(写真)質問する田村智子議員=30日、参院内閣委
学童保育(放課後児童クラブ)の職員基準を緩和する児童福祉法改悪など、13本の法律をまとめて見直す第9次地方分権一括法が31日、参院本会議で自民党、公明党などの賛成で可決、成立しました。日本共産党は反対しました。
これまで「従うべき基準」だった学童の1クラス2人以上(うち1人は都道府県の研修を修了した放課後児童支援員)の職員配置基準は、拘束力のない「参酌基準」となり、自治体の判断で無資格者1人での運営も可能になります。
また、博物館や図書館、公民館といった公立施設の所管を、自治体の判断で教育委員会から首長部局に移せるよう、社会教育法など4法を改悪。首長の意向で社会教育行政の政治的中立性がゆがめられかねません。
これに先立つ30日の内閣委員会で日本共産党の田村智子議員は、学童の職員基準の参酌化は子どもの命と安全の保障と矛盾すると批判しました。
田村氏は、「学童は子どもの安全を守ることが第一義的に求められているのに、事故や事件、災害のときも1人で対応していいことになる」と厳しく追及しました。片山さつき地方創生相は「条例改定の判断は市町村が負っている」と答弁。田村氏は「国の責任放棄だ」と主張しました。
参酌化を提案した愛知県豊田市では、66カ所すべての施設で職員が全員非正規雇用で、週2~3日のローテーション勤務です。
田村氏は「学童指導員の専門性も認めない自治体から『自治体に任せろ』と提案され、法律を変えるなどあり得ない」と指摘。自治体ごとに賃金や勤続年数に開きがあるとし「低いところを引き上げる支援策を思い切って進めるべきだ」と強調しました。
解説
安倍流支援策の地金
多くの声に押され学童運営にかかわる基準がつくられてから、わずか4年。安倍政権は、唯一「従うべき基準」とされた職員配置基準を、自治体の判断で引き下げ可能な「参酌基準」に改悪しました。施政方針で「子どもを産み、育てやすい日本へと大きく転換する」と語った安倍流“子育て支援”の地金があらわになりました。
子どもの命に直結する基準の見直しにもかかわらず、安倍政権は性質の異なる他の12本の法律と一括審議とし、審議時間も衆院で5時間、参院では5月28日の趣旨説明からわずか3日で本会議での成立へと突き進みました。
政府は「(これまでの配置基準では)クラブの運営に支障を来すと感じた自治体が非常に多かった」(片山さつき地方創生相)などと繰り返しました。しかし、基準緩和を政府に求めたのは、実際は2自治体だけ。
反対に、「基準堅持」「質の確保」を求める意見書を議会で可決する動きが広がり、全国学童保育連絡協議会(全国連協)の調べでは23日現在、11道県、39市町に上ります。全国連協の基準堅持を求める署名も5月上旬時点で28万8千人分に達します。
現場からは、指導員の半数が年収150万円未満という状況を放置したまま、指導員の負担を増大させる配置基準緩和を実行すれば、人材確保はいま以上に難しくなるとの声が上がります。政府の言い分は完全に破綻しています。
同時に、職員配置が参酌化されたとしても、自治体はむやみに基準を引き下げられるわけではありません。自治体に基準を守らせ、引き上げさせるための運動が重要になっています。(佐久間亮)
2019年6月1日(土)しんぶん赤旗より
【2019年5月30日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
おととい、川崎市で、スクールバスを待つ小学生が襲われるという殺傷事件が起きました。余りにも痛ましく、御冥福とかお見舞いという言葉では本当に思いが伝え切れないと、そういう思いでいっぱいなんです。
子供たちの命と安全を守る取組が今改めて問われています。そのときに、学童保育、放課後児童クラブの職員配置二人以上という従うべき基準を、参酌基準、参考にしてくださいという基準にしてしまうんでしょうか。つまりは、職員は一人でもいい、資格や研修を受けていなくてもよい、こうやって認めるということなんですか。
○政府参考人(本多則惠君) お答えいたします。
今回の措置でございますが、従うべき基準があることによって人材確保が困難になっているといった地方からの要望を踏まえまして、全国一律ではなく、自治体の責任と判断によって、質の確保を図った上で、地域の実情に応じて運営を行うことを可能とするものでございます。また、その基準につきましては、市町村が地方議会の議を経て条例によって制定するものでございます。
