(写真)質問する田村智子議員=29日、参院内閣委
日本共産党の田村智子議員は29日の参院内閣委員会で、「子ども子育て支援法」改定案に反対する討論を行いました。同案は待機児童対策として企業主導型保育を推進。自治体の計画に含めることを可能にするものです。
田村氏は「企業主導型を認可保育の代替としないという、今までの政府の立場からの大転換だ」と強調。「企業主導型施設を自治体の保育確保策にあてることは、保護者の要求と違う」と批判しました。
企業主導型施設は、保育実施義務を持つ市町村が関与せず、資格を持った保育士の割合が認可施設の半分でもよいなど、保育の質の点から問題が指摘されています。東京都の調査では、大多数の保護者が認可施設への入所を望んでいます。
松山政司少子化担当相は、都の調査結果は「承知している」としながら、「多様な保育ニーズに対応した受け皿整備をしていくことが必要」だとして、企業主導型保育を待機児童対策に含めていくと答弁しました。
田村氏は「立ち入り調査が行われた企業主導型施設の7割が、認可外の基準さえ満たしていなかった。保育従事者が1人しかいない施設もあった」と指摘。「認可保育の整備を柱に据えないでどうするのか」と訴えました。
さらに同案は市町村との間に協議会を設置できるとしています。田村氏は「協議会で“自治体独自の上乗せ基準を下げた方が待機児童数が減る”と自治体に国が促すことはないか」と質問。内閣府の担当審議官は「そういうことは想定していない」と述べました。
2018年3月30日(金)しんぶん赤旗より
【3月29日 内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
二十三日の本会議の質疑で、子育て安心プランでは認可保育所という言葉が使われていないということを指摘して、待機児童解消における認可保育所の位置付けについて質問をいたしました。加藤厚労大臣は、子育て安心プランの保育の受皿整備に係る認可保育所や認可外保育施設の位置付けについてとわざわざ言い換えて、子育て安心プランにおける三十二万人の整備目標については、認可保育園、企業主導型、小規模保育事業などの地域型保育事業等により整備を進めると答弁をされました。これは、認可外保育施設である企業主導型保育を認可保育所と同等に待機児童対策に位置付けたということなのでしょうか。
○国務大臣(松山政司君) 子育て安心プランでは保育の質が確保された受皿の整備を進めることが極めて重要であると考えています。このため、子育て安心プランにおける三十二万人の整備目標につきましては、国の基準に基づいて一定の保育の質が確保され、国による公的支援の対象となる認可保育園や企業主導型保育事業などによって整備を進めていくということにしておりますところでございます。
○田村智子君 これは、実際、来年度の十一・五万人分の整備のうち二万人分は企業主導型だという説明も聞いています。まさに待機児童対策の柱になっているんですね。
これまで政府は、認可保育所と認可外施設は明確に区別をしていました。過去の答弁、紹介いたします。
まず、この子ども・子育て支援法ができてからの、すぐのときの田村憲久当時の厚労大臣の答弁なんですが、四十万人規模のかなりのほとんどの部分が、認可保育園若しくは幼保連携型認定こども園というような形になろうというふうに思います、こう答弁しているんです。これは私が、待機児対策の中の一体どれだけが認可保育所なんですかというふうに聞いたら、かなりほとんどの部分がというのが二〇一三年当時の厚労大臣の答弁です。
次に、二〇一六年十月二十一日、塩崎厚労大臣。保育の受皿拡大は、質の確保された認可保育園や小規模保育事業などを中心に行うことが重要でありまして、認可外保育施設の認可保育園等への移行というものも促さなければならない。そして、待機児童解消加速化プランでは、認可保育園等の受皿を大きく増やすということで、今進行中でございますと。ここも認可保育園のことしか言っていないんですよ、待機児童の問題では。
そして、三つ目。これは、企業主導型を法制化したとき、二〇一六年三月三十一日の参議院内閣委員会、加藤大臣の答弁。待機児童解消加速化プランの基本はやはりあくまでも認可保育園等であることは私ども前から御説明しているとおり、認可保育施設の代替施設としてこれ、つまり企業主導型、を考えているわけでは全くない。これが企業主導型のスタートなんですよ。
保育所、認定こども園と同等の位置付けをしているように聞こえますが、そういう位置付けに転換したということなんですか。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
