず、繰り返しではございますが、その保育士の方がいらっしゃらないということをもってお子様を預かれない、この総合的な状況を判断をいただくということかと思っております。
○田村智子君 これ非常に危険ですね。
今自治体は、ちゃんと指導できるような状況にないところもあるんですよ、待機児童をやっぱり減らしたいというのが先に行くのでね。だから、規制の緩和の方へ緩和の方へ自治体の方から要求して進めちゃっている大阪のようなところもあるわけですよ。認可を無認可にしてもいいような規制緩和までやっちゃっているわけですから。
これ本当に、じゃ、それでは、これが臨時的、特例的な対応だと。これ、待機児童が一人でもその自治体の中で確認されれば特例の対象ということになるんですか。
○政府参考人(大坪寛子君) お答え申し上げます。
先ほど来申し上げていること、繰り返しで大変恐縮です。今回の短時間勤務の保育士の取扱いにつきましては、常勤保育士の方が確保ができない、こういった状況があり、お子様が受け入れられないことによって待機児童が発生していると。空きスペースはあるんですが保育士の方がいらっしゃらないということでお子様を預かれないという状況を市町村がやむを得ないというふうに判断をした場合に限っております。
あくまでも、その常勤保育士確保までの暫定措置ということで差し支えないという技術的な助言を示しているものでございます。(発言する者あり)結論としましては、そういうこともあり得るということになります。
○田村智子君 あり得るんですよ。
それで、これね、期限を切って常勤保育士確保を求めること、せめてそれぐらいのことやるべきだというふうに思うんですよね。いつまでも短時間でいいというわけにいかないと思うんですよ。
結果的に常勤保育士を必要な確保ができないと、で、是正命令、場合によっては認可の取消し、こういう対象になるということはありますか。努力がなかなか認められない、必要な確保をやっていない、そしたら是正命令、それでも従わない、認可の取消し、対象になりますか。
○政府参考人(大坪寛子君) お答え申し上げます。
こちらは、最低基準のその保育士の定数、常勤の保育士をもって確保することが原則であって望ましいという、そもそもの最低基準の省令に基づく規定は何ら変えているものではございませんで、その中で、地方自治法に基づく技術的な助言としてお示ししているものになります。
したがいまして、これをもって直ちに是正命令、また認可の取消しといった対象になるものではございませんけれど、自治体には様々留意事項もお示ししているところでございますので、そういったところを丁寧に自治体には説明をしてまいりまして、早期の解消に努めていただく努力は引き続き続けていただきたいというふうに思っております。
○田村智子君 これ、本当にちょっと危険だと思うんですね。
今回の規制緩和を図る通知では、保育の基本は、乳幼児が健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境の中で健全な心身の発達を図ることと。で、利用児童数が年々増加する中で従来にも増して保育士の関わりは重要と、保護者との連携、あるいは子供を長時間にわたって保育できる、これは常勤の保育士をもって確保することが原則であり望ましいと。そう書きながら、ここまで何の歯止めもなく、どうぞ短時間保育士を雇ってくださいというような規制緩和になりかねないですよね。
これ、先ほどもあったんですけど、元々その保育士さんが短期間で辞めてしまうような事態というのがなぜ起こるかといえば、非常にその責任と比しての処遇の悪さ、あるいは、確かに十一時間開所が求められていて、人の手当てがそうなっていないですからね、お金の出し方が。そうすると、長時間保育になるし、しかも、政府の側がカウントするその勤務時間というのは子供と接している時間だけの公定価格なんで、保護者とのやり取りが、その後、保護者会が必要だとか、打合せが必要だとか、様々な準備の時間とか、こういうのは公定価格にさえ含まれていないわけですよ。
こういう問題がいろいろあって、なかなか働きがい、やりがいが見出せないような状況で保育士さんが辞めちゃう。私は、そこに対してこんな規制緩和やれば、むしろまた常勤者の負担を重くするということもあり得ると思うんですよ。だって、短時間、短時間でつないでいく人が多数を占めたら、長く働いている人がその引継ぎの部分を相当担うことになるでしょう。保護者とのやり取りも常勤の方に相当な負担が行くということもあり得るわけですよ。
果たしてこれが本当に保育士確保の策としてふさわしいものなのか、むしろ極めて危険な政策だと思いますけれども、いかがですか。
○副大臣(三原じゅん子君) お答えいたします。
