国会会議録

国会会議録
少子化対策を消費税増税の口実にするな 政治の責任追及し対案 参院本会議 田村副委員長が質問

 

日本共産党の田村智子副委員長は4日の参院本会議で2016年度決算に対する代表質問を行いました。田村氏は、安倍晋三首相が「国難」と位置づける少子化問題について政治の責任を追及。少子化に拍車をかけながら、その責任を棚上げして「消費税10%増税の口実に少子化対策を持ち出すなど言語道断だ」と批判しました。

 

(写真)質問する田村智子副委員長=4日、参院本会議

 田村氏は、雇用政策では、長時間労働を野放しにし、派遣労働など非正規雇用を拡大する規制緩和を進めてきたことを指摘。1日8時間の労働時間原則の徹底、時間外労働は「月45時間以内」とする大臣告示の法定化を主張するとともに、有期雇用労働者の無期雇用契約への転換ルールを守らせ、無期転換を逃れるための雇い止めを許さない姿勢を示すよう求めました。

 教育費負担については、政府が高学費政策をとり続けてきた問題を指摘。大学の学費そのものの値下げ、給付制奨学金の拡充、義務教育の制服代や教材費・給食費などの完全無償化を提案しました。また、政府は待機児童のカウント方法を変えるなど、まともな対策をとってこなかったとして、「(保護者の)需要にこたえる認可保育所の増設を政策の柱にすえるべきだ」と主張しました。

 安倍首相は「2015年の労働者派遣法改正は、非正規雇用を拡大する規制緩和や少子化に拍車をかけるものとは認識していない」などと述べ、政治の責任から目を背ける姿勢に終始しました。

 また、田村氏は、森友学園への国有地売却をめぐって、会計検査院が値引きを過大とする報告を出し、財務省が値引きを提案する音声データも明らかになっていることを指摘。「売却契約は適正ではなかったと認め、なぜこのような契約になったのか、調査を指示すべきだ」と主張しました。

2017年12月5日(火)しんぶん赤旗より

 

【12月5日 本会議 会議録】

○田村智子君 日本共産党を代表して、ただいま議題となりました二〇一六年度決算について質問いたします。

 まず、森友学園への国有地売却問題です。

 会計検査院報告は、八億二千万円もの値引きが過大であったこと、また行政文書が管理されていないため、会計経理の妥当性の検証ができないことなどを指摘しています。近畿財務局が、ごみが地下九メートルまであったことにしようと森友学園と口裏合わせをしていた音声データも財務省は認めました。

 総理、売却契約は適正ではなかったと認め、なぜこのような契約になったのか、調査を指示すべきではありませんか。

 決算が国会に提出される前に会計検査に必要な行政文書を廃棄した財務省の責任は重大です。財務大臣、関わった官僚、また大臣自身の責任を明確にし、対処すべきではありませんか。

 会計検査院報告は、民間人への国有地売却で十年分割支払という特約は、過去五年間、森友学園だけなども指摘しています。なぜ様々な特別扱いが行われたのか、名誉校長を引き受けた安倍昭恵氏がどう関わったのかをいよいよたださなければなりません。安倍昭恵氏、佐川前理財局長らの証人喚問を改めて要求いたします。

 一六年度決算で軍事費は過去最高五兆一千五百億円、安倍政権発足以来、総額も割合も増え続けています。米国製の武器購入、中でも、米国が価格を決定、原則前払、納期は未確定というアメリカ言いなりの契約であるFMSが劇的に増え、四十二機購入予定のF35A戦闘機の総コストは当初見込みの一六%増、二兆二千億円を超えることも明らかになりました。日米首脳会談でトランプ政権は一層の武器購入を求めましたが、唯々諾々と軍事費を膨張させるのか、総理の答弁を求めます。

