(写真)質問する田村智子議員=26日、参院内閣委
日本共産党の田村智子議員は安倍晋三首相が出席した26日の参院内閣委員会で、米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」に関し、多くの懸念や問題が指摘されているにもかかわらず、メリットばかり強調する政府側の対応を批判しました。
田村氏は、TPP交渉時に大手製薬会社を抱える米国の主張で盛り込まれた医薬品のデータ保護期間の延長に新興国が反発し、TPP11では凍結された事例を紹介。マレーシアのマハティール首相がTPP11の見直しの必要性に言及したことにもふれ「TPPそのものが多くの懸念や問題を含んでいるのは明らかだ。デメリットに目を向け、立ち止まることが必要だ」と主張しました。
安倍首相はあたかもデメリットがないかのような答弁に終始。協定発効後も「農家所得が維持され国内生産量が維持される」と強弁しました。
田村氏は、米・麦・などの重要5品目を交渉対象から除外するなどとした国会決議に反するTPP11の締結で輸入が増えれば「主食の米も大打撃を受ける」と強調。政府が農林水産物の輸入増に関する試算をしていないことを指摘し、農水省に調査分析の実施を指示するよう求めました。
安倍首相は「輸入がどれだけ増えるかを取り出して試算する意義はない」と拒否しました。
2018年6月27日(水)しんぶん赤旗より
【6月26日 内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
私も冒頭、あの十九日の連合審査での茂木大臣の答弁についてやはり一言申し上げなければなりません。
我が党紙議員が、午前中に私も指摘しましたマハティール首相の再協議ということにも触れて質問をいたしましたところ、大臣は、マハティール首相がなぜ発言をされたかについては是非御本人に御確認いただきたいという答弁でした。
そしてまた、カナダが対日輸出量が八・六%増加する、その大半が農林水産物だというふうに言っていると、こういうことについてもどうなんだと見解をお聞きしましたら、カナダの試算が正しいという根拠をお持ちでしたら是非御質問くださいという答弁で、ちょっとこれは本当に驚きました。
昨日の理事懇談会でも私このことを指摘したんですけれども、例えば、この輸入量のどうなるか、これ本法案の肝とも言える問題で、他国の政府が対日輸出増の試算を示していれば、そのことを指摘して質問するのは当たり前のことだと思うわけですよ。その根拠を、他国の政府の試算の根拠を示して質問せいというのは、これは事実上答弁拒否と言えるようなことだというふうに思うんですね。
一言、まず茂木大臣に求めたいと思います。
○国務大臣(茂木敏充君) 答弁はできる限り簡潔にと何度かこの委員会でも御指摘をいただいておりましたので、そのように答弁をさせていただきました。
ただいま御指摘のような御意見があるのであれば、今後一層丁寧な答弁を心掛けてまいりたいと考えております。
○田村智子君 ちょっと、これは簡潔ということではないと思いますからね。ここで改めてはやりませんけれども、簡潔ということと失礼は違います。
意見の違いがあるのは分かりますよ。私たちはTPPをずっと批判をしてきましたので、恐らく大臣と私たちは見解や立場が相当異なるでしょう。だけれども、その異なる立場で私たちが懸念を示せば、そのことについて大臣としての見解をお示しになるということをやっていただかなければ、これは議論になっていかないわけですよ。民主主義ですから、立場が違う、意見が違うのが前提での議論だと思います。
立場が違うことをもって切って捨てるようなことは是非ともやめていただいて、様々な出されている懸念や私たちの指摘に対しても真摯に耳を傾けて御答弁いただきたいということは重ねて要求しておきたいというふうに思います。
まず、中身での質問では、やはりこの間ずっと、今日も午前中も議論になっていましたTPP11の六条の見直しの規定なんです。
これまでの答弁読み直してみても、やっぱりよく分からないんですよ。TPPつまり12が発効する、つまり米国が、アメリカがTPPに戻ってくることになれば見直しを、そのための協議をやる、これは分かりますね。TPP11がある意味、そのTPPの中身を含んでいますから、11をTPPの中に融合するのかどうか、そういう協議が必要になるというのは分かるんですけれども、アメリカがTPPに戻ってこない、このことが決定的になったときも見直しと。だけど、元々TPPはイレブンで、アメリカ抜きの協議で進めているわけですから、最初からアメリカ抜きの条件でいろんなことを決めているはずなんですね。そのときに、アメリカがTPPに戻らないことがはっきりしたというときにもう一度見直しを行いますと、これはどういう意味なのか、どういう条件のときにアメリカが戻ってこないとみなして何を協議するということになるのか、御答弁ください。