厚生労働省といたしましては、従うべき基準が参酌化された場合でありましても、自治体においてこの基準を十分参酌した上で、自治体の責任と判断によって地域の実情に応じた適切な対応が図られるものと考えております。
○田村智子君 ごまかしていますよ。二人以上って書かれているのを参酌化するんですよ。二人以上で、参考にしていいよだったら、一人配置認める、それ以外ないじゃないですか。
○政府参考人(本多則惠君) お答えいたします。
申し上げましたように、自治体の責任と判断によって、質の確保を図った上で、地域の実情に応じて御判断いただき運営を行うことを可能とするものでございます。ですので、その結果、自治体において一人配置を認めるかどうかをお決めいただくことになるものと承知しております。
○田村智子君 国はそれでいいという法律になっているんですよ、これ。
片山大臣にもお聞きしたいんですね。登下校時の安全確保について、昨日、五月二十九日、緊急の閣僚会議持たれましたね。子供の安全確保が必要だというのは通学路だけの話じゃないです。
学童保育というのは、そもそも放課後の子供の安全と安心を保障するために、六〇年代から七〇年代、鍵っ子と言われた子供たちが火事で命を落としたり、いろんなことあったんですよ。それで全国に広がっていった。八〇年代には幼女連続殺人事件が起きて、そのときには誘拐が発生した地域で学童が新たにつくられたという経緯もあるんですよ。
児童福祉施設として子供の安全を守ることは第一義的に求められていて、当然、避難訓練、防犯訓練行っているんです。不審者対策も重視されていて、職員の一人が不審者に対応する、もう一人が子供たちを避難させる、こういう訓練やっているんですよ。
事故や事件、アクシデント、災害、こういうものが起きたときにも一人で対応してもいいよと、あるいは現場でいえば一人で対応しなさいと求められちゃう、これは安全確保と矛盾するじゃありませんか。
○国務大臣(片山さつき君) まず、今般の事件につきましては、痛ましいということを通り過ぎてもう絶対に起きてはいけないということで、早速、関係閣僚会議も開かれたわけでございますが、安心、安全の確保が最優先ということは、もちろんこれはもう絶対に揺るぎない大原則でございます。
そして、今回、地方分権の一括法の中で、従うべき基準の参酌化の問題、多くの委員の先生方から御心配をいただいてきたわけでございますが、まず、この歴史をひもときますと、まさにおっしゃったように私も世代的に鍵っ子という言葉が当てはまるそういう時代の子供でございまして、そういうときにはまさに学童保育はなかったわけですね、制度的に、当然。何をしていたかというと、それはそれなりのコミュニティーの中で、子供たちも働く母親たちも工夫をしてやっていたわけで。
事件が起きたこともあるし、いろいろな地域の実情もあって、地域が主体となってこの事業はできてきております。それは客観的な事実でございます。ですから、初めから国が一定の制度を法律で作りました。日本ですから、先ほど申し上げましたように非常に細かいことまで逐一決めるわけですよ、省庁はね。そういう形で、上からこうしてきたものではなくて、地域的にこういうことで子供たちの居場所確保をしていくということの中で出てきて、それを後から御承知のような経緯ではまってきたわけですね。
それをこれからどうしていくかというときに、平成二十九年から三年連続、地方六団体の方から、なかんずく市長会の方から、我々も質の問題ももちろん分かっているし、実施主体として市町村長が責任があるということをしっかり自覚した上で実情を踏まえた柔軟な対応をお願いしたいということで、複数回出てきております。そして、まさに委員の先生方から、実際に議長会というか各地域の議会の中から、こういうことでいいのかと、やはり参酌化しない方がいいんじゃないかという、そういう結論でアピールしてこられたところがあるのも、これも事実です。
ただ、いずれにしても、実際に条例を改正するか否かの御判断は各市町村に委ねられるわけですから、それを出してきた議会が通すわけがないわけで、これはあくまでも自由にできる可能性のある自由化をしてくれということを市長会の方が何度も私どもに言ってこられて、ですから、去年出てきて今年やる話じゃないんですね。そこに相当なやり取りがあって、厚生労働省さんの方もかなりもまれた結果としてこのようになっているということは御理解を賜りたいと思います。
