日本共産党の田村智子議員は27日の参院内閣委員会で、新型コロナウイルス感染症のPCR検査の対象範囲は自治体任せにせず国が具体的な戦略と方針を持って予算・人的支援を具体化することや、保健所強化の戦略的方針を持つように求めました。
政府は行政検査(公費負担)で行うPCR検査の対象について7月初旬までは「濃厚接触者まで」としていましたが、その後徐々に広げ、今はクラスター発生地域などの医療・介護施設の職員や新規入院・入所者の検査も自治体判断で可能としています。
田村氏は、対象拡大について「私たちが要求した方向と合致するが『自治体の判断でこういう検査ができる』ということにとどめてよいのか」と提起。軽症者・無症状者が感染を広げてしまったのが7月ごろからの「第2波」の特徴だと指摘し、国がエピセンター(感染震源地)を中心に大規模で網羅的な検査を行うなど無症状の感染者を積極的に見つけ出し保護する戦略を持ち、感染の波がいったん収まっても検査を増やすように求めました。
西村康稔担当相は「自治体で個別事情を踏まえて実施すること」と述べるだけでした。
田村氏はまた、PCR検査センターの設置に対する国の支援が臨時の交付金にとどまっていることにふれて「コロナ対策は数年くらい必要だと考えられる。常設的に自治体が人を配置し、機器をそろえられる予算が必要だ」と主張しました。
保健所強化の戦略的方針持て
田村氏は、感染者らと接触した人の追跡・隔離が感染症対策の基本だと指摘。これを担う保健所の体制強化が急務だとして「政府の確固たる方針とすべきだ」と迫りました。
米ニューヨーク州では、接触者追跡を行う「トレーサー」の配置基準を人口10万人あたり最低30人と定めています。この基準だと東京都は4200人となりますが、都内の保健所に配置されている保健師は1069人で、全職員数でも3608人しかいません。「日本の接触追跡の位置づけ、体制はあまりに脆弱(ぜいじゃく)だ」。田村氏は厳しくただしました。
厚労省の小島敏文政務官が、外部委託などで負担軽減を進めていると説明したのに対し、田村氏は現場の悲鳴を突き付けました。同省は他部署からの応援も含めた臨時的人員増で対応していますが、現場は過労死ラインを超える長時間勤務が常態化しているうえ、応援職員の受け入れで保健所が“3密”になっているなどの実態です。
田村氏は「(職員が)ストレスで倒れてしまう。日本も一定の基準を示して恒常的な人員増、体制強化に踏み出すべきだ」「保健所の数も保健師の配置も何も基準がない。国が戦略的な体制強化の方針を持つべきだ」と繰り返し求めました。
感染者差別・バッシング防止策の強化を求める
新型コロナウイルス感染者や関係者らへの差別・バッシングが重大な問題となっています。学生の感染が確認された大学の場合、大学が丸ごと非難されたり、同じ大学というだけで「アルバイトを休め」と言われ、教員実習を断られる―という事態が起きています。
田村氏は「感染者本人への差別を含め、絶対に許されない人権侵害だ。それを政府が明確に繰り返し意思表示すべきだ」と防止策の強化を求めました。
西村担当相は「差別、偏見はあってはならない。積極的に発信していきたい」と答弁。田村氏は、差別を背景にPCR検査を拒む人が出ているとして、「感染症対策に逆行する。(差別は)害悪しかもたらさない。やめるように、強く発信してほしい」と重ねて求めました。
2020年8月28日(金)しんぶん赤旗より
【2020年8月27日参院内閣委員会速記録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
前回、七月九日の内閣委員会で私はPCR検査の対象拡大を求めました。この時点では、症状がある人以外は検査対象、これは濃厚接触者までだったんですね。
資料一を見てください。
その後、厚労省から事務連絡が次々と出されまして、七月十五日、行政検査に関するQアンドAが改定され、感染確認が複数発生していて濃厚接触が生じやすいと認められる地域や集団は対象にできることが明示されました。さらに、八月七日には、感染者が発生した店舗等に限らず、地域の関係者を幅広く検査することが可能だと。そして、PCR検査カーなどを該当する地域に派遣する方法も有用だという事務連絡が出されました。さらに、八月十八日には、クラスター発生の地域などでは感染者がいなくとも医療・介護施設の職員及び新規入院・入所者の行政検査を可能とするというQアンドAの改定がまたなされたわけです。
