子ども・子育て支援改定法と大学等修学支援法が10日、参院本会議で可決・成立しました。日本共産党の田村智子、吉良よし子両議員が反対討論に立ち、消費税増税を財源とした「幼保無償化」と「高等教育無償化」の問題点をただし、真の無償化への展望を示しました。
(写真)反対討論に立つ田村智子議員=10日、参院本会議
「子ども子育て支援法」改定法は自民・公明などの賛成多数で可決。日本共産党は反対しました。反対討論に立った田村氏は、消費税10%増税を前提とした政府の「幼児教育無償化」について、「『それでも消費税増税に反対するのか』と国民を脅すようなやり方は断じて認められない」と批判。大企業・富裕層への公正な課税で、まともな幼児教育・保育の無償化政策を進めるよう強く求めました。
田村氏は、同法案が、認可外保育施設指導監督基準を満たさない施設も5年間、公的給付の対象としている事に触れ「絶対に許されない」と批判。「子どもの命と安全を守るギリギリの基準を満たしていない施設はただちに是正させ、できなければ排除する事が必要だ」と強調しました。
田村氏は、安倍政権が進める企業主導型保育などに言及し、認可の最低基準を満たすことが大原則とされてきた保育制度を切り崩していると批判し、即刻改めるべきだと主張しました。
さらに田村氏は、公立保育所での幼児教育・保育無償化の費用が全て市町村負担となり、公立保育所減らしが加速する危険も指摘。東京都の保育ニーズ調査では、5割以上が公立保育所への入所を希望しているとして「保護者の要求に応え、待機児童を市町村の直接の責任で解決するためにも、公立施設の増設こそ求められている」と強調しました。
田村氏は「良質な保育・幼児教育を全ての子どもに無償で提供するのは子どもの成長発達の権利保障として大切だ」と強調。一方、安倍政権は保育現場や自治体の声を聞かないまま保育の「質」を置き去りにし、消費税増税を国民にのませる口実として無償化を持ち出したと言わざるを得ないと批判しました。
2019年5月11日(土)しんぶん赤旗より
【2019年5月10日 参議院本会議議事録】
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案、いわゆる幼児教育無償化法案に反対の討論を行います。
第一に、政府の言う幼児教育無償化が消費税率一〇%への引上げを前提としていることです。
安倍総理を先頭に、政府は、幼児教育無償化には安定財源が必要で、それは消費税増収分を充てるのだと繰り返し主張しています。このように、消費税率を一〇%にしなければ幼児教育無償化はできない、それでも消費税増税に反対するのかと国民を脅し付けるようなやり方を断じて認めるわけにはいきません。
消費税は、とりわけ低所得の子育て世帯にとって重い負担となることは明らかです。プレミアム商品券などの極めて一時的な対策では、焼け石に水にもなりません。また、生活保護世帯、一人親世帯の住民税非課税世帯は、今でも保育料は無償の措置がとられており、この法案による新たな負担軽減もありません。
既に、消費税率引上げ時に一気に物価が上昇するのを抑えるためだとして、食品、生活必需品の値上げが相次いでいます。この上、消費税一〇%への引上げとなれば、どれほど強く耐え難い痛みになるかを直視すべきです。消費税増税を中止し、我が党が繰り返し提案しているように、大企業、富裕層への公正な課税によって、まともな幼児教育、保育の無償化政策を進めるよう強く求めるものです。
第二に、本法案は、認可外施設へ公的給付を制度化するだけの内容であり、これでは、保育の質を担保する最低基準を事実上掘り崩すことになります。
政府は、待機児童問題が解決していない下で、認可外施設を利用せざるを得ない保護者にも無償化相当の支援が必要だと説明しています。
しかし、法案では、待機児童のいる場合という限定もなく、認可保育所に移行するまでの時限的措置という位置付けもない、恒久的制度として認可外施設や事業への給付制度を規定しています。それどころか、認可外保育施設指導監督基準を満たさなくとも、五年間、公的給付の対象とすることまで定めているのです。認可外保育施設指導監督基準は、保育の質を保障する基準ではありません。子供の命と安全を守る、まさにぎりぎりの監督基準です。
