新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした緊急事態宣言が全国で解除された25日、日本共産党の田村智子議員は参院決算委員会で、地方衛生研究所(地衛研)のPCR検査体制の遅れと不十分さを批判し、今後に備えた恒常的な体制整備の強化を訴えました。
田村氏は、2010年6月に出た新型インフルエンザ総括会議報告書で「とりわけ、地衛研のPCRを含めた検査体制を強化する」としたと指摘。「ところがPCR検査可能件数は10年前が1日あたり4936件だったのに対し、今回は4352件とむしろ減っており、政府は検査体制の弱体化を放置してきた」と批判しました。
また、台湾や韓国はSARSの教訓を基に疾病対策センター(CDC)を立ち上げ、PCR検査体制を強化したと指摘。「安倍政権は10年前の教訓も無視し、地衛研の予算も減らし、PCR検査体制の弱体化を事実上放置してきた」と追及しました。
加藤勝信厚生労働相は「今後も地衛研だけでなく、民間検査所も含め、必要な対応をする」とし、事実を直視しませんでした。
田村氏は「全国で、一定の公衆衛生対策水準を国が示すべきだ。その水準を維持できる人員と予算の配置が可能なように、来年度予算の抜本的強化が不可欠だ」と主張。加藤氏は「検査体制の更なる充実を図ることは、考えていくべき課題だ」と答弁しました。
2020年5月27日(水)しんぶん赤旗より
【2020年5月25日参院決算委員会速記録より】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
本日、緊急事態宣言が全都道府県で解除されるという方向だと聞いております。感染拡大を今後抑制しながら経済活動や学校、大学などを再開するためには、私はまずPCR検査どうするのか、これ本当に問われてくると思います。それが経済活動を進めていく上でのまさに安心の土台にもなっていくと思うんですね。特に、これまで指摘されてきた問題点は急ぎ改善が求められます。
専門家会議は、五月四日、日本の十万人当たりのPCR検査数は、単純な比較は難しいものの、他国と比較して明らかに少ない状況、医師が必要と考える軽症者を含む疑い患者に対して迅速かつ確実に検査を実施できる体制に移行すべきと述べています。さらに、早期に拡充しない理由について、地方衛生研究所は行政検査が主体、新しい病原体について大量に検査を行うことを想定した体制は整備されていないとしているんですね。ここまでは私もうなずけます。
しかし、なぜこうした体制整備が地方衛生研究所でされていなかったのか。このことについて、SARS、MERSなどは国内で多数の患者が発生せず、日本でPCR等検査能力の拡充を求める議論が起こらなかったことを挙げているんですね。私、ここには大変疑問を抱いています。
厚労大臣、政府も同じ見解ですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘のように、五月四日の専門家会議で今委員御引用の部分の言及があったところであります。また、同日の提言では、医師が必要と考える軽症者を含む疑い患者に対して迅速かつ確実に検査を実施できる体制に移行すべきと記載をされておりますので、過去をどう評価するかというよりも、まあ私どもとしては現在のPCR検査の能力を一日約二万四千件まで向上を図ってきたわけでありますが、あわせて、医師が必要とする方々がしっかりと検査ができる体制の構築に向けて、今PCRセンター等も各地域で続々と設置をしていただいております。
また、今回、抗原検査という新たな手法も導入をされているわけであります。こういったものをうまく活用しながら、迅速かつ効率的な検査体制をしっかりと構築していきたいというふうに思っています。
○田村智子君 私が聞いたのは、PCR検査等の体制がなぜ取られなかったのか、それはそういう拡充を求める議論が日本では起こらなかったからだというふうに専門家会議言っているんだけれども、これ違うんじゃないのかという問題提起なんですよ。
私の方で示しますけれども、SARS、MERSの国内流行は確かに日本では起こりませんでした。しかし、その後、二〇〇九年には豚インフルエンザの流行があって、WHOが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態、PHEICを宣言しました。これ、初のパンデミックです。日本でも新型インフルエンザ、これA/H1N1と呼ばれたんですけれども、新型インフルエンザ、二〇〇九年五月に初めての感染者を確認してから約一年にわたって流行が続き、学校閉鎖などの措置もとられました。強毒性鳥インフルエンザも既に発生していたこともあって、豚インフルエンザの終息直後、二〇一〇年、厚生労働省は新型インフルエンザ総括会議を発足させ、七回の会議を経て六月に報告書をまとめています。この報告書でPCR検査体制の強化が必要だと結論付けたのではなかったですか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