これらは私たちが要求してきた方向と合致するものです。ただ、自治体の判断でこういう検査ができると言うにとどめていてよいのかが問われると思うんです。政府自身が感染抑制のために積極的に行うべき検査と位置付けて、政府として具体的な戦略と方針を持つ、そのための思い切った予算、人的支援も具体化する、必要だと思いますが、西村大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、この検査体制、これはPCR検査のみならず抗原検査も最近ではありますので、こういったものを組み合わせながら戦略的に拡大、拡充していこうということで取り組んでいるところであります。これまでも様々な国会でも御指摘をいただいて取り組んできたところであります。
〔委員長退席、理事上月良祐君着席〕
そして、この御指摘の事務連絡の記載についてでありますが、基本的には厚労省においてこれ発出しておりますので、厚労省において検討がなされるべき話ではありますけれども、基本的には各自治体において個別の事情を踏まえて実施するということであろうというふうに考えております。ただし、その取組に差が生じることのないよう、ここにもありますように、積極的に検査をしていただきたいとか実施していただくようお願いしますとか、こういった文章になっているところであります。
特に、私の立場からは、先行事例、もう新宿区や様々な自治体で取り組んでおりますので、取り組まれていますので、そういったことを横展開できるようにしっかりとお知らせしたり、また、知事会や市町村会、いろんなところと連携を取りながら対応していければというふうに考えているところであります。
○田村智子君 資料二も見てほしいんですけれども、これは国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターが八月五日公表した新型コロナウイルスのゲノム分析についての報告文書なんです。
この中で、三ページ目のところに、赤線引いてあるんですけれども、三月から四月の感染拡大は現場対策の尽力により一旦は収束の兆しを見せたが、六月の経済再開を契機に、若者を中心にした軽症(若しくは無症候)患者がひそかにつないだ感染リンクがここに来て一気に顕在化したものと推察されると指摘しています。
現に、沖縄県那覇市松山地区、ここは非常に感染が急増したということで、希望者を対象に二日間で二千八十人、希望者はもっといたんですけれども、二千八十人、PCR検査を実施しました。これに携わった県立中部病院の高山医師は、東京などからホストクラブ等の従業員が沖縄に団体旅行をして歓楽街の店舗を利用したことから感染が急速に広がったんだと、松山地区でも陽性者は一部店舗に集中していると、こういう分析をされているんですね。
これ、やはりこの軽症者、無症候者が感染のリンクをつないで、見えない感染が集積している地域や場所があると。それが、経済が回ることで無症候の方などが、もちろん知らないうちにですよ、感染力のある方がいて、それが感染を各地に発生させてしまった。これ、七月、八月に起きた言わば第二波の感染の特徴じゃないかと私にも思えます。これを繰り返したら、こういう波を繰り返したら、秋冬にはもっと大規模な感染拡大になって、あっという間に医療崩壊、危惧されます。事業者や国民も、こういう波繰り返されたら疲弊します。感染の不安から経済活動も更に落ち込むことも危惧されるわけです。