昨年十月、練馬区の認可外施設で午睡中の乳児死亡事故が発生、この施設は、事故直前とその前年に指導監督基準違反で是正指導されていたことが分かっています。同様に是正指導が繰り返されている施設での死亡事故は、近年も相次いでいるのです。
参考人質疑では、こうした保育事故により我が子を亡くした藤井真希参考人が、五年の間、命を守る最低基準すら満たさない施設で過ごすということは、それだけ命が脅かされている、健やかな発達を保障するという観点からも、質の高い保育が受けられるという状況でなくなってしまう、私たち遺族は、事故の教訓が生かされていないということに日々、本当に何ともやりきれない気持ち、五年の経過措置というのは遺族の立場からは受け入れられないと厳しく指摘されました。
指導監督基準を満たしていない施設は直ちに是正させる、それができないならば、子供の命を守るために排除することが必要なのです。公的給付金の対象として指導監督基準違反の状態を五年もの間容認することは、絶対に認めることはできません。
そもそも、我が国の保育制度は、歴史的に認可の最低基準を満たすことが大原則とされてきました。ところが、安倍内閣は、待機児童対策を理由に、この最低基準を掘り崩す政策を次々と進めています。
企業主導型保育は、最低基準を満たさないことを前提に公費を入れる仕組みを制度化したものです。企業が主体となって多様な保育サービスを提供するためだとして、初めから市町村が関与しないことが特徴とされ、これが定員充足の低さ、不適切な事業者の参入などにつながり、僅か三年足らずで抜本的な見直しを余儀なくされています。
また、昨年は、国家戦略特区によって、認可保育所を一旦無認可にした上で認可化移行事業の補助対象にできるという驚くような規制緩和まで行われました。特区諮問会議で安倍総理は、大阪府知事から提案のあった待機児童対策について、早速政府としての対応方針を決定いたしました、これによって、従来の認可保育園の枠組みでは実現しなかった、自治体の創意工夫による柔軟かつ適切な保育士の配置が実現しますと絶賛していますが、認可保育所において保育士配置の最低基準を割り込むことが自治体の創意工夫なのでしょうか。それでは保育の質を保障するナショナルミニマムを投げ出すのと同じではありませんか。
保育の最低基準とは、子供の命と安全と成長のためのものであり、待機児童を理由に最低基準を掘り崩す政策は即刻改めるべきです。
第三に、公立保育所での幼児教育、保育の無償化の費用が全て市町村負担となり、公立保育所減らしが加速する危険性があることです。
地方公務員削減を柱とする行革の押し付け、公立保育所の運営費、施設整備費の国庫補助の廃止、一般財源化によって、この二十年間で公立保育所は約三割も減少しています。今回の無償化では、私立保育所については国が費用の二分の一を負担することとなりますが、公立保育所は市町村十割負担です。
多くの公立施設が老朽化しており、市町村では、大規模改修や建て替え費用の負担から、統廃合、廃止、民営化などが次々と行われています。一方で、東京都の保育ニーズ調査によれば、保護者の五割以上が公立保育所への入所を希望しています。保護者の要求に応えるためにも、また、待機児童を市町村の直接の責任で解決するためにも、公立施設の増設こそ求められています。
政府は、二十年近く前に決定した三位一体改革を理由に、かたくなに公立保育所への国庫補助の復活を否定していますが、その二十年間に少子化も待機児童も更に深刻さを増していることを直視するならば、今こそ政策の転換こそ行うべきです。
本法案の無償化の対象から給食食材費が外され、保育所に新たな徴収事務を強いることも問題です。給食はまさに保育の一環であり、教育・保育給付に含めるのは当然のことです。我が党は、保育所、幼稚園、そして義務教育でも給食費は無償とすることを求めるものです。
最後に、良質な保育、幼児教育を全ての子供に無償で提供することは、子供の成長、発達の権利保障として大切な政策です。しかし、安倍政権の無償化政策は、保育の質を全く置き去りにし、保育現場や自治体の声もまともに聞かず、消費税増税を国民にのみ込ませる口実として持ち出したものと言わざるを得ません。
子供に対する政策をこのように利用することを怒りをもって抗議し、反対討論を終わります。(拍手)