○田村智子君 その地方三団体ですよ、知事会等々の。何と言っているかと。学校では担任教員は一人だ、こんな指摘までしているんですね。学校というのは、校長とかほかの教員とか事務職員とか養護教員とか、複数配置ですよ。全く的外れな指摘で参酌化しろと求めてきているんですね。これ、二人を参酌化したら、一人認める以外ないんですよ。職員一人ってどういうことなのか。
全国学童保育連絡協議会のアンケートに寄せられた実態を見てみますと、一人保育のときに工作をしていた子供がけがをした、病院に連れていかなきゃいけないと、そのときに、残る子供たちに誰が来ても開けないようにねと、こうやって子供を残していかざるを得なかったんだ。あるいは、高いところから落ちて負傷してしまった子供を救急車に乗せなきゃいけないと、だけどここの学童保育離れられないから、その子一人で救急車に乗せざるを得なかったとか、本当に苦しい思いで指導員の方々、一人体制経験している。だから、複数配置をちゃんと守ってくれと、こうやって求めてきたんですよ。
これ、日常の学童保育でも子供がけがするとか具合が悪くなるってよくあることで、また、外遊びをする子供にも部屋にいたい子供にも対応が求められて、複数配置というのは子供の安全、安心の保障なんです。地方がいろんな基準を作りますよ、だから国はそれを見守りますよじゃ駄目ですよ。
地方の自主性だといって、住んでいる自治体によって子供の安全のための最低の基準まで国はもう参酌化しちゃうのかと、これが問われているんです。端的にお答えください。それでいいんですか。
○国務大臣(片山さつき君) まさに提案募集方式に沿って、複数年度繰り返し繰り返し出されてきたこういったことと、その所管官庁との議論を尊重して、今回このような形にさせていただいておりますし、あくまでも実際に条例を改正するかの判断はまた市町村が負っているということも含めてこのようにさせていただいているということを御理解いただきたいと思います。
○田村智子君 それは国の責任放棄ですよ。じゃ、地方団体も交えていろいろ議論して出してきたものだと言うけれども、そもそも複数配置を含め学童保育の運営基準がなぜどのように定められたのか、これちゃんと見るべきです。
学童保育ってどういうところか。私も経験しましたけど、三月三十一日まで保育園に通っていた子供が四月一日には学童保育に通うことになるんですよ。入学式前ですからね。保育園の利用時間と同じように一日中学童保育で過ごす、これが小学生としてのスタートとなる子供たちいっぱいいます。だから、子供を安心して託せるのか、子供が楽しく通ってくれるのか、保護者にとって本当に大きな問題で、全国どこでも学童保育が一定の質を保って運営されるようにと、学童保育の関係者や保護者が職員配置の基準、資格要件、施設基準、これ作るようにと。三年どころじゃないですよ、もう長年長年求め続けてきたんですよ。
例えば、全国学童保育連絡協議会、二〇〇三年に、私たちが求める学童保育の設置・運営基準、こういう提言を発表し、二〇〇八年には政府の社会保障審議会少子化対策特別部会でこの内容に沿った報告も行っています。こうした提言や運動を受けて厚労省は運営基準を策定したんじゃないんですか。
放課後児童クラブの運営基準策定するに当たってどのような審議過程経たのか、簡潔にお答えください。
○政府参考人(本多則惠君) お答えいたします。
平成二十四年三月に当時の少子化社会対策会議において決定された子ども・子育て新システムに関する基本制度におきまして、放課後児童クラブについて、質を確保する観点から、職員の資格、員数、施設、開所日数・時間などについて、国は法令上の基準を新たに児童福祉法体系に設定する、また、国が定める基準を踏まえ市町村が基準を条例で定める、職員の資格、員数については、現行の事業実態を踏まえ、従うべき基準とすることも含め法案提出までに整理するとされまして、これに基づいて平成二十四年に児童福祉法が改正されたものです。
その後、社会保障審議会放課後児童クラブの基準に関する専門委員会を七回開催いたしまして、報告書を取りまとめた後、平成二十六年に放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定めたものでございます。