○政府参考人(澁谷和久君) お答え申し上げます。
第六条、先生御指摘のとおり、アメリカがTPP例えば12に戻ってくるということになりますと、12も発効して11も生きているとなりますと、これ完全に例えばTPPワイド枠がダブルになってしまいますので、これは何としても調整が必要だという、そういう趣旨でございます。
そうじゃない場合というのは、なかなかアメリカの今後の通商政策、予断して申し上げることもなかなか難しい上に、政府としてそういうことを実際に予見しているのかということを言うのもややためらうところがありますので、それでなかなかはっきり申し上げにくいところがあるんですけれども、いずれにしましても、皆さん方の懸念は、TPPワイドの枠、それからセーフガードの枠数量でありますけれども、これが結局、アメリカを含むことを前提に入れたものが、結果としてTPP11の外で同じような枠ができて、結果として当初想定した枠以上の枠になってしまうということを皆さん懸念されている、そういうような事態がアメリカの通商政策の動向によって現実のものとなるという可能性が高い場合には、我が国としては、これは一つの締約国の判断で六条の見直し要請ができますので、我が国としてはそうした場合には六条の見直しの協議の要請をすると、このように考えております。
○田村智子君 だから、そこが本当にそもそもの矛盾で、もうイレブンでアメリカ抜きなんだから、最初からセーフガードの枠についても見直し求めればよかったんですよ、日本の側が。それを求めないで、TPP12のアメリカが入った状態のままで、セーフガード発動の基準というのもそのままにしちゃっていて、訳の分からない見直し規定になっていると言わざるを得ないんですけれども。
ちょっと改めて確認したいんですけれども、それじゃ、TPPそのものがもう発効しない、アメリカが戻らないというふうに判断されたとき、何を日本側は見直しの対象として求めたのか。大臣は発言、しっかりやったんだ、何度もやったんだというふうに言われていますので、もうちょっと具体的に示していただきたいんですよね。何を見直しを必要だというふうに主張されて、それが確認されたという御判断なのか。
○政府参考人(澁谷和久君) 昨年の三月以降、私も含めて関係国にずっと働きかけ、それから協議、調整を行ってきたところでありますけれども、我が国としては、第六条を発動する必要が生じた場合にはTPP全ての締約国、これTPP12ですけれども、TPP12の全ての締約国を対象とした関税割当ての数量及びセーフガード措置の発動基準数量、これを見直すということを明言をしているところでございます。すなわち、第六条を発動した場合には、TPP11協定の枠数量、それからセーフガードの発動基準数量、数量そのものを我が国としては見直しをしたいということを明確に各国に伝えているということでございます。
○田村智子君 それで、じゃ、それがいつ判断されて見直しを求めるかということについても、これまでの答弁の中では、アメリカがTPP11の加盟国と個別の交渉などをもう結んでいくというふうになったらTPPには戻らないという判断ができるんだというような答弁もあったやに聞いています。でも、もう日米で交渉始まっているんですから、これTPPに戻らないという判断が近々もうできるということじゃないかとも思うんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 日米というのはFFRのことだと思いますけれども、FFR、議題そのものも含めてまだ調整中でございます。どういう議論をするかということも含めて、これからの議論ということでございます。
先ほど私が冒頭の御答弁で申し上げましたとおり、乳製品などのTPPワイドの枠がTPP11の外で同じような感じで枠が出てしまうという、そういう事態が現実のものとなるような場合ということでございますので、まだFFRでそういう議論がされるということは何ら決まっておりませんので、まだそういう段階ではないというふうに考えております。
○田村智子君 それを議論しないで何を議論するんでしょうか。アメリカから何を輸入しということの議論になるんじゃないんですかね、TPPではない議論をするわけですから。本当におかしな答弁だというふうに思うんですけれども。
