国会会議録

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保育士賃上げで確保 /田村智子氏「公定価格ただせ」
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(写真)質問する田村智子議員=18日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は18日の参院内閣委員会で、待機児童対策のカギとなる保育士の確保策にむけて公定価格を見直し、賃金を引き上げるよう求めました。

 田村氏は、保育士の雇用の非正規化が進んだことについて、1998年の規制緩和と公立保育所への直接補助金の廃止が大きな影響をもたらしたと指摘。これ以上の規制緩和は「ますます保育士不足に拍車をかけることになるのではないか」とただしました。厚生労働省の岩井勝弘審議官は「引き続き制度の適切な運用に取り組んでいく」と述べました。

 田村氏は、保育士は以前は公私間格差是正の補助金などもあり、女性の平均賃金を引き上げる存在だったが、いまや平均賃金を下回る職種になってしまったと強調。「保育士の配置人数が少なく、多くの子どもを見なくてはならず、やりがいが奪われる」などの声を紹介し、「まともな公定価格をつけて長時間勤務を解消し、人の配置もすることが保育士不足改善の近道ではないか」と迫りました。

 坂本哲志内閣府特命担当相は「処遇改善のために、必要な財源の確保に努めていきたい」と述べるにとどまりました。

 田村氏は「これ以上遅らせることができない課題だ」と指摘しました。



2021年5月26日(水)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 内閣委員会 第19号 令和3年5月18日】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 十三日の質問に続いて、待機児童対策の鍵となる保育士の確保策についてお聞きします。
 新子育て安心プランは、魅力向上を通じた保育士の確保と銘打って、その施策の柱に短時間勤務の保育士の活躍促進ということを位置付けたんです。待機児童が存在する市町村において各クラス常勤保育士一名必須との規制をなくし、それに代えて二名の短時間保育士で可とするという規制緩和だと参考資料、説明資料に書いてありますね。これ、十三日の質問でも詳しく取り上げました。このような規制緩和が私は保育士にとって魅力向上といって打ち出されること自体に本当に違和感を感じざるを得ないわけですね。
 この短時間勤務の規制緩和の理由として、厚労省の参考資料では、東京都保育士実態調査報告書(令和元年五月公表より)というふうにして、保育士が再就業する場合の希望条件(複数回答)、勤務時間七六・三%、雇用形態(パート、非常勤採用)五六・〇%というふうに説明をしているんですね。つまり、保育士を一旦辞めた人がもう一度保育士に戻ろうとするときには勤務時間での希望が強いと、雇用形態ではパートや非常勤を望んでいると、だから短時間保育士というふうに出してきたということなんです。
 私、この調査の詳細、東京都のホームページで見ました。全体百二十四ページに及ぶ報告書で、是非、坂本大臣にも、もういっぱい保育士の声や、保育士辞めた人、保育士資格あるけど保育士にならなかった人の声もいっぱい出てきているから見てほしいんですけれども、これ、保育士資格登録者を対象に行われたもので、一万五千三百五十八人から回答を得ています。
 この中で、保育士を辞めた人が再就職時の希望条件として挙げたのは、確かに上位が通勤時間、勤務日数、勤務時間、これ複数回答でいずれも七割を超えていて、その次に給与等、これは六割台なんです。資料で、大変細かい数字で済みませんが、お配りをしています。
 それでは、希望する就業日数や時間についてどう回答しているのか。保育士就業経験あり、つまり保育士だったけど辞めた人ですね、週五日勤務を希望するのが最も多くて五三・一%、就業時間も一日七時間から九時間を望む人が一番多くて五〇・一%なんです。資格は持っているけれども保育士として働いた経験がないという方で見れば、週五日勤務を希望する人は六二・四%、一日七時間から九時間を希望する人が五九・五%、しかも雇用形態は正規雇用を希望するという回答が八割を超えているわけですね。
