日本共産党の田村智子議員は23日、参院本会議で子ども子育て支援法改定案について質問しました。同改定案は、森友学園との国有地取引に関する財務省の改ざん問題で6野党が委員会審議、本会議を欠席するなか、自民・公明の与党と維新だけで衆院審議・採決を強行してきたもの。田村氏は「前代未聞の暴挙であり、国会の歴史に汚点を残すものだ」と厳しく批判しました。
そのうえで、田村氏は、同改定案が「待機児童解消」を名目に「企業主導型保育」の拡大などを進めようとしている点を指摘。企業主導型保育施設の7割が定められた指導・監督基準を満たしていないという実態を示し、「安心して子どもを預けられる認可保育所をつくってほしいという(保護者の)願いに正面から応えることなしに、待機児童問題の解決はない」と訴えました。
また、田村氏は「待機児童を解消するうえで、最大の問題は保育士の確保だと政府も認めている」として、保育士の処遇改善、配置基準の改善を主張。保育の公的責任を明確にして予算と施策を抜本的に充実させるよう求めました。
内閣府の松山政司・少子化対策担当相は、企業主導型保育について「企業の特徴を活用してもらい、待機児童対策の重要な役割を果たしていく」などと推進する姿勢を示しました。
2018年3月24日(土)しんぶん赤旗より
【3月23日 参議院本会議議事録】
○議長(伊達忠一君) 田村智子君。
〔田村智子君登壇、拍手〕
○田村智子君 日本共産党を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案について質問いたします。
まず、本法案が、極めて異常な状況で本院に送付されたことを指摘しなければなりません。三月二日に発覚した森友学園との国有地取引に関する財務省の決裁文書改ざんは、国民の共有財産である公文書を毀損し民主主義の根幹を掘り崩す重大事件です。国会の資料要求に対して政府が改ざん文書を提出したことは、国政調査権をじゅうりんし、国会と行政府の信頼関係を破壊するものにほかなりません。
行政府が立法府を欺いていたことを不問にして、どうして政府提出法案の審議ができるでしょうか。六野党は、国会が最優先すべきは真相究明だとして、改ざん前の決裁文書の提出と佐川前理財局長らの証人喚問を求め、与党側の回答を迫りました。ところが、そのさなか、三月九日、自民、公明両党は、六野党欠席のまま、衆議院本会議での本法案趣旨説明を強行し、さらに内閣委員会の審議、本会議採決まで、与党と維新の会だけで推し進めたのです。これは前代未聞の暴挙であり、国会の歴史に重大な汚点を残すものと言わなければなりません。このことを厳しく指摘した上で、法案について質問いたします。
本法案は、待機児童の解消のため、子育て安心プランに基づく三十二万人分の保育の受皿整備を二年前倒しするためのものだと説明されました。待機児童の解消は切実な要求であり、保育施設の整備計画を前倒しすることは当然です。問題は、保護者の要求に応える計画として進められるかどうかです。
三月十八日付け東京新聞は、認可保育施設への入所を申し込んだが入れない子供が、一都三県三十五市区で申込者の約三割であることを報じました。今この瞬間にも、子供をどうしたらよいのか、仕事を辞めるか、育児休業を延ばさなければならないのかと悩み苦しんでいる保護者が多数いるのです。認可施設を希望しても入れない、この事態を打開するには、認可保育所を中心に施設整備を思い切って進めるしかありません。
ところが、子育て安心プランには、認可保育所という言葉もありません。これはなぜでしょうか。これまで、自民党政権の下でも、待機児童解消の柱は認可保育所整備であるとされてきました。子育て安心プランに認可保育所を中心とする認可施設の整備目標はどう位置付けられているのか、加藤大臣、お答えください。
今年一月に公表された東京都保育ニーズ実態調査では、複数回答で回答した保護者の五二%が公立認可保育所を希望、私立認可保育所が三九%となっています。認証保育所一六%、小規模保育事業四%、事業所内・企業主導型保育事業三%と比して、保護者のニーズは明らかです。
ところが、政府は、子ども・子育て支援法の基本指針で、認証保育園など地方単独事業による認可外保育施設を保育の確保策として認めるなど、なし崩し的に規制緩和を進め、さらに本法案で、認可外施設である企業主導型保育を拡大するために、事業主拠出金の上限割合を引き上げようとしています。
企業主導型保育は、国の補助がありながら保育士の配置は二分の一でよいとされるなど、株式会社が利益目的で参入しやすく、保育の質の確保に大きな懸念があります。実際に、昨年行われた立入り監査では、七割が定められた指導監督基準を満たしていないという結果が報告されています。