今委員から御指摘ございましたが、平成二十二年に取りまとめられましたその新型インフルエンザ対策総括会議報告書におきまして、地方衛生研究所のPCRを含めた検査体制などについて強化することが提言されてございます。
こうした報告書を踏まえて、これまで地方衛生研究所の検査体制等を強化してきたところでございますが、平時から地方衛生研究所におけるPCR検査関連機器の整備や研修事業を通じた人材育成や研究を通じた検査技術の向上などを行ってきたところでございます。
○田村智子君 今お認めになったんですけど、総括会議の報告では、とりわけ、地方衛生研究所のPCRを含めた検査体制などについて強化するとともに、地方衛生研究所の法的位置付けについて検討が必要であると強調されているんですよ。
今、体制強化してきたと言うんですけど、具体に見てみますと、厚労省の報告によれば、二〇〇九年から二〇一〇年当時、PCR検査の実施可能件数、これ地方衛生研究所等の検査実施可能数ですけれども、一日当たり四千九百三十六件です。二〇〇九年から一〇年、新型インフルエンザが流行の当時です。ところが、今年三月二十四日現在では四千三百五十二件で、二〇〇九年当時よりも減少したんですよ。都道府県ごとに見ていけば、例えば京都は百六十から三十です。東京も三百から二百二十ですよ。その後、緊急に予算付けて、新型コロナの対策で予算付けていって検査数増えていった。直近、五月二十一日現在では六千六百二十五件、これ地方衛生研等です。
新型コロナの感染が始まった時点では、検査体制は弱体化していた。なぜ整備体制が進まなかったんですか、強化されなかったんですか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
強化されなかったというか、基本的にその時代から維持をしつつ、四千件台の維持をしつつ、人材育成とかあるいは研究を通じた技術の向上とか、そういうのに取り組んできたというところでございます。
今委員からもお話ございましたが、私どもの手元、四月五日の時点では四千八百件でしたが、この五月二十一日現在では更に今般の経済対策等を踏まえて六千六百件まで増やして充実してきたという経緯でございます。
○田村智子君 いや、とても維持できていたなんという状態じゃないですよ。これ、都道府県ごとに見ても、これもう半数ぐらいの県が実際に検査件数が減っちゃうという体制になっていますからね。とてもそんな状況じゃないですよ。
新型インフルエンザの総括会議の議事録を読みますと、新型インフルの当時も、保健所に相談したが政府の症例定義に合わないから検査を拒否された、医師が必要と判断しても検査が受けられなかった、こういう事例が指摘をされています。
当時の厚労省は、こうした事態を重く見ていたはずです。総括会議だけでなくて、厚労省に研究班を立ち上げて、全国保健所長会の協力を得て、二〇一〇年二月には、新型インフルエンザの初期対応の評価と提言というのをまとめています。その中で、検査の遅れについて次のように述べているんですね。
国内対策着手が遅れたり、症例定義に困難を生じたりした背景の一つは、衛生研究所におけるPCR検査のリソースが限られており、地域によってはインフルエンザ症例の一部にしか検査を実施できなかったことである。
つまりは、地方衛生研の検査体制に合わせるしかなかった、これが検査を絞る要因となったということですよ。
一方、今の新型コロナの対応、四月十八日、日本感染症学会のシンポジウムでクラスター班の押谷先生は次のように指摘しています。
PCR検査を急速に拡充する、これは必要だと繰り返し我々も言ってきました。ただし、新たな検査の立ち上げには病院や医師会の全面的な協力が必要です。同時に、感染防備を万全にした安全な検査センターを立ち上げる必要がありました。そうすると、我々にあの時点で残されていた選択肢は、今ある検査体制の中でいかに流行を制御する体制を確立するかということでしたと。
十年前と同じことが繰り返されているんですよ。今ある地方衛生研の体制に合わせるしかなかった。
改めてお聞きします。大臣、総括会議の提言、新型インフルエンザ等行動計画にもPCR検査の問題は盛り込まれていたはずなんです。地方衛生研究所での整備。じゃ、そのために政府は一体どういう指示を、支援を行ったんですか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
どういう支援、指示というお尋ねでございましたが、地方衛生研究所の設備整備等につきましては、我々も日頃から支援させていただく、あるいは人材の育成とか技術の向上についても支援させていただいているというような状況でございます。