企業主導型保育事業につきましては、認可施設並みの補助基準を設けることで認可施設並みの助成を行ってございます。先ほど大臣、答弁で申し上げましたとおり、子育て安心プランにおける三十二万人の整備目標につきましては、国の基準に基づき一定の保育の質が確保され、国による公的支援の対象となる、こうした基準から企業主導型保育事業についても含まれているものと理解してございます。
○田村智子君 それは違いますよね。元々この企業主導型つくるときに、代替施設にしないと、つまり待機児童対策で認可に代わる施設にはしないという答弁をされていたわけですよ。これ、政策の大転換だと言わなければならないですよ。
本法案が成立したら、子ども・子育て支援法の基本指針も改定して企業主導型の地域枠の定員を児童福祉法二十四条二項の保育確保措置として事業計画に含めることができるようにする、このことも本会議でお認めになりました。本当に、認可の代替手段ではないという立場から全く変わってしまったんですね。
法案では、附則の改定で、保育需要が増大している市町村は、当分の間、保育充実事業を市町村の子ども・子育て支援事業に定めて実施することができるとしています。保育充実事業というのは、認可に移行するためとして認可外施設に財政支援をするという事業が主な柱です。
私たちももちろん認可に移行するための支援は必要だというふうに主張してまいりました。当初はこの認可移行の補助金は期限を五年間としてその間に認可に移行できるようにと施設の改修や保育士の確保を進めるよう求める事業でした。ところが、今はこの上限がありません、期限の上限がない。認可外のままで財政支援を受け続けることが可能なようになってしまったんですよ。
これまでも東京都の認証保育所など地域単独事業、これ認可外ですね、これ基本指針において、当分の間、保育確保措置に含めてよいというふうにされてきましたが、保育充実事業も同じように二十四条二項に定める保育確保措置に含める、このことをお認めになりますか。
○政府参考人(成田裕紀君) お答え申し上げます。
保育の受皿確保に当たっては、一定の保育の質が確保されている認可保育園等を増やしていくことが必要であり、新たな整備のみならず、認可外保育施設の認可保育園等への移行を進めることも重要でございます。このため、子ども・子育て支援法の基本指針では、認可保育園等に加え、公的な支援により一定の期間内に認可保育園や認定こども園への移行が見込まれる認可化移行運営費支援事業や幼稚園の長時間預かり保育運営費支援事業の支援を受ける施設についても保育の受皿として位置付けているところでございます。
○田村智子君 位置付けるんですよ。何か今の答弁も、もう最低基準から一定の質に変わっちゃったんですね、答弁聞いていると。
私たちは認可に移行することが大切だというふうに主張してきたけれど、認可に移行することもになってしまった。つまり、市区町村は、保育の需要に応えるための施設整備に認可外である企業主導型保育と地域単独事業の定員を含めることができるということです。これは矛盾も問題も大変大きいと思います。そもそも認可外保育施設は利用調整の対象ではありません。保護者が自治体に保育所の申込みをするときに希望する保育所って書くんですけれども、そうやって書く対象じゃないんですよ、対象外なんですよ。
本来、認可施設の定員増で行うべき待機児童対策に企業主導型、保育充実事業の定員増、これ含めてしまったら、保育園落ちたという児童が生じることを前提とすることになると思うんですね。それを容認するということでよろしいんですか。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
企業主導型保育事業や保育充実事業につきましては、委員先ほど御指摘のとおり、児童福祉法第二十四条第三項に基づく市町村の利用調整の対象とはなりません。
一方で、各市町村における保育ニーズに対しまして、企業主導型保育事業の地域枠を含め、どのように受皿を整備していくかは地域の実情に応じて各市町村において御判断いただくものと認識してございます。
いずれにいたしましても、企業主導型保育事業は認可施設並みの基準が適用され、多様な働き方にも対応できる施設であることから、待機児童解消の一翼を担うものと考えてございます。
○田村智子君 待機児童の一翼を担うと言いますけれども、それじゃ、落ちちゃったと、そのときに必ず企業主導型とか認可外に入れると、こういうふうにお約束ができるということなんですか。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
繰り返しになりますけれども、各市町村における保育ニーズに対しまして、企業主導型保育事業の地域枠を含め、どのように受皿を整備していくかは地域の実情に応じて各市町村で御判断いただくものと認識してございます。
