国会会議録

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学校給食 中学実施 国支援を 田村氏「貧困対策で重要」 参院文科委
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(写真)質問する田村智子議員=11日、参院文教科学委

 日本共産党の田村智子議員は11日の参院文教科学委員会で、中学校における学校給食の実施率が8割程度にとどまっている問題をとりあげ、子どもの貧困対策としても学校給食は重要であり、完全実施に向けての国の支援を求めました。

 田村氏は、NPO法人フードバンクと新潟県立大学が行った貧困世帯269世帯に対する調査結果を紹介。一日のうち主食、主菜、副菜がそろったバランスのとれた食事を1回もとれていない世帯が86%を超え、一人あたりの食費(一日)が平均329円、半数近くが300円以下で、体重の減少、貧血など子どもの健康に影響が出ていることが指摘されています。

 田村氏は、栄養バランスのとれた温かく美味しい給食を家庭の実態にかかわらず提供することは子どもの貧困対策にとって重要だと指摘。下村博文文科相は、財政の問題があるが、「今後、子どもたちが栄養バランスが良くておいしい給食が食べることができるよう文科省も働きかけて行きたい」と答弁しました。

 田村氏は、申し込み制の弁当を給食としている自治体もあるが、みんなで同じものを食べ協力して配膳する給食が学校生活を豊かにすると指摘。下村氏は、給食で連帯感や協同の精神を養うことは意義深く進めて行く必要があると答えました。

 