ですから、私、やっぱり国が一般的に検査数増やしますとか努力しますじゃないと思うんですよ。やっぱり国民に政府の検査の戦略をもっと明確に示すべきだと思うんです。有症状者を確実に迅速に治療につなげる、これはもちろんやらなきゃいけない。だけど、それだけじゃない。感染リスクの高いところ、あるいはエピセンター、ここ中心に大規模で網羅的な検査を行うんだと、無症状で感染力を持つ人を積極的に見付け出して保護をするんだと、こういう政府が戦略を持つかどうかなんですよ。そのためにPCR検査数、たとえ波が収まっても減らさないと、むしろ増やすんだと、こういう戦略を取るのかどうか、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) まず、一億二千万人全員を一どきにはできませんので、(発言する者あり)感染症対策の基本を申し上げているんです。確かに、ここに書いてありますとおり、ひそかに感染リンクがつながってきた。そうなんです。これ、もう無症状の人はどこにいるか分からないんです。それは新宿のエリアだけではありません。日本中どこにいるか分からない。しかし、一億二千万人全員は同時にはできないんです。その中で、必ずマスクをして、消毒をして、三密を回避という、お一人お一人はこの新しい生活、新しい生活様式を徹底していかなきゃいけませんし、どこかで広がるのを、やはり事業者の皆さんもガイドラインをしっかりと守っていただかなきゃいけないんです。
その中で、そうしていても何かの拍子で感染は出てきますから、それは出てきたときに、おっしゃるように検知をし、しっかりとクラスター対策で抑え込んでいかなきゃいけない。だから、どんな状態になってもですね、どんな状態になってもこのウイルスが消えるまではこの三密回避を始めとした感染対策の基本はみんなでやっていかなきゃいけませんし、そうならないように新たな日常をつくっていかなきゃいけないということです。
その上で申し上げますけれども、御指摘のように、松山地区、沖縄那覇の松山地区で二千人を超える方のPCR検査、新宿でも六月から呼びかけを行って、まあちょっと正確な数字分かりませんけれども、数千人以上の方が受けられたと思います。当初は陽性率四〇%ぐらいあったときもあったと思います。それを多くの人に受けてもらって、無症状でも受けてもらって、そしてその範囲で抑え込んでいくことによって、新宿区の感染者の数はいっときは百人を超えていましたけれども、今は十人前後だと思います。かなりこれはこれで対策をやっていった。呼びかけても呼びかけても応じてくれない部分もありますので、この辺りもどうしていくのかというのは、もっと感染症法を使えないのかというようなことを含めて、対策はもう日々議論をし、考えているところでありますけれども。
いずれにしても、御指摘のように、リスクの高いエリアであったり、そうした業種については幅広くPCR検査をやっていくというのは全く方向性は同じであります。そうした中で、こうした通知を出して、特に、命を守る、重症化するのを防ぐために、医療機関、高齢者施設ではもうかなり徹底的にやられていますので、東京では院内感染、施設内感染は三月、四月、五月に比べてかなり少なくなっていますけれども、我々、いろんな経験を積み重ねながら、より良い対策やっていかなきゃいけない。そうした中で、PCR検査も拡充をしていきたいというふうに考えているところであります。
○田村智子君 七月、八月の感染からいろんなことが分析できると思うんです。私、一億みんな検査しろなんて言っていないですよ。この厚労省が事務連絡で示したものを国の戦略とすべきだと求めたんですよ。そのことだけですよ。それで、だから、それが戦略にならないと、その検査能力もどこまで拡大されるのかということが非常に不安なんですね。
厚労省は、六月二日の事務連絡、新型コロナウイルス感染症に関するPCR等の検査体制の強化に向けた指針についてという事務連絡で、今後の感染拡大局面も見据えて、PCR等検査、保健所、医療機関の病床確保、それぞれどこまで強化するのか、都道府県に報告を求めています。
〔理事上月良祐君退席、委員長着席〕
PCR検査数については、八月七日に取りまとめが公表されましたので、資料三に付けました。これ見ますと、全国の合計でピーク時想定のPCR検査数五・六万件、ピーク時想定。このとき、現状では、今五・四万件可能だという報告もあるんですよ。だから、ほとんど増やすという方向にならないんですね。
