国会会議録

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コロナ禍、日々に支障 /田村智子氏に全視協の藤野さん /参考人質疑

 障害者差別解消推進法改正案の参考人質疑が5月27日の参院内閣委員会で行われ、全日本視覚障害者協議会の藤野喜子さんが日本共産党の田村智子議員の質問に意見を述べました。

 藤野氏は「触れてはだめ、近づいてもだめ、換気をしなさい、マスクをして、という生活の中で、視覚障害者の生活の基盤がなくなってしまうとうろたえる日々だ」と切り出し、マスクをつけるとにおいや風が頬にあたる感覚がわからず、道に迷うようになったなど、コロナ禍での生活の支障を話しました。

 同改正案が、民間事業者に合理的配慮を義務付けることについて、藤野さんは「40年前、就職先が決まりアパートを借りようとしたが、火事を起こされると困るとすべて入居を断られ、就職も家もあきらめた。2年前、再びアパートを探したときも、エレベーターがない、階段は危ない、夫婦じゃないと断られた。視覚に障害があっても訓練すれば一人で暮らせることを話して探してもらい、入居できた」と自身の体験を紹介。「ルール、法律を作り、法律が先を行き、意識を変えていく」とのべ、「差別と感じたら勇気をもって関係機関に訴える。法律を育てるのも私たちの責任だ」と訴えました。



2021年6月15日(火)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 内閣委員会 第22号 令和3年5月27日】

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 私たちのことを私たち抜きで決めないでと、これが障害者政策の立案等々の基本だと考えます。本当は参考人質疑を行ってほしいところだったんですけれども、理事会の協議で、対政府質疑の中で当事者の方を参考人としてお招きしてよいということになりましたので、私の質疑では、全日本視覚障害者協議会の藤野喜子さんにお越しいただきました。ありがとうございます。
 まず三問、藤野さんに御意見をお伺いして、政府への質問を進めていきたいと思います。
 まず一問目です。
 コロナ禍での新たな問題も含めて、日常の中でぶつかっている問題について率直に御意見を伺いたいと思います。
○参考人(藤野喜子君) 昨年の二月の中旬以降と記憶しているんですけれども、新型コロナ禍の生活が始まりました。アルコールやマスクが品薄になりました。目からの情報がない私たちは、本当に探すのに苦労しました。外を歩いていると行列ができていて、何かあるんですかと聞いたんですけど、マスクを買うために並んでいる、張り紙が出ていたからという返事でした。
 あれから一年を大きく過ぎてしまいました。新しい生活様式、触れては駄目、近づいても駄目、換気をしなさい、マスクをして。視覚障害者の生活の基盤がなくなってしまうとうろたえる日々です。マスクは、外を歩くとき、方向感覚が狂います。よく道に迷うようになりました。におい、風が頬に当たる感覚、全てが貴重な情報です。歩いているときにはしなくてもよいという話もありますが、人との間隔を取りにくい私たちは付けざるを得ません。
 独り暮らしをしていても、独り歩きをしていても、私は人に支えられているとよく感じました。でも、今は違います。ちょっとしたことなんですけれども、駅まで誘導してくれる、電車に乗ったら空いている席まで案内してくれる、スーパーではお客さんが買物を手伝ってくれる、並ぶときも何げなく手を貸してくれる、そんなことが少なくなりました。電車は窓を開けているから車内放送がよく聞き取りにくく、降りる駅を間違えないように緊張状態で乗っています。
 不要不急の外出はやめましょう、だから家から出ない、それはある意味私たちにとっては楽です。でも、それは限度があります。散歩も一人ではできにくいです。近所のスポーツセンターには行けないので、障害者のスポーツセンターに行くんですが、そこもずっと閉鎖状態。私もそうですが、動かない自転車を買ってひたすらこぐ。見えなくなっても頑張ってきたけど、もうどうでもいいや、死んだ方がましだという電話を受けたことがあります。出会って手を握り、肩をたたき合って、励まし合って、やっと生きている人も大勢います。
