国会会議録

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実効性ある石綿対策迫る 保育園工事めぐり田村智子氏 参院内閣委

 

 

 

 

 

(写真)質問する田村智子議員=4日、参院内閣委

 長野県の私立保育園で園児や職員の在園中にアスベスト(石綿)の飛散が疑われる工事が昨年12月に行われた問題をめぐり、日本共産党の田村智子議員は4日の参院内閣委員会で、実効性のあるアスベスト対策を政府に求めました。

 田村氏は、保育園など子どもに関連する施設でのアスベスト被害が何度も社会問題になり、国会で追及されてきたと指摘。「なぜくり返されるのか」と迫りました。大口善徳厚生労働副大臣は「(長野県の事例について)大変遺憾に思う。県を通じて原因・経緯の詳細を把握して通知を出したい。今後ともアスベスト対策にかかる注意喚起や補助制度の活用の周知徹底をはかりたい」と答弁しました。

 田村氏は、アスベストの事前調査や除去工事に資格制度を設けるなど、不適切業者を排除する実効性のある仕組みづくりが必要だと指摘。1970年代に急増した保育施設にはアスベストが使われ、老朽化が進んでいると述べ、保育施設への使用状況について専門家による調査を実施するよう求めました。

 宮腰光寛内閣府特命担当相は「厚生労働省や文部科学省と相談し、実効性のある対策を検討したい」と答弁しました。

2019年6月5日(水)しんぶん赤旗より

 

【2019年6月4日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 次に、子供に関連する施設でのアスベスト被害についてお聞きします。
 長野県飯田市の私立保育園で、昨年十二月、園児の在園中にアスベスト飛散が疑われる工事が行われていたと、これ、五月十八日にまず毎日新聞がデジタル版で報道をし、各社が一斉に報道いたしました。私も、ニュースで聞いて、まだこんな工事が行われているのかと本当に怒りを禁じ得なかったわけです。
 この保育所では、天井裏の鉄骨に毒性の強いアモサイト、いわゆる茶石綿が吹き付けられていたのに、業者はアスベスト飛散防止対策を取らないまま天井板を剥がす工事を保育中に行ったんです。防じんマスク、防じん服という作業員の姿に、保護者がこれは異様だと思ってアスベスト工事ではないのかと指摘をした、これで発覚に結び付いたんですよ。その後も、保護者から事前の調査、届出、掲示などの不備を相次いで指摘されて、保育園は工事を一旦中止し、県も労働基準局も現地に入り、労働安全衛生法や大気汚染防止法に基づく行政指導が行われているとお聞きします。
 一九九九年にも、文京区立の保育園で、保育園を行っている横で飛散対策が取られないままアスベスト除去工事が行われるという事件が発生し、これも社会的に大問題となりました。この事案では損害賠償訴訟も提起され、文京区が責任を求め、子供たちへの長期にわたる健康診断などを含む対策が提示されて、これ和解で終結をしているわけです。
 国会でも、与野党問わずアスベスト暴露を防ぐ対策については何度も質問行われています。私も何度も質問してきました。それなのに、アスベストが使われていることを知りながら、保育中に暴露、飛散防止対策さえやらずにアスベスト除去工事が行われてしまった。何でこういうことが繰り返されるんでしょうか。まず厚労省政務官。

○副大臣(大口善徳君) 田村委員にお答え申し上げます。
 この事例につきましては、大変私ども遺憾に思っておりまして、あってはならないことだと、こう思います。
 厚生労働省といたしましては、保育所等におけるアスベスト対策につきましては、平成二十八年の九月に発出した四部局連名の通知、また、毎年度、これは全国の都道府県等を集めて開催される全国会議、ここにおきましても、今年も三月三十一日に行われましたが、周知徹底をしているところなんでございます。従来からアスベストに関する注意喚起や使用実態の把握及びその除去等のお願いをしているわけであります。
 また、アスベストの除去等に要する費用につきましては、これ保育所等の整備交付金の対象となっておりまして、こうした補助制度を積極的に活用してアスベストの除去等の早期処理に努めるよう、自治体に対して保育所等へ指導をお願いしているところでございます。
 現在、その原因や経緯につきまして、県から、県が今調査中ということでございますので、しっかり、現時点における事案の詳細については承知しておりませんけど、しっかりこれは把握をさせていただきまして、そして、アスベストの除去等については子供や職員の健康に関わる重要な課題であると認識しておりますので、厚生労働省といたしましては、県を通じて事案の把握をするとともに、今後とも自治体を通じてアスベスト対策に係る注意喚起や補助の制度の活用について一層周知徹底を図ってまいりたいと、このように思っておりますし、しっかりこの原因、経緯の詳細を把握して通知を出していきたいと考えています。

