日本共産党の田村智子議員は4月18日の参院内閣委員会で、オリンピック東京大会招致にかかわる竹田恒和日本オリンピック委員会(JOC)会長の疑惑について政府を追及しました。
JOCが、東京大会開催を決定した国際オリンピック委員会(IOC)総会の前後に、シンガポールのブラック・タイディングス社(BT)にコンサルタント料2億3000万円を支払ったのは、国際陸上競技連盟に強い影響力をもつパパ・マッサタ氏とその子息への票のとりまとめを目的とする不正な支払いだったのではないかと疑われています。JOCの調査チームの報告書は問題はなかったとしていますが、仏司法当局が予審手続きを開始し竹田氏に事情聴取を行っています。
田村氏は、BT代表のタン氏がパパ・マッサタ氏への不正送金についてシンガポールで有罪となり、タン、パパ・マッサタ両氏周辺に資金疑惑が広がっているのに、報告書はタン氏の所在もつかめず、調査できないまま招致活動の正当性を主張していると指摘。「竹田氏が『正当なコンサル料』と言うだけでは説明責任を果たしていない」と批判しました。
鈴木俊一五輪担当相は「問題を指摘する意見は承知している」と述べつつも、説明責任は果たしていると強弁しました。
2019年5月1日(水)しんぶん赤旗より
【2019年4月18日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
東京オリンピック・パラリンピック大会の競技日程が昨日発表されました。陸上九種目、競泳やビーチバレーが午前十時からの決勝となるなど、アスリートファーストではなくアメリカのテレビ局優先だという報道が既にされているわけですね。
民間の巨額の資金がオリンピックの在り方をゆがめているという批判は近年高まっていると言わざるを得ません。東京大会がスポーツと国際平和の祭典として成功することも私も願っています。だからこそ、招致に関わる疑惑を曖昧にしておくことはできません。
二〇一三年、東京への招致決定を挟んだ七月と十月、シンガポールのブラック・タイディング社に日本の招致委員会からコンサルタント料として約二億三千万円が支払われた。これがBT社から、国際陸上競技連盟に強い影響力を持つIOC委員でもあった、パパマッサタ・ディアク氏と、その息子に流れた。これは票を取りまとめるための贈収賄だったのではないかという疑惑なんです。
竹田会長は、昨年十二月、フランス捜査当局の事情聴取に応じ、訴追に向けた手続に入っているとの報道もある中、先月、退任表明を行いました。しかし、その記者会見は、質問は一切受け付けず、僅か七分というものでした。
先ほどの御答弁でも鈴木大臣は、JOCや東京都が説明責任を果たしていくべきものというふうに答弁されましたけれども、それでは、現状でJOCは説明責任を果たしているという御認識でしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) この問題につきましては、JOCが二〇一六年に弁護士等によって構成された調査チームを設置をし、同年九月に調査報告書を公表をしたところでございます。その調査報告書では、招致委員会が行ったコンサルタント業務契約について、我が国の法律やIOC委員への贈与を禁止したIOC倫理規程に違反しないと結論付けていると承知をしてございます。
そういうことで、JOCもこのことについては調査チームの設置、そして報告書の作成ということをしているところでございますけれども、JOCや当時の招致委員会の責任者である竹田会長におかれては、疑惑を払拭できるよう一層の説明責任を果たしていただきたいと思っております。
○田村智子君 説明責任が十分なのかどうなのか、今よく分からない答弁だったんですけれども、その報告書なんですけど、私も改めて読みました。
二〇一六年の八月三十一日付けで出されているものなんですけれども、これ、BT社のタン・トン・ハン代表の所在もつかめていなくて、話聞けていないんですよ。タン氏が買収を行ったかどうか全く調査できないままに正当性を主張するという中身なんですね。また、中身見てみますと、BT社というのは、タン氏が立ち上げ、事務所は住居と同じアパートであると。その活動内容を見ても、一人でいわゆるコンサルタントをしていたと考えられるものになっているんですね。
BT社と契約した理由、タン代表が国際陸連に影響力を持っているなど、このタン代表個人の能力を高く評価したということが報告書の中にまとめられているんですよ。しかし、そのタン氏に対して、今年、シンガポールの裁判所は、パパマッサタ氏への不正送金があったとして、実刑判決を下しています。そのパパマッサタ氏は、リオデジャネイロ・オリンピックの招致に関わってもこれ贈収賄があったと、票固めをお金でやったということが言われて、その資金の提供を行ったということで、そのリオデジャネイロのオリンピックの関係者もフランス当局の捜査を受けているわけですよね。タン氏とパパマッサタ氏の周辺には、闇の資金の疑惑が重層的に広がっているんです。
