国会会議録

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学術研究予算の「選択と集中」 研究力低下は明らか 田村氏追及

(写真)質問する田村智子議員=15日、参院決算委

 

 

 

 

 日本共産党の田村智子議員は15日の参院決算委員会で、学術研究予算の「選択と集中」が大学など研究機関を疲弊させ、研究力を低下させていることを示し、「政策の方向性が間違っている」とただしました。

 安倍政権は、特定の研究分野への集中的な予算配分や国立大学等への運営費交付金の傾斜配分で学術研究予算の選択と集中を一層加速させてきました。ところが、論文数の国際比較では、主要国で日本だけが停滞・減少、とりわけ国が直接予算措置をしている国立大学の論文数が減少しています。日本の主要大学は2004年からすべて世界大学ランキングで順位を落とし、17年にはトップ100に2大学入っただけです。田村氏は「国際的にみた研究力の低下は明らかだ」と追及。内閣府の平井卓也担当相は「日本の研究力が相対的に低下していることに危機感をもっている」と認めました。

 さらに、田村氏は、選択と集中によって地方国立大学の資金が落ち込み、教育・研究を維持する限界点を超えていると指摘。国策にかなう研究プロジェクトに予算を集中投下することが若手研究者の自由な研究を阻害していると指摘されていることも示し、「基盤的経費である運営交付金が増えなければ、安定的なポストは増えない」と強調しました。

 柴山昌彦文科相は「運営費交付金が減ってきたことで特に地方の国立大学が経営の危機にひんしている。指摘も踏まえ、財務当局に運営費交付金のさらなる確保を働きかけたい」と述べました。

2019年4月16日(火)しんぶん赤旗より

【2019年4月15日 参議院決算委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 いよいよ十連休が目前となりました。この連休を定めた祝日特例法の内閣委員会の審議では、十連休による社会的影響を与野党共に取り上げ、附帯決議では、休日の増加が日給月給で働く者の減収を招かないよう各事業主において適切な対応が図られることと盛り込まれました。
 私も、ある省庁の期間業務職員がどれだけの減収になるか、四、五月で、通常の年だったら元々ゴールデンウイークなんで四万二千円ぐらい減収になっちゃう、それが十連休だと七万三千五百円ぐらいの減収になってしまうんだということも示しまして、対応を求めました。官房長官は関係府省がよく連携して政府として万全を期してまいりたいと答弁をされましたが、どのような対応をされているんでしょうか、厚労省。

○政府参考人(田中誠二君) 即位日等休日法の施行に伴います大型連休に関しましては、即位日等休日法の附帯決議におきまして、「当該期間中に勤務する労働者が長時間労働をすることなく、また、休日の増加が時給制や日給制によって雇用されている労働者の収入減少を招くことのないよう、有給休暇の追加的付与や特別手当の支給など各事業主等において適切な対応がとられること。」とされております。
 これを踏まえ、内閣府と厚生労働省の連名通知によりまして、日本経済団体連合会などを通じて、企業に対しその趣旨を踏まえた適切な配慮を求めるとともに、同連合会等に対して本件通知の趣旨について直接説明等を行っているところでございます。

○田村智子君 厚労省は、本年四月二十七日から五月六日までの十連休に関してよくある御質問についてというQアンドAも出しておられます。「国民の祝日の趣旨等にかんがみ、労使間の話し合いによって、国民の祝日・休日に労働者を休ませ、その場合に賃金の減収を生じないようにすることが望ましいことはいうまでもありません。」と書かれています。
 そこで、私、各府省に期間業務職員など非常勤職員の減収対策について事務所の方から問合せをいたしました。全ての府省から回答をいただきましたが、給与法どおりである、つまり何の対応も取らないという回答をいただきました。
 民間事業者に対しては減収を生じないようにと要請しながら、政府機関では日給月給の職員への減収対策をしないのでしょうか。官房長官、お答えください。

○国務大臣(菅義偉君) 国の行政機関については、行政機関の休日に関する法律に基づいて、原則として土日祝日及び年末年始は休日として執務を行わないこととされており、国の行政機関の非常勤職員は通常勤務することを要しないことにされております。
 即位日等休日法により本年に限って休日となる日についても、法律に基づき施行が行われていることとされている日を業務上の必要のない日にもかかわらずあえて非常勤職員が勤務する日とすることは適切でなく、通常の休日と同様の取扱いであります。
 その上で、この十連休中に勤務を命ぜられる非常勤職員には一般職の給与法に基づき各府省において超過勤務手当が支給されることとなり、その場合には一般的に通常勤務する日の給与に比べて割り増しされた給与が支払われる、こういうふうになっています。