 コロナウイルス封じ込めのワクチン接種が始まりました。ここでも視覚障害者は大変な思いをしているようです。通知が分からず放っておいたという人が少なからずいます。都会や地方、自治体によっても様々な対応です。何にも印がなければ、ただの紙切れです。電話を掛けてもつながらない。パソコンやスマホから申し込める人はまだ僅かです。
 人の手を借り、目を借り、何とか危なっかしく生きているのが実態です。こんな状態を一刻も早く抜け出して、人と関わり合える日常を早く取り戻したいと思っています。
 一問目は以上です。
○田村智子君 ありがとうございます。
 本当に人との接触ということの制限がどれだけ視覚障害の方にとって不安と、それから、実際に心が折れるほどの苦しみをもたらしているかということを率直に語っていただきました。
 二つ目の質問ですけれども、働く、就労における課題について、どのような課題、問題を感じておられるか、お答えいただきたいと思います。
○参考人(藤野喜子君) 視覚障害者であっても能力を生かして弁護士や医師で立派に働いている方はおられます。また、今までの仕事を辞めずに、見えなくなっても一定訓練を受けて職場復帰をされている方もおられます。盲学校を卒業して、大学に行って、一般の企業に勤め、頑張って働いている人もおられます。
 ですが、圧倒的多数は伝統的職業であるあんまマッサージ、はり、きゅうの仕事をしています。かつては病院や特別養護老人ホームなどで安定的に働けていました。自宅開業も生活が成り立っていました。西暦の二〇〇〇年でした。介護保険導入、それから自治体の補助金制度の見直し、鍼灸養成学校が急激にできたことなど等あり、視覚障害者のあんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、私たちはあはき師と言っていますので、これからあはき師と言わせていただきますが、あはき師は最低の生活、二百万円以下という人が多く見られるようになりました。
 そして、このコロナ禍です。介護保険を使っての訪問マッサージ業は患者が激減して、そこに働くマッサージ師は解雇という方もおられました。企業や大学等に勤務し、社員や職員の健康管理の目的でマッサージをしているヘルスキーパーは自宅待機、その後、自宅待機のまま解雇されたということも聞いています。自営業者は元々何の補償もなく、コロナ禍で惨たんたるものだよとため息をついている友人がいました。
 持続化給付金を申請するにしても、視覚障害者には大変難しく、相談しながら会としてお手伝いをしてきました。こんな状態がどのくらい続くのか分かりませんが、PCR検査も自由にできて、安心して治療をしたい、持続化給付金を一回ではなく二回、三回と支給してほしいと、切実な声を聞いています。
 こんな中ですが、重度障害者等就労支援特別事業が昨年十月から始まりました。詳しくは資料、「点字民報」一月号を御覧になってください。
 私も三十年間あはきの自営業をしてきました。治療室の清掃、書類の代筆、代読、出張の同行等、公的サービスは何一つ利用できませんでした。店を構えず、出張専門でやっている健常者のあはき師が近所に来て、これは全くかなわないなと思いました。今までは、経済活動には福祉制度は全く利用できないことになっていたのです。
 重度障害者等就労支援特別事業は地域生活支援促進事業に位置付けられましたので、これからは自治体に委ねられることになります。声を上げている自治体はさほどなく、視覚障害者を対象としてはまだ、対象としている自治体はないようです。雇用と福祉の連携、私たちも自治体に働きかけ、この制度を発展させていきたいと思います。
 制度を利用して、視覚障害者も社会参加をもっとしていきたいと思っています。
 二問目は以上です。
○田村智子君 ありがとうございます。
 全視協の皆さんは、駅などの交通バリアフリーについても大変積極的に取り組まれてこられて、実際に実態調査等々も行ってこられています。
 今回の障害者差別解消法の改正では、これまで事業者に対して努力義務としてきた合理的配慮が義務付けとなります。鉄道事業者のバリアフリーの取組など、改正を受けて変わっていくということが求められるわけです。