○田村智子君 是非踏み込んでいろいろ調べていただきたいし、私、ちょっと幾つか提起もしたいと思っているんですけれども。
 これ、報道でも、保育園の発表を受けてだと思うんですけれども、今のところ健康被害見られないなんて報道されたんですよ。これ、とんでもないですよ。アスベストの被害って二十年、三十年後ですからね、実際に現れてくるのは。また、県も、飛散期間が短いため一般論として健康被害の可能性は低いと見られると言うんですけれども、これ専門家は、一か月半は暴露が疑われる環境に子供たちは置かれていただろうと、こう指摘をしているんですよ。子供たちの暴露に対して、余りにもこれ危機感が薄いんじゃないかというふうに思うんです。
 実は、じん肺・アスベストセンターなどの専門家が、今回、保育園や工事業者、設計事務所、この三者が県に提出したてん末書、現場の写真などの分析もしているんです。私もお話をお聞きしました。聞けば、今もまともに対策が取られているのかは大変不安なんです。アスベスト飛散を防ぐために、作業現場全体をシートで厳重に覆い、周りよりも気圧を下げる負圧対策を取るということは、これ当たり前のことなんですね。ところが、こうした養生をした作業記録がないわけなんです。作業現場はビニールのシートで覆っているだけというふうに見られるんです。
 これ、作業現場は本来、労働者への暴露の防止ということで、負圧を行うのはもちろん、養生シートというのはプラスチックシート、破損しないようにプラスチックシートで、床は〇・一五ミリ以上の厚さ、二重に敷くことが求められます。壁についても、厚さ〇・〇八ミリ以上でこれは一重、これが最低基準なんですよ。これすらやっていないようだというふうに指摘されています。
 現在、この保育園は別の保育園の旧園舎に園児を移して、撤去工事どうするかという準備しているんですけれども、果たして園児への継続的なフォローもなされるのだろうかと、大変私は心配しています。
 これ、東京の先ほど指摘した事案、あるいは神奈川の藤沢市でも同じような事案が起きているんですけれども、このときには第三者も入って対策の検討というのが行われています。今回も、是非、行政や第三者も入って現状の把握、必要な対策の検討、園児への長期間にわたる経過観察などを含めた対応を行うべきだというふうに思いますし、厚生労働省からそういう対応をすべきだというふうに求めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(大口善徳君) 保育所は、子供の安心、安全に過ごすべき場所であり、アスベストの飛散を伴う改修が行われたことは極めて遺憾であります。
 こうした事案につきまして、一義的には都道府県の環境部局による指導がなされることになっており、今回の事案についても適切に安全確認などの対応が行われていると報告を受けているわけでありますが、その上で、保育所の対応に問題があれば、保育担当部局において児童福祉法に基づき文書の指摘や改善勧告などの対応が図られるものと考えております。
 さらに、御指摘の第三者委員会の設置につきましては、これは県において必要に応じて設置をされるというふうに承知をしております。