○田村智子君 これ、自治体は、企業主導型とか認証保育所などの認可外施設、これは保護者に対して情報は提供しますよ。こういうところにありますよと、定員はこれだけですよと、情報は提供しますよ。しかし、それらの施設に出向いていって空きがあるのかどうかを聞いて、一か所一か所入所の申込みをして回るのは保護者なんですよ。そこが認可の施設とそうでない施設の大きな違いなんですよ。
認可施設の定員が足りないから、妊娠中からお母さんたちは認可外の施設へ見学を申込みをして、それで一生懸命大きなおなかを抱えながら、あるいは本当に生まれたばっかりの子供を抱えながら、入所させたいってやる気を見せなければという思いで、無理に無理を重ねて保活をしているんですよ。
この実態をどう考えるのかなんですね。そうやって入れればいいよと言っているのと同じに聞こえるんですけど、もう一度お願いします。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
企業主導型保育事業、少し繰り返しになりますけれども、夜間、休日とか多様な働き方に対応できる施設の整備ができる事業でございますので、そうした意味から待機児童の解消の一翼を担うと、重要な役割を果たしていくものと考えてございます。
○田村智子君 答えになっていないんですね。
この企業主導型は公的資金が入っていると言うけれども、保育料も応能負担ではありません。保護者の申込みが多い場合、施設側が誰と契約するか施設の側が選ぶことになるんですよ。そうすると、保育料を確実に払ってくれそうな世帯とか、オプション保育も認めていますからね、英語教育やったとか、何かリズム体操とかやったとか、そうしたらオプションで料金付加できるわけですよ、認めていますから。そうすると、そういうのも確実に払ってくれそうな、より経済力があるような世帯が選ばれるという、こういう可能性だって否定できないですよ。
認可外施設は、そもそもゼロ歳児、一歳児は七万円とか十万円とか大変な保育料負担になると。保育料が高いからと低所得世帯ほど利用できないという問題が起きてしまうんです。現に、今も母子世帯だって認可に入れないほど認可の定員が少ないんですよ。それなのに、こっちで定員枠をその整備計画の中に入れてもいいよなんてことをやってしまえば、これは保育料に圧迫されて子供に掛けられるお金も圧迫されるような世帯が生まれてしまう、そういうことも認めることになってしまうと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(成田裕紀君) お答え申し上げます。
認可保育園等の利用に当たっては、市区町村が地域の実情に応じた優先順位付けを行っているところ、国として当該順位付けに当たって各世帯の経済状況を考慮することも考えられる旨通知しており、保護者が経済上の理由から保育の利用を諦めることのないよう環境を整えていきたいと考えております。
○田村智子君 もう現実を見ていないんですよね。本当に整備計画は認可でやるということを柱に据えないでどうするのかということなんですね。
今日、資料で東京都のニーズ調査、本会議でも取り上げたものをお配りしました。公立の認可保育所に入りたい、希望したという方が五一・九%。でも利用できなかった、ギャップは三四・九%。私立の認可保育所に入りたい、希望した、三九・三%。それでも入れなかった、一七・九%。突出しているんですよ。中でも公立保育園が希望として突出しているのはなぜか。お庭があって必要な施設が整っていて、ベテランの方も含め保育士さんがちゃんと配置されていると。
昨日も、新日本婦人の会の皆さん、要請に来られました。いろんな保活の声を届けてくださいました。その中に、保育園を見て回ったお母さんたちの声として、園庭もない狭い空間で子供を遊ばせているところもあって不安になる、公立の保育園を見て、広い園庭や保育室も広さがちゃんと確保されていると、こんなにも差があるのかと驚きましたと、こういう声が幾つもあるんですよ。
一定の質を確保と言っていますが、企業主導型、午前中の質疑にもありました、立入調査四百三十二施設のうち七割が認可外の監査基準を満たしていなかった、認可外の基準も満たしていなかった。どういう項目で是正指導が行われたか、施設名も明らかにして公表されていますので、私も見てみました。
保育計画の整備、乳幼児の入所時の健康診断結果の確認、定期健診の実施という指摘は確かにとても多くて、私、驚いたんですよ。これは、専門性を持った保育じゃなくて子守になっちゃっているところがあるんじゃないのかなということですよ、保育計画もなくやっているということですから。