 事業者の姿勢を変えるために何が必要か、また行政がやるべきことは何か、お答えいただきたいと思います。
○参考人(藤野喜子君) 今回の改正で合理的配慮を民間にも義務付けるとのことです。私事になりますが、二つのことをお話しさせていただきます。
 一つは、家探しです。
 最初に就職したいと思ったとき、もう四十年も前のことなんですが、実家から遠方なのでアパートを借りようと思いました。朝から晩まで母と二人で不動産屋を回りましたが、見付けることはできませんでした。ああ、全く目が見えないの、それは無理だね、理由は、火事を起こされたら困るからねということでした。それはどこでも同じ答えでした。その当時は母も叱られました。見えない子を一人で生活させるなんて、あんた薄情な親だねと言っていました。
 結局、就職も家も諦めました。そして、二年前、東京に家を探したとき、四十年前と大して変わっていないなということを感じました。でも、理由は少し違っていて、うちにはエレベーターがないから、階段は危ないからということがありました。とんとん拍子に話が決まっていくなと思ったら、同行援護の人を私の夫と勘違いして、ああ、夫婦じゃないの、じゃ駄目だねと言われました。
 もう無理だなと思ったとき、そうですかと引っ込んでいたら何も変わらないと、私は視覚障害者の生活実態をお話ししたのです。訓練をすれば独りで暮らせるようになること、買物も料理もすること、階段はアパートだけではなく世の中にたくさんあること等。その不動産屋は最初は気乗りしなかったようですが、探してあげましょうということになって、今住みよいところに探してもらいました。
 二つです。
 私の夫は十三年前に他界したんですが、その前に入退院を繰り返しました。最初のとき、私が付き添っていきましたが、御家族の方はと夫に聞き、妻ですがと言うと、はあという感じでした。身内以外の代筆が認められないことも多く、義理の妹に来てもらったことや、入院して三か月がたち、慢性期病院に転院するときも悔しかったり悲しかったりしましたけど、その、御家族は、妻です、はあというあのショックは今も忘れることができません。私は家族じゃないのか。でも、その看護師は悪気はなく、普通の反応だったかもしれません。その人が差別をしたという意識はないと思います。
 意識はなかなか変えられません。ルール、法律を作り、法律が先を行き、意識を変えていくものだと思います。
 私は、高校二年のとき、独り歩きを始めました。一年間の歩行訓練を受けました。次の年、駅のホームから線路に転落しました。まだ点字ブロックがありませんでした。そのとき、自分を責めました。何であれだけ大変な訓練したのに落ちたんだ、そんなことを自問自答していました。ですが、自分の努力だけでは生きられないということも落ちたことで感じました。
 あれから四十五年たち、私は今東京にいます。多くの駅にホーム柵があります。この駅は落ちないと思うだけでとてもうれしくなり、るんるんとした気分になります。トイレの入口では音声が流れ、中はとてもきれいです。でも、駅からどんどん駅員がいなくなります。私たちは、柵ができても、人の対応が一番有り難いです。カメラがありますといいますが、カメラには手がありません。何かあったときにどう対応してくれるのでしょうか。
 役所でも銀行でもデパートでも、その手続や買物は専門家としてきちんと対応してほしいのです。
 法律を使っていく、差別と感じたら勇気を持って関係機関に訴えていく、法律を育てていくのも私たちの責任と考えています。
 ありがとうございました。
○田村智子君 本当にありがとうございました。差別解消法の審議でこうした当事者の方の声を私たち議員と政府、大臣含めて聞くことができたのは、とても貴重な時間になったというふうに思います。
 一つ一つのことについて政府にただしていきたいところなんですけれども、今日は朝日政務官にお越しいただきましたので、家探しも国土交通省なんですが、是非今のはお聞きいただいて、省内で持ち帰っていただきたいと思います。
 お聞きしたいのは、このホームからの転落事故の防止策というのは、まさに命が懸かった問題なんですね。指摘のあった駅員の配置も含めて、事業者の取組を強力に促進する国の施策が求められていると思います。国交省として、この義務付けという法改正を受けてどう取り組むのか、お願いいたします。