大臣にもお聞きしたいんですけど、これまでもずっと、じゃ、その主張されたという輸入量の数量、セーフガード発動基準、これがもう見直しになるんだと、アメリカが戻らないという判断ができた場合にはということなんですけれども、私たちはそれを示す文書が何もないじゃないかということで野党が追及をずっとやっているわけですけれども、そもそも私、疑問なんですけれども、TPP11は秘密交渉じゃないわけですよね。それじゃ、例えばその会議録を作ってちゃんと確認をしましょうよと、もちろん公表するしないの判断っていろいろあるかもしれませんけれども、少なくとも会議録を作るということを、大臣は共同議長も務められたわけですから、なぜ日本側はそのことを主張されなかったんでしょう。会議録必要だと、協議の中身をちゃんと記録することが。そのことをお聞きしたいんですけど。
○国務大臣(茂木敏充君) TPP11につきましては、米国、昨年の一月二十三日に離脱を表明したわけでありますが、それ以降、昨年の三月に、米国抜きでもこのTPP進めていくことが大変重要である、こういう参加国で認識を共有して、結束を固め、当然各国様々な利害関係があったわけでありますが、それを調整した上で、ハイスタンダードかつバランスの取れた合意ができたと考えております。
その調整の結果、合意した内容につきましてはしっかりと協定等に反映をされております。そして、協定文、さらにはサイドレター、これも公表いたしまして、それを日本文にもしております。また、記者会見等でその内容についての説明も行っております。さらに、首席交渉官会合、四回にわたって開催をされました。そのうち三回は日本で開催をいたしておりますが、こういった首席交渉官会合や閣僚レベルでも個別の協議も行いました。そういった会談の後には、できる限りその概要説明をしているところであります。
なお、合意に至ります詳細な経過につきましては、相手国との信頼関係、さらには、今後、類似の交渉案件、こういったものも出てくる可能性もあるわけでありまして、そういったことへの悪影響等々も考え、慎重な取扱いが必要だと、このように考えております。
○田村智子君 大臣、丁寧な答弁というのと聞いていないことにいろいろお答えになるということはちょっと違いますのでね。私が聞いたのは議事録作成をなぜ主張しなかったのかですから、最後のセンテンスのところだけで十分だったわけなんですけれども。
いや、生じる悪影響といえば、議事録を作成しないことによって生じる悪影響は大きいと思うわけですよ、言った言わないという話にならないようにするためにも。もうこれ聞いても、作っていないと、交渉事だから様々な相手国との関係もありということになっちゃうのかもしれないんですけど、これ、午前中やっぱり議論があったんですけれども。
じゃ、正式な議事録はないにしても、日本側は大臣が御発言になったものは原稿があるでしょう、発言されているんだから。それに、日本側が、その発言に対してどういう対応を、誰がどういうふうに言ったか等々の記録というのを取っていないとは到底思えないわけですよ。これ、あるでしょう。少なくとも大臣が何を発言されたのかというのは原稿としてあるでしょう。また、その記録についてもどうなのか、あるのかないのか、ここをお答えください。
○国務大臣(茂木敏充君) 御指摘の発言の内容につきましては、第六条、これが発動する必要が生じた場合、我が国としては、TPP全ての締約国を対象とした関税割当て数量及びセーフガード措置の発動基準数量、これを見直すということをダナンの閣僚会合の際もしっかりと申し上げたところであります。
そして、先ほども答弁させていただきましたが、最終的に合意した内容についてはしっかりと協定等に反映をされておりまして、その協定文、さらにはサイドレター等も公表して、記者会見等でもその内容についてしっかり説明させていただいております。
○田村智子君 それは答えていないんですよ。
だから、大臣が発言されたのも、じゃ、その輸入量の数量やセーフガードの発動基準についての見直しをというのはどういうニュアンスで、なぜその見直しが必要というふうな御趣旨で発言をされたのかということを確認したいですよ。
だって、ほかの国にしてみたら、元々アメリカ抜きのじゃないかと、それで、日本はそもそもアメリカ抜きだと分かっていてセーフガードの見直しも発動基準の見直しも国別の輸入数量等々の見直しも求めなかったわけですから。それを求めずして協定が合意になっていると。にもかかわらず、アメリカが入らない協定の下でですよ、なのに、アメリカがTPPに入らないということが明らかになったときに、見直しをお願いしますと言うときに、その合理的な説明が必要になるでしょう、普通考えたら。
それをどんなふうに御説明されたのか、これ、何か記録見ないと私たち確認できないわけですよ、どういう条件付で主張されたのか。だから、あるでしょうと聞いているんですよ、発言されているんだから。そんな、大臣が外交交渉の場で何にも持たずに発言されるんですか。当然そのTPPの皆さんの中で確認されて、政府の方針として確認したものがあって、それに基づいて発言されているでしょう。それがあるでしょうと聞いているんですよ。