また、保育従事者の人数不足、これ保育士じゃないんですよ、保育従事者の人数不足ということは、絶対数が足りないということですよ。施設の中には一人しかいなかったと確認されているところもありますよね。それから、うつ伏せ寝をやっている。ブレスチェック、お昼寝しているときに呼吸しているかどうかのチェック、これがやられていない。調理室と保育室の区切りがちゃんとできていない。乳児室と幼児の部屋の区切りができていない。お昼寝のときに子供の間隔がない。
子供の間隔がないってどういうことか。ベビーホテルでかつて、赤ちゃんが寝返りして別の赤ちゃんの口を塞いで死なせちゃった事故が起きているんですよ。だから、お昼寝のときには子供の間隔はちゃんと空けなきゃいけないんですよ。こういう、もういつ事故が起きてもおかしくないと私は戦慄を覚えるような、そういう施設もありました。
子供たちに良質の保育環境を与える、そのための最低基準じゃないんですか。これを満たさなくてよいという認可外保育施設を自治体の保育確保策に充てることは、保護者の要求とも違う、子供の育ちを守るという観点とも違う、そう思いますが、いかがですか。
○国務大臣(松山政司君) 御指摘の東京都が実施をしました子育て世代の都民の保育・子育て支援サービスの利用意向等に関する調査ですが、おっしゃるように、公立の認可保育所には五一・九%、私立の認可保育所三九・三%の利用の希望があって、間違いなく公立の方が多いということは承知をいたしておるところでございますが、その一方で、女性の就業率が上昇し、また働き方も多様化をし、待機児童が解消していない中においては、多様な保育ニーズに対応した受皿整備をしていくことが重要だと考えております。
企業主導型保育につきましては、認可施設並みの基準が適用され、多様な働き方にも対応できる事業であることから確保方策に含めるということにしておるところでございます。保育充実事業の支援を受ける施設につきましては、公的な支援を行う上で、認可保育所等の一定期間内の移行を前提に、移行の前段階から一定の保育の質を求めていることから確保方策に含めることといたしました。
御指摘のように、今後も監査、また調査も厳しく徹底して行いながら取り組んでいきたいと思っておるところでございます。
○田村智子君 皆さんね、使い分けているんですよ。待機児童対策の本来認可でやるべきところに認可外のやつを位置付けながら、そうやって詰めていくと多様化に応えるためだと、そうやってころころ答弁変えるんですよ。
多様化に応えるという点でいえば、午前中、矢田議員が指摘したとおり、そうやって多様化に応えるために事業所内保育所ってやられてきましたよ、つくられてきましたよ、三交代制だとか病院のようなところとかね。ところが、そこに対して雇用保険から入る補助金、これもう打ち切っちゃったじゃないですか、新規の申請を。一方で多様化に応えるために頑張ってきたところの補助金は打ち切る、一方で企業主導型はまさに認可に代わるような施設にする。本当にこれ、ひどいやり方だと言わざるを得ません。
しかも、このやり方進めていけば、隠れ待機児童だと批判されている待機児童数のカウント方法、これ変わらなくなっちゃいますよね、どんなに批判受けても。今のやり方押し通すということを宣言しているようなものですよ。認可に申し込んでも入れない、不承諾となる、保護者はやむなく認可外の保育を自力で何とか確保する。このときの保護者の思いは、自分は保育園落ちたの当事者ですよ。ところが、市区町村は、そもそも基本計画にその認可外を位置付けていて、基本計画の中の定員なんだから市区町村は義務果たしている、問題ない、待機児童じゃない。
こういう待機児童の問題そのままになっちゃうんじゃないんですか。これもちょっと答弁是非求めたいんですけど、いかがですか。
○委員長(榛葉賀津也君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(榛葉賀津也君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(成田裕紀君) お答え申し上げます。
先ほど大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、企業主導型保育施設については待機児童の中から外されております。
○田村智子君 だからもう隠れ待機児童だとずっと言われ続けることになるわけですよ、これでは。
じゃ、次に、もう協議会の質問に入ります。
本法案は、待機児童数が多い地域の都道府県が主導して市町村の待機児対策を話し合うための協議会の設置ができるということを盛り込みました。本会議で松山大臣は、規制改革推進会議の第二次答申で、市区町村が独自に定める人員配置基準等の検証を行うことも協議事項の一つだということは認めました。しかし、協議事項は地域の実情に応じて各協議会において判断されるというふうに答弁をされました。