○大臣政務官(朝日健太郎君) お答え申し上げます。
 藤野参考人、本日は貴重な御意見をありがとうございます。
 国土交通省よりお答えさせていただきます。
 視覚障害者を始め全ての利用者が安心して鉄道を利用できるように、国土交通省といたしましては、ホームドアの整備を一層推進すべく、新たな目標を定めました。
 具体的には、これまで駅単位の目標であったものを、細やかに進捗をフォローするために、ホームですね、番線単位の目標といたしまして、令和七年度までに、優先度の高い三千番線、うち一日当たり平均利用者が十万人以上の駅で八百番線を整備し、この整備ペースを二倍に加速化していく予定であります。
 一方、ホームドアの整備には時間や費用を要することもありまして、ホームドアによらない安全対策を検討する必要があります。このため、視覚障害者や支援団体や学識経験者の方々を委員とする新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会を昨年十月に設置をいたしました。
 この検討会では、視覚障害者の方がホームから転落された原因を調査するとともに、AIなど新技術を活用した対策の検討、加えて、歩行訓練士によるホーム上の歩行訓練など、視覚障害者の方々にも御参加いただき、取組を進める予定でございます。
 また、参考人からもありましたけれども、お声掛けが大変重要だということも踏まえまして、駅員による声掛けなどソフト対策も進めてまいります。毎年、全国の鉄道事業者と障害者団体、国等が連携をいたしまして、「声かけ・サポート」運動強化キャンペーンを行っております。このキャンペーンを通じまして、障害者の方々へ声掛け、見守りが促進されるように取り組んでおります。
 さらに、時間帯によって駅員が不在となる駅や終日無人の駅においても障害者の方々が駅を安全、円滑に利用できることが重要でありまして、現在、障害者団体、鉄道事業者、国土交通省が連携をいたしまして検討を進めております。
 国土交通省といたしましては、これらの様々な手段を講じることで、視覚障害者を始め全ての利用者が安全、安心に鉄道を利用できるように引き続き取り組んでまいります。
○田村智子君 是非よろしくお願いしたいと思います。駅員の配置、本当によろしくお願いしたいというふうに思います。
 この障害者差別解消法にのっとった合理的配慮、これは参議院にも問われてきました。二〇一九年、横沢議員も当選されたんですけれども、同じときに、二十四時間の重度訪問介護を必要とするれいわ新選組の木村議員、舩後議員が当選されました。お二人の議員活動を保障するために何が必要か、議院運営委員会で議論を重ねたことは私にとっても大変貴重な経験となりました。議運の理事の大家議員もこの内閣委員会におられますけれども。
 この重度訪問介護サービスは収入を得る活動には利用できない、これが最も議論を要した問題でした。これまでと同様に利用できるようにという要請書も木村議員、舩後議員からは参議院に提出をされ、議運理事会では厚労省などからのヒアリングも行って、議員活動とみなす時間は参議院が費用負担をするという結論を得ました。
 これは国民の信託を受けた議員の活動を保障する対応として評価できると思うんですけれども、例えば地方議会で同じ対応ができるのかと考えれば、生活支援の事業が就労等で利用できないという根本的な矛盾の解決が求められていると思います。
 坂本大臣、国の施策の制度設計が障害者差別解消の足かせとなっているんじゃないのかと私には思えるんですけれども、大きな見地での問い直しが必要と思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂本哲志君) 障害者差別解消法は、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的としております。
 直接所管していない個別制度についてのコメントは差し控えさせていただきますけれども、この目的からは、障害のある方が地域で質の高い自立した生活を営むため、就労等について必要な取組を進めることも大変重要であるというふうに考えております。
