刑法が禁じる賭博を解禁するカジノ実施法案の採決が19日の参院内閣委員会で強行されました。野党側の抗議の中、自民、公明、維新各党の賛成で法案を可決しました。政府・与党は西日本豪雨による甚大な被害が発生する中でもカジノ法案の審議を優先。20日の参院本会議で採決を行い、成立させる構えです。国会周辺では、猛暑のなか、廃案を求める市民らが抗議の声をあげました。
(写真)討論に立つ田村智子議員=19日、参院内閣委
19日は、内閣委での採決が狙われる中、日本共産党、国民民主党、立憲民主党、希望の会(自由・社民)、沖縄の風の5野党・会派が伊達忠一参院議長の不信任決議案を提出。内閣委はいったん休憩となりました。決議案は参院本会議で与党などの反対で否決されました。その後に再開された内閣委では柘植芳文委員長が冒頭から質疑終局を宣言。野党が抗議する中、採決が行われました。
反対討論に立った日本共産党の田村智子議員は、ギャンブル依存症の社会的悪影響と家族の苦しみを指摘。カジノ法案の根拠となった議員立法の提案者に米国のカジノ企業関係者が脱法的な資金提供をしていたことも明らかになったとして、「立法の根拠に重大な疑惑がある」と強調しました。
田村氏は、「カジノは人のお金を巻き上げるだけのゼロサムゲームだ」として、観光振興にも経済成長にもつながらないと指摘。カジノ法案は、日本人から吸い上げたお金を海外資本に提供する「『売国』法案そのものだ」と批判しました。
田村氏は、歴史上初めて民営賭博を解禁するカジノ法案の違法性は極めて高いと述べ、「憲政史上、まれにみる悪法を誕生させるわけにはいかない」と強調しました。
2018年7月20日(金)しんぶん赤旗より
【7月19日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、IR整備法案、すなわちカジノ実施法案に断固反対の討論を行います。
本法案は、西日本豪雨災害の中で審議入りし、国民民主、立憲民主、希望の会、そして我が党が災害対応に集中するために法案審議の先送りを繰り返し要求する下で、委員長職権によって審議をされてきました。
なぜ今カジノの法案審議なのかという国民の批判は高まり、今週月曜日に報道された世論調査では、今国会で成立させるべきではないは七六%にも上っています。自民党は、石井IR担当大臣が災害対応の質問に国土交通大臣として答弁するからと、国会のルールを曲げる提案までして法案審議を何が何でもと強行したのです。
石井大臣が国交大臣としてやるべきことは、内閣委員会への出席ではありません。災害対応の陣頭指揮を執る、被災地に直接入り被害実態や自治体の状況をつかみ、いち早く踏み込んだ対策を取る、そして災害対策特別委員会などで西日本豪雨について集中した国会審議に応ずることであったはずです。
結局、法案審議の委員会強行によって政府の災害対応への批判は強まり、IR整備法案そのものの議論は極めて不十分なものにならざるを得ませんでした。このような状況で採決することはあり得ません。せめて継続審議とし、落ち着いた環境で問題点を深く掘り下げる徹底した審議を行うべきです。
以上を申し上げ、法案に反対する理由を述べます。
第一は、本法案によるカジノの解禁によってギャンブル依存症は更に増え、社会的悪影響を広げることが必至だからです。
日本は既に、パチンコと公営ギャンブルを合わせて市場規模が二十七兆円に上るギャンブル大国であり、ギャンブル依存症は三百万人を超えており、多重債務や自己破産など深刻な社会問題を引き起こしています。今回のカジノ実施法は、現状に加えて刑法で禁じられてきた犯罪行為である民営賭博まで解禁するものであり、どのような対策を取ろうともギャンブル依存症患者を更に増やすことは避けられず、到底容認できません。入場回数の制限も、週三回とは、週六日間カジノに興ずることが可能な規制であることが委員会審議で明らかとなりました。自己排除、家族申告による排除を依存症対策と言いますが、それは深刻な依存症になってからの対策です。その過程で起こる苦しみをどう認識しているのでしょうか。
第二に、立法の根拠に重大な疑惑があることです。
なぜカジノを解禁するのか、このことを問われると、安倍総理も石井カジノ担当大臣も、議員立法であるIR整備推進法で一年を目途にカジノを含むIR整備の法律を作ることを求められたからだという答弁に終始しています。ところが、本法案の根拠となった議員立法の提案者である自民党などの衆議院議員が、アメリカのカジノ企業関係者からパーティー券購入の形で資金提供を受けていたことが明らかになったのです。カジノ解禁で利益を得るアメリカ企業からお金をもらい、そのために議員立法を立案していたとしたら受託収賄にもつながります。これは立法事実に関わる重大疑惑です。その解明に蓋をし、推進法を母体とする本法案を強行するなど絶対に許されません。
第三に、カジノを含むIRは、観光振興にも経済成長にもつながらないことです。
日本の観光振興にカジノは必要ない、このことは、カジノがあるシンガポールよりカジノのない日本の方が外国人観光客は何倍にも増えていることを見ても明らかです。日本の良さの一つは、安全で安心な国ということです。民間賭博を厳しく禁じていることこそ誇りにすべきです。四季折々の魅力、食文化、ショッピング、文化遺産などの魅力を高めアピールしていけば、観光や地域経済を更に発展させることは十分可能です。
そもそもカジノは、人のお金を巻き上げるだけのゼロサムゲームです。雇用が生まれるといっても、その何倍もの人生が壊されるのです。それでも経済効果を主張したいのならば、カジノ利用者の損失額が周囲の地域経済に与える影響、ギャンブル依存症、自己破産、家庭崩壊、犯罪の発生などによる社会的損失など、カジノがもたらすマイナス影響についても明らかにすべきではありませんか。
第四に、海外カジノ資本に日本人のお金を提供する売国法案だということです。
カジノ誘致に手を挙げている自治体の計画を見ると、どこも集客見込みの七割から八割は日本人です。カジノのターゲットは、外国人観光客ではなく実は日本人。また、カジノを実際に運営するのは経験、ノウハウを持つ海外カジノ資本になるのは確実です。日本人から吸い上げたお金を海外資本に提供する、これがこの法案の本質にほかなりません。カジノ面積の上限規制も、既にアメリカのカジノ企業の要求により緩和されています。売国法案そのものではありませんか。
最後に、違法性の阻却がされていないという大問題です。
本法案は、歴史上初めて民営賭博を解禁するものであり、極めて違法性が高い法案です。本日の審議でも、法務省が示してきた違法性を阻却するための八要件について、なぜクリアしていると判断できるのか、明確な答弁は何一つありませんでした。例えば、収益の使途を公益性のあるものに限るという点一つ取ってみても、粗利益の七割を海外資本が懐に入れる本法案の仕組みがどうして違法性を阻却できるのか、全く説明になっていません。
このような法案をこのまま法律にすることは、日本の歴史的な法体系を崩すことになりかねません。我が国の憲政史上においてまれに見る悪法を誕生させるわけにはいきません。
法案にも、採決にも、断固反対の意思を表明し、討論を終わります。