○田村智子君 それで、専門家はあらゆる分野に私今入るべきだと思っているんですよ。
 この長野の飯田市の例では、実は保育園も工事事業者も設計事務所も、吹き付けアスベストの存在を分かっていたんですよ。分かって工事に入っているんですよ。しかも、二〇一二年にもこの保育園は耐震工事を行っていて、このときもアスベストの除去工事をやりました。これも対策が不十分で、このときも保育中の子供が暴露したおそれがあるわけですよ。このときも同じ事業者なんですよ。設計会社は同じなんですよ。国は、保育所等に対してアスベストの有無の実態調査も行い、そのフォローアップと併せて何度も注意喚起しているはずなんです。それなのに、こういう事案が繰り返し発生している。
 厚労省としても、専門家の意見も入れながら、これまでの繰り返しではない抜本的な対策、これ検討していくべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(八神敦雄君) お答え申し上げます。
 厚生労働省におきましては、社会福祉施設等における吹付けアスベスト等使用実態調査ですとかフォローアップ調査を二〇〇九年から実施をし、その調査の結果を公表するとともに、社会福祉施設等のアスベストの除去等について、都道府県等を通じて指導を行ってきたところでございます。
 しかしながら、今御指摘ございました保育園は、過去の耐震化工事においてもアスベストの除去を怠ったという経緯があるにもかかわらずアスベストを再び飛散をさせたということは、先ほど副大臣からもありましたように誠に遺憾でございます。
 厚生労働省では、これまでも、調査結果の公表に併せて、都道府県等に対しアスベスト使用状況の調査、未実施の施設等に対する指導の徹底とアスベスト対策に万全を期すように依頼をしてきております。現在集計中のフォローアップ調査、この結果を公表する際にも所轄庁に対してその趣旨を再度徹底をしてまいりたいと考えております。

○田村智子君 今回のケースでは、園はアスベストの存在を把握していたので、設計事業者に対応は大丈夫かと何度も尋ねたというんですよ。それでもこういう事態になっちゃった。やっぱり、不適切な事業者をどう排除するのかということを真剣に対策取られるべきだと思うんですね。
 じん肺・アスベストセンターの皆さんは、これやっぱり事前調査、それからアスベストの除去工事について、もうライセンス制度を取るべきじゃないのかという提案をされています。これ、これまでも、これは分かっていてやった不適切な工事なんですけど、アスベストが調査をやっても見落とされていたというのは、これいっぱいあるんです。学校でも何度も繰り返して、私も何度も質問したわけですよ。
 また、やはりこのアスベストをちゃんと見る、それから飛散させないような対策を取る、これは専門性の高い困難な仕事だということをちゃんと認めて資格とライセンスの制度をつくるべきではないか、これ一点目、提起します。
 そして、もう一つです。不適切や違法な工事が行われた場合の罰則、これ余りに軽いと思うんですよ。労働者の暴露を防ぐための石綿則、ここでは懲役六か月以下又は罰金五十万円以下となっているんですけど、これも私軽いと思うし、ほとんど適用されていないともお聞きしています。
 大気汚染防止法でも、届出違反は懲役三か月以下、罰金三十万円以下、工事の際に何も対策を取らなくても懲役六か月以下又は五十万円以下なんですね。しかも、この大気汚染防止法の場合ですと、故意にやった場合は罰則なんですよ。だけど、故意じゃなかったというふうに言われれば、これは罰則にもならないんですね。
 やっぱり、アスベスト被害がもたらす影響の大きさを考えると、この罰則は見直すべきだというふうにも思います。あるいは、こうした仕組み、不適切業者を排除する方法、これ検討必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(田中誠二君) 建築物の解体、改修を行う場合には、労働安全衛生法に基づきます石綿障害予防規則に基づいて、当該解体、改修を行う事業者に対し事前に石綿の使用の有無を調査することを義務付けております。
 この事前調査の実施については、指針において、石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者であることとし、具体的には所定の講習を受講し修了した者等であることとしております。
 また、石綿を含有する建築物の解体、改修を行う場合には、作業に従事する労働者が石綿に暴露することのないよう、吹き付け石綿などがある場合は、労働基準監督署に届け出るとともに作業場所の隔離等の措置を講じること、石綿含有建材を湿潤な状態とすること、解体等の作業に従事する労働者にマスクを着用させることなどを事業者に義務付けております。
 今後、石綿含有建材を使用する建築物の解体等が増加すると見込まれることから、昨年七月から有識者による検討会を開始しまして、適切な能力を有する事前調査者を着実に育成、確保するため、能力習得のための講習制度などを整備して、事前調査者の具体的な要件などを明確に法令等に位置付けること、必要な措置の確実な実施を確保するため、作業の実施状況等を写真等で記録、保存させ、これらを基に監督指導などを行っていくこと等を検討しているところでございます。
 今後、事業者に対する指導を徹底するとともに、有識者による検討会における議論を踏まえてしっかり対応していきたいと考えております。

