国会会議録

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低所得層に支援要る/児童手当めぐり参考人陳述

 参院内閣委員会で18日、子ども子育て支援法・児童手当法改定案の参考人質疑が行われました。

 日本大学の末冨芳教授は、児童手当の特例給付廃止で、「高所得世帯の子どもの間に差別と分断が発生する」と批判。「高所得世帯の子どもも利用可能な支援制度の拡大」を強調しました。子育てひろば全国連絡協議会の奥山千鶴子理事長は、「限られた予算を考えると、3歳未満児への現物支給、包括支援の拡充が必要で、高額所得者への現金給付を減らし、現物支給の充実へ回すことは理解できる」と述べました。

 日本共産党の田村智子議員は「すべての子どもを対象としている児童手当の将来像をどう考えるか」と質問。奥山氏は「子どもと家庭支援へのサービスと現金給付のバランスは議論の途上だが、両方の拡充を」と答え、是枝俊悟大和総研主任研究員は「財源を考えない前提だが、親の所得に関係なく給付されることが望ましい」と述べました。

 末冨氏は「普遍給付を維持しつつ、低所得層へきめ細かい支援が要る。子どもに使う予算は既存の予算の付け替えも大事だが、毎年の推計に基づき、これだけは確保するという見通しをもった使い方を」と指摘しました。