○田村智子君 いや、民間には有休取得とか特別手当で減収させないように対応してねと要請しているわけなんですよ。それで何もしないのかなんですよ、府省は。
 もう一点、先に聞きたいんですけど、じゃ、今のは給与法の制約があるからという御説明なんですけれども、その給与法の制約がなく労働基準法が適用される非公務員型の独立行政法人、ここはどうなっているか。
 これも私、関係府省に全て問合せをいたしました。文科省からは、把握していないという回答をいただきました。それ以外は減収対策を行ったところないんですね。厚労省に至っては、QアンドAや附帯決議の趣旨、厚労省だけじゃないですね、厚労省が出されたQアンドAや国会の附帯決議の趣旨、これを独法に周知したところもなかったんですよ。
 厚労省は、さすがに恥ずかしいと思ったのか、三月二十九日に再回答してきまして、周知することを検討しているという回答だったんですけど、じゃ、所管する独法に周知等を行ったんでしょうか、厚労省。

○政府参考人(田中誠二君) 厚生労働省のホームページにおいては、十連休に関してよくある御質問への回答を周知しておりまして、その中で、附帯決議の趣旨を踏まえまして、「労使間の話し合いによって、国民の祝日・休日に労働者を休ませ、その場合に賃金の減収を生じないようにすることが望ましいことはいうまでもありません。」と周知しております。
 こうしたものは附帯決議の趣旨を踏まえて周知させていただいておりますけれども、四月十日に内閣府と厚生労働省の連名の事務連絡を関係省庁に発出しまして、所管の独立行政法人、特殊法人及び国立大学法人においてその趣旨を踏まえた適切な配慮をいただけるよう周知を依頼したところでございます。

○田村智子君 四月十日、本当に目前でやっと周知したということなんですけれども、官房長官、附帯決議を受けて、趣旨を尊重し対応すると、そう御答弁もいただいているわけなんですよ。それで、民間には減収対策求めているんですよ。
 各府省も独法も、この減収対策として特別手当とか有休を上乗せするというか与えるとかやっても、通年の予算と何ら変わらないはずなんですよ、それは。ですから、十連休の対応については省庁の連絡会議も行われているわけですから、すぐに議論していただいて、民間に範を示せるような対応をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(菅義偉君) 国の行政機関につきましては先ほど御説明をさせていただいたとおりでありまして、この十連休中の非常勤職員の処遇についても一般職の給与法に基づいて対応したい、こういうふうに思います。

○田村智子君 それじゃ、もう皆さんは、この祝日を国民に祝ってほしいといって祝日にしたんじゃないんですか。祝える気持ちにならないですよ、減収しちゃったら。
 ちょっと重ねて要求しておきます。国家公務員の期間業務職員の皆さんは兼業禁止なんですよ、公務員だから。足りない分をアルバイトはやっちゃ駄目なんですよ。現実にシングルマザーの方とかいらっしゃるわけですよ。重ねて、減収にならないようにと、民間に口だけで言っていたら駄目ですよ。模範を示していただきたいと思う。
 この場ではこれ以上の答弁いただけないと思いますので、強く最後の最後までちょっと求めたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。(発言する者あり)はい、ありがとうございます。
 それで、次は、今日は大学の問題、学術研究の問題について質問します。
 これまで約二十年間、科学技術立国を目指すとして、大学予算を始めとする学術研究予算の選択と集中が進められました。特に、二〇一二年に第二次安倍政権が発足して以降、総理官邸主導で特定の研究分野への集中的な予算配分、国立大学等への運営費交付金の傾斜配分を強めるなど、選択と集中は一層加速をしたわけです。
 平井大臣にまずお聞きしたいんです。このことによって、世界の中で日本の研究力は上がっている、発展していると評価されていますか。