○田村智子君 地方行革の専門会議なんて十数分とかですからね。それで、何ですか、三年やっただけだと。もう審議会とか専門会議で何度も何度も議論積み重ねているんですよ。それで、職員の複数体制と資格要件は従うべき基準となった、しかし、施設基準や基礎単位となる児童数などが参酌基準にとどまった、だから大規模学童を四十人以下の適正化に改善してくれ、あるいは施設基準も従うべき基準に引き上げようと、こういう運動は今もずっと続いているんですよ。ところが、基準の施行から僅か三年で全ての基準を参酌基準にしてしまうという。昨年、この案が提案されたときに、今までの運動は何だったのかと、もう私も驚きと怒りを抑えることができませんでした。
地方分権改革の有識者会議などでは、全国学童協など学童関係者からの意見聴取、行ったんですか。
○政府参考人(山野謙君) 私ども、提案の実現に当たりましては、分権改革室の職員が、支障の具体的な内容について現場を最もよく知る地方公共団体、こちらの職員から話を聞いております。その上でその実態を話をするということ。
それから、当然のことながら、有識者会議なり分権の提案部会の皆さん、関係省庁からのお話を十分に踏まえて議論をしたということでございます。
○田村智子君 聞いてないんですよ。学童関係者から意見なんか聞いてないですよ。一番知っているのは現場の皆さんですよ。運動してきて、基準求めてきた皆さんですよ。
放課後児童クラブについては、今後の在り方について、社会保障審議会放課後児童対策に関する専門委員会、昨年七月に中間取りまとめを行っています。基準の参酌化については、二〇一六年から提案と議論、地方分権の方で行われているんですけど、じゃ、この学童の専門委員会ではこの参酌化についての議論は行ったんですか。
○政府参考人(本多則惠君) 放課後児童クラブの従うべき基準の参酌化につきましては、平成二十九年十二月の、平成二十九年の地方からの提案等に関する対応方針の閣議決定におきまして、子供の安全性の確保等一定の質の担保をしつつ地域の実情等を踏まえた柔軟な対応ができるよう、参酌化することについて、地方分権の議論の場において検討し、平成三十年度中に結論を得るとされたところでございます。
そのため、放課後児童対策に関する専門委員会におきまして、この放課後児童クラブの従うべき基準の参酌化に関する意見は伺っていないところです。
○田村智子君 結局、参酌化してほしいという自治体からはたっぷり意見聞いたと。しかし、放課後児童クラブの基準の策定に関わった方々、専門分野の方々からは公式に意見も聞いてない、議論もしていない。学童保育の質を余りに軽んじていますよね。
これ、直近の地方分権の提案は愛知県豊田市なんですね。豊田市が見直しを求めたのは資格要件です。学童指導員、支援員というふうに政府は言っていますけれども、これは、教員や保育士、社会福祉士などの有資格者又は高校卒業後二年間の実務経験者でいいと。専門性担保するための研修というのも義務付けたわけですけれども、これに対して豊田市は、高卒者の実務経験二年というのは二千時間程度の勤務経験を求められると、これが問題だというんですよ。補助員は非常勤職員、一日三・五時間、週三日程度の勤務なので、二千時間程度の勤務には四年を要する、だから資格要件は自治体に任せろという提案なんですね。
学童指導員の部会を持つ労働組合、全日本建設交通一般労組、建交労にお聞きしましたら、この豊田市、公立学童二か所、民間委託や指定管理が六十四か所、計六十六か所全て職員は全員が非正規雇用です。週二十時間以下の人ばかりを雇って日替わりのローテーション勤務なので、申し送りにも子供たちとの人間関係を築くのにも大変だというふうにお聞きしています。豊田市のホームページ見ますと、放課後児童クラブの職員、これ支援員も補助員も分けてないです、区別ないです。勤務時間は授業終了後から午後六時三十分なので、これ三時間三十分程度なんですね、確かに。週二回から三回の勤務だと。これ時給千円程度ということでしょうから、平日だけの月で見てみると、月三万から五万円ですよ、収入。専門性持って継続して働ける処遇からは程遠いと。
厚労省は支援員の常勤化によって処遇改善を進めるという方向なんじゃないんですか。
○政府参考人(本多則惠君) お答えいたします。