 私、この調査から言えるのは、多くの人が短時間保育士としてではなくて、一日八時間程度、週五日という働き方、つまりは常勤の保育士としての就業を希望しているということが見えてくるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩井勝弘君) 令和五年、あっ、失礼いたしました、令和元年五月に公表されました東京都保育士実態調査におきましては、過去に保育士として就業したことのない方が保育士として就業する場合には、正規職員雇用のみを希望する者は五割強であり、パート、非常勤雇用のみ希望する者が五割弱となっております。また、過去に保育士として就業したことのある方が保育士として再就業する場合には、正規職員雇用のみを希望する者は約四割であり、パート、非常勤雇用のみ希望する者が約六割となっております。
 なお、今般の短時間勤務の保育士の取扱いにつきましては、常勤保育士が確保できないことにより子供を受け入れられず、待機児童が発生しており、市町村がやむを得ないと認める場合の措置であるとともに、同調査におきまして、過去に保育士として就業したことがある方が保育士として再就業する場合の希望条件として、勤務時間や雇用形態、これパート、非常勤採用が挙げられている状況も踏まえたものであります。
○田村智子君 根拠として挙げる調査としては、本当に私はいいところだけつまみ食いしたように思えるんですよね。短時間を望んでいないですよ。
 だって、希望する労働条件、更に詳しく見てみると、保育士就業経験ありの方、年収三百万円以上を希望する方が五割を超えるんですよ。就業経験なしの方では年収三百万円以上を希望する方は六割を超えていて、そのうち四百万円超を希望するのが三六・六%に上りますよ。
 再就業の条件として勤務日数、勤務時間を挙げている人は確かに多いです。しかし、それは短時間保育士なら働きたいという人が多いということじゃなくて、残業が当たり前だったり、有給休暇が取れなかったり、土日の休みが取れなかったり、そういう長時間労働にならないということを希望している。そして、年収でいえば、保育士として働いて経済的に自立できるということを望んでいる。逆に言えば、勤務時間は長い、それなのに給料安い、そういう働き方はしたくないというのがこの報告書の中から見えてくると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○大臣政務官(こやり隆史君) 委員お示しをいただきました東京都保育士実態調査におきましては、例えば保育士さんが退職された理由といたしまして、最も多いのが職場の人間関係であるということでありますけれども、そのほかにも、給料が安い、あるいは仕事量が多い、労働時間が長いなどが上位に挙げられておりまして、先生御指摘のとおり、労働条件の改善と処遇の改善、これ併せて推進していくことが重要であるというふうに認識をしております。
 厚労省といたしましては、労働条件の改善については、保育士さんの業務負担軽減のための保育補助者の雇い上げであるとか、あるいはICT化のためのシステム導入、労務管理の専門家による巡回支援や相談窓口の設置等、取組を行っているところでございます。
 また、処遇の改善につきましては、二〇一三年以降、月額約四万四千円、これは約一四%のベースアップによる処遇改善のほか、二〇一七年度からは、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施してきたところでございます。
 引き続き保育士の労働環境の改善に努めてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 ですから、短時間を希望しているんじゃない、長時間勤務をどう解消するかなんですよ。
 資料の三枚目から、ベネッセ次世代育成研究所が行っている幼児教育・保育についての基本調査、抜粋いたしました。これ、二〇一八年の調査結果ですけれども、二〇一二年との比較調査になっています。開所時間、幼稚園、保育所共に二〇一二年から一八年の六年間で明らかに長くなっています。公営の保育所で平均開所時間、十時間五十七分から十一時間二十五分へ、私営では十一時間五十一分から十二時間二分へ。
 私が保育園に子供を通わせたのは一九九六年からですけれども、その当時というのは六時とか六時半でした、終わるのが。二人目が保育所に通う頃、二〇〇〇年代の初めですね、延長保育が夜七時までになり、さらに八時までになるという、本当に開所時間がどんどん長くなっていったんですね。それは、保護者の要求はあったと思います。私も何度か八時までとお願いして、これなかなか大変ですよ、親も、八時まで預けるというのは。でも、これは逆に、保育所がそこまで預かってくれるから自分の残業もそこまでできるという、こういう悪循環にもなっていったというふうにも思うんですよ。