2021年5月26日(水)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 内閣委員会 第19号 令和3年5月18日】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 今日はありがとうございます。
 今日、私、ちょっと大きなところでお聞きをしたいんです、せっかくの参考人質疑ですので。
 そもそも児童手当とはどうあるべきなのか、その議論がないままに財源云々の話にちょっとなっちゃっているように思うんですね。一言財源について言えば、この間少子化で児童手当に係る予算そのものがどんどん減っているんですよ。二〇一六年から一七年で二百三十億、そこから以降、三百億、四百四十億、三百二十億と。だから、それを財務省にお返しせずに待機児童対策などに充てればいいということもあり得るわけで。
 ですから、大変、今日、財源確保に皆さんいろいろ御心配いただいたんですけれども、財源確保は幾らでもやりようというのは私はあると思うので、ちょっとそれは一旦おいておいて、日本の唯一の、全ての子供を対象とする児童手当制度というのは今後どういう未来像、将来像を目指すべきであるのかということを三人の方にお聞きしたいと思います。
○参考人(奥山千鶴子君) 御質問ありがとうございます。
 私も子ども・子育て支援法の設立のところからずっと関わらせていただいて、もう本当にこの国が子供と家庭支援について、サービスもそれから現金給付も非常に心もとないという中で、社会保障と税の一体改革の中で、社会保障の中に子供の分野も位置付けて、しっかりとそこに財源が投入されることというのを期待してまいりました。
 今まだ途中だというふうに思っています。当時、一兆円強の予算必要だという話の中で、まだ三千億足りないんじゃないかという議論もあります。そんな中で、十分であるとは私も本当に思っておりません。ただ、先生方といろいろ議論したときに、そうあっても、現物のサービスの拡充をまずは推進していこうという合意の中で進めてきたということですので、まだ現金の個人給付の部分、それからサービス、現物支給の部分もまだまだ十分ではなく過渡期であるというふうに思っております。
 そういった中で、児童手当を考えたときに、もちろん普遍的なものだというふうに思うんですけれども、これが本当に子供のためにしっかりと使われるかどうかということについて確認をしていく必要もあるのではないかなというふうに思っています。
 また、諸外国は、この児童手当についても、金額が非常に恵まれている国もあれば、広く薄くというような国もあって、その中で日本は現物と現金の給付のバランスをどういうふうに取っていくのか、まだまだ議論の途中だというふうに思っておりますので、私自身も勉強させていただきながら、これからしっかりと両方が拡充されるよう願ってやみません。
 以上です。
○参考人(末冨芳君) 児童手当につきましては、我が国の政府が子供たち、それから親たちに与えるメッセージとして最も重要なものであるという判断をしております。であればこそ、私は、一貫して普遍給付を維持しながら、低所得層に手厚い、きめ細かい階段をというふうに申し上げてまいりました。先ほど、子供自体が減少しているという中で財源を確保することは可能だとおっしゃっていただきましたけれども、全く思いは同じでございます。
 私のスライドの十五ページにもありますが、そもそも婚姻数や出生数というものが当初予測されたよりはるかに悪化している中では、恐らくですが、今回のような形で児童手当の特例給付廃止をする必然性があるのかどうかということも含めて、実は、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングに基づけば、再推計をし、本当に千二百万円で線引きをしていいのかということについては再考の余地があろうかと思っております。
 あわせて、子供に使う予算については、イギリスの例を申し上げれば、リングフェンスと言いまして、財源、この部分の財源は必ず子供たちのために使うという包括型の予算になっており、他の用途への転用は許されません。そうした財源の使い方ですね、限りある予算の付け替えも大事ですが、子供たちのために必要な予算をきちんと推計に基づきながら最低限毎年これだけは確保していくといったような見通しの立った予算の使い方ということも必要であろうというふうに考えます。
 それから、先ほど奥山参考人もおっしゃられましたが、子供のために使われているのかどうかという点でいえば、やはり地域での伴走型の支援が要ると。監視型というよりは、家計の管理能力がかなり低い場合がございます。それは、非正規で使い潰されて、やっぱり、うつの中で一生懸命子育てしておられる家庭なんかはもう家計のバランスとか考えられません。逆に、そうしたところに乳幼児期あるいは周産期から丁寧な支援が入っていくことで、あっ、食事は自治体のケアサポートが受けられるんだとか、あるいはおむつも届くんだというふうに安心する中で、初めて家計管理能力は上がって子供のことを考える余裕が出てくるんですね。
 だからこそ、子供のために児童手当が使われる日本というのは、実は乳幼児期から、あるいは周産期からのきめ細かい支援ができる日本でもあるということは申し添えさせていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
○参考人(是枝俊悟君) そもそも財源というものをおいておいてということであるならば、次代の社会の児童の健やかな成長に資するということですので、親の所得に関係なく給付できれば最も良いとは思っております。ただ、もっとも、財源があればという前提にはなります。
 民主党政権下において、年少扶養控除を控除から手当ということで、児童手当を拡充する形で改正が行われたことは一定の評価をすべきだとは思っております。それまでの年少扶養控除制度ですと、所得控除ですので、より所得の高い人ほど掛ける税率分だけ実質的な支援が多くなるという状況になっておりましたので、年少扶養控除を改正して児童手当、定額型の児童手当にするということで、特に所得の低い世帯については支援額が増加したということになりますので、これは年少扶養控除に戻すというようなことはあってはならないと思っております。
 以上です。
○田村智子君 今の件で末冨参考人にもう一問お聞きしたいんですけれども、確かに子供の貧困の対策というと、一人親家庭というところにこの間ずっと議論が集中してきたようにも思うんです。このコロナ禍でも、やはり一人親家庭のところには児童扶養手当に上乗せしてすぐにお金をというふうな仕組みを取ってやってきた。だけど、確かに世帯数から見ても、二人親のところの貧困対策をやらなければ子供の貧困対策にはならないわけですね。規模からいってもそうならないというふうに私も認識しています。
