日本共産党の田村智子政策委員長は27日のNHK「日曜討論」で、菅新政権の評価や新型コロナウイルス感染症対策、行政の「デジタル化」、外交・安全保障政策などについて各党の政策責任者らと議論しました。
冒頭、発足から10日となった菅新政権の政策や方針をどうみるかが問われました。
菅政権の評価
自民党の下村博文政調会長は、内閣支持率の高さを挙げ、国民の「期待感」を強調しました。
田村氏は、コロナ禍で経済が悪化する下で発足したにもかかわらず、菅政権から具体的な対策が全く示されなかったことを指摘。「感染拡大の抑制や、国民が廃業や失業で生活苦に陥っていく事態に対して、どのような対策をとっていくのか何一つ語らないままに3日間で臨時国会を閉じてしまった。国民の実情がわかっているのかという怒りを禁じえない」と批判しました。
この間の世論調査で、菅内閣への支持率が高いことについて、田村氏は、森友・加計学園、「桜を見る会」の問題を解明すべきだと答えた割合も同じくらい高いことを指摘。菅義偉新首相がそれらの問題について「もう決着済みだ」と主張していることを批判し、「これではとても国民の期待に応えることにはならない」と述べました。
立憲民主党の泉健太政調会長は、菅政権にしっかり対峙(たいじ)したいと語りました。
政府のコロナ対応
前日に東京都をはじめ全国で新型コロナウイルスの新規感染者が急増したことが紹介され、政府のコロナ対応について議論となりました。
田村氏は、命と健康を守るために、医療機関や保健所の盤石な体制をつくる重要性を訴えてきたにもかかわらず、深刻な状況が全く改善されていないと指摘。無症状で感染力のある人をPCR検査で発見・保護することが必要だと7月の感染拡大で示されたとして、検査の拡充を強調しました。
新型コロナの影響で6万人の解雇や雇い止めが見込まれていることが挙げられ、田村氏は「コロナ危機をコロナ大不況にしてはならない。そのための経済対策が大きく求められている」と強調。「Go To」キャンペーンの拡大や、全世界を対象にした入国制限の緩和で経済活動を活性化させる政府の方針に対し、「感染症の対策と全く矛盾するようなやり方を政府が旗を振るよりも、事業をつぶさず雇用を維持するために、何ができるかというところに今一番軸足を置かなければならない時だ」と指摘。雇用調整助成金の特例対象の拡大や、持続化給付金や家賃支援を継続的に行うなど、大胆な経済的支援策をとるべきだと訴えました。
立民・泉氏は「経済が疲弊している中で、消費税減税や所得税減税などを考えていく必要がある」と主張。国民民主党の舟山康江政務会長も、PCR検査の充実や自粛とセットの補償を強調しました。
自民・下村氏は、追加経済対策を検討する考えを示し、持続化給付金や雇用調整助成金、家賃支援給付金の延長に言及。「予備費で足らない部分があれば3次補正も考える」と語りました。
行政の「デジタル化」
菅政権が看板政策として掲げる、不妊治療の保険適用や行政の「デジタル化」についても議論になりました。
自民・下村氏は、デジタル化が普及していなかったために給付金の申請などに遅れが生じたと述べ、マイナンバーカードの普及などを強調しました。
田村氏は、不妊治療の保険適用については2010年に質問して要求していたと述べ、「やっと始まるのかという遅さを感じる」と語りました。
行政のデジタル化については「国民の利便性を高めるためにIT技術を活用すべきだが、菅首相が言っているのは、マイナンバーカードをいかに早く普及させるかだ」と指摘。日本国民は他国と比べて個人情報の漏えいなどに関する不安が非常に強いという総務省の調査を挙げ、「そういう問題をわきにおいて、とにかく期日を決めたデジタル庁を設置するとかマイナンバーカードを持ってくださいというのは、違うのではないか」と批判しました。
外交・安全保障
菅政権の外交・安全保障政策の基本路線について問われました。
田村氏は、米国に対しては兵器の爆買いを行い、東シナ海・南シナ海での問題では中国に対して何も言わず、安倍政権が屈従外交をやってきたと指摘。「米国と中国の対立が国際政治で問題になる中、二つの大国に対してちゃんと物を言い、今までの外交姿勢を改めることができるかどうかだ」と述べました。
自民・下村氏は、中国との問題を考慮し、抑止力としてのミサイル体制を強化していくと発言しました。
田村氏は「敵基地攻撃能力」保有の議論に対して「専守防衛どころか先制攻撃になりかねない。とんでもない憲法違反だ」と批判。安保法制によって憲法が踏みにじられ、戦争できる国づくりはさせないという立場で市民と野党が共闘してきた経緯に触れ、「臨時国会では、立憲主義を取り戻し、政権交代に向かうような論戦をやっていく」と強調しました。
国会にどう臨むか
来月下旬召集と言われる臨時国会にどう臨むかと問われ、田村氏は「コロナ禍の下で菅首相の言う『自己責任』『自助』でいいのかが問われている。新しい政治、新しい政府を市民と野党の共闘でどうつくっていくか、政権交代の展望、政権の新しい政策が見えてくるような論戦を野党の皆さんと一緒に進めていきたい」と語りました。
立民・泉氏は「野党が一つになって、与党と対峙していく局面が近づいている。国民に分かりやすい選択肢を提示していく」と強調。国民・舟山氏は、消費税減税やさまざまな給付の追加、一極集中から地方分散などを挙げ、「社会の在り方を見直す議論をしたい」と述べました。
2020年9月28日(月)しんぶん赤旗より