基地や原発周辺などの住民を監視する土地利用規制法に基づく区域指定について、政府は廃炉が決まっている原発も対象になる可能性があると明らかにしました。15日の参院内閣委員会での日本共産党の田村智子議員への答弁。
田村氏は、同法で重要施設として指定する「生活関連施設」について、廃炉が決まっている原発も対象になるのかと質問。木村聡内閣審議官は「現に核燃料物質を有しているという個別の事情があれば、指定の要否を適切に判断する」と述べ、区域指定される可能性を認めました。また、原発を指定する理由について「原子力施設の災害防止および核燃料物質の保護の必要性を踏まえると『生活関連施設』の要件を満たす」と述べ、停止中の原発も指定される可能性があると認めました。
田村氏は、原発周辺の安全保障を脅かすのは「原発事故を起こした反省もなく、保守管理さえ経済優先で軽視する原子力事業者であり、再稼働に突き進む政府そのものだ」と批判しました。
2021年6月17日(木)しんぶん赤旗
【第204回国会 参議院 内閣委員会 第28号 令和3年6月15日】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
重要施設として政令で指定する生活関連施設についてお聞きします。
自衛隊との共用空港というのは自衛隊施設に準ずる扱いだろうと思います。では、原発を指定する理由は何ですか。六月九日現在、稼働しているのは五十四の原子炉のうち七つだけです。稼働していない原発、また廃炉が決まっている原発も対象となるんでしょうか。そもそも原発の機能とは何を指すんですか。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
本法案におきましては、生活関連施設につきまして、国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるものと定義をさせていただいているところでございます。
御指摘のございました原子力関係施設につきましては、その電力供給の機能でありますとか、あるいは原子力施設の災害防止及び核燃料物質等保護の必要性を踏まえますと、本法案の生活関連施設の要件を満たすものと、このように考えているところでございます。
その上で、稼働中、停止中の原子力発電所の取扱いについても御指摘を賜りましたが、発電を停止しております原子力発電所につきましては、現に核燃料物質を有しているという個別の事情も勘案した上で、これは、法定しております土地等利用状況審議会の意見を伺った上で指定の要否を個別に適切に判断をさせていただきたい、このように考えているところでございます。
以上でございます。(発言する者あり)
○委員長(森屋宏君) 木村内閣審議官。
○政府参考人(木村聡君) 大変失礼いたしました。
廃炉が決まっているものにつきましても、所内に現に核燃料物質を有しているというその個別の事情がございますれば、そういった事情も勘案した上で、法定する手続に従いまして指定の要否を適切に判断をさせていただく、こういうことでございます。
以上でございます。
○田村智子君 結局、そうすると、原発を指定するのはなぜかと。それは、核燃料を安全に保管するというのが原発の機能だというような法案になっているんですね。その機能を阻害されることを防ぐ、そのための法案という立て付けだというふうにしか理解できません。
既に原子力発電所など国内の核関連施設は、二〇〇一年に米国で起きた九・一一のテロ事件以降、核テロリズムへの対策が進められています。警備強化、個人の信頼性確認制度の導入など、事業者にも様々な対策を義務付ける法改正も行われました。同時に、自動小銃など通常の銃器対策部隊より強化された武装警察部隊による警備まで行われています。その上に更に周辺土地の利用規制までしなければならないほど原子力発電所そのものが危険な施設だということなんですか。大臣、いかがですか。大臣。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
御指摘いただきましたのは原子炉等規制法の件ではないかなと存じますけれども、この原子炉等規制法につきましては、自然災害やテロリズムなどの発生も想定いたしまして、原子力施設の設計等に関しまして、原子力事業者に対しまして必要な規制を行っているものであると、このように承知をしているところでございます。
他方、本法案は、安全保障の観点から、土地等の利用状況を調査いたしまして、土地等の利用者に対して重要施設等の機能を阻害する行為を必要に応じて規制をさせていただくものでございまして、法目的が異なるというものと考えているところでございます。
以上でございます。
○田村智子君 核燃料を安全に保管する、それ以外の安全保障って何なんですか。何なんですか。