○国務大臣(平井卓也君) まず、今の日本の状況がどうかという御質問だと思うんですが、例えば注目度の高い論文における日本の順位の低下、日本の研究力が相対的に低下しているということに関しては危機感を持っております。
 我が国がグローバル競争に勝ち抜いて持続的な競争を実現するには、科学技術イノベーションの基盤的な力を強化することが死活的に重要だと考えておりまして、これまで世界トップレベルの研究拠点を形成するWPI等の取組により質の高い論文が輩出されていること、産学連携で革新的なイノベーションを目指すCOIプログラムなどにより大学の特許権実施許諾件数が増加していることなど、日本としてもその優れたポテンシャルはあると認識をしています。
 このため、大学や公的機関における若手研究者の育成、活躍促進、国立大学改革と研究資金制度改革の一体推進など、研究力強化に向けた取組を更に進めなければならないと考えております。

○田村智子君 相対的な低下に危機感抱いているということなんですけど、これ大きな危機感だと思います。
 資料一を見ていただきたいと思うんですけれども、これ、論文生産数、論文数そのもの、それから、トップ一〇%補正というのは、優れた論文で、引用の回数が多い論文という意味なんですね。これを見てみますと、二〇〇三年から二〇〇五年、そして二〇一三年から二〇一五年、この十年間の推移を見てみますと、日本は順位を落としているというだけじゃないんです。どちらでも順位を落としているんですけど、論文数そのものが、全体の数も引用されている数も減っているのは、主要十か国、上位十か国の中で日本だけという状態なんですね。
 これは非常に危機的な停滞、減退だと思いますけれども、どのように分析されていますか。平井大臣、もう一度。

○国務大臣(平井卓也君) 確かに、科学技術イノベーションをめぐって各国が本当に覇権争いを繰り広げている中で、注目度の高い論文における日本の順位低下など、日本の研究力が相対的に低下しているとの指摘は十分に認識をしております。
 他方、まず事実関係として、国立大学及び国立研究開発法人の運営交付金に関しては、厳しい財政状況の中でも近年減額をしているわけではありません。国立大学については、平成二十七年度以降は対前年度同額程度、国立研究開発法人については、平成二十八年度以降は対前年度から増額を確保をしています。
 政府としては、第五期科学技術基本計画等に基づいて、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化に向けて、大学等における研究活動を安定的、継続的に支える基盤的経費と優れた研究や目的を特定した研究等を支援する公募型資金の適切な配分を考慮して研究資金全体の効果的、効率的な活用を図ることが重要で、考えております。
 加えて、第五期科学技術基本計画において設定した対GDP比一%、五年間の総額二十六兆円の達成を目指した政府研究開発投資の充実とともに、民間の研究開発投資など財源の多様化を図ることも重要だと考えております。
 今後とも、この基盤的経費と公募型研究資金のバランス、これが一番重要なところだと思います。そして、新領域開拓に資する挑戦的な研究や若手研究者への支援の強化を通じて、我が国の研究力の向上に向けて取り組んでいきたいと考えております。

○田村智子君 私お聞きしたいのは、やっぱり現状認識をしっかりさせることだと思うんですよ。
 今も御答弁いただいて、運営費交付金のお話あったんですけど、資料二を見ていただきますと、日本の部門別論文数、どういうところの論文が停滞しているのかというふうに見ますと、これは論文数の全体を占めているのはやっぱり大学等なんですよ。これ見ると、明らかに大学の中での停滞が見られると。
 しかも、資料三、この資料三以降は、日本の研究力の問題でずっと研究されている豊田長康鈴鹿医療科学大学学長の著書から取っているんですけれども、この資料三見てみますと、大学等の中で論文の停滞、減少があるけれども、私立大学は踏ん張っているんですよ。私立大学は踏ん張っていて微増で、ちょっと近年落としているところあるんですけど、踏ん張っているんです。大きく落ち込んでいるのは公的研究機関なんですね、そして国立大学。
 やっぱり、現状認識として、我が国の研究機関の中枢で国が直接予算措置をしている部分で論文数の停滞、減少が起きていると。現状認識だけでいいです。これはお認めになられますか。

○国務大臣(平井卓也君) 単純に論文数だけを見るというのでは、間違ってはいけないと我々も考えておりまして、実はどの国費がどの研究者にどのように配分されてどのような成果を出したというようなことに関して、今、全体としての調査といいますかデータを皆さんで協力して作っているところです。
 ですから、単に資金を入れてどういうアウトプットが出たかということではなくて、それがどのように有効に使われてきたかということに関して我々最大限の関心を持って、それをうまくこれから活用して、先生等々がお話しになっている若手研究者への重点配分というのも、ただ、具体的なデータに基づかなければそういうことを思い切ってできないわけですから、現在、それに全力で取り組んでいるところでございます。