松山大臣、企業主導型は既に当初の目標であった七万人分の整備がなされています。あとどれだけの定員を確保する計画なのですか。また、制度の開始から二年で、七割が指導監督基準を満たしていないという実態をどう受け止めますか。
企業主導型保育事業は、事業所内保育事業を規制緩和し、複数の企業が自社の従業員のための保育サービスを提供する事業ですが、定員の五割以内であれば地域の子供の受入れを可能としています。
本法案の成立と同時に、この地域枠を市町村の保育確保の方策として認めるという基本指針の改正を予定しているのではありませんか。企業主導型は、市町村が整備する仕組みはなく、指導監督権限も市町村にはありません。にもかかわらず、政府が保育の需要に応える方策として認めることは、市町村の保育実施義務や保育確保の責務を大きく後退させるものではありませんか。松山大臣の答弁を求めます。
東京都のニーズ調査にも明らかなように、保護者が求めているのは、基準を満たした子供を安心して預けられる認可保育所です。この要求を直視せず、より安上がりで基準の緩い保育の受皿を次々と拡大してきたことが待機児童の解消を困難にしているという認識はないのでしょうか。
一月十八日、今年も、赤ちゃんを抱えたお母さん、お父さんが、希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会として、国会議員に保活の経験を語ってくれました。妊娠中、出産直後、大変な思いをして幾つもの保育施設を回るのはなぜか。認可に入れなかった場合、自分で認可外の保育施設を見付けなければならないからです。また、施設によって余りにも保育環境、条件に差があるからです。
自分の住む町に安心して子供を預けられる認可保育所をつくってほしい、この願いに正面から応えることなしに、待機児童問題の解決はありません。それでもまだ認可外保育を保育の受皿の柱の一つとするのですか。それでは、これまでの待機児童対策の誤りをまた繰り返すのではありませんか。松山大臣及び加藤大臣の答弁を求めます。
待機児童を解消する上で最大の問題は保育士の確保だと政府も認めています。ならば、なぜ来年度予算で僅か一・一%の処遇改善なのか、松山大臣、お答えください。
また、休憩時間も取れない、過重労働から辞めていく保育士が後を絶たない、この現状を変えるには保育士配置基準の改善が不可欠だという切実な声を加藤大臣はどう受け止めますか。配置基準の見直しに今こそ踏み出すべきではありませんか。
本法案は、待機児童が多い地域の都道府県が主導して、市町村の待機児童対策を話し合うための協議会の設置を盛り込みましたが、これは規制改革会議第二次答申を受けてのものではありませんか。この答申では、市区町村独自の上乗せ基準の緩和の検証や保育への多様な主体の参入を促すために協議会の設置を求めており、東京都の小池都知事は、これを歓迎し、活用することを明言しています。
国の最低基準よりも保育士配置を厚くする、子供一人当たりの保育室の面積を広くするなどは、子供の成長、発達を重視する市町村の判断として尊重されるべきです。協議会で市町村独自の上乗せ基準の引下げを求めることがあり得るのでしょうか。
内閣府の資料では、協議会は、都道府県、関係市町村のほか、関係府省も必要に応じて参加するとしていますが、関係府省の側が参加させろと都道府県に要請し、上乗せ基準引下げを示唆することはありませんか。以上、松山大臣の答弁を求めます。
待機児童ゼロを最初に掲げたのは小泉内閣でした。それから十数年、公立保育所への直接補助を廃止し、規制緩和や株式会社参入を進め、認可外の受皿を拡大する施策では、結局、待機児童の解消はできませんでした。公立保育所を減らさずに充実させながら民間の認可施設を増やすことこそ求められていたのです。保育の公的責任を明確にし、予算と施策の抜本的な充実を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣松山政司君登壇、拍手〕
○国務大臣(松山政司君) 田村智子議員にお答えいたします。
企業主導型保育事業の整備計画と監査結果についてお尋ねがございました。
企業主導型保育事業につきましては、これまでに七万人分の受皿確保に取り組んできており、平成三十年度は新たに二万人分の受皿を確保することとしております。
企業主導型保育施設につきましては、保育士の比率が高まるほど補助単価が増える仕組みとしており、現に、助成決定をした施設の四分の三以上が保育士比率七五%以上となっております。