この間、先ほど申し上げましたように、地衛研、若干波はございますが、そういう状況で検査能力を維持しつつあったわけでございますけれども、一方で、その民間とか大学とかほかの機関も含めた体制というのも実際拡充されてきていた面も事実でございまして、そういうような体制でこれまで来たところでございますけれども、冒頭ございましたが、SARSとかMERSとか、そのときには国内発生はなかったということもあって、キャパシティーの問題については今回更に喫緊の課題ということで、今回大幅に増加するような対応を取らせていただいているというところでございます。
○田村智子君 私も見てみましたけど、新型コロナの対応で検査機器の購入に今回直接の補助金を付けた、それだけですよ。あとは地方交付税措置ですよ。その算定を若干増額した、それだけなんですね。
国立保健医療科学院のアンケート調査を見てみますと、地方公共団体が地方衛生研究所に付けた予算、二〇〇四年度は約四百三十五億円、二〇一三年度は約三百十六億円。一か所当たりで見ると一・八億円減っています。それ以降どうなっているのかなと思っても、国はそもそも調査なんかやっていない、分からないんですよ。予算減っているということが分かるわけですよね。
韓国、台湾ともSARSの教訓を基にCDCを立ち上げPCR検査体制の強化を図ってきたことは、この間何度も報道されています。二〇〇九年のパンデミックの教訓を酌み取らず、今の政権は、自ら立てた新型インフルエンザ等行動計画の検証もせず、地方衛生研究所のPCR検査体制の弱体化、事実上これは放置してきたということになるんじゃないですか。これ、大臣、是非御答弁ください。
○国務大臣(加藤勝信君) これは、御承知のように、地方衛生研究所は地財措置によって運営費等を賄ってきたところでございますので、そういった中で、例えば感染症の改正で都道府県による検査実施、これは二十六年改正でありますけれども、権限が付与された。そうしたことも踏まえながら、各都道府県の判断で必要な体制が取られてきたというふうに認識をしているところであります。
また、我々もそれに対して様々な支援もこの間もさせていただき、特に今回の新型コロナウイルスの感染においては、今委員からもお話がありましたように、機器等の購入に対する経費等の支援等もさせていただいているところでございます。
今後、引き続き、今回のこうした状況も踏まえながら、まず、地方衛生研究所のみならず民間の検査所を含めて、こうした分析能力をこれからどう高めていくのか、今回、令和二年度の二次補正予算も今議論させていただいておりますが、そういった中でも必要な対応をしっかりと講じていきたいというふうに考えております。
○田村智子君 これ、地財措置でいいのかという問題提起で、当時の総括会議では法的位置付けを明確にすることも含めと指摘をしたんですよね。
あわせて、保健所についても指摘をしたいです。
三月の予算委員会でも私は保健所の問題取り上げましたが、厚労大臣は保健師の数は減っていないと答弁をされました。それは新型インフルエンザの総括を踏まえていないと私は思うんです。
先ほど紹介した厚労省研究班の評価と提言、保健所の人員についてわざわざ一項を起こして、保健師、医師は過半数の保健所で不足し負担が大きかった、ほかの機関からの応援による確保は容易ではない、必要な人員数を確保すべきと提言しているんです。保健所に医師や保健師の人員の配置を確保すべきだという指摘なんですね。
しかし、増員傾向は一時的で、二〇一二年以降は横ばいないし減少傾向となって、今は人員不足が指摘された十年前と同水準です。このことをどのように見ておられますか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
保健所の保健師さんの数についての御指摘をいただきましたが、議員が御指摘ございました中の一つで、近年、保健所のまず数が減少傾向にあるということが一つございます。
これは、平成六年に制定されました地域保健法に基づきまして、母子保健分野などの住民に身近な保健サービスについては保健所から市町村へ移譲するということ、逆に、広域的、専門的なサービスにつきましてはその技術的な拠点として保健所の機能強化を図るということで、これは難病とか精神とか感染症のことですが、規模の拡大とか施設整備の充実を図るということで、都道府県の保健所で見ますと、所管区域は二次医療圏とおおむね一致するような原則としたことなどにより、数としては減っているというようなことがございます。
こんな中で、保健所の保健師さんを集約されて一か所当たりの数が増えているということと全体的には若干増加傾向が見られるということ、それから、地域保健全体で見ますと市町村の保健師さんかなり増えているというのは先生も御案内のことだと思いますが、そういうような感じで、地域保健総体としてはかなり、体制も含めて、人員も含めて充実してきているというふうに理解しているところでございます。