○田村智子君 今日、本当に全視協のこの「点字民報」が非常に分かりやすく書いてくださった資料を提供いただいたので、是非皆さん見ていただきたいんですけれども、昨年十月から重度訪問介護サービス利用者等職場介助助成金、通勤援助助成金が創設をされたと。障害者を雇用する事業主が重度訪問介護サービスを事業者に委託する場合の助成金なんですね。
 自営業者でも使えるということでのいろんな前進を皆さんの運動でつくってきたということなんですけれども、しかし、この職場介助助成金、この助成金、障害者の法定雇用率未達成の事業者が支払う納付金が原資なんですよ。雇用率未達の事業者がいっぱいいなければ助成金制度として成り立たないということになるわけですよね。また、雇用保険の対象外である国や地方自治体はこの助成金の対象外というふうにもなります。また、通勤援助助成金、地方自治体の事業で実施する意向を示しているのは、この全視協の皆さんの調査で十三自治体のみと厚労省からは聞き取ったということですけれども、これでは安定的な制度とはとても言えないわけです。
 この重度訪問介護サービスというのは、お仕事でなく出かけるんだったら使えるんですよね。だけど、仕事で出かけるときに使えない、仕事中には使えない。しかし、重度の障害を持つ方は、どこで生活しようとも、どういう活動やどういう仕事をどこでやろうとも、欠かすことのできないこの介護なんですよ。
 障害者の方の基本的な権利保障の制度、それを、就労は対象外とか、それは事業主が負担してくださいとか、これは障害者雇用促進の足かせになっていると思います。根本的な見直しが必要だと思いますが、厚労政務官、お願いします。
○大臣政務官(大隈和英君) 御質問ありがとうございます。お答え申し上げます。
 重度の障害者に対する就労中の支援につきましては事業主に対する助成措置を講じておりまして、重度訪問介護におきましては経済活動に対する支援は対象としていないということでございます。
 一方、近年、ICTの発達、働き方の多様化などを背景に、重度の障害がある方も働ける社会が実現している中で、障害者がより働きやすい社会を目指すためには、御指摘のように、通勤や働く際に必要となる介助、特に最近ではコロナ禍におけるテレワーク、自宅での、在宅での仕事ということもございますが、などの支援の在り方が重要な課題であると認識してございます。
 そこで、重度の障害のある方の通勤や職場等における支援につきまして、雇用と福祉の両施策が連携した取組といたしまして、意欲的な企業や自治体を支援するため、令和二年度十月より障害者雇用納付金制度に基づく助成金の拡充を図るとともに、障害者総合支援法に基づきまして自治体が行う地域生活支援事業における支援メニューを創設して実施しているところでございます。
 さらに、令和三年度におきましては、この自治体が行う地域生活支援事業による取組について更に促進すべき事業として新たに、国がこれ二分の一負担となりますが、地域生活支援促進事業に位置付けまして、より一層の取組推進を図っているところでございます。
 厚生労働省といたしましては、こうした新たな取組が円滑に実施されますよう、あらゆる機会を捉えまして周知等を行うとともに、その利活用の状況等を踏まえまして必要な対応をしっかりと行ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 私が提起した根本的な矛盾にはお答えになっていないんですよ。雇用率を満たしていない、つまり障害者の雇用をしていないという企業がいない限りはこの助成金は成り立たないんですよ。その根本的な矛盾の解決は国において求められていると。そのことを本当に、この場でこれ以上の答弁出ないのかもしれないんですけれども、これやらなかったら、国は何で差別解消法を作っているのかということになっちゃいますよ、本当に。これを受け止めていただきたい。
 もう一つ、どうしても質問したいのが、障害者就業・生活支援センターなんです。一人一人の障害者の就業と就労継続などを伴走型で行っていて、障害者に対しても、それから事業者に対しても、どちらの支援も行っています。全国で今三百三十六か所、NPO法人や社会福祉法人などが厚労省からの委託費で運営しています。
