国会会議録

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警察の対応 信頼揺らぐ/田村智子議員 女性暴行死で指摘
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(写真)質問する田村智子議員=1日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は1日の参院内閣委員会で、昨年10月に福岡県太宰府市で女性が暴行されて死亡した事件で、警察の対応について質問しました。

 事件前3カ月間にわたって、被害者の家族が佐賀県・鳥栖警察署に繰り返し相談したものの、被害届を受理せず捜査もしなかった警察の対応について、田村氏は「捜査怠慢ではないのか、市民の警察への信頼が揺らぐ」として、真摯(しんし)な検証を求めました。小此木八郎国家公安委員会委員長は「(遺族の相談は)直ちに被害者に危害が及ぶ可能性が認められなかった」と佐賀県警の言い分を繰り返しました。

 田村氏は、佐賀県警が警察内部だけで調査し、当事者遺族に事実確認や聞き取りもせず、当時の警察署の対応に不備はなかったとしたことを指摘。「桶川ストーカー殺人事件をほうふつとさせる。警察が事件性を見逃して重大犯罪が発生した事例は各地で起きており、警察全体の真摯で具体的な教訓となるように国家公安委員長として検証すべきだ」と重ねて求めました。


2020年12月3日しんぶん赤旗

【第203回国会 参議院 内閣委員会 第5号 令和2年12月1日】

○田村智子君 続けて、警察行政について今日お聞きします。
 昨年十月、女性が暴行の上死亡し、遺体が遺棄されるという事件が福岡県太宰府市で起きました。概要の報道を資料二枚目で付けていますので、御覧ください。
 被害女性の家族は、事件前、三か月にわたって鳥栖警察署に何度も、遺族の訴えでは計十一回、佐賀県の確認では八回、相談に行っています。回を重ねるごとに異常な事態を訴え、被害者の身の危険も訴え、被害届を出したい、捜査をしてほしいと求めましたが、最後まで当該警察署は動きませんでした。結果、女性は太ももを割り箸やバタフライナイフで何度も刺されるという凄惨な暴行の挙げ句に死亡し、遺体となって発見されました。警察の対応が適切だったのかという強い疑問が遺族等から出されています。
 しかし、今年十月二十八日、佐賀県警は、鳥栖警察署の対応について不備はなかったと結論付ける調査結果を示しました。果たして暴行死という痛ましい事件を止めることができなかったのか、私も疑問に思います。市民の命と安全を守る警察であってほしいと強く望みますので、この案件について質問します。
 まず、女性の家族が鳥栖署に何度も来署して相談を重ね、被害届の提出を要望したが、警察は被害届を受理しなかった。これは事実として確認しておられますか。
○政府参考人(田中勝也君) 昨年十月以降、福岡県警察におきましては、御指摘の傷害致死、死体遺棄等事件を検挙しておりますが、この事件に関連をいたしまして、佐賀県警察からはこれから申し上げるような報告を受けているところであります。
 令和元年七月頃からこの事件、傷害致死事件、死体遺棄事件でございますが、この事件の被害者をめぐる金銭貸借のトラブルについて遺族から申出を受理していたところ、一連の申出の主な御趣旨は被害者をめぐる金銭貸借のトラブルをどうにかしてほしいというものでありまして、被害者の身に危険が及んでいることや被害者の身に被害があったことを訴えるものではなかったところでございます。ただし、結果として被害者の方がお亡くなりになったことは重く受け止めており、今後の教訓としていく、こういった報告を受けているところでございます。
○田村智子君 これ、佐賀県警のまとめでも、来署、相談回数八回は確認していらっしゃるんですよね、遺族はもっと多いと言っていますけど。
 初めは金銭トラブルの相談であった、しかし回を重ねるごとに相談内容は深刻で切迫感を持っていったのだと、私も相談内容の変遷、詳細に知るほどに感じました。
 被害者が亡くなる約一か月前、二〇一九年九月下旬、被害者の夫は、逮捕、立件された被告たちから三時間にわたる脅迫電話を受けて、これを録音しています。女性が、この被害者となった女性ですね、借金をしているという説明で、すぐにお金を持ってこないとどうなるか分からないぞという趣旨の三時間もの電話なんですよ。それだけでも異常性をうかがわせます。
 被害者の夫は、この録音を持っていけば被害届が出せる、警察が動いてくれると警察署に持ち込んだ。ところが、鳥栖署では、三時間も聞いていられないと、脅迫と確実に判断できないから被害届は受け取れないとかたくなに被害届の受理を拒んだ。
 これも確認します。被害者の夫は、恐喝の証拠として電話の録音を示し、被害届を提出する意向を示した、しかし被害届の受理はなかった。これも事実として確認できますね。
○政府参考人(田中勝也君) 先ほど申し上げましたとおり、佐賀県警察からは、一連の申出の御趣旨は被害者をめぐる金銭貸借のトラブルをどうにかしてほしいというものであったという報告を受けているところでございますが、令和元年九月下旬には、数日前に金銭を要求する電話があり、その内容を録音してきたといった申出があった、こういった報告を受けているところでございます。