 こういう傾向が進む下で、二〇一五年の子ども・子育て支援制度の発足時には、保育所に対して十一時間の開所を義務付けた。子供の受入れが朝八時からであれば、夜七時までは開所しなければならない。こういう長時間保育が当たり前という制度設計が行われたことが保育士の長時間勤務の要因になったというふうに考えますが、いかがでしょう。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
 保育標準時間の公定価格は、週六日、一日十一時間の開所を想定して積算しておりまして、平成二十七年度の子ども・子育て支援新制度施行時に、十一時間の開所に対応するために、新制度以前の延長保育事業の基本分と同等の内容を公定価格に組み込むとともに、一日三時間分の非常勤保育士の人件費を追加しているところでございます。
 一方で、一日十一時間開所というお話でございますけれども、これは公定価格における利用可能な最大限の枠として設定しているものでございまして、実際の開所時間については一律に一日十一時間の開所を義務付けてはおりません。また、子ども・子育て支援新制度施行以降、子ども・子育て支援新制度施行以前と同様に、利用者の就労実態等に応じて開所時間を短縮することは可能となっておるところでございます。
 地域の実態に合わせまして適切に保育所の運営を行っていただきたいというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 これ、制度設計が十一時間開所時間ということを、これ、そういう制度設計にしたんですもの、それで公定価格とかも見ていったわけでしょう。ただし、その十一時間を八時間勤務でどうするかということを考えないような、十一時間子供がこうやっていると、それに対しての子供の人数に対するお金しか付けなかった。ここにすごい矛盾が今来ているわけですよね。
 この十一時間の開所時間というのは、今言ったみたいに十一時間保育なんですよ。子供の朝の受入れの準備とか職員会議とか、あるいは行事の準備とか、子供が帰った後にやるような時間というのはこの中に含まれていないので、実際の保育所の業務というのはこれを超えて行われることになる。それだけ保育士の皆さんの長時間労働にもなる。ところが、その分も公定価格では見る仕組みがないという、こういう状態ですよね。こういう開所時間を義務付けたということが、十一時間開所ということがやっぱり保育士にどういう負担をもたらしたのかということの検証を私はやることが必要だというふうに思います。
 次に、短時間保育士は非正規雇用です。これ以上非正規雇用を保育の現場の中に増やしていっていいのかという問題を考えてみたいんです。
 短時間保育士が保育士配置の中にカウントされるようになったのは一九九八年の規制緩和からです。このとき、公立保育所の運営費国庫負担分、これ一般財源化され、併せて地方交付税総額も抑制をされた。これらの政策がとりわけ公立保育所を様変わりさせています。
 資料の、ベネッセの次世代育成研究所の資料、もう一度戻りますけれども、雇用形態ごとの保育士が占める割合、公営の施設、保育所、幼稚園、認定こども園、ここで非常勤の割合というのが民間施設よりも高いんですよ。明らかに高いんです。しかも、一貫して公立施設は非常勤、非正規の割合は増加傾向なんです。
 保育者全体の中で非正規雇用の割合がどれくらいか。公立保育所、四六・六%の公立保育所が六割台から七割台が非正規雇用なんです、保育者全体の。三一・一%の公営の保育所が非正規雇用の割合が四割台から五割台。これ、私立、私営の施設では、四割から五割台が一番多くて三一・一%で、次いで二割未満、二七・二%なんですね。
 そうすると、一九九八年の規制緩和、そして公立保育所への直接補助金の廃止、特にこれが公立保育所の保育士の働き方に大きな影響をもたらした、雇用を非正規化していったというふうに考えますが、いかがでしょう。
○政府参考人(岩井勝弘君) 短時間勤務の保育士の取扱いにつきましては、保育の質の確保に留意しつつ、従来より、これまで最低基準上の保育士定数は全て常勤の保育士としていたものを平成十年に二割までは短時間勤務の保育士を充てることを可能とし、平成十四年には、常勤の保育士が各組に一名以上配置されている場合には割合を問わず短時間勤務の保育士を充てることを可能としてきたところでございます。
 一方、保育士の就業形態の変化につきましては、共働き家庭の増加や経済情勢の動向など様々な要因が考えられ、一概にお答えすることは困難と考えます。
○田村智子君 明らかに公営でこれだけ非正規増えている。これはちょっとよく見る必要あると思うんですよね。
