(写真)質問する田村智子議員=25日、参院内閣委
日本共産党の田村智子議員は25日の参院内閣委員会などの連合審査で、待機児童対策を名目に大阪府・大阪市の提案で4月から実施された規制緩和は、保育の質を掘り崩すものだと批判しました。
田村氏がとりあげたのは、国家戦略特区制度を用いた「地方裁量型認可化移行施設」。認可外保育所が認可へ移行するのを財政支援するのが建前ですが、認可保育所が保育士数を減らすなどして認可外に移行する場合も対象となっています。
田村氏は、認可外から認可への移行を促すはずの制度で、認可から認可外への転換を認める矛盾を指摘。大阪維新市政が、大幅な賃下げを強行して保育士不足を招きながら、保育士不足を理由に認可施設の保育士の配置基準の緩和を求め、それに応える形で新制度ができたと強調しました。
さらに、公立認可施設には国の直接補助がないのに、「地方裁量型」で公立認可が認可外に移行すれば補助が受けられると指摘。「認可施設をめぐる数々の規制緩和でも手をつけなかった保育士配置基準を切り下げるもので、認可施設の最低基準を掘り崩すことになる」と批判しました。
根本匠厚労相は「時限的な制度で、認可へ再移行するのが前提だ」と強弁。田村氏は、認可への移行期限は自治体判断で延長でき、再移行を促す仕組みに実効性はないと反論しました。
2019年4月26日(金)しんぶん赤旗より
【2019年4月25日 内閣委員会・文教科学委員会・厚生労働委員会連合審査会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
政府の言う幼児教育、保育の無償化は、子ども・子育て支援法の教育・保育給付の支給対象となる認可施設への入所が前提となります。認可外の施設は月三・七万円上限の施設等利用給付なので、東京のある認証保育は三歳児で月約六万円ですから、まず無償にはならないわけです。認可保育所など認可施設の抜本的な増設が無償化の前提とも言えると、これは内閣委員会でも指摘してまいりました。
三月二十二日の予算委員会で、私は東京都の保育ニーズ調査を紹介いたしました。これは複数回答なんですけれども、保護者の半数以上が公立認可保育所を希望し、約四割は民間の認可保育所を希望していると。このこと示して厚労大臣の認識をただしたところ、根本大臣からは、「質の確保、向上を図りながら、待機児童の解消に向けて、認可保育所などを中心とした保育の受皿整備に全力を尽くしていきたい」と、こういう答弁がされました。
改めて、これが安倍政権の保育政策の立場であるかどうか、確認いたします。
○国務大臣(根本匠君) 待機児童の解消は最優先で取り組んでおりますので、今、三十二万人分の受皿整備、確保、これ二〇二〇年度末が目標ですが、今精力的に取り組んでおります。そして、保育の受皿整備とその質の確保、向上、これを車の両輪として進めることが重要だと考えております。
先日も御答弁させていただきました。保育の受皿として認可保育所等を中心とした整備を進めつつ、あわせて、認可外保育施設が認可施設に移行するための運営費の補助等の支援などの取組を行っております。
引き続いて、質の確保、向上を図りながら、待機児童の解消に向けて保育の受皿整備に全力を尽くしていきたいと思います。
○田村智子君 今御答弁あったとおり、この間、認可外保育施設に補助金を出して認可施設に移行させるという事業が拡充をされてきました。今年度の予算では、補助単価が認可施設と同水準にまで引き上げられました。しかし、いつまでに認可に移行させるのかという期限については緩和をされて、認可外のままでも公費補助を受けられるという仕組みにも今なってしまっているんですね。
それだけではありません。資料を御覧ください。
これは、昨年六月十四日、国家戦略特区諮問会議に厚労省が提出をした資料です。左側が、大阪府と大阪市が待機児童を理由に認可保育所の面積基準、人員配置基準など国の最低基準を緩和する特例をしてほしいという提案を行ったことが示されています。右側がその対応方針なんですね。特区のワーキンググループでの議論を経てまとめられたものです。地方裁量型認可化移行施設というのを新たにつくるんだとあるんですね。
その内容は、私が先ほど述べた、あるいは大臣が言われた認可化移行事業と同じなんですよ。違いは何か、ただ一点です。①のところです。認可保育園からの移行も可能ということなんですよ。これ、つまり、認可保育園が無認可になっていいということなんですね。
この実施には国家戦略特区法の改定は必要なく、既に今月施行となっていて、自治体が特区区域計画に定めれば実施ができてしまいます。認可外施設の保育の質を向上させて認可に移行させるはずの事業が、なぜ認可保育所を認可外施設に移行させてしまうと、こんなこと認めるんですか。厚労省。
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
議員御指摘のとおり、地方裁量型認可化移行施設につきましては、大阪府と大阪市からの提案を受けまして、国家戦略特区におきまして時限的に、待機児童が多い都道府県が独自の創意工夫の下でその解消に取り組めるように設けられたものでございます。御指摘のとおり、保育士等の六割以上の配置、あるいは施設の運営状況の公表を求めております。また、都道府県が認める研修を受けた者を一定以上配置されている場合に運営費補助の加算を行うこととしております。