○田村智子君 主要国は全部伸ばし続けているんですよ。その中での停滞、減少ですからね。それをその程度の認識というのは、非常に逆に危機感を抱きます。
 文科大臣にもお聞きします。
 二〇〇一年、今お話あったとおり、どこに有効にという政策がずっと取られているんですよ。二〇〇一年、当時、遠山大臣の下で策定された大学改革計画、いわゆる遠山プランでは、我が国のトップ三十の国公私立大学を世界最高水準にすると掲げました。そして、大学の法人化を提案し、大学評価結果を基にした資金の重点配分が強調されたわけです。
 二〇〇七年、教育再生会議第二次報告で、世界大学ランキングの上位十校以内に入ることを含め上位三十校に五校以上入ることを目指すんだと、そして、選択と集中による重点投資、外部資金を含めた多様な財源確保への努力、評価に基づく効率的な資源配分、今、平井大臣がお話しされたとおりです、この三本柱が打ち出されました。
 さらに、第二次安倍政権では、十年間で世界大学ランキングトップ百に十校入れるとして、運営費交付金の傾斜配分を更に高め、文科省がその査定を直接行うに至っています。
 資料の四、国立大学の大学群ごとに運営費交付金と主要外部資金の推移を示しています。これ、二〇〇五年、つまり法人化直後を基点として見てみますと、旧帝大、北海道大学、東北大学、東大、京大、大阪大、名古屋大、九州大、プラス東工大ですね、ここは一・一なので、確かに伸びているんです。効率的なお金の予算配分がされたんです。中小規模大学では、医学部を持たない大学群、逆に〇・九五に大きく落ち込んでいます。格差が付きました。
 まさに選択と集中は政府が意図したとおりに進んでいると思いますが、文科大臣、いかがですか。

○国務大臣(柴山昌彦君) 近年、我が国の研究力が諸外国に比べて相対的に低下傾向にあるという原因は、まず、国際的な研究ネットワークの構築の遅れ、新たな研究分野への挑戦の不足、若手研究者を取り巻く環境の悪化、これ平井大臣が御答弁されましたけれども、様々な要因が挙げられるというように思います。
 国立大学法人への国費による支援につきましては、今委員も御指摘になられましたけれども、教育研究の基盤的経費である運営費交付金、これはとても大切です。そして、教育研究活動の革新や高度化、拠点化などを図る、公募事業も含む競争的経費、この二つ、デュアルサポートによって行ってきたところなんですけれども、二〇一九年度予算では、国立大学法人運営費交付金について対前年度同額の一兆九百七十一億円を確保しておりますし、科学研究費助成事業、科研費においては対前年度八十六億円増の二千三百七十二億円を確保しておりますので、こういった形でしっかりと基盤の確保をこれからも行っていきたいと思いますし、選択と集中につきましても、しっかりと客観的な成果指標に基づく新たな資源配分の仕組みによってインセンティブを向上させるという意味で、私は意義のある方向性だというように考えております。

○田村智子君 済みません、聞いていることに答えていないんですよ。選択と集中が言われてからもう長年たっているんです。それは狙いどおりに進んでいますよねと聞いているんです。

○国務大臣(柴山昌彦君) 今御指摘のとおり、選択と集中を進めている今まさにその途上であるというふうに考えております。

○田村智子君 狙いどおりに進んでいるんですよ、この指標を見てみれば。ところが、大学法人化が行われた二〇〇四年から日本の主要大学が全て世界大学ランキングで順位を落としました。二〇一七年にはトップ百に東大と京大の二校が入っただけです。国際競争力を引き上げるという政府の意図とは逆に、政府が掲げたんですからね、論文数じゃないですよ、世界大学ランキングは政府が掲げた目標ですからね、それで落としているんですよ。順位を大幅に落とす、そういう事態になっているんです。国際的に見た研究力の低下というのは、もはや明らかだというふうに思うんですね。
 選択と集中は、政策の方向性として間違っていた、まあそこまで言うのがあれでしたら、やはり見直しが必要ではないかと思いますが、文科大臣、いかがですか。