放課後児童支援員等の処遇改善につきましては、人員確保を始めまして、長く勤務していただく環境づくりのためにも重要と考えております。
そのため、平成二十九年度予算から人件費の積算を見直しまして、運営費の国庫補助基準額を増額し、放課後児童クラブの勤続年数や研修実績等に応じた処遇改善の経費を補助する放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業の仕組みを導入したところでございます。こちらについては、常勤の方も非常勤の方も対象としております。
厚生労働省といたしましては、この処遇改善事業について多くの自治体で御活用いただけるように、文科省とも連携をいたしまして、あらゆる機会を通じて働きかけてまいりたいと考えております。
○田村智子君 こういう学童指導員の国の方向とは違って、処遇改善する気もない、専門性も認めない、大人がそこにいればいい、こういう位置付けのような自治体が、国が基準を定めるのは不都合だと、自治体に任せろと提案してきて、はいそうですかと法律を変えるのか。こんなのあり得ないですね。
学童保育の質の向上、これは指導員の専門性の発揮が最大の課題です。教育や保育とも異なる専門性があり、子供が相互に関わりながら生活する、遊びを通じて自主性や協調性なども育てる、いじめや児童虐待の発見にもつながるような、そういう活動です。子供をめぐる社会状況に様々な不安要素がある中で、学童保育の果たす役割というのはいよいよ重要になっているんです。
ところが、その指導員の処遇は、先ほどの豊田市のような例がありますからね、自治体によって本当にばらばらです。建交労全国学童保育部会の二〇一九年アンケート結果によれば、平均年収は二百六十七万一千円なんですけど、一番低いところで九十一万七千円、高いところで三百四万円。勤続年数も平均では九・四なんですけど、最も短いところでは一・三年、長い自治体では十七・九年。
これ、低いところを引き上げて望ましい方向にみんなが向かっていくことが必要で、だから、基準を自治体任せではなくて、国が守るべき基準を明らかにして、そこの基準に達するように必要な支援行っていくということが本来やるべきことなんじゃないんですか。これを地方分権という議論にするのは全くお門違いだと思いますが、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(片山さつき君) 一月に高知を訪問をさせていただきまして、知事と一日、様々な地方創生、あるいは小さな拠点等見てまいったときに、まさにこの二十三年の議論ですね、そのときに知事会の方の代表で、この法改正のときに、基準は勘弁してほしい、あるいは参酌すべき基準にしてほしいと、地方の裁量権を拡大してほしいという意見をずっと言っておられたのは高知県の尾崎知事なんですが、高知県における拠点をいろいろ拝見して、実態的に四十人以上とかあるいは七十人とかいうところがあり得る都市部と同じ配置を要求するのは非常に現実的ではないなというのは思いました。実際、七人とか十二人とかそういうところで、距離がありますから、その拠点ごとに置いていらっしゃるわけですが、そこを運営責任者である自分たちに任せてほしいということは、それはそれで一つ主張に理由があるというか、一貫してその二十三年からずっとおっしゃっているわけですよ。善かれと思っておっしゃっているわけですよ。
ですから、そういった主張の中で様々な議論が積み重ねられてきてこのようになった中で、先ほどありましたように、資格の問題を問題にした、そういう部分の具体的な主張を挙げたところもあれば、人数もあれば、いろいろありますけれども、そこのところについて一貫して運営の裁量の確保をお願いしたいということはかなりコンセンサスであったということは御理解を願えればと考えている次第です。
○田村智子君 たった二人配置がそんなきつい基準ですかってことですよね。
確かに、研修要綱とか、なかなか研修受講困難があると聞いていますけど、それは経過措置を例えばもうちょっと延ばすとかという検討だってできたはずですよ。あるいは、研修受講するときの代替要員どうするのかという支援とか、そのときの給与補償の支援とか、支援を拡充すればできる話だと思いますよ。本当にひどい。これ、認められない。
次に、社会教育施設を教育委員会から首長部局へ移管することを可能とする改定、これについても取り上げます。
