日本共産党の田村智子議員は1日の参院内閣委員会で、新型コロナウイルス感染急拡大のもとで現場の医療機関に交付金が届かない実態を示し、「医療分野への予算は医療機関が最も求める減収補填(ほてん)にあてるよう決断を」と迫りました。
田村氏は、菅義偉首相が3兆円を積んだと繰り返す医療機関への支援が現場に届いていない現状を追及。厚生労働省の小鑓(こやり)隆史政務官は、緊急包括支援交付金の医療分2・3兆円が都道府県に交付されたものの、医療機関に届いた金額は0・6兆円だと述べました。
田村氏は、現場に届かない原因の一端として埼玉県の実例を紹介しました。同県では、来年3月までの空床確保等のための交付金がすでに概算払いで医療機関に支払われています。しかし、県に約6割の交付金が残った状態であり、田村氏は「使い勝手が悪く、対象が狭すぎるため医療機関が切望しているのにお金が渡らない」と指摘。給料やボーナスを保障し、必要な人員体制をつくるためにも、今後数年にわたり感染症に対応する医療体制を保障する上でも「減収補填へかじを切る決断を」と強く迫りました。
西村康稔経済再生担当相は、迅速に行き渡るよう全力をあげるとし、「地域医療が確保できるよう必要な支援を行いたい」と述べました。
2020年12月2日(水)しんぶん赤旗
【第203回国会 参議院 内閣委員会 第5号 令和2年12月1日】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
まず、新型コロナ感染症対策についてお聞きします。
感染急増地域での医療の逼迫が日々報道されています。異常なのは、春からの減収、赤字を抱え込み、しかし、政府からの減収補填がないままに医療機関が第三波に立ち向かっているということなんですね。医療機関への支援として三兆円を積んだという答弁が繰り返されています。その多くは緊急包括支援交付金の医療分で、既に二・三兆円が都道府県に交付をされています。
資料の一枚目、これは厚労省が公表している都道府県ごとの交付額、執行額、予算執行額ですね、これを基にして一番右のところに私の事務所で、交付された額に対してどれだけ医療機関に渡っているのか、その割合を計算した一覧表です。
鳥取県の五七・七%が最も高く、続いて四割台が三都県。今深刻な状態にある大阪を見てみますと、医療機関に渡っているのは交付額の二〇%にも達していないわけです。
都道府県にはお金が渡っている、なのになぜ医療機関に届かないのか、埼玉県に我が党の県議団が詳しくヒアリングをして、理由の一端が見えてきました。埼玉県というのは、全国から見ても、これは三八・二%なので、全国の中で見ればまだ頑張っている方なんですよ、だけど低いんですよね。
埼玉の場合、病床確保の目標、四月から七月までは六百床、八月から来年三月までは一千四百床、いずれも押さえているんですよ。既に医療機関に対しても来年三月までの空床補償の金額は概算払として支払ってもいるんですよ、支払済みなんです。ところが、この病床確保事業の交付額に対する執行率は四〇・四%。もう目標を押さえて、その分のお金も出して、だけど執行率四割ですよ。これ以上どうやってお金が動くのか分からない状態なんですよね。
それだけじゃありません。医療機関は新型コロナ患者の受入れのために病床確保していますけれども、四月以降ずっと空床にしているわけじゃないんですね。実際にはそこに患者さん入るわけですよ。そうすると、八月から十一月で見ると一千四百は確保したと、しかし実際には一千床体制であったと。そうすると、空床じゃない分は、医療機関に既に概算払で支払われている、これを一部返金してもらう可能性が高いということも埼玉県からはお聞きしているんですよ。
これ、空床確保は必要ですよ。だけど、実際に空床になったところだけにお金を出すというのでは現場とかみ合わない。それに、事業対象が非常に狭くなる。結果、このままでは交付金が使い残しになると。こういう事態になってしまうんじゃないかと思いますが、厚労省、どうですか。
○大臣政務官(こやり隆史君) お答え申し上げます。
先生御指摘の包括支援交付金、御指摘のとおり、今、二・七兆円のうち二・三兆円を都道府県に申請のとおり交付しておりますが、実際に医療機関に届いている金額は〇・六兆円、申請に対して五〇%程度となっているところでございます。
執行残が出るとの御指摘でございますけれども、まず、この申請済みの早期交付を都道府県に対して累次にわたってお願いをしているところでありますし、また先生も、御指摘にもありましたけれども、医療機関がまだ申請されていないところも多々ございます。そうしたものに対しまして、病院団体等を通じて概算払も含めてなるべく早く申請していただくように要請をしているところでございます。
加えまして、現在、先生も御承知のとおり、感染の拡大に伴いまして医療提供体制の負荷が更に厳しさを増している状況にございます。今後、都道府県におきまして病床確保等の体制確保、これもしっかりとしていただかなければなりません。