一方で、内閣府のこの法案の説明資料を見ますと、協議会の主な役割の例示として、都道府県単位での保育の受皿確保、市区町村の整備計画の精査、多様な主体の参入促進などと記載をされています。これ、施行通知などで例示としてこういうことを自治体に示すということになるんでしょうか。
○政府参考人(成田裕紀君) お答え申し上げます。
今お話がありましたとおり、本法案では、保育園等の広域利用の推進等、待機児童解消等の取組について、都道府県が関係市区町村等と協議する場を設置できる旨を盛り込んでおります。
この協議会での協議事項は、地域の実情に応じて各協議会において決定されるものでございますが、都道府県が協議会の設置を検討する上で参考となるよう、今後、協議事項として考えられる事例について地方公共団体に通知等でお示しすることを予定しております。
○田村智子君 お示しするわけですね。
この多様な主体の参入というのは、企業主導型が念頭に入っているのは当然のことだというふうに思います。そうすると、そういうことを基本計画の中にも入れていってねというふうにやっていくわけですよね。
それから、関係省庁の参加についても、本会議では関係府省から参加を求めることは想定しておりませんとの答弁でしたが、規制改革会議答申に必要に応じて関係省庁が参加とされていて、内閣府の法案説明資料にも同じ記述があります。必要に応じて関係省庁が参加をすると。
自治体に対して施行通知などで、協議会には必要があるなら関係省庁が参加できるし、要請があれば対応する、こういうことも記載をすることになるんでしょうか。
○政府参考人(成田裕紀君) お答え申し上げます。
協議会では、都道府県と協議会で講じる施策の対象となる市区町村が必ず参加することとした上で、それ以外の構成員につきましては都道府県において判断されるものでございます。協議事項によっては多様な視点を踏まえて協議することが重要であることから、内閣府令において、保育事業者や学識経験者などを任意の構成員の例としてお示しする予定でございます。
○田村智子君 参加を求められた関係省庁が、自治体独自の上乗せ基準を下げた方が待機児童数は減りますよと促すということはあり得るでしょうか。
○政府参考人(成田裕紀君) 規制改革会議の第二次答申では、協議会において市区町村が独自に定める人員配置基準等の検証を行うことも協議事項の一つとして盛り込まれておりますが、協議会での具体的な協議事項は地域の実情に応じて各協議会において判断いただくものと考えております。
○田村智子君 そうすると、関係府省の方から上乗せ基準を持ち出すようなことはしないということでよろしいですね。
○政府参考人(成田裕紀君) そういうことは想定しておりません。
○田村智子君 それ、約束してください。
というのは、午前中にもありました、二〇一六年に自治体の上乗せ基準の引下げを促す通知、「「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について」の対応方針について」というものを、厚労省雇用均等・児童家庭局長通知、これ出されているわけですよ。午前中の質疑でもうお答えがあったのでいいです。どの程度の自治体が応えたかというふうにお聞きをしたら、応えた自治体はありませんと、それによって引下げを行った自治体はありませんという答弁だったわけで。
そうすると、私たちが危惧しているのは、結局、通知を出しても自治体の側は上乗せ基準を引き下げないと。だったら、協議会つくって、周りの市町村の力も使って、また関係府省も乗り込んでいって通知ではできなかったことをやるという方向に圧力が働くんじゃないだろうかと、こういうことを危惧してしまうわけですよ。厚生労働省は明確に上乗せ基準の引下げを自治体に求めたという経過があるわけです。協議会の協議事項で自治体の上乗せ基準の引下げを求めることも否定をしない。
協議会の議論は各自治体と協議で判断すると言いながら、結局、質の引下げ、保護者の望む認可保育所の増設ではなく、企業主導型等の多様な保育所の増設、これを促していく協議会ということにならないかと非常に危惧するわけですが、松山大臣、そうはならないとお約束できるでしょうか。
○国務大臣(松山政司君) いずれにしましても、これまでに厚労省から答弁しているとおりに、協議会での協議事項は地域の実情に応じて各協議会においてお決めいただくものと思っております。
この協議会は、都道府県を中心に広域的に待機児童対策に取り組むことを促すことを意図しておりまして、都道府県が待機児童の解消に積極的に参画できる環境が整備をされ、市区町村の取組への支援がより実効的なものになることを期待をしているところでございます。