そもそもこの厚労省が示した想定というのは、四月、五月の感染蔓延時の状況を基に厚労省が数理モデルを示したんです。しかし、七月、八月の新規感染者、陽性者数は四月、五月を大きく超えました。例えば沖縄県、厚労省への報告ではピーク時想定検査数九百六十、しかし実際は、つい最近も一日約一千四百件の検査が行われています。しかも、陽性者への対応で医療が逼迫して、医師が検体採取をすることが困難で、大規模な検査は県としては限定的にせざるを得ないような状況でも一千四百なんですよ。県はもっと検査は必要だと認めています。だから、国内での空港検疫もやってほしいということも要望しているわけですよね。
となると、この八月七日に取りまとめたピーク時想定、これ余りに過小じゃないかと思いますが、どうでしょう。
○政府参考人(依田泰君) お答え申し上げます。
検査体制の強化に当たりまして、厚生労働省といたしましては、都道府県に対しまして、六月二日でございますけれども、検査需要の見通しの作成、また、相談から検体採取、検査、分析といった一連の検査プロセスの点検を要請いたしまして、御指摘のように八月七日にその点検結果をまとめて公表させていただいたところでございます。
こうした点検を通じまして全体的に検査能力の底上げが行われたところでございまして、この資料にもございますけれども、供給能力というところで見ますと、約七万件を超える供給能力まで高まっているというところでございます。
それから、この八月七日、同日でございますけれども、厚生労働省といたしまして、更なる検査体制の強化に向けてということで、戦略的強化の五本の柱ということで対策をお示ししております。検査能力の増強、また検査のアクセスの向上、それから地域の感染状況を踏まえた幅広い検査をしていく、また院内、施設内感染対策の強化、それから新しい技術の積極的な導入といったところをお示ししたところでございます。
その上で、各都道府県に対しましては、現下の感染状況等を踏まえ、検査需要について必要な見直しを行い、また、この時点では唾液による検査の実施がまだまだ十分浸透していないといった状況も見られましたので、そこのところの更なる徹底も含めまして、検査体制の一層の増強を図っていただくよう要請しているところでございます。
引き続き、各自治体の検査体制の状況をフォローアップしていくとともに、検査機器の整備の支援でありますとか、また新技術の導入などを通じまして検査体制の更なる強化に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
○田村智子君 これやっぱりどういう強化になっていくのか見えないんですよね。
アメリカ・ニューヨーク州、五月四日に経済活動再開に当たっての指針を出していますが、PCR検査能力については一か月で人口の三%を検査できることと定めています。仮に東京都に当てはめると、月に約四十二万件、一日当たり一・四万件という検査になるわけですね。
これは感染状況に限らずどこでも満たすべきという基準で、ニューヨーク州の中でもニューヨーク市はこれを超える水準で検査を行っています。もちろん検査結果の通知に若干時間掛かる問題点などがあることは承知していますが、やはりニューヨーク州が、この大規模な検査と、検査によって可視化される、ひそかじゃないんです、可視化される感染状況、これに応じて例えば店内飲食の禁止などの対策を取ることなども含めて感染の波を抑制していることは明らかなんですよ。
これ、ニューヨークと同じ程度までとは言いませんけれども、日本も検査体制の最低限の基準、これどうするかということについては検討すべきじゃないでしょうか。大臣、どうですか。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、これ、PCR検査、戦略的拡充を是非図っていきたいということでこれまでも取り組んできているところであります。
そうした中で、今もお話ありましたけれども、唾液であるとか、あるいはPCRセンター、あるいは大学、民間、こういったものを活用しながら、現在、PCR検査一日当たり五万九千件、抗原キットは二万六千件、それから抗原定量検査は八千件ということで、九万三千、九・三万件を確保しているところでありますし、御指摘の資料にもありますとおり、九月末にはPCR検査の分析能力七万二千件が確保される、七・二万件確保される予定となっております。