<以下、会議録>

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 九月二十五日、NHKの「クローズアップ現代」で「おなかいっぱい食べたい」というタイトルの番組が報道されました。
 農家や企業から規格外の商品を集めて福祉施設などに提供しているNPO法人フードバンク山梨と新潟県立大学が調査をしたところ、フードバンクの支援対象で子供がいる二百六十九世帯のうち、主食、主菜、副菜がそろったバランスの取れた食事を一日のうち一度も取っていないという世帯が実に八六%であるということや、一人当たりの一日の食費は平均で三百二十九円、半数近くが三百円以下、中には百円以下という世帯まであって、栄養不足で体重が減っているとか貧血で倒れるなど、子供たちの健康に悪い影響を与えているということも番組の中で指摘をされていました。
 子供の貧困対策の大綱では学習面での支援ということは強調されていて、私もこれは必要なことだと思うんですけれども、一方、この学びの前提でもある食事が満足に取れていない、こういう実態が現実にあるわけで、やはりこういう学ぼうという意欲が持てない現状、あるいは食の支援の必要性について、これはいろんな認識、必要だと思います。大臣の見解をまずお聞きしたいと思います。
○国務大臣(下村博文君) それは本当にそのとおりだと。
 私自身が、今後、フリースクールを支援していこうということで、川崎市で、ある意味では唯一に近いかもしれませんが、公的支援をしている、フリースクールに対して支援をしている、その視察に行きました。「フリースペースえん」というところが受皿になっているんですが、ですから、自己負担は全く掛からないんですが、唯一お昼代二百五十円だけは自己負担すると。
 その関係者に聞きましたら、本当にその日の食事もまともにできない子供たちが多いと。もしできるとしたら、三日前、コンビニで買ってきた冷蔵庫に置いておいたおにぎりを温めて子供に食べさせるみたいな、そういう、家庭でまともな食事ができていないので、二百五十円で自分たちで食材を買ってきて料理して給食といいますか、お昼を作ると、それを食べると。それが生きる力にも、育むことになっているということを実際目の当たりにいたしましたが、是非、この子供の適切な栄養摂取による健康の保持増進、これはしっかり文部科学省も今の時代に合わせた対応を考えていかなければならないと思います。
○田村智子君 この夏、厚生労働省の科研費補助金による研究、世帯の経済状態と子供の食生活との関連についての実証的研究というものの中間的報告が行われました。その中で、低収入の世帯の児童は休日の朝食の欠食が多い、それから家庭での野菜の摂取頻度が低い、インスタント麺やカップラーメンの摂取頻度が高い、こういうことが指摘をされたわけです。こうした調査からも、栄養バランスの取れた食事は学校給食だけという子供たちが少なくないということが推測されます。
   〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
 学校給食法は、学校の設置者に学校給食の実施に努めるよう求め、地方公共団体や国の責務として学校給食の普及を位置付けています。ところが、中学校について見ますと、完全給食を実施している学校はいまだ八割、特に横浜市、川崎市など大規模な自治体で実施が進んでいません。
 文科省は、中学での学校給食実施が、完全給食ですね、これが八割にとどまっている現状とその要因というのをどうお考えになっていますか。端的に。
○政府参考人(久保公人君) 中学校での実施率が低い理由につきましては、各教育委員会から事情を伺いましたら、やはり施設面、人員面での財政的な課題がある、あるいは弁当の方が保護者と子供の関係を深める等の教育的効果があるなどが理由として挙げられているのでございますけれども、中学校における完全給食の実施率は年々増加してきているところではございますし、文部科学省といたしましても、できるだけ学校給食を実施できるように、望ましいという要請はしてきているところでございます。
 今後、学校給食の教育的意義に鑑みまして、関係者の理解を深めますとともに、学校給食充実のための取組を進めていきたいと考えておるところでございます。
○田村智子君 中学校給食を実施していない学校の様子について少し聞き取りをしてみました。ある女子中学生は、お弁当を作ってもらえないし買えない、昼食の時間はトイレに隠れている。別の中学生は、友達から少しずつ分けてもらったり、給食の時間は机に伏して寝ているふりをしていると。学校の先生もどうしていいか分からないと、ある先生は見かねて子供にお昼御飯の代金を渡していると、こういうことも聞きました。また、訪問看護を行っている人からは、親御さんが心を病んでいて食事の支度ができない、夕食もスナック菓子という家庭もある、とても弁当を持っていくことはできないだろうと、こういう指摘もありました。
 給食を実施していれば、給食費は就学援助の対象になります。しかし、給食がなければ、お昼御飯を食べることへの支援というのは何もないというのが実態です。
 大臣、栄養バランスの取れた温かくておいしい学校給食を家庭の実態にかかわらず子供たちに差別なく提供する、これは子供の貧困対策として非常に重要な意味を持つと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、学校給食費については、生活保護制度による教育扶助や就学援助制度による補助を行い、低所得世帯への支援を実施しているわけであります。また、学校給食実施基準の制定や優れた学校給食の取組に対する表彰等を通じて優良事例の普及を図るとともに、各学校における適切な栄養の摂取による健康の保持増進のための取組を推進しているところであります。
 学校給食を実施していない自治体は、先ほど局長からも答弁がありましたように、弁当の方が保護者と子供の関係を深める等の教育的効果が期待できるとか、あとはまあ施設面、人員面の財政的な問題とかありますが、なかなかそうは言えない家庭状況が特に貧困家庭等であることは事実でありますので、是非、今後、子供たちが栄養バランスが良くておいしい給食が食べることができるような学校給食の充実について、文部科学省の方でも働きかけてまいりたいと思います。
○田村智子君 この中学校での学校給食をと求める運動も粘り強く取り組まれているんですが、先ほどあったように、調理施設の設置にお金が掛かるからと、これをやらずに、申込制のお弁当を給食だとしている自治体もあります。これがおいしくないとか、冷めているとか、結局子供たちがばらばらのお弁当を食べているというような実態が多数見受けられるわけです。
   〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
 学校給食法の第二条は、学校給食の目標として、適切な栄養の摂取による健康の保持増進、健全な食生活を営むことができる判断力を養い、望ましい食習慣を養うことなどとともに、学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うことということもうたっているわけです。ある自治体の首長さんは、みんなが同じものを食べるということで信頼感や連帯感が持てるというふうにも述べておられます。私も、みんなで同じ食事をするということが給食の原点だと思います。献立についていろいろ話をしたり、配膳の協力をしたり、何より一緒に同じ釜の飯を食うということが、社交性や協同の精神を養い、学校生活を豊かにする要素ではないかというふうに思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘の学校給食法第二条第三号、学校給食の目標として、「学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。」。ちょっとこの言葉はどうかなとは思うんですけれども、社交性に明るいとか暗いとか、そもそも給食で社交性というのもいかがなものかなというふうには思いますが、法律用語ですから、まあそれはそれとして、子供たちが給食の時間において友達と楽しく食事をしたり、給食の決まりを理解し、協力して食事の準備や後片付けをすることなどを通じて連帯感とか協同の精神を養うと、大変これは意義深いことであるというふうに思いますし、そういうことを是非進めていく必要があると思います。
○田村智子君 これは規模の大きい自治体のその財政負担は確かに大きいと思います。それで後回しになったり、いろんな理由を付けて取り組めていないということだと思いますので、是非、給食の位置付け、先ほど大臣が答弁いただきましたように、やっぱり貧困の対策という意味もあるんだということなども是非自治体に理解をしてもらって、まだ実施していない自治体の背中を国としても後押しをしていただきたいと思います。
 最後にですけど、子供の貧困対策の大綱、ここは進学率ということについては指標も書き込まれているんですけれども、何度も指摘したとおり、成長期の子供にとって不可欠である食事については、これは学校や保育所でどういう食事を提供するかということなどの内容にとどまっていて、やはり食事がまともに取れていないということへの言及はないに等しいと言えると思います。
 給食費の例えば無償化に踏み出した自治体では、給食費の滞納を子供に督促しなくて済む、保護者の経済的な負担だけでなく子供への負担も減らすことができたという声なども聞かれているわけで、こうした施策などの検討も含めて、子供の貧困対策の大綱に、食の問題、まともな食事がどうしたらできるようになるのかというような問題も位置付けていくことが必要ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 子供の貧困対策におきまして、子供たちの食の問題は極めて重要であるというふうに認識しております。
 今年八月に閣議決定されました子供の貧困対策に関する大綱におきまして、この食の問題については、一つは、子供の食事、栄養状態の確保のため、低所得世帯への支援や学校給食の普及、充実及び食育の推進により子供の健康の保持増進に努めること、また二つ目に、児童福祉施設において食事の提供や栄養管理を行い、子供の健やかな発育、発達を支援すること、三つ目に、生活困窮世帯の子供を対象に、居場所づくりを含む学習支援事業等の支援を行うに当たっては、例えば、子供にとって食習慣の維持が不可欠であることに十分配慮するなど、対象者の状況に応じた個別的な支援を行うことなどの記述が盛り込まれております。
 文科省としては、この大綱に基づき、低所得世帯への支援や学校給食の普及、充実に関する各種取組を通じて子供たちの食に関する貧困対策に取り組んでまいりたいと考えます。
○田村智子君 是非、学ぶ意欲が持てないような子供たちをどう支援するのか、ここが本当に貧困の対策として求められているところだと思いますので、今後とも是非積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 ありがとうございました。

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