知事や市長というのは政治家です。時々の政治家の意向で、博物館、図書館、公民館などの企画が影響を受けることになるんじゃないのかと危惧する方が少なからずおられるんですね。これ、杞憂だとは言い切れないと思います。
五月二十四日、最高裁判決で、大阪府、大阪市の敗訴が確定した。ピースおおさかという、これは平和問題について企画をしている、展示している施設なんですけれども、これ、大阪維新の会の知事、市長になった途端にその展示内容の大規模な変更が行われたんです。市民の方が、審査会も開かないで変更されていると、一体どういう議論を経て、検討を経て変更が行われたのかと情報開示を求めても、全く情報が開示されない。このことを訴えた裁判なんですけど、これ敗訴確定しているんですね。
やっぱり、現にこういう問題起きているんですよ。首長が替わったら、市長が替わったら現に展示が変わっちゃった。そうすると、知事や市長直轄の部局が所管するようになっても政治的な影響を受けないと、こう言い切れるんでしょうか、文科省。
○政府参考人(塩見みづ枝君) お答えいたします。
今回の改正案におきましては、地方公共団体の判断により公立社会教育施設の所管を首長とする場合には、政治的中立性の確保など社会教育の適切な実施が確保されるよう、首長がその所管する公立社会教育施設の管理運営に関する規則の制定を行う際には教育委員会に協議すること、教育委員会は、職務に関して必要と認めるときは、公立社会教育施設に関する事務について首長に対して意見を述べることができることなど、教育委員会による一定の関与の仕組みを設けております。
今回の改正案によりまして公立社会教育施設を首長が所管することとなった場合におきましても、当該施設が社会教育法等に基づく社会教育施設であることには変わりはございません。ですので、法律や法律に基づく基準等を踏まえ、設置者である各地方公共団体におきまして、政治的中立性の確保を含め、社会教育施設としての適切な管理運営に努めていただくことが重要と考えております。
○田村智子君 それが担保になるのかどうかなんですけど、危惧されるのはそれだけじゃないんですね。
今、政府は公共施設の老朽化、それから人口減少を理由に、公共施設の総面積を減らすことを前提にマネジメントを強く自治体に求めて、計画の策定もやられているんですね。
社会教育施設の種別を超えた統廃合とか民間委託、民営化、これが首長によって強力に進められるという危険性はないんでしょうか。
○政府参考人(塩見みづ枝君) お答えいたします。
今回の改正案におきましては、地方公共団体の判断によりまして、公立社会教育施設の所管を首長とする場合には、社会教育の適切な実施が担保されるよう、先ほど申し上げましたような教育委員会が一定の関与を行うという担保措置を設けております。このような制度も踏まえまして、当該地方公共団体におきまして首長と教育委員会とが十分なコミュニケーションを図っていただきながら、また地域住民の意向にも十分に配慮して、社会教育施設としての適切な運営が確保されることが重要と考えております。
○田村智子君 そもそも、この公立社会教育施設と、広くこういう改定になったのなぜなんだろうかと。これまでの提案というのは博物館とか図書館というふうになっていて、ところが昨年、三重県の名張市が社会教育施設全般に広げる提案を行っているんですね。名張市というのは、調べてみると、公民館条例を既に廃止していて、二〇一六年に市民センターとして教育委員会から首長部局に所管移しているんですよ。既にもう移っているんです。市民センター十五か所、図書館と郷土資料館は一か所ずつで、別に図書館と郷土資料館のことについて何も書かれてないんです、提案の中に。何でこんな提案したのかなと。
我が党の市議に、市の複数の担当者に直接聞いてもらいました。そうしたら、担当者の方複数いますが、こう言っていました。私の方から要望を出したのではない、国が名張市の先行事例を知っていて、成功事例としてのヒアリングが欲しかったのではないのか、あるいは国からの要請を受けて提案した、借りをつくった、何かのときに返してもらうこともあるだろう、こう言っているんですよ。
国が進めたい施策を自治体に提案させる、こういうことも行われているんじゃないんですか。