 この申出につきましては、その場で直ちに事件性、犯罪に当たるかどうかにつきまして判断をすることができなかったことなどから、申出者に対しまして、後日、事件の専門部署である警察署の刑事課に改めて申し出てもらうよう依頼したが、刑事課への再訪がなかった、こういった報告を受けているところであります。
○田村智子君 被害届を出そうとしたが、このとき被害届を受理していない。これは事実ですね。
○政府参考人(田中勝也君) 拒んだかどうかというお尋ねでございますが、ただいま申し上げましたような経緯でございます。
○田村智子君 出したいと被害者の夫は言っているんですよ、被害届を出したいと。だけど、受理されなかったんです。
 女性の遺体は福岡県内で発見されたため、この事件は福岡県警が捜査をしています。福岡県警は、今回の傷害致死、死体遺棄だけでなく、亡くなった女性の配偶者に対する恐喝未遂についても捜査し、検察は、私が今紹介した被害者の夫の録音ですね、この電話の録音を証拠として採用し、立件しているのではありませんか。
○政府参考人(田中勝也君) 福岡県警察におきましては、お亡くなりになった女性を被害者とする死体遺棄事件等の被疑者らに対する一連の捜査の過程で、御指摘の録音記録のある電話だけでなく、女性の夫から聴取した内容も併せて総合的に勘案した結果、同人に対する恐喝未遂事件が明らかになったことから立件に至ったものと報告を受けております。
○田村智子君 起訴状には、九月九日、二十三日、電話で被告人らがどなるなどして現金合計三百五万円の交付を要求し、もしその要求に応じなければ、被害者(亡くなった主婦の夫)や被害者の妻(亡くなった主婦)の生命、身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して被害者を怖がらせ、同人からの現金を脅し取ろうとしたと。まさにこの電話の録音が恐喝ということでの立件になっているんです。
 最初の相談では、身内のもめ事、単なる金銭トラブルの範囲だと、これで思ったかもしれない。しかし、そのまま軽視を続け、刻々と深刻になっていく相談内容、切実な訴えにまともに耳を傾けなかった。その結果、事件性や危険性に気付けなかったのではないのか、捜査怠慢ではないのかという疑問を禁じ得ません。
 こうした一連の対応は、桶川ストーカー殺人事件をほうふつとさせます。真摯な検証をしなければ市民の警察への信頼が揺らぐことにもなると思いますが、国家公安委員長の見解をお聞きします。
○国務大臣(小此木八郎君) まず、佐賀県警察からですが、被害者の方がお亡くなりになられたこと、これを重く受け止めており、今後の教訓としていくとの報告を受けております。
 一方、佐賀県警察において慎重に事実を確認した結果、一連の申出は金銭貸借のトラブルについてのものであり、当時、一連の申出内容からは、被害者に直ちに危害が及ぶ可能性があるとは認められなかったということであります。
 引き続き佐賀県警において適切に対応していくものと認識しています。
○田村智子君 佐賀県警の今の調査なんですけど、県警本部長の指示の下に内部調査チームをつくりましたが、結局その調査結果は、今公安委員長言われたとおり、遺族の相談は身に危険が及ぶことを訴えるものではなかったなどとして、当時の対応に不備はなかったと結論付けているんですよ。結果として被害者が亡くなったことは重く受け止める、本件を今後の教訓としていくというんですけど、一体これで何を教訓にできるんですか。この調査は、遺族への事実確認さえ、事実関係の確認さえしていないというんですよ。佐賀県警の中だけの調査でよいのかが問われていると思います。
 佐賀県警の対応についても改めて公安委員会による検証を求めたいんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) 佐賀県警からは、調査結果を取りまとめるに当たって事前に御遺族から直接御意見をお伺いしているとの報告を受けています。また、佐賀県警からは、それに加えて、関係書類の確認のほか、申出対応職員等への確認を行って慎重に事実を確認したことから、再度の確認を行う予定はないものと報告を受けています。
 一方で、結果としてではありますけれども、これは被害者が亡くなっておられること、これを重く受け止めておりと先ほど申し上げました。より丁寧な対応を心掛けていくというふうに思っております。
○田村智子君 それはもう佐賀県警の言い分だけじゃないですか。だから聞いているんですよ、それでいいのかと。遺族の方と言い分食い違っているんですよ。
 これ、佐賀県警の不信の行為はこの事件だけではないということも聞いているんです。また、佐賀県だけの問題でもないですよ。二〇〇四年東京都足立区の女性監禁殺害事件、二〇一六年小金井ストーカー殺人未遂事件など、警察が危険性を見逃し重大犯罪が発生したという事例は各地で起きている。やっぱりこの佐賀県の事件を、とりわけ私、本当に検証していただきたいんですけど、これ、警察全体の真摯な教訓に、具体的な教訓になるようにこれ是非検証していただきたい。重ねて要求をしておきます。
 今日御答弁難しいかもしれませんが、もう一度事情をよくお聞きになって、必要なことを国家公安委員会としてもやっていただきたいということを要望して、この問題についての質問は終わりますので、御退席いただいて構いません。


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