○田村智子君 上乗せ基準というのは、本当に最低基準がひど過ぎるから自治体が保育の質を確保するためにやっていることですから、これが協議会の場で圧力によって引き下げられるようなことがあってはならないということは改めて強く申し上げておきます。
この保護者の願いである認可保育所の増設、これ進めるために一番の障害となっていると言ってもいいのが、やはり今のこの保育士の配置基準も含めた公定価格の水準、配置基準、これが悪過ぎるということなんですよ。これがもっとちゃんとして、国がお金もちゃんと出していれば、もっと認可保育所増やせることできるはずですし、その認可外が認可に移行するということももっとできるはずだと私は思います。
今日、資料の二枚目からは、昨年度行われた経済実態調査の結果です。これは、幼稚園、保育所、認定こども園等の経営実態調査というものです。これ、二枚目のところに給与月額のことが書いてあるんですけれども、例えば私立保育所の常勤保育士の給与、ボーナスを加味した額で、これボーナスを加味した額で月額二十六万二千百五十八円、処遇改善加算などもろもろの人件費の加算を含んで支給されているのがこの額なんです。一方、運営費で算定している保育士の給与は、月額にすると本来三十一・六万円のはずなんですね。これ、処遇改善等々の加算を含まなくとも三十一万六千円になるはずなんですよ。非常に大きな違いがあります。これは公定価格での配置基準と保育が実際に行うために必要な人員とが乖離している、そのことによるものだと思いますが、松山大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(松山政司君) 保育士の給与の額につきましては、経営実態調査の結果と公定価格で算定している額との間に差があることは承知いたしております。
この差につきましては、委員御指摘の保育所において公定価格で算定している人数以上の保育士を配置していることも含めて様々な要因があるものと考えております。このため、現状を改善すべく、児童二十人に対し一人とされている三歳児に対する保育士の人員配置については、平成二十七年度から十五人に対し一人を配置した場合に必要な人件費を加算をしております。一歳児や四歳児に関する更なる人員配置の改善については、いわゆる〇・三兆円メニューの項目に位置付けられていますので、保育士をより手厚く配置することができるよう、各年度の予算編成過程においてその財源の確保に力を尽くしてまいりたいと思います。
○田村智子君 もうこの問題、何度も委員会で指摘しているんですけれどもね。
資料の三枚目、一番最後のページ、職員配置の状況を見ますと、私立保育所では公定価格での配置基準が十二・三人、一方で実際の配置状況は常勤換算で、これ非常勤を含めて十六・一人というふうになるわけですよ。常勤換算で公定価格の二割以上多く配置している、これが保育所の実態です。これでは国が保育単価で算定している人件費を支給できなくなるのは無理もないことなんですね。
これ、ちょっとお聞きしたいんですけれども、非常勤の算定単価、これはどうなっているんでしょうか。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
平成二十九年度の公定価格上の非常勤保育士の給与日額を機械的に計算すれば、非常勤保育士の平均勤続年数六・七年、これに相当する処遇改善加算Ⅰ、改善基礎分及び賃金改善要件分でございますが、これを加算した場合の額でおおむね六千八百円となってございます。
このほか、非常勤保育士につきましては、今年度から実施している技能、経験に応じた処遇改善の対象として加算を受けることも可能となってございます。
○田村智子君 これは、保育所にはこれずっと、開所時間中、非常勤の職員ってずっといるでしょう。これ、例えば一日八時間労働として、この六千八百円を割ってみますと時給八百五十円なんですよ。そうすると、東京始め待機児童が多い都市部の最低賃金を下回ることになってしまうんです。最低賃金さえ保障されないような単価の算定、これでは、最賃守るために常勤職員の人件費、そのほかの事業費などからも出さざるを得ない。
内閣府は無責任に全体の公定価格の中から支出をすればよいというふうに言いますけれども、非常勤職員の単価が低く抑えられている、これも、常勤職員などの給与がそのことによって引き下げられる、そこから、そういう理由の一つになっていると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
