国会会議録

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経済・食料主権の侵害 TPP11法案可決 田村氏が反対討論

(写真)討論する田村智子議員=28日、参院内閣委

 米国を除く環太平洋連携協定(TPP11)関連法案は、28日の参院内閣委員会で、日本共産党などの反対を押し切って採決に付され、自民・公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決されました。法案には、日本共産党、国民民主党、立憲民主党、希望の会(自由・社民)が反対しました。

 共産党の田村智子氏は反対討論で、政府側は交渉のメモの存否さえ明らかにしないなど審議はまったく尽くされていないと採決に厳しく抗議。「多国籍企業の利益のために、我が国の経済主権や食料主権を侵害する協定の批准は断じて認められない」と主張しました。

 田村氏は、TPP11は米国の離脱意向、カナダやニュージーランドが対日輸出の大幅増を見込んでいるとして「TPP協定よりも深刻なダメージを受ける危険性がある」と指摘。米・麦・牛肉などの重要5品目さえ段階的な関税撤廃の対象だとして「明確な国会決議違反」だと述べました。また、農林水産物の輸入がどれだけ増えるかの試算さえ行わず、「農家所得も食料自給率も変わらない」という主張の根拠も示されず「あまりにも無責任」と批判。多国籍企業の利益追求から国内産業や自国民を守るルール構築へかじを切り替えるよう求めました。

 希望の会の山本太郎議員は30分余にわたり反対討論を展開。自民党議員がうなずいて同意する場面もありました。

2018年6月29日(金)しんぶん赤旗より

 

【6月28日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 私は、日本共産党を代表し、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部改正法案に反対の討論を行います。
 まず、討論に先立ちまして、本日採決することに抗議をいたします。
 私の質問の最後にも申し上げましたとおり、まだ質疑は尽くされておりません。確かに、衆議院の時間を超える審議時間を本委員会で行ったことは、参議院の審議の在り方に一石を投じる在り方であって、これは今後も尊重していただきたいと思いますが、問題はどれだけ審議時間を取ったかではないと思います。
 農林水産委員会との連合審査の中でも、いかなる交渉を行い、いかなる発言を行ったのか、茂木大臣のその発言の原稿なり、日本側のメモなり、そういうものの提出ということを求めましたが、いまだこのことについて的確な説明を私たちはいただいておりません。そしてまた、茂木大臣の大変非礼な答弁か、あるいはいんぎん無礼な答弁か、どちらかの答弁になるがゆえに的確な御答弁をいただけず、質問を積み残したままになっております。
 このような状態で採決を行うことは、このTPP11を批准した際に国内産業にいかなる影響が与えられるのかということを、私たちが審議を尽くした状態であるとはとても言えないということを指摘しなければなりません。
 本法案によって、TPP11の批准に必要な国内整備が行われることになります。TPP11は、TPP12の関税撤廃、非関税障壁の緩和水準をそのまま受け継いでいます。凍結事項は極めて限定的であり、食の安全、ISDSなど、二〇一六年の国会審議で明らかとなった問題点は何ら解決されていません。多国籍企業の利益のために我が国の経済主権や食料主権を侵害する協定の批准は断じて認められません。
 しかも、TPP11では、アメリカが抜けた状態であるにもかかわらず、乳製品の低関税輸入枠や牛肉のセーフガード発動基準などがTPP協定のままになっています。既にカナダ、ニュージーランドなどが対日輸出の大幅増を見込んでいます。アメリカの畜産業界も日本への輸出枠拡大を諦めるはずはなく、今後の日米協議によって、日本の農業はTPP協定よりも深刻なダメージを受ける危険性さえあります。
 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要五品目を関税撤廃の交渉から除外すること、これが全会派が一致して採択された国会決議ですが、重要五品目のうち無傷のものもなく、明白な国会決議違反であると言わざるを得ません。
 政府は、本法案によって国内農業の体力強化をうたっています。しかし、法案質疑では、TPP11によって農林水産物の輸入がどれだけ増えるかという試算さえ行っていないことが明らかとなりました。にもかかわらず、国内生産量の維持が可能、農家所得も食料自給率も変わらないという根拠はないままに説明が繰り返されました。ただただ日本の農家に規模拡大とコスト削減を求め、輸入農林水産物との価格競争を十年以上にわたって強いることは、余りにも無責任と言わなければなりません。
 参考人質疑では、北海道十勝で小麦などを生産する農家から、大規模化は億単位の借金を背負うことになる、地域社会の形成にも困難をもたらすなどの指摘が行われました。政府の支援策は農家の不安にも全く応えていません。また、他の参考人からも、そもそも国土も環境も国によって全く異なる農業は自由貿易の対象とすべきではないとの指摘もありました。
 TPP11交渉で多くの国が凍結事項を主張し、訪日したマレーシアのマハティール首相が再協議に言及したのはなぜなのか。多国籍企業の利益追求から国内産業や自国民を守るためにほかなりません。各国の経済主権、食料主権を尊重しながら、国際的な経済関係を築く新たなルールの構築にこそかじを切ることこそ求められています。
 本日の採決に対して再度の抗議を行い、反対の討論を終わります。


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