 ただ、このベネッセの調査ってとても興味深くて、実は公営で非正規で働くその半数はフルタイムの非正規なんですよ。私立でも三割は、非正規の三割はフルタイムで働いているんですよ。だから、本当に人件費の抑制でしかないですよね。本当はちゃんと保育士として、常勤として働きたくても非正規って場合もあるんじゃないかと思えるわけですね。
 私、こういう非正規が、公立の保育所の中で非正規の方がどういうふうに働いているかというのを以前国会の中で取り上げました。本にもなっていたものも紹介したんです。同じフルタイムで働いているのに正規と非正規で処遇が全く違う。職務に違いも付けなければならないんです。そうすると、お昼寝のときなど、保育士常勤の方が布団よろしくねと声を掛けると、非正規の保育士、あるいは保育者ですね、有資格でない方もいらっしゃるので、そうすると、布団の上げ下ろしとか備品の整理とか力仕事はそういう人がやると。そうすると、上下関係ができて、それが職場の人間関係を難しくすると。あるいは、保護者とのやり取りを始め、常勤が担う職務は責任を重くしますよね、処遇が違うんだもの。それなのに常勤の人数が足りない。子供に向かう以外の時間で過密労働、長時間労働、常勤の保育士にどんどん押し付けられていく。
 先ほど説明ありました東京都の調査、保育士として仕事を辞めた理由のトップは職場の人間関係。これは、非正規雇用を増やしてきたことの影響も私は検証が必要だというふうに思います。
 そして、これ以上の規制緩和で非正規雇用の割合を増やしていいのかなんですよ。そういうことをやると、保育士は低賃金の職種だ、仕事は大変なのに給料安い、雇用形態や処遇の違いが職場の人間関係にも悪影響を与える、こうやってますます保育士不足に拍車を掛けることになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩井勝弘君) 三月十九日に自治体にお示しいたしました短時間勤務の保育士の取扱いに関する通知におきましては、常勤保育士が確保できないことにより、子供を受け入れられず、待機児童が発生しており、市町村がやむを得ないと認める場合に限ることに加え、当該保育所に勤務する常勤保育士よりも著しく低い処遇水準での募集が行われていないなど、常勤保育士の募集を適切に実施しているか確認すること、常勤職員など一部の職員に業務の負担が偏ることがないよう、周辺業務の効率化や分担を含めた保育所全体としての業務マネジメントが行われるよう留意することなどとしており、引き続き制度の適切な運用に取り組んでまいります。
○田村智子君 議論がかみ合っているのか本当よく分からないんですけれども、大臣にお聞きしたいんですよ。
 本当は保育士というのは以前は女性の平均賃金を引き上げる存在だったんですよ、公立保育所がしっかり人を雇っていたから、そして公私間格差是正の補助金があったから。ここが崩されてきて、今や女性全体の職種の、全体の平均賃金を下回るという職種になってしまったんですよね。
 東京都の先ほどの調査にはいっぱい声が出てくる。保育士にならなかった理由、給料等が希望に合わなかった、責任感が求められ、かつ体力も必要な重労働であるにもかかわらず、立場や年収が低く、長く働くのには不安があると。一方で、子供の成長に日々関われるという、本当はやりがいもあると思っている。そのやりがいが処遇の問題で奪われる。保育士の配置の人数が少なくて、いっぱいの子供を見なくちゃいけなくてやりがいが奪われる。
 やっぱり公定価格なんですよ。まともな公定価格付けて、長時間勤務解消する、人の配置もしっかりやる、このことが一番保育士不足解決の近道だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(坂本哲志君) 御指摘いただきました保育士の配置改善、そして処遇改善を図ることは本当に重要だと考えております。
 配置改善につきましては、三歳児に対する配置を二十対一から十五対一に改善するための加算を平成二十七年度から実施しているところです。また、処遇改善につきましては、平成二十五年度以降、月額四万四千円に加えまして、平成二十九年度からは、先ほど厚労省からも報告ありましたけれども、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施をしているところでございます。
 未実施の一歳児と四、五歳児の配置改善や更なる処遇改善につきましては、委員今言われましたように、やりがいを持って働けるよう、各年度の予算編成におきまして必要な財源の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 本当にもうこれ以上遅らせることのできない課題だということを指摘しておきたいと思うんです。