○田村智子君 保健所の数も保健師さんの人数ももっと充実させることが求められていたんじゃないのかということですよね。
新型コロナの対応で、多くの保健所が通常業務の一部又は全てを止めて感染症対策に全力を挙げてきました。相談の電話はコールセンターでの受付にしたところもあります。それでも連日の残業で職員の疲弊は限界という悲鳴が聞こえていました。
感染症対策というのは保健所の本来業務なんですよ。本来とは違う業務が生じてほかの業務を止めたわけでも何でもないんですよね、本来業務なんですよ。他の通常業務、例えば母子保健とか精神保健などを非常時に止めていいのかということも私は本来問われるべきだというふうに思います。
実は、二〇〇九年のパンデミックのときにも、通常業務を止めざるを得ない、それでも対応が追い付かない、こういう同様の事態は起こっていたわけなんですね。保健所も地方衛生研究所も体制強化が図られて、恒常的に残業が強いられるような状況を克服していって、その上で他の部署にいる保健師さんを非常時、緊急時に保健所機能の中に含めていく、こういう対応が求められていたんじゃないのかというふうに思うんですね。
大臣、是非、この地方衛生研究所、そして保健所、緊急の増員はもちろん必要なんですけれども、恒常的な体制強化へとやっぱり政策を大きく転換すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 地衛研、また保健所の皆さん方も住民の相談対応、また積極的疫学調査等大変な重要な役割を担っておりまして、今委員からもお話がありましたように、連日残業が続くという状況の中で御苦労いただいておりますことに心から感謝を申し上げたいと思います。
また、そうした状況を踏まえて、退職者の再雇用を含めた非常勤職員の雇用に係る経費等を助成をすることで、保健所の人員を増加して個々の方の負担の軽減を図る、あるいは他の部署からの応援もお願いをする、あるいは現在やっている業務の中でリスト化をして、外部委託、縮小、延期等が可能であるものについてもリスト化をし、お示しをさせていただいている、こうした様々な努力をさせていただいているところであります。
なお、今委員お話がありました体制という意味においては、やはり今回感じたのは、様々な業務がファクス、電話と、こういう状況でもありました。やはりIT化等を進めることによって業務の効率化とまた職員の作業負担の軽減を図っていく必要があるというふうに感じておりまして、今回新たなシステムを活用し、今月半ばからは一部で利用がスタートし、月末には全国で利用できる状況を目指しているところでありまして、いずれにしても、そうした体制のみならず、そうしたIT等も活用して、保健所がその本来の機能がしっかり発揮していただけるような体制の整備には引き続き取り組んでいきたいと考えております。
○田村智子君 システム、ITを否定はしませんよ。それはどんどんやりましょう。だけど、最後に問われるのはやっぱり人なんですよ、人。相談に応じるのは人ですよ。感染した人に対応するのも人ですよ。その人が圧倒的に足りなかった。もうこれ明らかなんですから、是非、地方衛生研究所も保健所も、やっぱり地域任せでいいのかということが問われていると思うんです。
例えば、地衛研でいえば、大阪では、自治体の長のリーダーシップの名の下で、大阪府と大阪市の衛生研究所を統合して大幅に人員削減するということも行われてきたわけですよね。
私は、感染症対策、公衆衛生ということでは、これは地方の独自性よりも全国で一定の水準、これをやっぱり国、示すべきだと思いますよ。そして、そういう水準が保てるような予算と人の配置ができるように、これ来年度の予算、抜本的な体制強化、これ盛り込むべきだと思いますけど、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今まず地衛研のお話がありました。それ、組織そのものが法的に位置付けされていないという御指摘はこの委員会でも、この委員会というか、それぞれの委員会で御指摘をいただいているところであります。
地方分権が進められていく中で、地方衛生研究所の設置を法律で一律に求めていくべきかという論点、これ常にあるわけでありますけれども、検査体制の更なる充実を図っていくということは、今回の感染症対策の中でも我々反省も含めて考えていくべき視点だと思っておりますので、今後の課題だというふうに認識をさせていただいているところであります。
また、保健所等の位置付け等についても、感染症法上位置付けられているわけでありますけれども、こうした位置付けを含めて、委員の趣旨と重なるか重ならないかというところはあるかもしれませんが、いずれにしても、今回の一連の対応がこれは終わらなければなりませんけれども、終わった段階においては、我が国における感染症における体制というのはどうあるべきなのかについて、今回の様々な経験あるいは課題、それらも踏まえてしっかり議論すべきだというふうには認識をしております。
