(写真)田村議員(手前中央)の質問に答える(正面左から)山口、樋口、西村の各氏=3日、参院内閣委
参院内閣委員会は3日、ギャンブル依存症対策基本法案をめぐり参考人質疑を行い、日本共産党から田村智子議員が質問に立ちました。
同法案は競輪・競馬などの公営賭博とパチンコの既存賭博による被害に総合的な対策を設けるもので、カジノ解禁推進の自民、公明、維新3党案(衆院通過)、カジノ反対の立憲民主、自由、社民3党案の2案が同日、一括して審議入りしました。
大阪いちょうの会幹事の山口美和子氏、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進氏、一般社団法人RCPG代表理事の西村直之氏が意見陳述し、各党議員が質問しました。
山口参考人は、多重債務問題の解決に取り組むなかで、ギャンブル依存症の深刻な実態に数多く触れていることをあげ、「ギャンブルや借金で自死する人を防ぐ私たちの活動をあざ笑うようにカジノを解禁するなど到底認められない」と強調しました。
田村氏は、ギャンブル依存症治療の「ゴール」をどこにおくのかと質問。樋口参考人は「『減ギャンブル』ではなく『やめる』ことを治療目標にしている」と答えました。
田村氏が「パチンコがこれほどのめり込みを生む理由を業界はどうみているか」とただしたのに、西村参考人は「全国に1万あるパチンコ店、パチンコ機械メーカー、14もある業界団体それぞれの立ち位置で、本質的な問題がどこにあるのか共有できない」と答えました。
2018年7月4日(水)しんぶん赤旗より
【7月3日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。
まず、山口参考人にお聞きいたします。
意見陳述をお聞きしまして、本当に、ギャンブル依存症は発生する方が数%程度だから大したことないとか、そこに対策を取ればいいとか、こんなことは絶対に言えないなと。やっぱり、新たに生まないというその点をもっともっと私たちも議論をしなければならないなということを改めて胸に刻んだところなんですけれども。
意見陳述に時間の制限もありましたので、やっぱり子供の立場や視点から見たときにギャンブル依存症って何なのか。ここは、やっぱりそういう話を聞く機会がなかったです、率直に言えば。話し足りないところがありましたら、もう少しお聞かせください。
○参考人(山口美和子君) 私が一番、いろんな、物がないとか父親が情けないとか、そういう感情的な部分がとても破壊されました。やはり一番、自分に自問自答したときに何が一番悔しかったかというと、本当に自分の父親を尊敬することができない、ここの一点であるのかなと。そこは、私でも、今まで恨みの感情とか、しかしながら親である、どうしても切っても切れない、そういう同情的な部分であったりとか、そこでかなり振り回されました。しかしながら、一言で表現すると、いろんな方が来て、いろんな妨害を加えたり、命の危機がありましたけれども、一番情けなかったことは自分の父親を尊敬できない自分がいる、そこは本当にさもしい思いをいたしました。
ですから、やはり、みんな幸せになろうと思って結婚をするんですよ。幸せになろうと思って家を買って子供を産む。ちょっとしたことのたがね、ちょっと外れただけであそこまでなると、経験した者しか分からないと思います。ですから、やはり少数派かも分からないです。そういう強烈な幼少時代を送ったり、多感な時期を過ごしてきたり、お金にもう小さいときから困るような経験をした人ではなかなか、ごく少数派に数えられるんですよね。そこの部分はきっちりと酌み取っていただいて、無差別平等であるべきだと私は思います。
やはり服も何も、服とかもお金がなかったもので、子供ながらに二日に一遍とか三日に一遍しか学校に行かなかった記憶もございます。やはり同じ服を着ていくということが、誰に言われたわけでもなく、自分の中に恥ずかしいという思いがありまして、やはり二日、三日休んでからその服をまた、同じ服しか持っていないので、そういう小学校の教育にも影響したことを今でもとても後悔しております。
○田村智子君 つらい経験を本当にありがとうございました。
いちょうの会の活動についてもお聞きしたいんですけれども、多重債務だけであるならば、恐らく弁護士さんがいろんな御相談に乗って、過払いの問題なんかも解決して、そこで解決ねと、これから頑張ろうね、再起していこうねということになると思うんですけれども、先ほど一人の方についてもう六人がというお話もありました。私たちいろんな詳しい状況が分からないので、ヘルパーさんが必要になるとか、それから意見陳述の中で見張らなければならないというお話があったんですけれども、こういう状況がどういうことなのか、恐らく債務の問題を解決しても長期にわたっての支援が必要だということのお話だと思うんですけれども、その点について御説明いただけますか。