 私、前回も、短時間保育ということ、また規制緩和をすると人件費を値切ることでもうけようとする事業者にインセンティブを与えてしまうんじゃないかという問題提起をしました。なぜこういう問題提起をするのか。
 一番最後の資料を見ていただきたいんですけれども、残念ながら、社会福祉法人を含めて不適切支出、これが、東京都の調査の中からの抜粋で週刊朝日がまとめたものなんですけど、本当にひどいんですよ。政党支部への支出をしているとか、エステ代を支出しているとか、公費を扱う事業者としての適格性を欠くものが保育所の委託を受けていると言わざるを得ないような事例が現に見受けられるというふうに思うんです。
 それで、この表の一番上に名前が出ている南流山福祉会、これ流山市に保育所があり、都内に二か所保育所を運営する社会福祉法人だったんですね。昨年、巨額の不払賃金の支払を求める訴えによって、運営費、委託費、差押えとなったんです。この社会福祉法人が運営する三つの保育所で運営継続が危惧される事態となりました。その一つ、足立区の新田三丁目なかよし保育園、ここ、昔は、以前は公立保育所で、民間委託された保育所なんですけど、慌てて区が直営に戻して保育を継続するなど、本当に深刻な問題が発生をしています。
 この法人を監督するのは千葉県なんですね。千葉県は特別監査、勧告、その公表も行っています。経過を簡潔に説明していただきたいと思いますのと、それから、運営の委託費の差押え、こういうのがほかにあったかどうか、お願いします。
○政府参考人(岩井勝弘君) 御指摘の南流山福祉会につきましては、令和三年四月まで千葉県が所管する法人でありましたが、同法人においては、平成二十五年頃、福利厚生費等の過剰支出などの不祥事が発覚し、法人運営の方向性に関して理事間の対立が顕在化いたしました。平成二十八年には、理事の再任手続が行われていないことが発覚し、千葉県により仮理事が選任される事態となり、令和二年には、解雇されながら勤務を続けていた元職員から未払給与の請求訴訟が提起され、法人側が敗訴したほか、計算書類の無届け、無公表や役員報酬の不適切支給など、法人運営に著しい問題を抱えていたことから、平成二十八年度以降、所轄庁である千葉県において指導がなされてきたと承知しております。
 所轄庁である千葉県庁に確認いたしましたところ、御指摘のとおり、平成二十八年に特別監査を行い、理事の再任手続が適切に行われていないことを確認した上で、平成二十九年三月に当時の理事長を含め仮理事の選任を行ったことが事実であります。
 また、南流山福祉会の理事会に千葉県及び流山市の職員、あっ、失礼いたしました。委託費についての差押えにつきましては、社会福祉法人を所管している立場でございますので、把握しておりません。
○田村智子君 お答えいただけますか、差押えの事例。
○政府参考人(嶋田裕光君) お答えいたします。
 保育所の運営費の差押えを受けた事例につきましては、南流山福祉会以外は承知をしておりません。
○田村智子君 これ、異例中の異例なんですね。
 二〇一五年度決算を二年遅れで出してくる。二〇一七年度以降の決算は提出できない状態。その大きな理由は、役員への貸付金が巨額になっていることなんですね。要は、根拠なくその当時の理事長が勝手にお金を持ち出していたということなんですよ。流山市議会の会議録見てみますと、この役員貸付金の累計は、二〇一六年度で約三千五百万円、二〇一七年度は更に増えて約三千八百万円。
 この当該法人は、この当時の問題の理事長と前任者との間で理事任命の有無を争う裁判もあって、この当時の問題となっていた理事長は理事選任の取消しの判決が確定をしていたんですよ。千葉県は、この判決への対応として、二〇一七年三月、仮の理事というのを選任します。ところが、この問題となった理事長を含めて仮の理事にしちゃった。そして、この仮の理事たちがこの問題となった理事長をまた理事長にしてしまったんですよ。だから、運営上大きな問題を引き起こしている当の本人を役員としてまた選任をしてしまう、理事長としてしまう、これをただただ手をこまねいて見ていたに等しいわけですね。
 千葉県や流山市は、二〇一七年三月以前から、法人の財務状況や運営などの把握のために立入りの特別監査行っていたのではないんでしょうか。また、二〇一六年度以降、県や市は理事会や評議員会にオブザーバーとしても出席していたのではありませんか。