○田村智子君 新型コロナは対応が長く求められると思われるわけですから、私、終わった段階でいいのかなと思います。既に新型インフルのときに出されていた総括は、これは具体的に実行するということを、もう今年度の補正、来年度の予算、やるべきじゃないかというふうに思うんですね。
国立感染研についても指摘しておきます。
新型インフルエンザの総括会議でやはり体制強化の提言が出されていました。二〇一〇年にはいっとき研究者増えました。ところが、国家公務員定員合理化、削減の計画が激烈に進んでいくんですね。
二〇一二年、国立感染症研究所を含む厚生労働省直轄の四つの研究所が連名で厚労省の担当課長宛てに要望を出しています。定員削減によって、科学技術の高度化への対応はもとより、行政施策に必要な試験研究や情報提供等適正な遂行をも危うくするとして、現行の定員確保を求める要望だったんです。私も、こうした動きを受けて、二〇一三年三月に国立感染症研究所の問題を取り上げ、年一〇%もの予算削減、大幅な定員削減の見直しを強く求めました。
しかし、残念ながら見直しは行われず、二〇一〇年度三百八十五人の定員が昨年度は三百六十一人、今年度は一人だけ増員と。最近では、非常勤の職員も減っているとお聞きをしています。
新型インフルエンザ総括会議での総括、提言がありながら、体制強化どころか定員削減まで行った。これ重大な反省が求められていると思いますが、いかがですか。あわせて、来年度、定員の大幅増員は検討されていますか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
国立感染症研究所は、国民の生命、健康を守るために、新型コロナウイルス対策を始め感染症に係る国の健康危機管理に直結する業務を担っていただいております。
政府におきましては、内外の行政課題に機動的、戦略的に対応できる体制を構築し、効率的な行政運営を実現するために、国の行政機関の機構・定員管理に関する方針に基づいて、国立感染症研究所も含め全ての府省において計画的な定員合理化に取り組んでいるところでございます。
そんな中で、国立感染症研究所の定員につきましては、直近五か年で見ますと、減が掛かっている中で基本的に横ばいで維持しているというような状況でございまして、そんな中でも組織の見直しもして感染症危機管理センターを設置したりとか、あるいは薬剤耐性菌の問題あればその研究センターを設置したりとか、あるいはMERSの対応を強化したりと、その都度必要性の高い研究に対して重点的に人員を投入することで感染症対策の強化に取り組んできたところでございます。
今後につきましてもしっかりと取り組んでいきたいと思いますし、来年度の要求につきましても今般の諸般の状況を見ながら必要な要求をしていきたいというふうに考えております。
○田村智子君 私、過去の質問でも、国の安全保障に関わるんだから国立感染研、これ定員削減の枠の外に置いたらどうかということまで言ったんだけど、これも検討していただけなかった。
今日、防衛省に来ていただきました。
国の機関の中で定員削減の枠が掛かっていないのが自衛隊です。なぜ定員削減の対象外なんですか。
○政府参考人(鈴木敦夫君) 自衛官につきましては、御指摘ございましたように、いわゆる総定員法におきまして総数を規定する対象の職員から除外されているところから、定員合理化の目標の対象になってございません。ただし、防衛省に置かれましております事務官等の定員については行政機関のその定員令に定められておりまして、この合理化目標の対象になっているというところでございます。
自衛官につきましては、やはりそれ自身が防衛力の根幹を成す重要な要素であるということを踏まえましてこのような規定になっているというふうに考えてございます。
○田村智子君 いわゆる実動部隊のところは枠掛かってないんですよね。
国立感染研だって感染症起きたときの実動部隊ですよ。定員削減は金科玉条ではありません。政府の判断でシーリングを外すことはできる。でも、それさえもやってこなかった。
感染研だけじゃありません。今、雇用調整助成金、持続化給付金、解雇、雇い止めなどへの対応を始め、国民の暮らしや営業に直結する国の業務はパンク状態です。日常的に残業があって当たり前、ハローワークのように定員外の職員が半数近く常駐するのが当たり前。これでは非常時には対応できなくなり、国民に大きな不利益がもたらされる、このことが日々明らかになっています。
ところが、今年度から五年間で更に三万九百二十七人の定員合理化・削減目標を内閣人事局が示しています。現在の定員の一割以上を合理化、削減しようというものなんですね。新型コロナであらゆる業務が滞っているのに、こんな計画をそのまま進めるつもりですか。むしろ、日常の必要業務量に見合う定員を各省庁で真剣に検討することが必要ではありませんか。