まず、公定価格でございますけれども、公定価格は、保育所等を運営するために必要な標準的な人件費、管理費等を合算し、年齢区分、定員区分等に応じて児童一人当たりの月額単価として設定してございます。
実際の施設運営では、職員の配置等は様々であることから、人件費等は個々の施設の状況に応じて使用されるものと認識してございます。
○田村智子君 その公定価格が実態から乖離しているということは皆さんももう分かっているわけでしょう。だったら実態に合わせて公定価格見直さなかったら、これは保育士の給与、処遇の改善なんかにならないわけですよ、一生懸命加算付けたって。人員配置が実態に合わないんだから。その見直しをやらないで待機児童の解決にはならないということも、これ重ねて強調しておきます。
その上、これも午前中議論になりましたし、自民党の方、公明党の方も質問をされた処遇改善加算の月額四万円、処遇改善加算Ⅱ、これ本当に現場に様々な混乱をもたらしましたよね。おおむね七年以上の保育士について月額四万円を必ず引き上げなければならない、まあ一定数ですね、保育所の規模によって二人とか三人とか、必ず引き上げなさいと。じゃ、こういうふうにして実際四万円出しますよという政策を取った。では、処遇改善Ⅱを申請しないという保育所、これ決して少なくなかったというふうに聞いているんですけれども、その数はどうなっていますか。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
処遇改善等加算Ⅱの認定状況でございますけれども、都道府県等に調査したところ、今年度末までに加算申請が認定又は認定見込みとなる施設を有する市区町村は九二%ということでございました。
この加算を取得した正確な施設数等につきましては、改めて来年度に調査してまいります。
○田村智子君 あのね、市区町村調べたって駄目ですよ。その市区町村の中に一か所でも申請したところがあったら、申請したになるじゃないですか。それでも申請していない自治体があるということだから驚きなんですけどね。
これ隠しちゃ駄目ですよ。取っているでしょう、おおむねの数、事業所ベースでどれだけ事業所が申請しなかったのか。これ説明しなかったら隠蔽になりますよ。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
先ほど申し上げました調査を行う中で、幾つかの都道府県に聞き取りを行いました。その聞き取りを行ったところ、不確定ではございますが、おおむね六割から七割程度ではないかという回答を得てございます。
いずれにしましても、この加算を取得した正確な施設数等につきましては、改めて来年度に調査してまいります。
○田村智子君 最初からそうお答えいただけばいいんですよ。つまり、四万円も保育士の給料を上乗せしますよといいながら、三割から四割の施設が申請していないということなんですよ。これ、どういうことかということですよね。
私も、ある経営者の方にお聞きしたら、そもそも自分のところはベテランも多いと。で、独自に年を重ねるごとにちゃんと給料が上がるシステムをもうつくっていると、給与体系を。そこにいきなり一部の人だけ四万円というふうに言われても、これ全部の給与体系を見直さなきゃいけないと。そんなこととてもできないよ、これで申請できないとか、ある施設は、仕方がないから全部四万円上げたとかね。これ相当な持ち出しで、潰れちゃうんじゃないかと心配になったりとか、ある施設は、もう仕方がないから、一年ごとにこの人にする、この人にすると変えていくと。これやったら、月四万ですから、年収すごく変わっちゃうんですよ、その四万円もらえる年とそうでない年で。税金も保険料も全然変わっちゃうんですよ。それだけの大混乱になっちゃうわけですよね。
こういう実態を松山大臣はどうお考えになりますか。
○国務大臣(松山政司君) 御指摘ありますように、申請をしていただけない施設も現状あるということは、率直に申し上げまして大変残念でございますし、承知をしておるところでございます。
また、申請をしていただけない理由として、この加算の使い勝手、御指摘のように、現場から様々な御意見が寄せられておることも承知しておりますし、私自身も耳にしてまいりました。そのため、各保育園が職員の処遇改善に当たって様々な実情に合った方法が取れるように、来年度から見直すということにさせていただきました。
○田村智子君 その見直しもまた是非取り上げたいと思うんですけれども、今後。また混乱を生んでいるということもお聞きをしています。介護は丸めて渡すことにしたんですよ、細かいこと言わないで。何で保育はそういうことやらないのか。安倍総理が、保育士の給料上げましたと、四万円上げましたと、その宣伝のためだとしたら、こんな行政のゆがみはないですよ。現場の声に応えた人件費の改善ということをやっていかなきゃいけない、処遇の改善ということをやっていかなきゃいけないです。