○国務大臣(柴山昌彦君) 先ほど最後に答弁させていただいたとおり、やはり二〇一九年度予算について、法人化のメリットを生かした一層の経営改革を推進するという観点から、運営費交付金のうち七百億円を対象として、客観的な成果指標に基づく新たな資源配分の仕組みを導入することとしております。これによって、各大学の改革インセンティブを向上させる一方で、ただ、委員の御指摘のとおり、余りに大きく運営費交付金が変動しないように、評価に基づき変動する幅を今年度について各大学の評価対象経費の九〇%から一一〇%の間に設定することなどによって、教育研究の安定性や継続性にも配慮をしております。
 こういったインセンティブと、それから継続性、安定性ということを両立をさせるべく、運営費交付金の基盤的経費の確保と選択と集中、適切な範囲で行っていきたいと考えております。

○田村智子君 それではうまくいかないと思うんですね。その理由を述べたいと思います。
 一つは、この政策によって、集中の対象とならずに資金が大きく落ち込んだ地方国立大学が教育研究を維持する限界点をも超える事態になっているということです。
 資料の五を見てください。非常勤講師などを除く常勤の大学教員、これはイコール研究者ですよね。医学部を持たない中小の大学、地方大学では二〇〇四年から明らかにマイナスになっています。大規模三大学の教員数は一・二五倍になっています。ここでも選択と集中で格差が開いたんです。地方大学は地域貢献で生き残れということも文科省から求められていますので、教員は研究、教育以外の負担が増加傾向にもなっています。まさに人も教育費も枯渇しかねない状態なんですね。これが日本全体の大学の研究力を押し下げる結果をもたらしているんじゃないかというように思うわけですよ。
 もう一つの資料もちょっと見ていただきたいんです。資料の六、これ、論文数を縦軸にして、横軸で大学の論文数が多い順に並べたものなんですけれども、ですから、論文数の多い大学からどういう勾配で減っていくかというふうに見ますと、日本は本当に一部の限られた大学が論文数を稼ぐという構造が見て取れるんです。海外では、上位の大学だけではなく中堅の大学も相当数の論文を生産していますよ。二〇一八年の科学技術白書でも、研究の多様性を確保する上でも中堅大学の厚みを増していくことが重要というふうに指摘していますけれども、これはやっぱりこうした現実を見ての指摘だというふうに思うんですね。
 選択と集中では地方大学が疲弊されてしまう。このやり方は改めるべきだと思いますが、文科大臣、もう一度。

○国務大臣(平井卓也君) 済みません、文科省ではございませんが。
 私は、選択と集中という言葉にちょっと違和感を、選択と集中ではなくて、やっぱり基盤的な経費と競争的経費のバランスをどうやって取っていくかという議論だと思うんですよ。何かを切り捨てるという話ではなくて、うまく両方のバランスを取りながらより良きアウトプットを求めるという中で、これいろいろやっぱり考えているわけですよね。
 ですから、この論文数も、単純に数ではなくて、そしてやっぱり質、そして民間の企業の資金が集まりやすい研究は一体何なのか、そして社会実装して次の日本の社会に貢献しそうな分野はどういう分野なのか等々を考えながら、やっぱり戦略をこれ不断に見直していく必要があると考えています。

○田村智子君 基盤的経費は、法人化の前と今日では、もう七百七億円ですよ、基幹的経費見れば。それだけ削った上で更に競争しろと皆さん求めているわけですよ。
 それで、私もう一点指摘したいのは、やっぱりこうやって、基盤的経費は維持じゃ駄目なんですよ。増額しなかったらもうやっていけないぐらいまでになっている。そこで、この削減の状態のままで、そこは増額せずに、プロジェクト型、特に国策にかなう研究プロジェクトに集中投資をしている、この政策は若手研究者の自由な発想による研究を阻害してしまう。これ、私が言っているんじゃないんです。ノーベル賞を受賞した方々がどんどんこういう発言をしているじゃないですか。大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム、これ、ノーベル賞受賞者の梶田隆章氏や白川英樹氏らが呼びかけて、五十一人の大学関係者が集まってシンポジウムを開いています。
 その梶田隆章氏、雑誌「経済」というところでインタビューにこう答えているんですね。基礎か応用かを問わず、若い研究者が安定した研究職になかなか就けないということが現在の日本の学術が直面している非常に深刻な問題、その理由の第一に運営費交付金が削られてしまったと、このことを挙げています。若い人が頭の柔らかいうちに柔軟な発想で自分のやりたい研究に打ち込み、ブレークスルーと言われる科学や技術の飛躍的な進歩を実現することは相当ある。しかし、今の日本では、若い研究者は有期雇用であり、研究テーマも雇用主に従ったもので、言われたことを研究する立場になっている。また、不安定な職で、常に次の職をどうするかを考えなければいけない。そうした強迫観念をもたらされた状況で研究しなければならないと。こういう危機感なんですよね。
 これは、基盤的経費を増やさない限りは安定したポストは増えません。プロジェクト型では増えないんですよ。このことについて、文科大臣、どう思われますか。