それに加えて、さらに、様々な医療機関あるいは高齢者施設、あるいは先ほどの接触確認アプリへの対応含めて、これは幅広くリスクの高いところもやっていくという視点で更にこの強化に取り組んでもらっているところであります。
引き続き、国としても、こうした国民の皆さんに必要な医療、検査を提供できるように、これ戦略的に取り組んでいかなきゃいけないと考えておりますし、不断の今検討を進めているところであります。
○田村智子君 数字的な基準なき戦略って余りないと私は思うんですね。是非、提案しているんですから、検討していただきたい。
もう一点検討していただきたいのは、このPCRの検査、やっぱりPCR検査センターなどをつくることで規模も広げることができるし、即応的な体制も取れるというのがこの間分かってきていることなんですね。だけれども、臨時交付金なんですよ、PCR検査センター。そうすると、これは常設的、やっぱり新型コロナって数年ぐらい必要というように考えられますので、私は、常設的に自治体が人も配置もして機器もそろえて、そうやって取れるようなPCR検査センターの予算も必要になってくると思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(依田泰君) PCRセンターにつきましては、私どもとしても設置拡大に努めてきているところでございます。
そこに対する財政支援でございますけれども、設置費用につきまして緊急包括支援交付金を使いまして支援をしているというところでございまして、特にやはり一度に多くの検査等ができるといったところの対応ができるようにということで、プレハブでございますとかテントでございますとかドライブスルーの設置費用等をこれは全額国庫によって補助をしているところでございますし、また、こうしたその地域外来・検査センターの運営について、またいろんな備品でございますとか消耗品等の経費も掛かるということでございますけれども、感染症予防事業費等負担金を用いることが可能となっているところでございまして、こうした交付金でございますとか負担金による財政支援を行っており、引き続き、検査体制の強化、そのための支援に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○田村智子君 ここも是非数年スパンで見て、常設的なPCRセンター、是非考えていただきたいと思います。
もう一つ、この感染抑制のためには保健所の体制強化が急務なんです。
患者、疑似症患者、無症候患者を保護、隔離し、誰と接触したかを追跡し、さらに検査へとつなげる、これは感染症対策の基本なんですね。接触者の追跡と隔離をきちんと行えば感染の実効再生産率は大きく減少するということが幾つもの論文で確認がされます。これ、新型コロナ感染症についても有用であるという論文は幾つもあるわけですね。そうすると、保健所が接触追跡をしっかり行えるだけの体制整備を行うと、これ、私は、政府は確固たる方針にすべきだというふうに思います。
例えばニューヨーク州なんですけれども、トレーサーという接触追跡を行う人、これ、配置基準、これも定めているんです。これも資料に付けました。最後のページを見ていただきたいんですけど、人口十万人当たり三十人をベースライン、最低限と定めていて、これで濃厚接触者や感染者の増加などによって更にこの三十人よりも追加されなければならないというふうにしているんですね。実際、人口八百四十万人のニューヨーク市、ベースラインでは二千五百二十人ですけれども、三千人の体制で接触追跡を行っているんです。
この基準を、最低基準を東京都の人口に仮に当てはめますと四千二百人になります。しかし、今、保健所に配置されている保健師一千六十九人、十万人当たりでいうと七・六、保健師以外の全職員を含めても三千六百八人なんです。私が住んでいる葛飾区、人口四十六万人、ニューヨーク州の基準で見ると百二十から百五十人のトレーサーが必要ですが、保健所で今感染症に担当しているのは十人だと。
この日本の接触追跡の位置付け、体制、余りに脆弱だと思うんですけれども、いかがでしょう。
○大臣政務官(小島敏文君) お答えいたします。