いずれにいたしましても、この病院の経営、これをしっかりと継続していただくために、類型ごとの経営状況もしっかり把握しながら、必要な地域医療が確保できますように引き続きしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 これ、私が今例に挙げたのは、空床確保は言わば申請済みなんですよ。県の方も目標を押さえたんですよ。お金払っているんですよ。だけど、六割残るという事態なんですよね。
医療機関にゆとりがあるから交付金が残るんじゃないというのは誰でも分かっていますね。使い勝手が悪過ぎる。対象が狭過ぎる。医療機関が切望しているのにお金が渡らないんですよ。こういう事態で、今多くの医療機関は毎月の給与やボーナスを払うのにも苦労されています。
日本医労連が十一月二十五日に記者会見をしましたが、加盟する労働組合の四四%が冬のボーナスは減額になると。夏のボーナスでの調査よりも一〇ポイント増えています。昨年よりも十万円以上の減額だという回答が一割を超えています。これまでで最も悪いと。最も逼迫して最も働いている、そこで最も悪い処遇になるんですよ。医師、看護師を始め医療従事者の皆さんは感染防止の緊張の中で働いています。そこに処遇の引下げがどんなダメージになるか。
医療分野には三兆円確保した。ところが、このままでは使い残す。それどころか、医療機関に赤字なのに返金を促す、こんな事態さえ起こりかねないわけです。やはり最も求められる減収補填に充てる。もう決断すべきだと思うんです。それが最も直接的な支援であり、医療従事者の給料やボーナスの保障になり、必要な人員の体制をつくる保障にもなると思いますが、いかがですか。
○大臣政務官(こやり隆史君) 先生御指摘の医療機関の経営状況でございます。
直近で見ますと、医療機関全体で八月は、診療報酬の算定点数で見ておりますけれども、前年同月比で三・七%の減。あと、直近の九月につきましては、これは病院団体の調査でございますけれども、減収幅がマイナス〇・五%と。回復傾向にあることは見て取れますけれども、四月、五月の状況を考えますと戻り切ってはいないというふうに承知をしております。
医療従事者の処遇につきましては、各医療機関の経営判断や労使の話合いによるものでありますけれども、新型コロナの影響により診療体制を弱体化させることなく、医療機関が診療を継続できるようにしっかりと国としてもサポートしていかねばなりません。
このため、先ほど申し上げましたように、補正予算、予備費におきまして過去類例のない支援を講じてきたところでございます。まずはこうした支援が一刻も早く現場の医療機関に届くように、ただいま全力を挙げて厚労省一丸となって取り組んでいるところでございます。
あわせて、引き続き国民の皆様に必要な地域医療が確保できるように、感染状況、地域の医療実態、これを十分に踏まえながら必要な取組を今後とも行っていきたいというふうに思っております。
○田村智子君 西村大臣にも一言お聞きしたいんですね。
十一月二日、財政制度審議会財政制度分科会、財務省は、医療機関の経営悪化要因は一時的な受診控えだとして診療報酬上の手当て以外の措置をとることを否定したというふうにも報道されているんですけれども、これ予算委員会でも指摘しましたけど、医療崩壊というのは地域の医療全体の崩壊なんですよね。新型コロナの患者さんを受け入れる病院は、他の疾病の救急搬送を止めざるを得ない、手術も止めざるを得ない、コロナ以外の患者を他の病院に移すと。周りの病院との連携なしに感染症に対応することはできないわけです。
これ、今の第三波だけでなく、今後何年間かは感染症への対応を想定した医療機関の体制をつくっていくことが求められると思うんですね。感染症の下でも崩壊させない医療体制、人の配置などが長期的な視野で考えられるようにすべきだと思うんですよ。これ、何らかの減収補填という方向にかじを切る決断、検討、行っていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 先ほど政務官からも説明ありましたけれども、まずは今必要な、支援を必要としている医療機関にしっかりと支援が早く届くことが大事だと思っております。厚労大臣からも知事会を通じて、事務を急ぐように、医療機関への早期執行について要請もしております。まずは必要とするところに迅速に行き渡る、このことに全力を挙げたいと思います。
その上で、地域の感染状況などを踏まえながら、あるいは医療の実態などを踏まえながら、必要な地域医療が確保できるように必要な支援をしっかりと行っていきたいというふうに考えているところであります。
○田村智子君 減収補填、概算払などを続けることが最も直接的で最も迅速な支援になるんです。早くそこにかじ切っていただきたい、心から要望いたしまして、コロナの問題の質問は以上ですので、西村大臣、こやり政務官、ありがとうございました。