日本共産党の田村智子議員は1日の参院内閣委員会で、井上信治科学技術担当相が日本学術会議を「国の機関から切り離す」との検討を梶田隆章会長に求めたことを批判し、学術会議への介入は許されないと追及しました。
田村氏は「誰と、どのような協議・検討をして『国の機関から切り離す』という選択肢を示したのか」と追及。井上担当相は、外部の有識者や学術会議の会員・連携会員と意見交換を行い、「いろんな方々からそういう意見が多かった」としつつ、「具体的に誰というのは即答できない」とはぐらかしました。
田村氏は、学術会議が、2003年に政府の総合科学技術会議が出した意見をふまえて改革に努力し、15年には政府の有識者会議が「現在の制度は日本学術会議に期待される機能に照らしてふさわしい」との報告をまとめていると指摘。毎年の外部評価でも「切り離しが必要」との意見はないと述べ、「第三者機関、見識ある有識者が真剣に議論し結論づけたことをふまえているのか」とただしました。
井上担当相は「(報告は)尊重すべきもの」としつつ、「国民に理解される存在としてよりよいものになるよう、未来志向で検討したい」などと答えました。
田村氏は、有識者会議の座長を務めた尾池和夫氏の「学術会議への宿題は、学術会議自身がやること。政府が手を出してはいけない」との発言を紹介。国際学術会議会長が梶田会長にあてた書簡に「(学術に関わる諸決定が)政治的な統制や圧力の対象となってはならない」とあると指摘し、「国際的な見識を重く受け止めるべきだ」と強く求めました。
2020年12月2日(水)
【第203回国会 参議院 内閣委員会 第5号 令和2年12月1日】
○田村智子君 残る時間で日本学術会議任命拒否の問題について、今日は井上大臣に質問いたします。
大臣は、梶田会長と複数回の面談をされているということですが、六人が任命されなかったために現に今学術会議は活動に支障を来しているということもお聞きになっていると思います。また、任命拒否の理由が説明されないことで、今後会員の推薦をどうしたらいいのかという意見もお聞きになっておられるんじゃないでしょうか。
梶田会長と直接お話をしておられるのならば、総理に学術会議の意見を伝え、少なくとも任命拒否の理由を学術会議に直接説明するように意見具申をするのが私は当然だというふうに思いますが、そのようなことはされておられないんですか。
○国務大臣(井上信治君) 十月二十九日にも日本学術会議を私、視察をいたしまして、意見交換を行いました。その際、学術会議の皆さんから六人の任命を求める要望もいただきました。この要望については、十月二十九日の当日のうちに事務的に官邸の方に情報提供も行ったところです。
○田村智子君 是非説明するようにというふうに求めていただきたいんですね。総理が活動支障の直接の原因を今つくっているんですよ。
今年三月二十六日の学術会議に対する外部評価、この報告書を見てみますと、学術会議の今後の活動の在り方のところで項を起こして、人文・社会科学の知の活用が重要な鍵となる、日本学術会議としてこのことを社会に対して明確に打ち出すべきではないだろうかということまで外部評価として言われているんですよ。なのに、百五人の中で、その人文・社会科学狙い撃ちのように六人任命拒否。そうなると、予定していた分科会の構想など、これ大変困難を来していると思いますね。
直面する活動の支障、これそのままにするわけにいかないと、もうちょっと積極的にこの支障を取り除くために総理に働きかけるべきだと思います。どうでしょう。
○国務大臣(井上信治君) 学術会議の会員の任命に当たっては、これ、総理大臣の権能ですから、総理の方でお考えになっていただいていると思います。
○田村智子君 この直接の支障についてはそういう冷たい態度で、それで十一月二十六日、梶田会長との懇談では、国の機関から切り離すという選択肢を検討するように求めたと言われる。
確認したいんですけど、大臣は、どなたとどのような協議や検討をして国の機関から切り離すなどという選択肢を提示されたんですか。
○国務大臣(井上信治君) その十一月の二十六日ですが、日本学術会議の梶田会長ほか幹部の皆様から、学術会議のより良い役割発揮に向けた課題について現在の検討状況を御説明をいただきました。その際の意見交換の中で、各国のナショナルアカデミーの特色なども話題になり、学術会議がナショナルアカデミーとして機能を発揮する上で最も適切な組織の在り方を検討するとのお話をいただきました。
学術会議の組織の見直しにつきましては、各国のナショナルアカデミーと同じように国から切り離すこともこれまでの有識者の皆さんとの意見交換の中でも選択肢の一つとして示されているところであります。その考えに基づいて、国の機関から切り離すことも含めて、学術会議としてより良い機能発揮のために望ましいと考えられる形態を検討いただきたいと申し上げました。
○田村智子君 お答えになっていない。
