参院議院運営委員会は27日、政府が示した国会同意人事をめぐり、人事院の立花宏人事官(再任)の所信を聴取しました。
日本共産党の田村智子議員は、「森友・加計」疑惑をめぐり、公務員の中立性が損なわれている実態が明らかになったと追及。内閣人事局が府省の幹部人事を一元管理し、首相官邸が公務員の人事に関与するしくみが「行政をゆがめている」として、経団連時代から幹部人事の一元管理を主張し、公務員制度改革の設計にも関わった立花氏の認識をただしました。
立花氏は「ご批判は分かる」と認めながらも、「選挙でマジョリティー(多数)をとった政党が内閣を組織し、公約で掲げた政策をもって、金・マンパワー(人的資源)等を投入し、政策の実現に努める。その結果は国民が次の選挙で判断する」などと答弁。公務員人事への官邸の口出しを擁護しました。
田村氏は、この間の人事院勧告で公務員の退職金の大幅引き下げや、配偶者手当の削減が行われたことも指摘。「人事院は、公務員の労働基本権制約の代償機関という役割を果たしていない」と批判しました。
公務員は「争議行為の禁止」など労働基本権の一部を制限されており、代償措置として人事院が給与勧告などを行います。立花氏は、民間給与との格差を正すものだとして、是正する姿勢を見せませんでした。
2018年2月28日(水)しんぶん赤旗より
【2月27日議院運営委員会 議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
この間の人事院勧告については、国家公務員の労働組合から、民間準拠を理由として、例えば退職金が在職中の給与の後払いという性格があることが考慮されずに大幅に引き下げられていく、あるいは公務の特殊性が考慮されないままに地域間格差を拡大するような勧告が出されるという厳しい批判が示されてきました。また、配偶者手当の削減、課長職以上の廃止については、これは民間準拠でさえなく、逆に民間への波及効果ということまで言われて行われてきたわけですね。
これでは労働基本権制約の代償機関という役割が果たされていないのではないかと私は大変危惧をしていますが、この点について立花参考人の見解をお聞きいたします。
○参考人(立花宏君) 田村先生の御批判、承りました。
私は、もう人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償機関という、そういった人事院の二つある大きなレーゾンデートルの一つ、大きな柱でございますけれども、全体として、労働基本権制約ということで、民間との給与の格差を全体として出した上でそれをどう配分するかという配分の問題があるわけですけれども、この配分の問題につきましては、大きくは、私は公務員の給与制度は、全国一本の基本給といいましょうか、職務給といいましょうか、これの下で必要に応じて地域の状況に応じて手当を出すということも国公法上認められておりますし、それから、配偶者手当の問題は民間準拠ではないんではないかという御指摘もございました。
確かにそういった御指摘も一部にはあると存じますけれども、一方では、冒頭、先ほどの御質問の中でも触れましたけれども、女性が全体の七割の方が職を持って働いていると、自立しながら苦労しながら働いておられるというような状況を見ますと、かつてのような男女の役割分担という状況から大きく変わってきていると。そういう状況を見ますと、まだまだその辺は民間の大勢ということに確かになっておりませんけれども、女性の働きが一般化してきているというような状況。あるいは、子供を、むしろ育児の方をもっと社会全体として手厚く考えるべきではないかと、そういった御意見もございましたので、その辺を踏まえて、また民間の状況等も方向性もにらみながら配偶者手当を一部減らし、またその分その浮いた財源でもって子供に対する手当を厚くしたということで、大きな社会の経済環境の変化に対応したものというふうに、そんな感じでおります。
○田村智子君 次のことでお聞きしたいんですけれども、森友学園、加計学園の問題で、今、中立公正な公務の運用が損なわれたのではないのかという疑念が、これ全く払拭をされていないわけです。