○政府参考人(山野謙君) 提案募集方式は、地方の発意に基づきまして住民に身近な課題を解決していくということでございます。御指摘のような内閣府が地方に対して提案を出させているといった事実はないと認識をしております。
○田村智子君 これ、名張市の提案見てみると、いや本当によく分からない提案なんですよ、既に自分たちはやっていますという提案になっていて。だから、市の担当者が言っていることが私、本当だと思えてならないんですね。
それで、いろいろ、じゃ、その手を挙げてもらうというために何やっているのと聞いたら、今答弁でもいろいろ言われていましたけど、確かに毎年全国ブロック説明会というのを内閣府と地方六団体の共催で各地域ブロックごとにやっているんですね。
その様子というのは、内閣府の方も胸を張って、いや、私たちの担当者が、こういう提案もあり得るんじゃないでしょうか、何かお困り事があるんじゃないでしょうか、そのお困り事について地方分権のところで提案を出すという方法がありますよと、手取り足取りそういうやり取りをしていることを認めていますよ。それがお仕事だと皆さん思って誇りを持ってやっておられるのかもしれませんよ。だけど、政策の少ない自治体に働きかけて、提案の少ない自治体に働きかけて、あなたのところも出した方がいいですよとか、これ地方分権なんですか。地方の自主性なんですか。
しかも、出てくる中身はといえば、さっき言った放課後児童クラブのように、その基準では自分のところやっていけないから下げてくれと、まあ子供たちの命に関わるような基準をおとしめるような提案を出してきちゃう、これも地方分権だといって進める。あるいは、なかなか提案がないところには手取り足取り教えて提案出させる。
もう、このやり方やめた方がいいと思うんですよ。本当に自治体が困っていることがあるならば、ちゃんとその関係省庁とやり取りをして、内閣府じゃなくて関係省庁とやり取りをして、どんな支援策があるのか、どんな法制度があるのか、そうやって一緒に考えて、必要な法律はそれぞれの省庁の責任で法案変える提案をして、それぞれの法案を担当する大臣が責任持って答えて、ちゃんと時間取って関係者からの意見も聞いて、そうやって審議するのが当たり前のやり方じゃないですか。もうこういう、何が地方の自主性かですよ。こんなやり方もうやめるべきだと思いますが、片山大臣、いかがですか。
○国務大臣(片山さつき君) 地方分権一括法、過去八次におきまして一括法としてやらせていただいております。これは、その間政権交代があったわけですが、ずっと地方公共団体への事務、権限の移譲、義務付け、枠付けの見直しを通じて地域に自主性、自立性を高めていただきたいという共通の枠組みからやらせていただいておりますが。
今、私はその名張市のお話というのは初めて聞きまして、そういうことがあるのかないのか存じませんが、全国市長会の中で極めてオピニオネーテッドな方でございまして、誰かに言われて物をやるということは全く想像できるタイプの方ではありませんが、いずれにしても、私たちのところではこのようなことをやっていて、これは全国に広めるべきでありますということは時々おっしゃる方ではありますが、まさに事例の横展開ということがあってはいけないということはないと思うんですね。
実際、何が支障になっているから自治体の職員がこれができないのか分からないと答えている方もたくさんいるわけで、それを分かるようにつなげるということを地方分権あるいは地方創生、まち・ひと・しごとの部局の職員が一生懸命自治体といろんな場でコミュニケーションするということもそれは意味のあることで、それとは別に、先ほどから委員御心配いただいているように、確かに十分なその財源手当てが全般に施せるような話があらゆる分野にあればまた展開は違ってくるという部分は、それはなきにしもあらずだと思いますよ。
ですから、この学童保育については非常に、あるいは放課後子供、児童、どちらの方も、厚労省所管の分も、それから文科省所管の分も、子供に日本の未来が委ねられているわけですから、その処遇の問題についてはいずれにしてもしっかりと我々も努力をしてまいりたいということはここで申し上げたいと考えております。
○田村智子君 地方の自主性とかやっぱり住民の福祉の前進に資するためには、本当に国がちゃんとちゃんと地方交付税等を措置することの方が最も重要だと、このことを申し上げて、質問を終わります。