誰とどのような協議をしてそのような見解を伝えたんですか。
○国務大臣(井上信治君) 先ほど答えたとおり、十一月の二十六日に日本学術会議の梶田会長ほか幹部の皆様と意見交換をしたときにお伝えをいたしました。
○田村智子君 その国から切り離すという考え方をあらかじめ大臣はどなたと協議をしてお示しになったのかと聞いているんですよ。あらかじめ、国から切り離すなどという選択肢が、誰と協議の上、大臣の意見として示されたんですか。
○国務大臣(井上信治君) この日本学術会議の組織の在り方の見直しにつきましては、累次、外部の有識者の方々とかあるいは学術会議の内部の会員、連携会員の方々など関係者の皆さんと様々な意見交換を行っております。
ちょっと、具体的に、いつ、誰とというのはちょっとここで即答できませんけれども、いろんな方々からそういう意見が多かったということでお伝えをいたしました。
○田村智子君 その後の会見で大臣は個人的見解だというふうにおっしゃっていましたけれども、この学術会議の改革は、二〇〇三年に政府の総合科学技術会議が意見具申して、十年後の見直しを行うとした。これに基づいて、二〇一四年七月から一五年三月にかけて、日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議が七回にわたって多面的、重層的に議論をした結果、国の機関でありつつ法律上独立性が担保されており、かつ、政府に対して勧告を行う権限を有している現在の制度は、日本学術会議に期待される機能に照らしてふさわしいものであり、これを変える積極的な理由は見出しにくいと結論付けているわけなんですよ。
また、日本学術会議は、年に一回、こうした報告や外部評価を受けて、いろいろな自己改革の努力している。その外部評価の中にも、国の機関からの切離しが必要なんという意見はどこにもないんですよ。
こういうのをお読みになって、こうした第三者機関、見識ある有識者の方々が真剣に議論し、結論付けたこと、これを踏まえておられるのか。どうなんですか。
○国務大臣(井上信治君) 過去の検討の報告につきましては、それぞれ尊重すべきものだ、踏まえるべきだというふうには考えております。
平成二十七年の報告書において指摘された事項に関して、五年が経過してどこまで実現できているのか、また時代に合わせて更に学術会議の機能を強化、改善できるかについて検討して報告する旨、学術会議から申出があって、それを踏まえて私からも検討を依頼をいたしました。
学術会議が国民に理解される存在としてより良いものとなるよう、梶田会長と意見交換を行いながら、年末までに一定の結論が得られるように共に未来志向で検討してまいりたいと思っています。
○田村智子君 二〇一五年に在り方の報告を取りまとめた有識者会議で座長を務めた尾池和夫氏は、新しく会議をつくったのは独立組織の学術会議を政府が評価するのはあかんというのが理由、総合科学技術・イノベーション会議は首相が議長であり、私は第三者機関として評価するならと引き受けた。これ、しんぶん赤旗日曜版の取材にお答えいただきました。さらに、学術会議への宿題をたくさん書きましたが、それは学術会議自身がやることです、政府が手を出してはいけない、学術会議は国の機関ですが、憲法に書かれた学問の自由を守る組織です、だから政府からの独立が特に大事なのですというふうに強調されておられる。
この有識者会議の報告を踏まえて、現に学術会議は不断の自己改革を続けているんですよ。外部評価出されれば数十ページのそれに対する報告書も毎年出していますよ、私も読みましたけど。大変な努力ですよ、若手の活躍を含めて。
今、六人の任命拒否に全て始まったんですよ、今のこの事態は。そこから、学術会議を批判し、意図的に攻撃し、何か改革が必要だ、十億円使うのはけしからぬ、こんな議論の中で国からの切離しという軽々な発言まで飛び出してくる。
これ、今や、日本国内で学術界が憂慮の声を上げ、抗議の声を上げているだけではありません。十一月十七日には国際学術会議ダヤ・レディー会長から日本学術会議の梶田会長へ書簡が届きました。
抜粋しますが、国際学術会議、ISCは、菅義偉内閣総理大臣が日本学術会議の総会への六人の学者の任命を拒否したとの報道以来、日本の動向を注視しています。私たちは、この決定が透明性を欠いていることに日本学術会議が表明している懸念に留意し、このことが日本における学問の自由に与える影響を極めて深刻に捉えています。最も重要なことは、学術に関わる諸決定は、国際的な学術コミュニティーで受け入れられている学術の誠実さに求められる条件に従って行われるものであり、それが政治的な統制や圧力の対象となってはならないということですと。
科学技術を担当される大臣であればこうした国際的な見識を重く受け止めるべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。