田村委員のおっしゃるとおり、濃厚接触者を速やかに把握しまして適切な管理を行っていくことは感染拡大の防止のために大変重要であると考えております。
保健所における積極的疫学調査は大きな役割を果たしているとまず認識をしております。本年六月には、各都道府県に対しまして、業務の外部委託等により保健所の業務負担を軽減し、技術系職員が積極的疫学調査等の専門性の高い業務に専念できる体制を構築するよう要請を行ったところでございます。
さらに、保健所管内で感染者や濃厚接触者等が急速に増加した地域、例えば台東区の永寿総合病院、そして今回の沖縄です、沖縄は全域ですけれども、には、感染症の関係学会や団体の協力を得まして、積極的疫学調査等に必要となる専門家の派遣を行っておるところでございます。
こうした取組をするとともに、今後の体制整備につきましては、自治体の御意見もしっかりお伺いしながら、保健所が専門性を発揮できるようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○田村智子君 今御説明あったとおり、厚労省が今進めているのは、非常勤職員の増員とか他の部署からの応援とか、臨時的な人員増、それから外部委託とか、それから業務の効率化を行うようにというふうに求めているんですよ。それで、実際にもう東京都も特別区の保健所に対して、保健師の派遣、特別の体制取って行っているんですけれどもね。
例えば、私たちの月刊誌、「議会と自治体」という月刊誌あるんですけど、そこで東京江東区の保健師の方が寄せていますけど、実態を報告しているんですけれども、これ本当に、応援を受けても過労死ラインを超える超過勤務が常態化すると、応援派遣の人ももう大変な超勤状態になってしまうと。やっている業務も、陽性者の方と直接接触するわけですから、自分たちも防護服着て様々な対応するんですよ。で、何か対応間違ったんじゃないかとか、電話のやり取りでもあの対応でよかったのかと思い悩んだりとか、まあその心身のストレスは、報告されているものを読むと、ちょっと倒れてしまうんじゃないのかと、潰れてしまうんじゃないのかと。
そこで、悲鳴が上がっているのは、もう業務の効率化とか、臨時的に人が来ると、いろんな矛盾が生じるということなんです。例えばスペースも、元々の施設に派遣で臨時の人来れば密になっていくんですよ、どんどん。で、パソコンも足りないとか。
それから、これは沖縄で起きたことですけど、沖縄も保健所は本当に逼迫したんです。だけど、ほかの県からの要請ってできなかったんですよ。それは、地理的にもよく分からない、地域の実情がよく分からない、その住民との信頼関係もない、この下で濃厚接触を追っていくとか追跡するというのはこれなかなか困難なんですよ。だから、これ恒常的なやっぱり人員増にもう踏み出していかなきゃいけないと思うんですよね。それやらないと、今、母子保健も止めている、精神保健も止めている、HIVとかその他の感染症に対する検査を止めているというところもあるんですよ。非常にまずい状況になっているんですよ。
例えば、イギリスNHS、接触者追跡のために二・五万人新たに雇用。ドイツ連邦政府、人口二万人当たり五人のトレーサーの設置を自治体に義務付ける。日本も、例えば人口当たり何人とか一定の基準を示して、恒常的な体制の強化ということに直ちに取り組むべきだと思うんです。その点いかがでしょうか。
○大臣政務官(小島敏文君) 先ほども申しましたように、現在、各都道府県に対しまして、業務の外部委託等によりまして保健所の業務負担を軽減するとともに、技術系の職員が専門性の高い職務に専念できる体制を構築していただくよう要請をしているところでございます。
現在、都道府県からの報告を受けまして、その結果を取りまとめるとともに、体制整備の好事例の周知を図っていくなど、引き続きまして保健所の体制強化が努めてまいりたいと考えております。
また、いずれにしましても、保健所の体制強化については、先生おっしゃるように、厚生労働省としても重要な課題であると認識をしておりまして、引き続きどのような対応ができるかよく考えてまいりたいと考えております。