○政府参考人(木村聡君) 重ねての答弁になって恐縮でございますけれども、法律に定義させていただいています生活関連施設の定義でございますけれども、国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な影響が生ずるおそれがあると認められるもの、これを生活関連施設として定義させていただいておりまして、原子力関係施設につきましては、その電力供給機能でありますとか、原子力施設の災害防止及び核燃料物質等の保護の……(発言する者あり)
○委員長(森屋宏君) 静粛に。
○政府参考人(木村聡君) 必要性を踏まえますと、この生活関連施設の要件を満たし得るものと考えているところでございます。
以上でございます。
○田村智子君 だって、発電していないところは入らない、入るかどうか分からないって言ったじゃないですか。
原発の安全保障を脅かしているのは、柏崎刈羽原発見ても、原発事故を起こした反省もなく、決められた保守管理さえも経済優先で軽視している原子力事業者ですよ。絶対の安全などないのに、老朽原発まで再稼働に突き進んでいる政府そのものじゃありませんか。
原子力発電所は、発電という機能そのものに対して強い反対の意見があり、私たちも、原発ゼロ、つまりその機能を止めるべきだというふうに求めています。そういう施設をわざわざ指定して機能阻害行為を防止するというんですよ。
米軍基地も同じです。特に沖縄県では、既に返還期限を過ぎている普天間基地は、本来、機能を停止し、即刻返還が求められているはずです。日本が外国に侵略されていいなんて誰も思っていないですよ、誰も思っていない。しかし、中東地域で暗殺だとか反政府工作まで行う特殊部隊、あるいは殴り込み部隊である海兵隊の拠点としてオスプレイまで配備する。これが日本の安全保障にどう資するというのかと。米軍基地にはこういう疑問があるわけですよ。低空飛行もお構いなし、墜落事故、部品落下事故、現に起きています。こういう米軍基地に対して、その機能はむしろ、その機能はむしろ日本国民の安全を脅かしている。基地をなくしてほしいという、こういう住民の要求は私は尊重されるべきだと思います。
ところが、米軍基地や原発について反対の意見を持ち行動する者に対して、これまでも警察や自衛隊による監視行動、調査、威圧的取締りは現に行われてきました。だから、本法案でも、機能阻害行為、そのおそれのある行為とは何かが問われているのに、条文上の歯止め、縛りはないんですよ。
今日も文書で、六条の土地利用状況の調査って何なのか、もう政府の答弁よく分からないから、文書で配っていただきました。その中でも、結局条文で限定してないって書いてあるんですよ。条文での制限は設けていないと。ただ、市民活動の単なる参加者を調査の対象とは考えていないと。
もちろん、私は、この法案を根拠にしてそんな監視が行われることあってはならないと思いますけど、それは考えで示すことじゃないんですよ。条文で縛ることなんです。その責任が立法府に問われているんです。
改めて機能阻害行為についてお聞きします。
条文では具体の例示は一切置かず、閣議決定で決める基本方針の中で具体的な内容を定めることとしています。その行為について法律で規定すべきだという質問に、大臣は、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定される、このため、特定の行為を普遍的、代表的機能阻害行為として法案に例示することは必ずしも適当ではないという答弁を繰り返しておられます。同じ答弁はもう繰り返さなくて結構です。
私はおかしいと思うんです、この答弁。法律は何のためにあるのかさえ問われるような答弁です。具体の行為を何も示さないことが安全保障の目的であれば、抽象的な規制ということが許されてしまうということなんでしょうか。同じ答弁は繰り返さなくていいです。安全保障目的であれば具体の行為は示さなくていいという判断なんですか。大臣。
○国務大臣(小此木八郎君) 国民のやっぱり安全保障、安全を保障するということについて、不確定な危険が外部からやってくることについて、それを一つ一つ説明をする、その行為者に対するですね、それを一つ一つ行為者に対して、まあ手のうちを明かすという言葉が適切かどうかは分かりませんけれども、そういうことを明かしてしまって、守ることができるかと言えば、私はそれは無理があると思います。
○田村智子君 だけど、基本方針では書くんでしょう。基本方針ではできるだけ具体的に示すっておっしゃっているじゃないですか。それは、基本計画か、基本計画を策定し、変更するときには審議会にもあらかじめ意見聞くんでしょう。何で国会に提案しないんですか。そんなの国会に提案して、国民の前で、こういう行為が規制されるんですよと、それでいいですかと審議する。当たり前じゃないですか。なぜ審議会に意見をあらかじめ聞く、なぜ国会に示さないのか。いかがですか、大臣。
○国務大臣(小此木八郎君) 御指摘の機能阻害行為についてですが、様々な態様が想定されるためということを申してまいりました。先ほども、仮に特定の行為を代表的、普遍的な機能阻害行為として法案に規定して、規定することとした場合、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等を適時に反映することが困難と考えておりますことは変わってございません。