○参考人(山口美和子君) お答えいたします。
先ほど田村先生のおっしゃられたとおり、多重債務だけであれば弁護士の先生や司法書士の先生にお願いしますと、あとは淡々と事務的にとんとんとやって、それはもう大変な事務手続もいっぱいあると思うんですけれども、そこで解決する話です。
しかしながら、破産手続中に更なる借入をした場合、免責も下りなければ、それまでやってきた先生たちの事務も止まります。辞任しなければならないところまで行ってしまいます。そうしたら破産すらもできなくなるんです。なので、ギャンブル依存の方については、たとえ友達であろうと、また闇金であるだとか消費者金融に平気で借りに行くんですね。手続、今受任したところで、これから手続するというときに借りた方もいらっしゃいましたし、三百万お金を持っていて、それで破産をしましょうと言っている最中にその三百万も全部使い込んだ、一瞬で使い込んだ方もいらっしゃいました。ですので、やはりいろんな手続をするに当たっても、そういうギャンブル依存の重症化した方、この方については本当に油断ができなくて、本人もその場では理解をしてくれます、もう行かない、分かった、じゃこうしよう、じゃ二か月はもう絶対行かないとおっしゃるんですけれども、やはりちょっと人の目が外れたらもうパチンコに行っている。そういう状況がその人、その人とかという表現ではないんです、何例かございます。私たちも経験則で油断ができないという、見張らなければならない、残念ながら見張らなければならないという表現を使わせていただくことになる、そこまで達しています。
本来は使いたくないです、見張らなきゃならないなんて、支援者側がね。しかしながら、そういう経験則から、もう何例もあるのであえてそういう表現をさせていただいております。
○田村智子君 ありがとうございます。
そこで、樋口参考人にお聞きします。これは視察の折にも何度もお聞きしたので繰り返しの質問になってしまうんですけれども、このギャンブル依存症の治療のゴールは何なのかということは、やっぱりちゃんと委員会の中でも御説明いただけたらなと思っているんです。
適度にギャンブルができるようになることなのかどうか、その治療のゴールで久里浜の皆さんが目指しておられることは何なのか、お願いいたします。
○参考人(樋口進君) お答えいたします。
この治療ゴールについては様々な議論がございます。海外の論文を見ますと、ギャンブルをやめなくていい、減ギャンブルですね、減らすというギャンブル、そういうふうなものも治療として十分成り立つというようなことを示すものもあります。しかし、完全にやめなければいけないということをサポートするもちろん論文もあります。
我が国の状況を見てみますと、我が国、先ほど、ある一定の数の治療施設がありますけど、その中で特にきちっとした治療プログラムを持ってやっているところについてお聞きすると、ほぼ全てやっぱりやめるということを治療目標にやっているというようなことです。
依存症は、これはアルコールにしても薬物にしても、昨今ハームリダクションといって、減らすという選択肢の議論もあるんですけれども、やっぱり一番安定的でかつ安全で、しかも家族もそれを良いとするのはやっぱりやめるというふうなことだと思います。
○田村智子君 もう一点、樋口参考人にお聞きしたいのは、意見陳述の中でも、ギャンブルについての正しい知識と、西村参考人でしたっけ、予防策としての正しい知識の普及ということはお話しいただいたかなというふうに思うんですけれども、この正しい知識というのが何なんだろうかと。
ギャンブルというのは賭博ですから法律で禁じられていると。ただ、一部、競馬、競艇などは別個の法律でやってもいいよということになっているという状態ですよね。パチンコというのは私はもうギャンブルだと思いますけれども、なぜか法律上はギャンブルではないという扱いにもなっていると。
それでは、正しい知識を予防策として子供たちにも教育していくというのは一体何を教えていったらいいのか、樋口参考人にまずお聞きしたいと思います。
○参考人(樋口進君) お答えいたします。
それはもちろん、ギャンブル等依存症のその病気の状況とか、先ほどから山口参考人がお話しになっている非常に大きな問題になることとか、そういうような話は当然そうなんですけれども、学校で子供たちに教育していた内容を、海外の様子を見ていますと、結構ビデオを使ったり、それからあと動画を使ったりと、結局ギャンブルというのは、要するに、言ってみれば、何ですか、確率の話なので、その確率の話をそうではないと、私の場合には勝てるんだとか、これ間違った考えなんですけれども、それから、例えば何十回もやってきていれば、今度、次は当たるはずだとか、そういうふうなことが頭の中にあって、それがギャンブルを助長しているというふうなことがあるということなんです。