○田村智子君 今、保健所の設置は、その施設の数も、それから保健師の配置も何の基準もないんですよ。これはもうやっぱり一定基準を示すって、国が戦略的に体制強化を進めるっていう、この方針持つべきだと繰り返し要求しておきます。
最後に、西村大臣にお聞きしたいんですね。これ、感染した方への差別やバッシングへの対応です。
学生で感染者が確認されると、大学が丸ごと非難をされ、同じ大学の学生だというだけでアルバイトを休めと言われる、教員実習を断られるという事態がつい最近も起きました。
私は、感染者本人へのバッシングも人権侵害だと思います。あってはならないと思います。犯罪でも何でもない。で、その周辺の人までこのようなことが広がっている、これはもう絶対に許されない人権侵害であるということを、一般論ではなく、政府が明確に繰り返し意思表示をすべきだと思うんですね。
大臣はもう連日記者会見もやられておられる。そのときに是非、こういう事案が起きるごとといいましょうか、そのときにそういう事案にも触れて、毎日のように、会見のたびに、紋切り型ではなくて、こういう攻撃や差別は許されない、直ちにやめるべきだと、これをやったら感染症対策に逆行すると、直ちにやめろということをやっぱり発信すべきだと思います。どうでしょう。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のとおり、これはもう誰もが感染する可能性のあるウイルスでありますし、差別、偏見、感染した人のみならず、その属性あるいはその周りの方々、そういったこと、地域、それから組織含めて、これは差別、偏見あってはならないことだというふうに考えております。
そうした中で、政府もこれまでテレビスポットでも、広報、テレビ広報、テレビスポットCMの中で、医療従事者を始めとする関係者への人権上の配慮、こういったもの、あるいは不当な差別、偏見を防止する取組など実施してきているところでありますけれども、御指摘のように、私自身も会見でも何度か申し上げたことあると思いますし、いろんな事例、岩手県での事例などですね、岩手県はSNS上に差別をしているようなあれをスクリーンショットで撮って、撮ってですね、それをしっかり証拠として扱うというようなことを取り組んで、これ知事会でも共有をされたようでありますが、そういった紹介も私もさせていただいておりますが、法務省においても、ホームページやCMなど、SNSなどを通じて、こうした不当な偏見、差別を行わないよう呼びかけておりますし、人権相談の窓口も設けたところでありますけれども、引き続き私自身も取り組んでいきたいと思いますし、分科会の下にワーキンググループをつくって来週にも第一回を開催することに、予定、調整をしているところであります。
まさにこうした偏見や差別、実態を把握して、ヒアリングを行うと同時に、相談窓口あるいは対応、政府としての対応、こういったことをしっかり御議論いただこうと思っておりますので、そうした議論も踏まえながら、引き続き積極的に発信していきたいというふうに考えております。
○田村智子君 今、岩手県のお話ありましたけれども、確かにずっとゼロだったところで感染が出て、非常に心配されて、達増知事が、本当に、御自身語られているんですけど、鬼にならざるを得なかったと、鬼になってバッシングする側に対して厳しくいさめるということをやったと。これで、感染が確認された会社では、本当に当初、もう抗議の電話、非難の電話がもう百件、もうすさまじく鳴って、みんな大変なストレスになっていった。だけど、そういうメッセージが、知事も発して、やられていく中で、電話が激励の電話に変わり、お花が届いたり差し入れが届いたり、本当に頑張ってくださいという、そういう攻撃を受けていることを知った市民が激励の側に回るということが起きているというんですね。
私、今非常に危惧しているのは、そうやって感染が分かったらたたかれる、だから症状があっても検査は受けたくない、事実、そういう人が出始めちゃっているんですよ。まさに感染症対策に逆行するんですよ。何一ついいことはない、害悪しかもたらされない、やめろということを厳しく厳しく、強く繰り返し発信していただきたい。
このことを最後要請しますのと、今まで言った検査の戦略、保健所の戦略、戦略作ってください。繰り返し求めて、質問を終わります。