また、仮に特定の行為を機能阻害行為として法案に例示した場合、例えば、機能阻害行為は例示したもの又はそれに類似したものに限定されるのではないか等の誤解を生じかねさせないといった問題があろうかと、こういうふうに思います。
閣議決定である基本方針において想定される機能阻害行為を例示としてお示しすれば、安全保障をめぐる内外情勢の変化に即応して機動的に変更、解除を行える、また、例示であることを明らかにすることによって例示外の行為を助長するおそれも相当程度回避できるものと考えております。
○田村智子君 だって、何とか何とかの行為等って何でも書くじゃないですか。情勢が変化したのなら、変化を受けて出せばいいじゃないですか。有事立法じゃないんですよ、これ。平時の立法じゃないですか。そんなの、情勢が変わって変化が起きたんだったら、国会にもう一度改正法案出せばいいだけの話ですよ。だから、法の体を成していないんですよ、これは。
政府が土地利用の規制を行うときに、その規制が憲法が保障する基本的人権との関係で妥当なものであるのかどうか、行き過ぎた権利制限、人権侵害とならないか、立法府は法律によって政府を縛る、そういうことをやらなきゃ駄目なんですよ。それが日本国憲法が求める国会の機能なんですよ。
昨日、参考人質疑で、弁護士の馬奈木参考人の意見陳述、これインターネット上でも注目されています。大日本帝国憲法、戦時下での要塞地帯法でも、規制される行為を条文に明記していたという指摘。私も、ですから、要塞地帯法、目を通しました。一八九九年、明治三十二年の立法時にも、区域をちゃんと条文に明記して、一キロ以内というのが第一区域なんですよ、その区域ごとに禁止される行為、例えば新設不可の建造物は不燃物を使った家屋、倉庫とか、三項目あるんです。新設に許可を要する建造物、埋葬地とか風車、水車など、これは明記されているんです。
さらに、一九四〇年、昭和十五年の改定で、その対象が相当に広がっていたということも官報にちゃんとその改正法案が、改正の法文が出ているから分かるんですよ。例えば、規制される、造っちゃ駄目というのが、運動場とか公園とか果樹園とか桑畑とか、ここまで広がっていった。これ、当時の法律の条文によって、戦前、戦中、大政翼賛会となった帝国議会においてさえ、政府の規制を法律によって明記し、それがどう変わっていったのか、時代の検証に堪え得るものになっているんですよ。
日本国憲法の下で、戦争のさなかでさえ、安全保障が最も問われる、国防が最も問われるそのさなかでさえも、そこまで国民に対して、これが禁止されているんだ、これはやっては駄目なんだと明記をしている。日本国憲法は、国民の主権を、私たちが主人公になったんですよ、国民が主人公になったんですよ。その下での立法で国民の規制について何ら示さない。これ法律ですか、大臣、いかがですか。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
機能阻害行為についてのお尋ねだと存じます。
こちらにつきましては、先ほども大臣から御答弁申し上げましたけれども、法律の中で代表的、普遍的な行為の類型を示すことが難しいということで、こちらにつきましては、土地等の利用者の方の予見可能性を確保する観点から、閣議決定する基本方針において可能な限り具体的に例示をさせていただきたいと、このように考えているところでございます。
そして、機能阻害行為についての勧告、命令の仕組みでございますけれども、まず、私ども、審議会にお諮りをした上で勧告をさせていただくという仕組みでございます。その上で、命令をさせていただきますときには、これ、命令に従っていただけない場合は刑事罰の対象になるわけでございますけれども、その名宛て人の方には対象となる行為が明確にお示しされると、こういう仕組みでございます。
以上でございます。
○国務大臣(小此木八郎君) 今御指摘された要塞地帯法ですが、一八九八年、明治三十一年に制定された法律で、要塞地帯と指定された地域においては立入りや撮影などを禁止若しくは制限する内容の法律であったと承知いたします。
本法案ですけれども、この安全保障の観点から、重要施設の周辺等の土地等の利用実態を調査をすると、重要施設等の機能を阻害する行為が認められた場合に土地等の利用規制を行うものとして取りまとめたものであり、御指摘の要塞地帯法とは全くその内容が違うものであります。
冒頭から答弁いたしておりますように、やはり地方から聞こえた声、不安、リスク、懸念、こういったものが、今防衛施設の周辺で、定められた距離の中での周辺で何が起こっているか分からないということの懸念を調査するというのが第一義でありますので、御理解をいただきたいと思います。