この施設につきましては、御指摘のとおり、認可化移行運営費支援事業の一類型として設けられておりまして、認可施設からの移行も可能となっておりますけれども、認可外保育施設であり続けることを許容するものではありません。いずれ認可施設へ再移行していただくことが前提となっております。
具体的には、再度認可施設に移行することができるよう条件を付けております。一つは、都道府県が保育士確保に関しまして緊急の対応が必要な施設として適当と認めること、二つ目といたしましては、認可施設への移行計画を定めること、三つ目といたしまして、一年に一回以上都道府県が実地検査を実施することということでございます。
繰り返しになりますけれども、今回の仕組みは認可施設から認可外保育施設への移行を支援していく、こういうものではないということでございます。
○田村智子君 これ、保育士不足への時限的な措置だということなんでしょうけど、じゃ、大阪府や大阪市が保育士の確保に本当に努力してきたのかと。
大阪市は、公立保育所の全廃を掲げて、公立保育所の退職者の欠員補充を非常勤のみにしてきた時期が何年間もあったんですね。その非常勤というのは三年任期で昇給なしですよ。公務員全体の賃金カットも行われ、それに加えて、保育士と幼稚園教諭を狙い撃ちにした賃下げも行われました。さすがに批判も強くて、この全廃という方針の見直しは行われたようなんですけれども、こんなことやられるから、当然保育士の皆さんはほかの市の保育士のをもう一度受け直すということまで起きて、今も公立保育所で保育士の欠員状態が多くの施設で生じていて、待機児童がいるのに定数を減らしたままになっているんですよ。
保育士不足の対策というのは、今日もそうです、午前の内閣委員会でももうずっと、与野党とも政府とも、いかに賃金を上げるか、保育士の負担軽減をいかに図って誇りを持って働けるようにするかと、こういう議論ですよ。ところが、大阪では安上がりな保育を追求した結果、保育士が集まらなくなった。保育士不足を理由に人員配置基準、つまりは最低基準の引下げを特例的に認めろと要求する。厚労省がこんな身勝手な要求に対応する必要なんかないんですよ。
昨年十一月十六日のワーキンググループに大阪府が提出した資料を見ますと、この対応方針でも大阪は不満を表明している、でも実施する方向で検討しているというんですね。厚労省は今、待機児童対策として、公立も私立も定員の一二〇%での受入れを求めて、大阪府内でもこうした詰め込み保育が行われています。定員一二〇%の子供の数に対応する保育士の配置が難しい、だから無資格者で代替する地方裁量型認可化移行施設にしてしまう、つまり認可外になってもよい、こういうことなんでしょうかね。
これ、こんなこと許したら、詰め込み保育の上に人員配置基準まで引き下げる、これ、安全面でのリスクを更に高めることになると思いますが、いかがですか。
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
地方裁量型認可化移行施設につきましては、先ほど申し上げましたとおり、保育士確保に関し緊急の対応が必要な施設に限りまして認可施設から移行することを認めているものでございます。
この緊急の対応が、施設の判断に際しましては、利用児童数が定員数を超過しているなどの場合には適切に定員数を見直すことを求めております。したがいまして、定員数を超過していることによりまして保育士が不足している場合には、認可施設からの移行は認められないものというふうに考えております。
○田村智子君 定員内でまずやるべきと、当然のことなんですけどね。
それじゃ、もう一点確認したいんです。現在、公立認可保育所には施設整備費も運営費も国からの直接補助はありません。では、公立保育所をこの地方裁量型認可化移行施設にした場合、国の認可化移行補助金の対象にはなるんでしょうか。
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
対象になります。
○田村智子君 公立認可保育所への国の直接助成は廃止なんです。ところが、公立無認可園にすれば、認可に移行するためだとして国の補助金が出るんですよ。さすがに、そんな恥ずかしいことをするのかがまず自治体に問われることになるわけですけれども、この制度がいかにひどいかを、私、表していると思いますよ。
これまでも、保育の質を危うくするような規制緩和は繰り返し行われてきました。例えば、朝晩の子供の少ない時間帯であれば保育士さん二人配置すると、そのうち資格持っている人は一人でもいいよという規制緩和も既にやられていますよ。だから、認可保育所だけだった認可施設というのの施設基準を低くして、小規模保育であるとか、家庭的保育などに広げるということもやられましたよ。それから、先ほどの、四月当初から定員を一二〇%まで、定員を超えて入れていいという規制緩和も様々にやられてきました。
だけれども、コアな保育の部分ですよ。コアな保育の部分で認可に必要な保育士配置基準に手を付けるということは、さすがにここまではやらなかったんです。ところが今度は、コアな部分で、認可保育所であったものに、保育士配置を三分の二でよい、これ事実上、認可保育所での最低基準の掘り崩しということになるんですよ。ここまでやるのかということなんですよ。