○国務大臣(柴山昌彦君) 確かに、おっしゃるとおり、運営費交付金が法人化、独法化によって減ってきた。それは産学連携をこれから増やしていくということも想定して減らしてきたんですが、一方において産学連携はそれほど増えていないと。そのことによって、特に地方の国立大学が非常に経営の危機に瀕しているということはおっしゃるとおりだと思います。
 法人化の平成十六年時と平成二十七年度の予算額を比較すると千四百七十億円減少しているわけですから、この結果、各大学の教育研究の実態が厳しい研究になっております。
 ですので、二〇一九年度予算案については、先ほど申し上げたように、対前年度同額の一兆九百七十一億円を計上しているほか、それとさらに別建てで、国立大学等の国土強靱化に資する基盤的インフラ整備の整備分として七十億円を計上しているところでありまして、国立大学が我が国の人材育成、学術研究の中核として研究活動の充実を図られるように運営費交付金の確保に取り組んでいきたいと思いますし、また、来年度以降、御指摘も踏まえて、しっかり財務当局に対して、運営費交付金の更なる確保に向けてしっかりと働きかけていきたいというように考えております。

○田村智子君 七百億円削って七十億増やしたと言ったって駄目ですよ、これは。総額で増えてもいないんですから。
 もう若手の皆さんが、将来に希望が持てずに、この間、自殺する事件や、研究室に放火して自らも命を絶つような、こんな事態まで起きているわけですから、本当に基盤的経費増やして若手が安定した職に就けるポストを増やしてほしい、重ねて要求しておきます。
 この点で、私は逆の事態がまた進むんじゃないかと危惧をしているんです。それは、大学教員や研究者についての無期転換ルール、これ、五年で無期転換というのが職員に対しては行われたんですけれども、研究職は十年にされたんですよ。ですから、二〇二三年四月を前に、また無期転換逃れの雇い止めが大学の研究者や教員の中で広がるのではないだろうかと私は危惧をしています。
 私の事務所で各省庁に調査したところ、独立行政法人で十年で無期転換、この対象者は七千八十六人に上ります。そのうち、二〇二三年四月で十年超となる方は二千百七十三人、既に同一の法人で十年超えて勤務されている方は一千百四十六人いるわけですよ。
 国立大学でも、この間、任期付きのポストがどんどん増えてきてしまって、四十歳以下では、十年前の一・五倍、一万百七十三人に上っているわけです。既に首都圏のある大学では、数年先を見据えて、任期付きの教員、准教授の方々、契約更新をせずに今年三月で雇い止めしようとして、これは労働組合も闘って、あと三年は契約しますというふうになったんですけれども、果たして二〇二三年四月前にどうなるかということを大変危惧をしています。
 厚労省にお聞きします。無期転換までの期間が十年というのは、本当に長過ぎるわけですよ。客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当でなければ雇い止めは認められない、こういうこととか、雇用の安定化のために、十年待たずに、契約期間満了を待たずにこれは無期転換するのが望ましい、こういうことを改めて周知することは必要だと思いますが、いかがでしょう。