ですから、例えば子供たちの場合には、この確率だったら、十個のうち例えば四当たって六駄目だったら、そうしたらこういう確率だよねというふうなことをちゃんと子供たちに教えていくと。ギャンブルというのは、そうではないようなことを考えてギャンブルやるんだけど、実は結果的には最後はやっぱり四と六になっちゃうんだねとかって、そういうふうな話ですね。
ですから、言ってみれば、ギャンブル依存症の問題そのものもそうですし、それから予防できることもそうですし、それからあと間違った考えを、ギャンブルに対する間違った考えがあるとそちらの方に行ってしまうので、その辺りをちゃんと教育しておこうよと、そういう話だと思います。
○田村智子君 なかなか、しかし、それは依存症対策になるのかなって、ちょっと率直に言って思ってしまって、例えば確率がほとんどなくても、やっぱり当たったときには大当たりというので脳が刺激されるというお話ありますよね。そうすると、これが予防策になり得るのかどうかという辺りも、ちょっともう一度、樋口参考人にお聞きしたいんですけれども。
○参考人(樋口進君) 先ほど申し上げましたとおり、海外の研究のエビデンスを見てみると、そういうふうな間違った考え方の修正というのがギャンブル行動の修正につながるかどうかについては、これは必ずしも明確ではないんですね。ですから、その辺りについては、今後やっぱり研究をちゃんとしていって、より有効性の高い教育というのは何かというようなことを我が国の中でエビデンス積んでいかないといけないんではないかと思います。
○田村智子君 改めて、そういうエビデンスもなくカジノをつくるということはあり得ないなということは思ったわけですけれども。
西村参考人にもお聞きしたいんです。
リカバリーサポート・ネットワークの代表も務めておられて、このリカバリーサポート・ネットワークは、パチンコ、パチスロの業界の皆さんの自主的な取組で、のめり込みとか依存の問題を起こさないようにいろんな相談活動も受けていらっしゃるということなんですけれども、ということは、いろんな業界の皆様との意見交換の場もあるだろうなということも踏まえてなんですけどね。
やっぱり、いわゆるゲームセンターでこんなのめり込みをして多重債務に陥るなんていうのはほとんど聞いたことがないわけですよ。扱いとしてはゲームセンターと同じ遊技という、なのにどうしてパチンコはこれだけののめり込みが起こるのか、その根本的な要因がどこにあるのかということについて業界の皆さんはどういう議論をされておられるのか。私は、少なくとも三店方式の規制とか、やはり事実上換金システムがあることの問題性などは議論されてしかるべきだというふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
○参考人(西村直之君) 遊技業界の議論の中身について、私、答える立場ではないので、私たちのリカバリーサポート・ネットワークは独立した第三者機関ですので、そちらを別に代弁しているわけではないんですが、やはり全国で約一万店舗のホールがあり、なおかつ機械メーカーがあり、全部で大きく分けて十四の団体が遊技関連の中にあります。その中で、やはりそれぞれの立ち位置、立場、今までの考え方、関わり方があるので、正直やはりこの問題の本質的なところはどこにあるかというのがなかなかやはり突き詰めて議論ができない、共有できないという事実はあると思います。
そういう中で、この問題、特にこの依存問題の対策というのは、やはり風営法の枠組みの中で今動いているので、じゃ、これは、風営法はそもそも依存対策法かというとそうではないので、この問題を突き詰めていくようなことが義務として枠付けであるわけでもないという中で、この問題はなかなか触れづらいという中を、まずは、でもお客さんのこの問題に向き合いましょうというところだけでも、この十年、ここの部分に関しては敷居が非常に下がってきて、私たち自身の問題であるというところまでにはなりました。
なってきたんですけど、やはりこの原因というところの追求にまでは、まだ正直議論がまとまったり、そこまで突っ込んでいける状況ではないというのはこれからの課題で、特にこの法案が一つのそういう、パチンコだけでなく、全体を含めて、人はなぜ遊びにのめり込んでいくのか、また逸脱するかということを、ちょっと責任論を外した形でやっていかないと、なかなか、いや、私たちのところは責任を問われるならば触れにくいという話になってしまうので、むしろそこは一回、こういう法律、健康の法律という問題で少し敷居を下げていただければいいかなというふうに思っております。
○田村智子君 ありがとうございました。