○政府参考人(岩井勝弘君) 千葉県、所轄庁であります千葉県庁に確認いたしましたところ、平成二十八年に特別監査を行っております。また、理事の再任手続が適切に行われなかったことを確認いたしまして、当時の理事長を平成二十九年三月に仮理事の選任を行ったことは事実でございますが、千葉県庁に確認しましたところ、当時、当該理事長の不適切な支出等の事実は明確に把握できていなかったとのことでございます。その後、経常的に監査に入っておるという状況でございます。
○田村智子君 今ちょっともう時間が来ちゃうんでこっちから言いますけれども、二〇一六年からは理事会、評議会に千葉県、流山市とも一回も欠かさずに参加をされているんですよ。特別監査にも入って財務状況も把握していた。なのにこんな不適正を把握できなかったのか。これはちょっと通らないと思うんですよね。
 二〇一七年八月末に第一回目の勧告をしたけれども、きちんと改善されないまま二〇二〇年に再度の勧告をする。勧告が履行されないので公表という事態に至って、今日に至っているんですよ。
 行政が関与していた間にも総額で十数億円の委託費が決算もできない法人に支払われてきた。対応が余りにも遅いと思います。しかも、監督もできていません。本来だったら役員解職も含めた対応が可能だったにもかかわらず、現在に至るまで事実上放置されているということだと思うんですね。
 これ、とても千葉県の関与の仕方が適正だというふうには私には思えないんですけれども、こやり政務官、いかがでしょう。
○大臣政務官(こやり隆史君) 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、千葉県、様々な場面で関与をしてきております。
 平成二十八年以降、社会福祉法に基づきまして五回の実地調査を行っており、様々な課題について把握をし、仮理事の選定、文書指摘や改善勧告、あるいは改善勧告に従わない旨の公表等により指導が行われてきたものと承知をしております。こうした一連の指導の結果、現在、事業譲渡等が行われて、法人の経営再建が進められてきたというふうに認識をしているところでございます。
 先ほど委員も御指摘がございましたけど、当該社会福祉法人は、こうした経営再建の結果、拠点の縮小により本年四月より東京都足立区に所管が変更となっておりますが、引き続き、社会福祉法に基づく適正な法人運営が確保されることになるように、当該法人の状況を注視しながら、法人所管庁である足立区に対しまして必要な情報交換あるいは必要な助言に努めてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 最後に坂本大臣にも一言いただきたいんですけど、これ公費ですから、それで、公費として出したものが結局ボーナスも払われないとか給与未払で訴えが起こされているという事態ですからね。これは、本当に適正な支出ができていないところに委託費渡し続けたという事案ですから、こういうことを起こさないための本当に監督が行政によってしっかり行われなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂本哲志君) 社会福祉法人南流山福祉会におきまして理事長の地位について争いが生じた、そして法人内部の管理が適正にされず、決算の遅延など不安定な運営状況となっていること、さらには元職員への給料未払による委託費を差し押さえられる事態が生じたこと、こういったことは委託費の適正な運用や安定的な保育の実施の観点から不適切であると考えております。
 法人監査あるいは改善勧告については今厚労政務官から言われたとおりでありますが、委託費の運用や保育が適切に実施されるためには、法律上の権限に基づいて地方自治体が指導監督を十分行うことが必要であり、内閣府といたしましても、自治体に対しまして、適正な支出についての自治体からの保育所等への周知に加えまして、支出の適正性を指導監査の重点項目とした上で、不適切な事例に対しては改善勧告を求めることなど、必要な措置を徹底していただくよう、引き続き機会を捉えて依頼をしてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 残念ながら不適切な事例があるんです。で、不適切でないものでも、法人が別の事業に委託費を使うということが許されちゃっているんですよ。株式会社であれば配当金に回すことまで許されちゃっているんですよ。そういう下で短時間勤務ということを、短時間保育士ということをやることの意味ということを是非重大視していただきたいと思います。
 終わります。


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