○政府参考人(山下哲夫君) お答えいたします。
国家公務員は、治安、安全、徴税、公共事業、外交、防衛など多岐にわたる役割を担っており、それぞれの分野の業務を確実に遂行することが求められております。
その上で、厳しい財政事情の中にあっては、いずれの分野であっても業務の見直しを行うことで定員合理化に取り組み、それを原資としてその時々の新たな行政需要へ対応するための増員を行っているものでございまして、片道で合理化したものについてその行政需要を見ながら増員を一方でしているというものでございまして、感染研も含め、そういうことで各省の要求に対して対応しているものでございます。
○田村智子君 武田大臣、それでいいのかって質問しているんですよ、それでいいのかって。今年度から五年間、まだ一割以上減らす、それでいいのかって聞いているんです。
○国務大臣(武田良太君) 必要な行政需要へ的確に対応していくためには、これ財政事情というのをしっかり考えていかなくてはなりません。常にその業務をそれぞれの分野見直しながら、それを原資にして的確なる対応に努めることも重要であろうかと、このように考えております。
○田村智子君 そうやっていって、新型インフルエンザの総括会議のまとめを無視してきたんですよ。それでいいんですかって聞いているんですよ。いいはずがないんですよ。
これ本当に、取り上げますけど、もう来年度の予算で見直さなきゃ駄目ですよ。この定員の合理化目標はもう一旦凍結でもいいですよ。止めなきゃ駄目だと思いますよ。大臣、どうですか。検討してくださいよ。
○国務大臣(武田良太君) それぞれの分野から要求があったならば、その状況をしっかりと考えて対応してまいりたいと、このように考えます。
○田村智子君 内閣人事局の目標を一旦取り下げてほしい。どうですか。
○国務大臣(武田良太君) それぞれの分野から要求があった段階で的確なる対応を取ってまいりたいと思います。
○田村智子君 内閣委員会で引き続きやりたいと思います。
最後に、入院医療体制について一問お聞きします。
公的・公立病院の再編問題についても三月二十七日の予算委員会で取り上げました。その際、厚労大臣は、そもそもこの再編計画の基になっている地域医療構想には感染症対策は含まれていないという答弁だったんですね。
しかし、やっぱり新型インフルエンザ等政府行動計画では、新型インフルエンザ等が大規模に蔓延した場合、地域の医療資源には制約があることから、効率的、効果的に医療を提供できる体制を事前に計画しておくことが重要であるとしていて、さらに、中等度の場合、一日当たりの最大入院患者数は十・一万人、重度の場合、一日当たり最大三十九・九万人という推計までやっているんですよ。そうすると、地域医療構想はそもそもこの行動計画を踏まえて作られるべきだったんじゃないんですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 感染症対策については、感染症に基づく感染症予防計画というのがありまして、それに基づいて地域の感染症指定医療機関の病床確保を進めるなど、必要な体制整備に取り組んでいたところであります。
一方で、地域医療構想は医療法に基づく医療計画に位置付けられているわけでありまして、がん、心疾患、脳卒中等の広範かつ継続的な医療の提供が必要な五疾病、また救急、小児、周産期等の医療の確保に必要な五事業などの一般病床に係る医療に関して二〇二五年における機能別の必要病床数を定め、病床の機能分化、連携を進めることを目的として策定をしたわけでありまして、先ほど申し上げたように、既に病床確保の対策が進められている感染症病床はそういった経緯から盛り込まなかった、こういう経緯があります。
地域医療構想を含め、これまで進めてきた医療制度改革を更に改善、発展するため、今回、感染症対策も含めた弾力性のある医療提供体制を構築する必要があると考えております。
したがって、今回の新型コロナ感染症対策にまずは全力で取り組むべきでありますが、今後、地域医療構想の検討に当たって、従前から申し上げておりますように、一連の感染症対策を通じて得た知見も踏まえて、地方自治体とも連携を図りつつ地域医療構想の議論を深めていきたいというふうに考えております。
○田村智子君 新型インフルエンザ等政府行動計画というのは、インフル特措法に基づく、法律に基づく計画なんですね。ところが、それが地域医療構想の策定ガイドラインでやっぱり新型インフルエンザの文字がないんですよ。
ドイツでは致死率が低いこと注目されていますけれど、ICUが十万人当たり三十床程度ある。日本の場合は十万人当たり五床程度ですよ。急性期病床等の重症者受入れの病床を二十万床減らすと、こういう計画はやっぱりもう本当に撤回、このことを求めまして、質問を終わります。