○田村智子君 戦後、土地の利用というのは本当にまさに国民の主権になったんですよ。私たちが土地を持ち、土地を使い、土地を売り買いする、それは私たちの権利として保障されているんですよ。それを規制しようというときに何ら具体的なものを示さない、だから日本国憲法の下での法律の体を成していないと言っているんですが、それを御理解いただけない。もう、ちょっと恐ろしい事態だというふうに思います。
ちょっともう一点お聞きしたいのは本法案第二十一条です。
既存法で対応することができる場合は既存法での対応ということもやるわけですね。一方、注視区域内の土地が阻害行為に使用される明らかなおそれがあると認めるときは勧告をすることができるとされている。既存法は刑罰の対象としていないだけでなく、そもそも未遂どころか準備行為の段階では規制の対象としていないものでも本法案の利用規制の対象としているというふうに私は理解します。
ちょっと具体に例を挙げます。電波妨害行為というのは皆さんが何度も答弁されてきた。これ、無線機などを当該土地に運び込んでいるのを発見した場合にも電波妨害のおそれありと、そういう土地の利用であるということで勧告をすることができるんでしょうか。(発言する者あり)
○委員長(森屋宏君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(森屋宏君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
重要施設等の設備に対する電波妨害についてでございますが、機能が阻害されたことを関係省庁等からの情報提供によりまして内閣府に新設します部局が把握いたしました場合には、当該行為は電波法違反に当たりますことから、本法案第二十一条の規定に基づきまして、総務省に対し、電波法に基づく措置の実施を要求することが想定されるものと考えてございます。
他方、対象区域内の土地等に電波妨害にも利用可能なアンテナが設置され、機能阻害行為が行われる明らかなおそれがあると認められる一方で、機器などが接続されておらず、電波を発し得る状態にない場合などは電波法の違反には当たらないということから、本法案第九条に基づき、当該アンテナの撤去を勧告、命令をさせていただくということが想定されるわけでございます。
以上でございます。
○田村智子君 まあ、あり得るという答弁ですよね。
電波妨害という行為を電波法はどう規制しているか。違法に無線局を運営すること、違法に無線局を開設することまでが禁止行為です。設備が電波を送信できる状態にあり、かつ、その操作をできる者が一緒にいることを無線局というふうに電波法では定義をしています。
単に無線設備を持つということだけでは罰則の対象ではありません。これ当たり前で、その予備行為まで罰すると、例えば親から無線設備を譲り受けたとか、転売目的で相対で購入をするとか、こういうことまで規制することになってしまって、売買、譲渡などの自由が規制されてしまうと。それ、そうされかねないからですね。ところが、本法案の注視区域として指定されれば、無線機を買うことさえ自由に行えない。それは、おそれのある、機能を阻害するおそれのある行為だということになりかねないんじゃないんですかね、今の答弁だと。
本法では、最終的に刑罰をもって規制する阻害行為とは何かを政府が決められる、そのおそれがどこまでかも政府が決められる。これでは重要施設の周辺に居住する者の自由は政府の判断で限りなく制約することが可能なんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○政府参考人(木村聡君) 重ねての御答弁になりますけれども、個々の事案につきましてこの対象になるかならないかということにつきましては、詳細を把握いたしません段階で一概にお答えすることは困難でございます。
その点につきまして、重ねての答弁になりますけれども、電波妨害にも利用可能なアンテナが対象区域内の土地等に設置をされまして、機能阻害が行われる明らかなおそれがあると認められる一方で、機器などが接続されておらず、電波を発射し得る状況にない場合には電波法違反にはならないということでございますので、このケースにつきましては、これ一般的な御説明になりますけれども、本法案第九条に基づきます勧告、命令の対象になることが想定されると、こういうことでございます。
以上でございます。
○田村智子君 だから、既存法、例えば電波法で対象となりにくい準備行為段階であっても機能阻害行為を防ぐことが重要だと、こういう答弁ずっと繰り返されてきたんですよ。だから、購入しただけだって対象になり得るんじゃないのかと。
ちなみに、電波法で妨害電波出した場合の刑罰というのは、懲役一年未満、罰金百万円未満ですよ。こっちは、購入しただけで二年未満、二百万円の罰則になりかねないんですよ。本当にむちゃくちゃな法律ですよね。
ここまでのフリーハンドを政府に与えてしまっていいのかと。何の縛りも歯止めもない、このような法案は、どんなに審議しても法案自体の欠陥を補うことはできません。廃案にすることが本委員会の責務であることを述べ、質問を終わります。