森友学園の問題でいえば、国有地の八億円値引きでの売却について十分な根拠が確認できないとの会計検査院から指摘がなされたことは極めて重大だと思います。決算の報告と会計検査は憲法九十条によるものであるにもかかわらず、決算報告の前に国有地売却に関わる書類を廃棄し、現存する資料も会計検査の際に提出がされなかった。その責任が直接問われる理財局長が国税庁長官に任命されたと。これに対して国民的な反感と怒りが起こるのは当然のことだというふうに私も思います。総理や財務大臣は、適材適所だという答弁を繰り返していますが、その根拠も何も説明されないわけです。
政府から独立した人事官として、中立公正な公務、それを保障する人事、この観点から、こうした事態についての見解をお聞かせください。
○参考人(立花宏君) その田村先生の御指摘は、本当に制度の基本に関わる問題であろうというふうに私も認識しております。
やはり今、人事行政の、国民全体の奉仕者として公務員が仕事をやっていくに当たっていかにしてその公正さを確保するかということは、制度の基本であろうかと思います。そのために、人事院も、行政の中立性を確保する大きな役割の一つとして、公務員の人事管理の公正さ、中立性をいかにして確保するかということが柱になっているわけでございまして、この場合、公務員の人事の中立公正性の確保という観点から、採用から登用、昇進、退職に至るまで人事院の役割があるわけでございますけれども、人事院といたしましても、公正さの確保という点については、先般の国家公務員法の改正の中で幹部公務員の一元管理という仕組みが導入されたわけでございまして、この枠の中で、幹部人事の適格性審査とかあるいは候補者名簿の作成と、こういった段階において公正さが保たれるようにということで、こういった関連の政令を作成する場合にはあらかじめ人事院の意見を十分に聞くということで担保されるというふうに考えております。
○田村智子君 それが担保されていない実態が今明らかになってきているというふうに思うんですね。
それで、立花参考人は、人事官となる前に、今お話のあった一元管理を主張されて公務員改革制度のその制度設計にも関わってこられました。今、国家公務員の労働組合や、あるいは文部科学省の事務次官だった前川喜平氏から、その一元管理の仕組み、具体に言えば、二〇一四年に内閣人事局が設置をされて官房長官による幹部候補の適格性審査が行われることとなったと、この仕組み自体が行政をゆがめるシステムになっているんじゃないかということが具体的に今告発が続いているわけですよね。前川氏からは、課長職のポストにまで官邸から、官房長官から意見が来るようなそういう事態が起きているんだということまで各地で講演の中で指摘もされているわけですよ。
そうすると、この内閣の下、官邸の下での一元管理、官房長官の下での一元管理、このシステム自体がやはり実態としてこうした行政のゆがみを生んでいると、このことについて参考人がどういう御意見をお持ちかをお聞かせください。
○参考人(立花宏君) これも本当に先生の御指摘、私もよく理解できるわけですが、ただ、この制度の入る前は一体どういう状況、どういう批判があったかということに、思い浮かべる必要があると存じますけれども、国民の方からは、政権交代が頻繁に繰り返されたという御批判も背景にあるのかもしれませんが、果たして、国民が選んだ政治家が物事を決めているのではなくて、官僚内閣制で官僚が物事を意思決定をしているのではないかと、そういう批判が、厳しい批判が天下りの問題と同時にあったわけでございまして、こういった言わば、ちょっと言葉が不適切かもしれませんが、官僚内閣制ともいうべきこういった仕組みを変えていくということで、我々の選挙で選ばれた政治家が、そのマジョリティーを取った政党が内閣を組織し、その内閣が公約として掲げた政策を持って、お金、それからマンパワー等々政策資源を導入して政策の実現に努めると、その結果は次の総選挙で国民が批判する、判断すると、そういう仕掛けの下で入れられた制度だということで、その田村先生の御批判は分かりますけれども、一方では、そういった官僚のばっこといいましょうか、官僚内閣制といいましょうか、そういった強い批判があったということも、それに対してどう克服するかということでこの仕組みが導入されたという点も併せて考えておく必要があるのではないかなという感じがいたします。
○田村智子君 時間が来たので終わります。