○政府参考人(田中誠二君) お答えいたします。
 労働契約法に基づく無期転換ルールの件でございますけれども、無期転換申込権が発生する直前に一方的に使用者が契約の更新上限を設定するなど、無期転換ルールを意図的に避ける目的で雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではないと考えております。
 厚生労働省としては、本年二月に、独立行政法人等の所管省庁に対して、無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的とした雇い止めは望ましくなく、そうした旨を所管独立行政法人等にも周知するよう要請しておりまして、都道府県労働局においても引き続き必要な啓発指導を行ってまいりたいと思います。
 また、御指摘の雇い止め法理、これは無期転換の申出権が発生する前にも一定の雇い止めの制約があるというルールでございますけれども、このルールにつきましても併せて周知してまいりたいと考えております。

○田村智子君 昨年大問題にしたわけですから、これ同じ問題起こらないように是非とも周知してください。
 理研では、五年で無期転換ができる研究支援を行っている事務職員の方々、これは試験による選抜以外は雇い止めしようとしたんですけれども、当事者も闘い、国会でも私たちも本当に論戦やって、事実上無期転換となりました。ところが、限定無期職員という制度を新たにつくったんですよ。限定無期って何だと思ったら、プロジェクトが終了したり予算が削減されたら雇用は終了しますよという制度だというんですよ。これのどこが無期転換なのかと私驚きました。
 理研が限定無期だと幾ら主張しても、法律上は任期の定めのない労働者であり、プロジェクトの終了などを理由とする整理解雇は、判例上、解雇回避努力など整理解雇の四要件を満たさなければ許されないと考えますが、これも厚労省、確認します。

○政府参考人(田中誠二君) 個別の事案についてはお答えを差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、無期転換ルールに基づいて無期雇用に転換した労働者を解雇した場合の解雇の有効性につきましては、労働契約法第十六条の解雇権濫用法理に基づき、最終的には司法で判断されます。
 その上で、当該解雇が整理解雇に該当する場合には、四要素と言われます人員削減の必要性、解雇回避努力義務の履行、被解雇者選定基準の合理性、解雇手続の妥当性が考慮されることになると承知しております。

○田村智子君 これ、科学技術立国を目指すんだと、理研というのはその中心的な機関ですよ。そこで研究支援を行っている事務職員の仕事がなくなるなんということはあり得ないわけです、プロジェクトが一つ終了しようとも。
 これ、文科大臣にもお聞きしたいんですね。これ、今、理研は、ですから、その限定無期職員という訳の分からないこういう制度をつくって、それで、せっかく無期転換されたというその職員に対しても、あたかもプロジェクトが終了したら自由に解雇ができるかのように説明をしているわけですよ。これ、私はおかしいと思います。整理解雇四要件満たさなければ解雇は許されないんだと、これ、理研に労働関係法令の遵守をした対応をするように是非とも指導いただきたいと思いますが、いかがでしょう。

○国務大臣(柴山昌彦君) 全くおっしゃるとおりで、職員の雇用形態について、労働関係法令に基づいた上で理研が対応するべきものというように考えておりますので、限定無期雇用職員であっても、予算の削減や従事している業務がなくなることのみをもって解雇されることはなく、所属するセンターなどにおける同種の業務への配置転換等の解雇回避努力が適切になされることが要件化されているというように承知をしております。先ほど厚労省から答弁のあったとおりであります。
 そういったことも踏まえて、職員としっかりと対話をして、理研が労働関係法令と照らした上で適切に対応するよう指導していきたいと考えております。

○田村智子君 是非ともお願いしたいと思います。
 それで、残念ながら、東北大学を始め、非常勤講師の方々、雇い止めになった方が大勢いらっしゃるんです。同じことが研究職で十年を前にして行われたら、これはもう科学技術立国どころの話ではなくなりますので、雇い止めではなく、安定したポストをいかに増やしていくかと、このことを大学や研究機関の中でやっていかなければならないと思います。
 昨年、私、この理研の雇い止めを撤回させた経験も踏まえて、その理研の研究所のすぐそばの埼玉の和光市の会場でシンポジウムを行ったんですけれども、そこの場に若手の研究者の方も参加をしていただいて、非常に不安だと、自分も任期付きなんだと、物件費扱いの、人件費じゃない物件費扱いで今研究に業務しているんだと、こういう扱いで果たして日本の科学技術が本当に発展していくのかという危惧を切々とお話をされました。
 こういう若手研究者の意欲、研究したいというその思いに応えられるような政策をきっちり行っていただくよう、選択と集中は改めて、これは方針転換を是非ともやっていただきたいと要望いたしまして、質問を終わります。


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