 厚労省の障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書の素案が五月二十一日に公表されましたけれども、ここでも、今後、就業支援、生活支援双方における基幹型としての機能も担う地域の拠点としての強化を求めています。
 ところが、今年度の予算、これ国からの委託費が大幅に減額をしているのではないでしょうか。ちょっと時間の関係でこちらから言います。四・七億円、総額で減額になっていまして、今、このセンターの皆さんが大変苦慮している状態になっています。これ、何でこんな減額が行われたのか、お答えください。
○政府参考人(達谷窟庸野君) 令和三年度の、今先生から御指摘ございました障害者就業・生活支援センターの予算についてでございますが、先ほど先生おっしゃられたとおり、約四・七億円の減額、総額は約七十九億円でございまして、昨年度の当初予算からすると約四・七億円の減額、前年度比で約五・六%減となってございますが、これは過去の予算の執行状況等を勘案した上でこのような予算の措置をしたということでございます。
○田村智子君 今、委託費の執行率ということを理由にしているんですけれども、これ、コロナ禍で、企業での研修や職場体験が中止をされたり、一時的に利用者が減少したと、その影響があるんですよ。また後で具体的に指摘しますけれども、委託費の使い勝手が悪くて、実際には法人の持ち出しがあるのに、使い残しになってしまうと。
 このセンターが加盟するNPO法人全国就業支援ネットワークが三月に調査を行っています。百三十一センターの集計を見てみますと、昨年度と比べて減額となるというふうに回答したのは七五%。人件費の確保さえ困難という実態も寄せられています。この調査を踏まえてこのネットワークは、今回の予算の大幅な減少は事業実施そのものを非常に困難なものにします、事業からの撤退につながることを危惧しますと、こういう要望書も提出をしています。
 そもそも、そもそもね、この何で四・七億円もの減額かというと、雇用調整助成金がコロナ禍の下で急増していて、雇用保険財源が逼迫している、これが今回の減額の一番の要因ではないんですか。そうであるなら、一般会計から繰り入れるのが当然ですよ。事業継続が困難と、ここまでの要望が出ています。何らかの手だてが必要だと思いますが、いかがでしょう。
○大臣政務官(大隈和英君) お答えいたします。
 障害者就業・生活支援センター事業の令和三年度予算につきましては、過去の執行状況等を踏まえまして減額となっておりますが、各センターからの要望も踏まえまして、先生御指摘のように、効率的な執行が行えるように、例えば、本来単年度契約でリースが主だったものを、物品の購入等を中心に可能な限り運用の柔軟化というものを図っているところでございます。
 現在、障害者の就労支援を更に充実させるため、厚生労働省におきましては、障害者雇用と福祉それぞれの有識者参集の下、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会を開催しているところでございますが、就業面と生活面の一体的な支援を行っているセンターに対する期待は高く、その在り方について議論されているところでございます。
 今後、これも踏まえまして、労働政策審議会障害者雇用分科会におきまして障害者就業・生活支援センター事業の在り方について議論をいただくこととなっておりまして、引き続きセンターの安定的な運営に向けまして必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○田村智子君 今年度についてはやっぱり雇用保険財源がこれいっぱい使われる状態にあるのは仕方がないですよ、コロナ禍なんだから。是非、一般会計からの繰入れ等々をやって、この財源の逼迫をもって予算が減っていく、委託費が減っていくと、こういうことのないようにしていただきたい。
 そもそも委託費の範囲内での運営が求められるので、執行率が一〇〇%に抑えると、一〇〇%内に抑えるということを前提としているような仕組みになっているんですよ。しかも、一〇〇%を切った理由で最も多いのは、産休、育休、途中退職による欠員。欠員補充の努力をしているんだけれども、これを理由にして委託費がまた切られていくとどうなるかというと、じゃ、その欠員状態を前提にしたような人員配置になってしまうじゃありませんか。人員強化ができないということになっていくんですよ。