それから、副主任、分野別リーダーは研修が義務付けられます、この加算受けるために。副主任に充てるべき改善財源を他の経験ある職員に回すこともできますが、回した場合は、全て副主任などと同等の研修が義務付けられると。これ、現場が実態に合わせて処遇改善をしようとすると更に研修の負担が増してしまうと。多忙で人員不足に悩んでいる現場には更に重い負担になってしまうという声も聞いています。しかも、研修の代替要員については、これももう議論がありました、人件費や交通費については施設の持ち出しになってしまう。研修費用で出すことができるというふうに厚労省はおっしゃっていますけれども、代替要員の人件費どころか交通費さえも負担しているというところは実際に少なくありません。
こういう研修事業が二重、三重に現場に混乱をもたらしているという認識はありますか。
○政府参考人(成田裕紀君) お答え申し上げます。
保育士の専門性の向上を図るため、平成二十九年度に乳児保育や幼児保育、障害児保育といった職務分野に対応した研修の体系化を行い、キャリアアップのための研修制度を創設したところでございます。研修の受講機会を確保するため、平成二十九年度予算では、保育園等の運営費において、研修を受講する際の代替職員の配置に要する費用について保育士等一人当たり年間二日分から年間三日分に拡充を行ったところでございます。
研修に参加する際の費用の支援については、研修開催費用を補助する国の補助金を活用することにより受講者に過度な受講料の負担を求めることがないよう今月開催した全国児童福祉主管課長会議において自治体に要請をしており、今後とも機会を捉えて補助金の活用を促してまいりたいと考えております。
○田村智子君 とにかく、現場に混乱をもたらすような、そういう施策は本当にやめてほしいというふうに思うんですね。
松山大臣にもお聞きしたいんですけれども、まず、現場の実態から公定価格を本当に見直してほしいんですよ。もう、今いろんな方々が、保育士さんがどういう時間でどういうふうに働いているのか、休憩時間がどう取れているのか、この人員でどういう過密な労働になっているのかという、そういう調査も、タイムスタディーの調査、これも行い始めています。本来それは内閣府や厚労省がやるべきことだと私は思います。
二〇一三年に東京都が行った保育士調査によると、退職した又は退職を考えているという保育士さん、その理由を聞いてみると、一位は給料が安い、これ六五・一%、しかし、二位は仕事量が多いで五二・二%、三位が労働時間が長い、三七・三%。これは、公定価格の実態に見合った見直しとともに、やっぱり一人当たりの、保育士さんが見ている一人当たりの子供の数、こういう最低基準、こういう見直しも本気になってやっていかなければ待機児童の解決にはなっていかない、そこの大道を外して、多様な保育だとか認可外をこそくにも定員の中に入れて計画立てさせるとか、そんなことやっていたら待機児童の問題は解決しないですよ。ちゃんと公定価格の見直し、最低基準の見直し、ここに着手していくべきだと思いますが、最後に松山大臣にお聞きします。
○国務大臣(松山政司君) 御指摘のように、様々の現場の声、私もお聞きしているところでございます。また、保育士の方々が退職する理由につきまして、平成二十六年の東京都のアンケート結果によれば、結婚、妊娠、出産、あるいは給与が安いといったもののほかに、仕事量が多い、あるいは労働時間が長いといった理由も挙げられております。
そのため、保育士の方々に長く仕事を続けていただくためには、やっぱり賃金などの処遇改善、ほかに業務負担の軽減などの課題があるというふうに考えております。この配置基準の見直しにつきましても、保育の質の向上を図るために、三歳児の保育士の配置、二十対一から十五対一に改善する公定価格における加算は設けております。一歳児や四歳児の配置基準の改善についても、安定財源を確保すべく努力をしてまいります。
また、処遇改善でございますけれども、平成二十五年度以降、月額三万五千円の処遇改善、また四万円の処遇改善を実施しておるところでございますし、来年度から更に一%の賃金引上げも行うことといたしております。
業務の負担軽減、また、厚労省を中心に保育補助者の追加配置に対する支援の拡充、あるいは事務のICT化などに総合的に取り組んでまいります。
高い使命感、希望を持って保育士という職を選んだ方々にしっかり長く勤めていただけるように、厚労省と連携をさせていただいて、私もしっかり取り組まさせていただきます。
○田村智子君 保護者と保育現場の要求を直視して、そこに応える施策を進めてください。このことを申し上げて、質問を終わります。