実は、二〇一六年五月三十一日、オリパラ特措法の一部改正案を審議した内閣委員会で竹田会長にお越しいただきました。私、直接質問もいたしました。竹田会長は、BT社が優れた情報収集能力と人脈、実績を有しているんだと、このことを強調して正当なコンサルタント料だったということを主張されたんですけれども、やはり、じゃ、コンサル料として支払ったものが何に使われたかは知る由もないというふうに答弁されているわけなんですよ。私、そのときの内閣委員会で、それじゃ、日本の招致委員会とBT社との契約書、ここにはIOCの倫理規程にあるIOC委員に対する買収の禁止、これはちゃんと書かれていたんですかということも質問いたしました。ところが、守秘義務を理由にこれすら答弁されなかったんですね。
私は、東京大会の成功を願うからこそ、疑惑を持たれたままでいいのかと、フランスの捜査を静観するだけでよいのかと、じくじたる思いです。
鈴木大臣、契約書の内容の確認、せめてIOCの倫理規程、これちゃんと盛り込まれていたのかという確認は今からだってできるわけですよ。また、竹田会長への独自の事情聴取など、これは文科大臣とも協議して行うべきではないのかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先生が今、様々な課題といいますか問題点といいますか御指摘をいただいたところでございますが、二〇一六年のJOCの調査報告書については、JOCが設けた弁護士等による第三者調査チームにより調査されたものでありますけれども、ただいまの課題を御指摘する御意見があるということは私も承知をしているところでございます。
その中で、実際に買収禁止条項があったかどうかという御指摘でございますが、これについて、コンサルタント業務契約上、守秘義務の関係から明らかにされていないということも承知をいたしております。
この契約は、先ほども申し上げましたとおり、民間の契約でございまして、その取扱いについてはJOCにおいて適切に判断されるべきものと考えております。
JOCの調査報告書においては、もう先生御存じでありますけれども、コンサルタント業務契約について、我が国の法律やIOC委員への贈与を禁止したIOC倫理規程に違反していないとの報告がなされております。したがって、当該契約に買収禁止に関する条約があったかどうかにかかわらず、IOC委員等への贈与を禁止したIOC倫理規程への違反はなかったということで、一定の責任は、説明責任は果たされているのではないかと考えております。
○田村智子君 全く不十分な調査だと当時も相当な批判を受けた調査報告書なんですよね。それでよしとするのは、私、大きな問題だと思いますよ。
しかも、調査報告書読むと、票固めのためのロビー活動は非常に重要と。そのためのコンサルタント料金は一億円が相場で、今回は成功報酬を兼ねての二・三億円だったという説明がされているんですね。タン氏は、秘匿性の高いセンシティブな情報を入手する立場にあったと。これ、IOC委員一人一人の情報を得ること、その情報を基に票獲得のための働きかけをすること、これは招致活動として当然で、そのためには億単位のコンサルタント料が必要だと。コンサルタントは個人的人脈を持っているかどうかが鍵だともこの報告書の中には書かれているんですよ。
この秘匿性の高いセンシティブな個人の情報とは何だろうかと、その情報を基に票を得るための働きかけをするとはどういうことなんだろうかと、どうして億単位のコンサルタント料が当然なのかと。私、読んでいてとても複雑といいましょうか、もっと言えば暗たんたる気持ちになりました。これがオリンピック招致の在り方だとしたら、私はオリンピックの土台を揺るがしかねない問題だと思います。
招致活動というのは、大会のコンセプトであるとか都市の魅力であるとかスポーツや平和に対するその都市や国の貢献など、こういうことによって争われるものであってほしいし、このような疑惑を今持たれている日本だからこそ、招致活動の在り方について、億単位のコンサルが当たり前で、票固めではセンシティブな情報を基にして働きかけをするのが当然でとか、こういうやり方については見直し、改革が必要だと、こういう訴えが必要だと思いますが、最後、一言いただいて、終わりたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) オリンピック招致の活動、コンサルタント活動等に、コンサルタント契約につきましては、IOCも今問題意識を持っていると伺っておりまして、契約の在り方に関して、二〇一四年十二月のIOCの総会において採択されましたオリンピック・アジェンダ二〇二〇の提言においては、招致経費を削減するための改革案として、IOCは招致都市のために活動するコンサルタント、ロビイストについて、有資格者を登録制として監視をする、コンサルタント、ロビイストはIOCの倫理規程と行動規則の正式な遵守表明が登録の必須条件となるということが提言をされまして、現在はこれを踏まえた運用がなされていると承知をしております。
今後ともこうした考え方に基づいて適切な招致活動が行われるということを期待をしているところであります。
○田村智子君 竹田恆和氏は、六月までJOCの会長です。是非、本委員会への参考人招致を求めて、質問を終わります。御協議をお願いいたします。
○委員長(石井正弘君) ただいまの件は、また理事会において後刻協議をさせていただきます。