 しかも、厚労省の委託費の計算は実態に合っていないという指摘が多々寄せられています。ネットワークの調査の書き込みの中にいっぱいあります。住宅手当や扶養手当が認められない、公用車が不可欠な地域なのにリース代が出ない、三人の正規職員を見積もったら人件費部分が高いと言われ、一名を経験の浅い臨時職員とする見積りに変更した、こういう事例いっぱいあるんですよ。スキルや経験を有するスタッフを配置したい、職員のモチベーションが向上する処遇にしたいと、こういう委託費になっていないということだと思うんですね。これ、抜本的な改善こそが必要だというふうに思います。
 雇用保険財源だけで運用することがふさわしいのかどうか、このことも含めた本当に抜本的な検討を行っていただきたい。人員の体制強化とスキルアップ、それを保障する処遇、こういうことをやっていかなきゃいけないと思うんですよ。いかがでしょうか。
○大臣政務官(大隈和英君) 御指摘の、実際の執行状況を踏まえた委託費措置になっていないという御指摘でございます。
 委託額の配賦に当たっては、来年度は可能な限り個別の事情も踏まえた上で予算の配賦ができるよう、今後、障害者就業・生活支援センターに対する個別ヒアリングを早期に実施いたしまして、きめ細かく対応していく予定でございます。
 障害者就業・生活支援センターが地域の中核的な就労支援機関としてしっかり機能を果たしていけるよう、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会や労働政策審議会障害者雇用分科会の議論を踏まえつつ、引き続き障害者就業・生活支援センターの安定的な運営に向けまして必要な措置を検討してまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ本当、監査が細か過ぎて、こういうふうに使いなさいというのに対して、今の、正規で三人雇いたいのに一人は非正規になっちゃうような監査になっているんですよ。不正に使われていたら別ですけど、そんな細かい監査がなぜ必要なのかということも含めて是非検討いただきたいんです。
 最後、坂本大臣にお聞きします。
 この今私が指摘したセンターの予算の問題も含めてですけれども、障害者の施策が福祉と就労・雇用、この二つに予算上、まさに縦割りになっているんですよ。ぱっかり分かれちゃっているんですよ。例えば、公務職場での就労についてはセンターは支援の対象外になってしまっているという問題も、これ雇用保険財源だからできませんよという話にもなってしまう。
 だから、この二十四時間切れ目なく必要な介助が、就労や通勤時間では違う制度を受けなさいというふうに言われてしまう。障害者の方にとっては一貫した、一貫したサービス利用をしようとしていても、予算上ぱっかり分かれてしまう。これ、事業者もそうで、今のセンターというのは生活支援事業もやっているんですよ。そうすると、その生活支援事業というのは別のところからの財源でやってくる、就労については雇用保険財源からやってくると。非常にこういう混乱、混乱というか、煩雑な手続も必要となってくるんですよ。
 こういう国の施策がやはり障害者の方が自らの意思で働くことが当たり前という社会をつくっていく上での障壁になっているというふうに私は思います。これ、厚労省の各部署に任せているだけでは駄目だと思います。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂本哲志君) 委員御指摘の福祉分野とそれから雇用分野、いずれも厚生労働省の所管分野でありまして、厚生労働大臣の下で必要な連携が図られるものと承知しておりますけれども、私たち内閣府といたしましては、第四次の障害者基本計画の中に、障害福祉サービスの質の向上、それから総合的な就労支援、こういったものを盛り込んでおります。
 こういった計画に基づきまして、障害者の自立及び社会参加の支援のための施策を政府全体として着実に進めてまいります。
○田村智子君 終わります。


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