根本大臣、冒頭、質の確保を図るんだと言われた。全然逆行じゃないですか、特例とはいえ。こんなの認められないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(根本匠君) 先ほど申し上げましたが、保育の受皿整備とその質の確保、これは車の両輪として進めることが重要だと思います。このため、認可保育所等を中心とした整備を進めることが必要だと考えております。
その上で、先ほど事務方から答弁しましたが、今回の地方裁量型認可移行施設については、国家戦略特区に地域を限定した上で、時限的に、待機児童が多い都道府県がその解消に取り組めるよう設けたものであります。また、この仕組みは、認可外保育施設が認可施設に移行することを支援するものであって、認可施設からの移行も可能となっておりますが、認可外保育施設であり続けることを許容するものではなく、いずれ認可施設へ再移行していただくことが前提であります。
この再移行させるために設けられている仕組みとしては、都道府県が保育士確保に関し緊急の対応が必要な施設として適当と認めること、認可施設への移行計画を定めること、一年に一回以上、都道府県が実地検査を実施することという仕組みにしておりますので、要は、いずれ認可施設へ再移行していただくことを前提にした施設であります。
○田村智子君 大阪府や大阪市が保育士の確保のためにどんな努力したと言えるのかですよね、私が紹介したのを見たって。いろんな自治体が今、上乗せして賃上げということまでやっているときにですよ。あるいは公私間格差是正で、公立保育所並みの民間の給与にしていこうという努力をかつてはやっていましたよ。そういうことをやらなきゃいけないときにですよ、賃下げやっておいて、公立でも人が足りない、保育士不足だ、だから最低基準見直せ、これで認可から無認可への移行まで認めてしまうと。
これ、無認可になったら利用調整の対象からも外れるんですよ、無認可だから。お母さんたち、自治体に保育所申し込むときに、その認可保育所だったものが消えちゃうわけですよ。待機児童の対策にもこれ逆行するような、深刻にするような問題なりますよね。
それに、これ保育士が保育支援員に置き換えられる。当然私は保育士と同じような給料じゃないと思いますよ。安い給料になるでしょうね、有資格者じゃないですから。そうすると、保育の現場で働く方の処遇改善にもこれ逆行していっちゃうと、私にはそう思えてならないですよね。
これ、国家戦略特区は、諮問会議の議長は安倍総理ですから、これは是非とも安倍総理にもこの問題については聞かなければならないというふうに思っていますので、是非とも、総理出席のこの審議も求めたいと思います。
○委員長(石井正弘君) 後刻理事会で協議いたします。
○田村智子君 最後に、宮腰大臣にもお聞きしたいんです。
安倍政権の保育の質の確保への姿勢というのが、この一件見ても私は本当に根本から問われていると思います。
先ほど来質疑があるとおり、保育士の配置基準、一歳児六人に一人だったものを五人に一人にしよう、三から五歳児では三十人に一人だったものを二十五人に一人に改善しようと約束したのに、その実施の時期さえも示さないわけですよ。
それで、企業主導型保育は、認可保育所と同じ補助を出しながら、保育士は国の基準では二分の一でいいと、こういうことまでやるんですよ。それで矛盾も噴き出して、企業主導型でいうと、検討委員会からは、量の整備に重点が置かれ過ぎたんだと、質の確保への意識が必ずしも十分でなかったと。ここまで指摘をされて、宮腰大臣はこの間、この指摘をそのまま国会答弁せざるを得ないような状態なんです。
ところが、国家戦略特区というのは、担当大臣違いますけれども、内閣府の仕組みでもありますよ、その国家戦略特区でこんなこと認めると、認可保育所の保育の質を引き下げようとすると。これはもう安倍政権の保育の質を置き去りにして量の確保に走るという姿勢示していると思いますが、最後に御答弁いただいて、終わります。
○委員長(石井正弘君) 時間ですので、簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(宮腰光寛君) 子ども・子育て支援、子供の最善の利益が実現される社会を目指す、あるいは、子供の視点に立ち、子供の生存と発達が保障されるよう、良質かつ適切な内容と水準の支援とする。これまでも、量的拡充とともに、質の向上に力を入れて取り組んできております。具体的には、消費税率が一〇%に引き上げられたときに実施することにしておりました〇・七兆円のメニューについては、消費税率が八%に据え置かれる中にあっても、三歳児の職員配置の改善など全ての事項を既に実施済みであります。更なる質の向上を実施するための〇・三兆円超のメニューについても、これまで保育人材の処遇の二%の改善などを実施をしております。
企業主導型保育事業につきましても、検討委員会報告について……(発言する者あり)はい。これについても、この報告に基づいて、速やかにかつ着実に改善を図ってまいりたいというふうに考えております。
今後とも、全ての子供が健やかに成長できる環境の確保に向けて、幼児教育、保育の質の向上をしっかりと図ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 終わります。