○国務大臣(茂木敏充君) 発言した内容につきましては、先ほど明確に答弁をさせていただいたとおりであります。
そして、詳細については申し上げられない部分はありますが、我が国と同様のTPPワイド枠を持っている国、それはほかにもあると承知をいたしております。そして、これはダナンの閣僚会合だけではなくて、昨年の三月のチリでの首席交渉官会合以降、首席交渉官及び澁谷統括官から会合のたびに、あるいは関係国の首席交渉官が来日するたびに説明をして、我が国の考え方を理解を一つ一つ得てきたところでありまして、さらには、ダナンの会合の直前の舞浜での首席交渉官会合までに主要国との間の理解、これが事務レベルで得られていると、こういうことを踏まえて、確認の意味でダナンの首席交渉官会合におきまして私の方からそのような趣旨の発言をさせていただきました。
○田村智子君 やっぱりお答えになっていないんですよ。
出してくれとか言っているわけじゃなくて、記録があるでしょうと聞いているんです。記録はありますよね、発言した中身の記録。その会議の日本側が何か取った記録、ありますよね。
○国務大臣(茂木敏充君) ダナンの閣僚会合、これにおきましては、閣僚会合が開始される以前に、各国間で議事録を作りますと、こういう合意をして、閣僚会合終わってからその内容について確認を取った、そういった意味での議事録はございません。
○田村智子君 それは分かっているんです。日本側が取った記録があるでしょうと聞いているんです。
○国務大臣(茂木敏充君) 何度も恐縮でありますが、様々な会合での詳細なやり取りと、これにつきましては、相手国との信頼関係もあります。相手国がどういう主張をしたかと、それに対してこちらがどういう主張をしたかと、まさに外交上のやり取りでありまして、相手国との信頼関係も出てまいります。
そして、こういった交渉、今後我が国として様々な経済連携協定を進めていく、こういった中で類似の交渉案件、これが今後出てくる、それに対する悪影響を与えることがないように慎重に対応したいと思っております。
○田村智子君 いや、済みません、ここでこんなに時間を食うと思っていなかったので。
出してくれとか言っているんじゃないんですよ。出したら、それは相手国との関係で機密文書とかということはあり得るでしょう。政府側の記録があるでしょうと聞いているだけなんですよ。
○国務大臣(茂木敏充君) 先ほどから申し上げておりますように、各国で合意をした、そして内容を確認した正式な議事録というのはございません。
○田村智子君 委員長、済みませんが、これ、私、議事録を聞いているわけじゃないんですよ。日本側がメモしたものとか、だって、外交交渉っていろいろあるじゃないですか、確認しなくたって記録として政府側が取っているものって。なかったらおかしいですよ、そんなの。
この国会、加計学園、森友学園の問題で、安倍政権の中でだって言った言わないと、省庁の側が片っ方記録が残っていると、それに対して内閣府は自分のところは記録がないから分からないとか言っているわけですよね。これ、まあレベルが違うので、外交はこんな低レベルな話じゃないとは思いますけれども、それにしたって、日本側の記録があるのかないのかぐらいちゃんと答弁してくださいよ。
○委員長(柘植芳文君) 大臣、明確な答弁をお願いいたします。
○国務大臣(茂木敏充君) 相手国との証拠という形でおっしゃっているんだと思いますけれど、そういったものがあるなしにかかわらず、基本的に、じゃ、例えば仮に日本がメモを持っていましたと、誰かがメモを作りましたと、それは恐らく今後見直しを行う際に、それは日本のメモでしょうと。それよりも、きちんとそういった会議の場で発言をさせていただく、それに先立って、累次の会合におきまして事務レベルでも日本側の主張をし相手の理解を得る、そして様々な利害関係を日本が主導して調整をしてきた、こういう各国との信頼関係と、これに基づいて見直しというのは行っていきたいと思っております。
○田村智子君 済みません、時間が来ちゃって、上月先生に来ていただいて、私、輸入量の問題等々を質問したかったんですけれども、まさかここでこんなに時間取るとは率直に思わなくて、大変農水省の皆さんもごめんなさい、申し訳なかったです。次回、たっぷりその輸入の枠のことについては御質問をしたいというふうに思います。
それと、ちょっとこれは本当困りますよ。もし日本側のメモでしょうなんて言われてしまうんだなんて答弁だったら、だったら何で議事録を作ることを主張しなかったのかということにもなるわけですから、ちょっと今の大臣の答弁についても次回また取り上げさせていただきます。
終わります。