 そうすると、この児童手当という制度がもっと子供の貧困の対策にどう生かされていくのかということに注目をした検討ということも必要になってくるんじゃないかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○参考人(末冨芳君) 私のスライドの二十六、二十七ページに関連しての御質問であると思います。
 まず、二十七ページの方から参りますけれども、我が国は、おっしゃるように、実は相対的貧困の世帯数は二人親の方が多うございます。ただし、一人親も、特に母子世帯も多いということで、そのバランスは拮抗しているわけですね。とはいえ、絶対数としては二人親困窮世帯が多く、この度、非常に画期的な二人親困窮世帯を含む子育て世帯の給付金をもう与野党挙げて実現いただいて、本当に感謝しております。願わくば、二十六ページの方に戻りますけれども、二人親の困窮世帯、特に多子世帯です、二人親多子世帯の苦しさというのが群を抜いており、かつ支援のなさも異常です。
 この児童手当につきましては、やはり手厚くといった際に、先ほど是枝参考人が高所得世帯の例で子供数をとおっしゃいましたけれども、実は低所得世帯の場合も同様に、子供数が多い、特に三人以上世帯につきましての加算。で、児童扶養手当も同じなんですね。児童扶養手当は二人目から急にすごい冷遇されていく仕組みなんですが、実は逆で、子供数が増えるほどいろいろお金が掛かってくるということにもなりますので、特に三子以降ですね、この世の中で子供をたくさん産んで育ててくれている、所得にかかわらずという世帯については、もう、何というんですかね、全員無償化で、児童手当を上げていいぐらいだと実は私は思っているんですが、特に低所得世帯につきましては、児童扶養手当、それから児童手当を今以上に積み増ししながら、多子に手厚い、第三子以降に手厚いという支援をしていただくと、かなりの生活水準の改善とそれから貧困率の改善がダイレクトに実現できるということになります。それは、子供たちが衣食住やライフラインに不自由せず、安心して自分の行きたい進路に行ける、それで日本社会で活躍してくれる日本の到来を意味します。
 以上です。
○田村智子君 ありがとうございます。
 それから、奥山参考人にお聞きしたいんですけれども、私も、子育てにおいて多機能な拠点を持っていろんな支援がやられていくことというのはとても大切なことだと思います。今の御説明の中で、一時預かりがなかなか利用実績が伸びていかないという御指摘がありました。
 私、そこには、安心できるサービスなのかとか、安全性がどうであるかとか、やはりこの間、有資格ではない方が預かりをすることでの事故というのが残念ながら起きてしまって、そのときに自治体が、例えばファミリー・サポート・センターなんかですと、コーディネートの役割しかないものだから、事故が起きたときには結局当事者同士の話合いという形になってきて、公的にそういう問題どうするかというところがなかなか整理されてきていないんじゃないかというふうに思うんです。
 その辺りの問題意識をお聞きしたいと思います。
○参考人(奥山千鶴子君) 御質問ありがとうございます。
 まずは、一時預かり事業とファミリー・サポート・センターのような地域人材でやるのと、少し分けて考えた方がいいかなというふうにも思っております。
 一時預かり事業に関しましては、多分九割以上が保育所や認定こども園で実施されておりますので、基本的には保育士さんを中心とした一時預かり事業になっております。ただし、本園の、いわゆる保育所、認定こども園の本体の事業が非常に保育士さん、大変な状況ですので、それとともに、一緒に地域の方々のための一時預かり事業を併用していくというか、一緒にやっていくというのが多分大変なんだろうというふうに思っています。
 というのは、一時預かりの場合、時間が保護者によっては、例えば十時から二時とか、お昼寝の時間とか、やはり本体保育の方との関係でどうしても受入れ枠が少ないという現状があるわけなんです。ですから、横浜市もそうなんですが、乳幼児一時預かり事業に特化した事業で一時預かり専用施設を持つというのが非常にいいんですけれど、そうしますと、今度は場所代というか、そういった家賃補助がないというようなことで、また自治体の持ち出しなんということになるんですね。
 ですから、いろいろ原因があります。いろいろ加算もしていただいているんです、この間ですね。ですけれども、人材不足等も含め、それからコーディネート、申込みやキャンセル対応、こういった事務的なところもかなり手を取られるということもあって進んでいないというのが現状かというふうに認識しております。
 一方で、ファミリー・サポート・センター事業なんですが、確かに個人同士のやり取りにはなるんですけれども、やはりそれを超えてのメリットというのが大きいというふうに感じています。八割以上が、七割から八割が幼稚園、保育園、認定こども園、放課後児童クラブの送迎という形になっておりますので、短時間ではあるんですけれども、保護者の手が足りないところをサポートしている状況です。
 さらに、最近は、安心のための研修のもちろん義務付けもありますし、それから、心配な方は拠点のようなところで預かっていただく、一対一で。要するに、皆さんがいる前で預かっていただくことで、スタッフも介入できますし、預かり手の方も、安心して預けられる、相性がうまくいったら、おうち、御自宅で預かるなど、そういったきめ細かなサポートをするようになってきていますので、その辺りの研修の強化も含めて、しっかりと進めていただきたいというふうに認識しております。
 ありがとうございます。
○田村智子君 最後、是枝参考人、せっかく男性で育児休業を六か月お取りになったということですから、こんな支援があったらと思ったことを率直にお話しいただければと思います。
○参考人(是枝俊悟君) ありがとうございます。
 取得時間も一か月と二か月で合わせて三か月ですので、十年後から見れば、こんな短い男性もいたんだと非難をされるんじゃないかなとも思っております。
 やはり、夫婦、二人親世帯に限った話にはなりますが、男女で協力して子育てをしていく中で軽減される負担というのも非常に大きいと思っております。企業の中でも、やはり今般の働き方改革の中で残業時間の上限に罰則を設けることができたといったこともございますし、少しでもやはり子育てができる就業時間にしていく、働き方の環境を整えていく、それによって夫婦で力を合わせて子育てしていくという環境を進めることが少子化対策になるのだと思っております。
 特に、所得の高い世帯については、自分たちの、夫婦間の不満を政府にぶつけて更なる手当をというふうに言っているのではなく、やっぱり自分たちの中で何とかするという、特に所得の高い世帯については、夫婦間の負担のバランス若しくは外部のサービスの活用などで頑張っていくことも大事なのではないかなと思っております。
 以上です。
○田村智子君 ありがとうございました。終わります。


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