○田村智子君 ちょっと時間がなくなったので、もう一点、提起だけしておきます。
 化学物質については、気中濃度測定など必要なリスク把握とそれに応じた対策を取る、対策を行うようになっているんですけれども、アスベストについてはそうなっていないんですよ。厚労省は、アスベストについては結果が出るまでに時間が掛かる、義務付けは望ましくないというふうにお答えになっているんですけれども、イギリスでは気中濃度測定が義務付けられて、現場ですぐ結果が出て、対策に反映させているんですよ。これは、問題は、そういう体制をその工事の現場で取るかどうかという問題だけなんですよ。やっぱり、私は、これアスベストについてもやっていくべきだということを問題提起をしておきます。
 保育所などの社会福祉施設について、最後、もう時間になっちゃったので、宮腰大臣にお聞きしたいんですけれども、社会福祉施設については、保育所など、二〇〇九年に実態調査を行われていて、その後もフォローアップ調査行われていると。だけど、取組が不十分だとして総務省が勧告も出すというふうにもなって、二〇一七年には改めて調査を行った。その結果、保育所二万七百三か所のうち、これは四百七十二か所は措置済み、除去されていたり封じ込められているよと。一千二百五か所はアスベストの飛散のおそれがない、八十五か所は措置未実施、調査未実施は二千九百五十九か所に及ぶわけなんですよ。
 私、調査したところも果たしてその調査結果は本当かと疑っています。だって、見落としがいっぱいこれまでもあるわけですから。やっぱり、専門家による調査ということが私どうしても必要だと思うんですよ。
 アスベストというのは、二〇〇六年に製造、使用を禁止されましたけれども、それまでは耐火材として建築基準法で使用が義務付けられていたので、古い建物にはまずあるんです。企業主導型保育とか認可外保育などは、新設のものも古いビルの中につくられているものはいっぱいあるわけですよ。だから、アスベスト対策というのは、保育所の老朽化を見ても、いよいよこれから対策が本当に求められてくるというように思うんです。せめて子供への施設については専門家による調査を行って、レベル3という封じ込め、これは建材、壁材とか、封じ込められているからいいというんですけど、エアコン設置とか何かケーブル通しますとかいうとき穴空けるわけですよ、飛び散るわけですよ。だから、封じ込めといっても危険性はゼロではないんです。
 だから、こういうレベル3も含めて、使用状況がどうかということを把握する、記録する、それがちゃんと申し伝えがやられていく、そして絶対に子供たちが暴露しない体制を様々な工事をやるときに行う。これ、特に専門家を入れてということを子供に対する施設については行うべきだというふうに思うんですけれども、これ宮腰大臣にも見解を求めたいと思います。

○国務大臣(宮腰光寛君) 今委員からるるお話がありましたけれども、二〇〇六年にアスベストの製造や使用が禁止されたと。当時、私も記憶に残っておるんですが、自民党の中で佐田玄一郎先生が中心になって緊急対策を取りまとめられて、直ちに実行に移すということをやっておいでになったのがよく記憶に残っております。その当時から比べると、ここ最近やはり危機感が薄れてきたのではないかというようなことも実感をいたしております。今回のような、在園時にこのような報道の例があっては、これは絶対にあってはならないというふうに考えております。
 実効性のある対策を取っていくためにどのようにすればいいのか、都道府県との連携ということもありますし、既に相当部分は対策、除去が終わっているということもありますので、今後、厚労省や文科省ともよく相談をしながら、実効性ある対策をどう取っていけばいいのか、ちょっと検討させていただきたいと思います。

○田村智子君 あと一分あるので。
 大口副大臣、今私が言った専門家の関与、専門家による調査、ここは本当に踏み込んで是非検討いただきたいと思うんですけど、最後、一言お願いいたします。

○副大臣(大口善徳君) 今、実態調査、フォローアップ調査をしております。そういう中で、今後、アスベストの除去等の取組が確実に進むように、必要に応じて、所轄庁、自治体における福祉部局だけじゃなくて建設部局とも連携をした施設への指導の取組を検討したいと考えておりますし、数値も出していきたいと思います。
○田村智子君 終わります。


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