三月十九日付けで自治体にお示ししましたこの短時間勤務の保育士の取扱いに関する通知におきましては、先生大変恐縮ですが、同じことの繰り返しとなりますが、まず、常勤保育士が確保できないことにより子供を受け入れられず待機児童が発生しており、市町村がやむを得ないと認める場合に限ることに加え、そして、当該保育所に勤務する常勤保育士よりも著しく低い処遇水準での募集が行われていないなど、常勤保育士の募集を適切に実施しているか確認すること、そして、今御質問がありました、常勤職員など一部の職員に業務の負担が偏ることがないよう、周辺業務の効率化や分担を含めた保育所全体としての業務マネジメントが行われるよう留意することなどとしており、委員御懸念のようなことがないように引き続き制度の適切な運用に取り組んでまいりたいと思っております。
○田村智子君 私が危惧するのは、本当に人件費割合が異様に低い保育所が実際にあるわけですよね。
それで、じゃ、今言われた著しい低い処遇というのは、今年度から内閣府は、人件費として公定価格で示している、その額を示していますよね、地域ごとに示すようになりましたよね。それと比べて著しく低いという判断ということになるんでしょうか。その辺りはどうですか。何に対して著しく低いという判断になるんですか。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
私立保育所への委託費につきましては、施設における運用の参考とするために、公定価格の改定に合わせまして、予算積算上の事業費や管理費、人件費の内訳を通知で示しているところでございます。このうち人件費については、施設長、保育士といった職種ごとに地域区分別の年額人件費を示しているところでございます。
通知で示す予算積算上の年額人件費と実際に支払われる人件費とは差がございますが、その理由といたしましては、職員の人数とか経験年数、あるいは賃金体系等は保育所ごとに異なることや、例えば、委託費で算定されている職員数を超えて職員を雇用する保育所では職員一人当たりの賃金が低くなる可能性もあることなどが考えられるところでございます。
このため、自治体においては、管内の私立保育所における人件費の水準について確認する際の参考として、例えば予算積算上の人件費と実際に支払われる人件費との差額の理由について保育所に説明を求めることなどが可能となりますが、監査基準として差額のみをもって単純に給与水準の適否について判断することは適当でないというふうには考えています。
一方で、厚生労働省の通知では、短時間勤務の保育士を活用する際の留意点として、同一労働同一賃金の観点から、同じグループの担任を務める常勤の保育士の待遇との間に差を設けないなど、短時間勤務と常勤との間で不合理な待遇差を設けないことや、自治体による指導監査において短時間勤務の保育士に対する処遇の適正性を確認することなどが求められているというふうに承知をしておりまして、厚生労働省と連携しながら制度の適切な運用に努めてまいりたいと思っております。
○田村智子君 これ、やっと公定価格の中でどれぐらいを人件費として委託費の中に入れているかということを地域ごとに示すようにはなった。だけれども、じゃ、その処遇の水準になるようにという指導をするわけでもないんですよ。今、その経営実態調査によって、じゃ、実際に保育園でどれぐらいの人件費割合でお金使われているかと公表しているのは東京都ぐらいなんですよね。ほかのところは分かりもしないんですよ。
それで、私が危惧するのは、これ短時間保育士使って人件費を抑えようと思うような保育所、事業者というのは、これブラック保育園と言われるようなところ、現にあるんですもの。人件費割合は僅か二割とか、公定価格の中の、委託費の中の。そういうところが、正規も低い、で、その水準と同じぐらいで短時間保育の時給を割り出して短時間保育の保育士さん募集する、低い額で。短時間保育士というのはこれ非正規でしょう、どう考えても、臨時的という措置でもあることを考えれば。そうすると、雇用の安定にもつながらなければ処遇の改善にもつながらない事態を、まさに政府が新たな規制緩和によって保育現場にもたらしかねないんですよ。
坂本大臣、このことについての認識、最後お聞きして、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(坂本哲志君) 様々なことにつきましてはただいま政府参考人からお答えしたとおりでございますけれども、私たちとしては、厚生労働省と連携をしながら、やはり制度の適切な運用というのが一番大事だというふうに考えております。しっかりとした運用をこれからもやってまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 制度自体を悪くしてしまったら、適切な運用のレベルの話じゃないんです。
こういう規制緩和一辺倒は本当にやめるべきだと申し上げて、質問を終わります。