しかしながら、今般、上半期に立入調査を行った施設のうち、保育計画の不備などの様々な指摘が七割の施設でございました。これらの施設につきまして、早急な改善が図られるよう、改善報告を求めるとともに、指導を徹底してまいります。
企業主導型保育事業の確保方策における位置付けについてのお尋ねがございました。
企業主導型保育事業の地域枠の定員については、国の基本方針を改正し、市町村が確保すべき整備量に含めることができることとする予定です。
これにより、国が主体となって推進している企業主導型保育事業につきまして、市町村がその設置状況をしっかりと把握をし、市町村子ども・子育て支援事業計画に位置付けることによって、待機児童の解消に資するものと考えております。
待機児童解消に当たっての認可外保育施設の位置付けについてお尋ねがございました。
子育て安心プランによる受皿確保については、国の基準に基づき一定の保育の質が確保され、公的支援の対象となる認可保育所や企業主導型保育事業などで進めることにしています。
企業主導型保育事業については、認可施設並みの補助基準を設けることで、認可施設並みの助成を行っております。また、保育士比率が高まるほど補助単価が増える仕組みとしています。さらに、全ての施設を対象に原則年一回立入調査を行うなど、改善が必要な施設に対してはしっかりと指導を行っているところではございます。
そのために、企業にその特徴を活用いただきながら、待機児童対策に重要な役割を果たしてまいりたいと考えています。
企業主導型保育事業も含めた保育の受皿整備が進むことによって、子供を持つ親にとっては、仕事と子育ての両立が図られ、働き続けたり、また働き始めることが可能となります。また、企業にとっては、子供がいる従業員の離職を防止し、労働力を確保するということが可能となり、より良い人材の維持確保につながることになります。喫緊の課題として、待機児童解消の実現を目指してまいりたいと考えております。
保育士等の処遇改善についてのお尋ねがございました。
保育士等に係る処遇改善については、これまでも取組を進めておりまして、平成二十九年度補正予算及び平成三十年度予算案における賃金引上げ一・一%を含め、平成二十五年度以降、月額約三万五千円の処遇改善を実現しています。
また、今年度からは新たに技能、経験を有する者への月額四万円等の処遇改善を実施したところでありまして、平成三十年度もまずはその着実な実施を図るということにしております。
さらに、これに加えて、更なる処遇改善も必要と考えております。新しい経済政策パッケージにおいても、二〇一九年四月から更に一%の賃金引上げを行うこととしております。これらの取組を通じて着実に保育士の処遇改善を進めてまいります。
協議会での協議事項及び構成員についてのお尋ねがございました。
本法案では、昨年十一月の規制改革推進会議の第二次答申を踏まえて、保育園等の広域利用の推進等待機児童解消等の取組について、都道府県が関係市町村等と協議する場を設置できる旨を盛り込んでいます。
規制改革推進会議の第二次答申では、協議会において、市区町村が独自に定める人員配置基準等の検証を行うことも協議事項の一つと盛り込まれていますが、協議会での具体的な協議事項は、地域の実情に応じて各協議会において判断されるものでございます。
また、協議会の構成員についても、都道府県と協議で講じる施策の対象となる市区町村以外については、各都道府県において判断されるものであって、関係府省から参加を求めることは想定しておりません。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕
○国務大臣(加藤勝信君) 田村議員から二問御質問をいただきました。
子育て安心プランの保育の受皿整備に係る認可保育所や認可外保育施設の位置付けについてお尋ねがありました。
子育て安心プランでは、保育の質が確保された受皿の整備を進めることが重要と考えております。このため、子育て安心プランにおける三十二万人の整備目標については、国の基準に基づき一定の保育の質が確保され、国による公的支援の対象となる認可保育園、企業主導型保育事業、小規模保育事業などの地域型保育事業等により整備を進めてまいります。
保育士の配置基準の見直しについてのお尋ねがございました。
人員配置の充実は、質の高い保育を提供するために重要であります。このため、平成二十七年度から、三歳児に対する保育士の配置を二十対一から十五対一に引き上げた際に運営費の加算を設けるなど、保育園等における人員配置基準の改善に取り組んでいるところでございます。
引き続き、子育て安心プランの下、保育の受皿整備の拡充と保育の質の確保を車の両輪としてしっかりと進めてまいります。(拍手)