 沖縄の米軍基地建設の強行も重大です。東村高江へのヘリパッド建設は、昨年、参議院選挙直後に機動隊を大量動員して強行されました。住民の皆さんはオスプレイなどの騒音にさらされ、十月には米軍ヘリが民有地に炎上、墜落する重大事故が発生しました。総理は、このヘリパッド建設を基地負担の軽減だと強弁してきましたが、どこが負担軽減なのでしょうか。

 総選挙でも辺野古新基地建設反対の沖縄の意思が示されました。選挙直後から辺野古埋立ての新たな工事を強行するなど、許し難い暴挙です。工事中止を断固要求するものです。

 次に、国難だという少子化問題について、総理にお聞きします。

 政府が最初の少子化対策となるプランを作成したのは一九九四年ですが、女性が生涯に出産する子供の数、合計特殊出生率で、フランス、イギリスなどが明確に上昇傾向に転じたのに対し、日本では二〇〇五年まで下がり続け、今も顕著な上昇には転じていません。様々な要因があると考えますが、まず雇用政策の問題です。

 仕事と家庭の両立支援、何より長時間労働の規制が必要なことは誰もが認めるところです。ところが、政府は労働時間法制の規制緩和を進め、昼夜を問わないエンドレスの働き方を広げました。

 安倍政権は時間外労働を規制すると言いながら、繁忙期、仕事が忙しい時期には残業を百時間未満まで認めるという、人件費抑制による人手不足で多くの職場が常に繁忙期とも言える状況で、これでは現状容認と言わなければなりません。過労死ラインを超える残業時間をなぜ認めるのですか。本気で仕事と家庭の両立支援をするには、一日八時間を超えてはならないという労働時間の原則を徹底し、現行の大臣告示である月四十五時間以内を時間外労働の上限とすべきではありませんか。

 経済成長のためには雇用の流動化が必要とする政策が与えた影響も直視すべきです。正社員を減らし、派遣労働など非正規雇用を拡大する規制緩和を進めたことで、若者が不安定、低賃金の働き方を余儀なくされ、少子化に拍車を掛けた、総理にこの認識はありますか。

 来年四月一日からは、期限付の雇用契約が通算五年を超えれば、本人の申出により例外なく期限なしの雇用契約に転換されます。ところが、五年目前の雇い止めが大企業や国立大学等の独立行政法人で大量に行われようとしています。今国会での我が党議員の質問に、総理は企業への周知や啓発指導にしっかり取り組むと答弁されました。業務が継続するのに、無期転換を逃れる雇い止めは許されない、希望する労働者は無期雇用にすべきと明言いただきたい。また、国立大学等に対して監督省庁はどのように指導するのか、答弁を求めます。

 教育費負担も少子化の要因とされてきましたが、政府は高学費政策を取り続けました。国立大学の初年度納付金は八〇年度二十六万円、九〇年度は五十四万五千六百円、現在は八十一万七千八百円にもなり、私立大学の高学費にもつながりました。

 総理、高い学費を当然とし、払えないなら奨学金の貸付額を増やすという政策が多くの若者を借金で苦しめていることをどう認識していますか。低所得世帯への進学保障は当然ですが、学費そのものを値下げすることが必要ではありませんか。

 国公私立大学とも授業料を現在の半額へと直ちに値下げを開始する、給付制奨学金を七十万人規模で実施し、貸し付ける場合も全て無利子とする、さらに現在返済している人も利子分を国が負担することを提案しますが、いかがでしょうか。

 あわせて、義務教育の制服代や教材費、給食費などの完全無償化にも踏み出すべきではありませんか。これらの政策は、大企業や富裕層に税金の応分負担を求めることで十分な財源を得られることも指摘しておきます。

 保育所が足りないという問題でも、政府はまともな対策をしてきたとは言えません。待機児童ゼロを最初に掲げた小泉内閣は、待機児童の数え方を変え、認可保育所に入れず、やむなく保育ママや無認可保育を利用する、育児休業を取るなどした場合、待機児童から外してしまいました。我が党は、認可保育所不足を隠すことになると厳しく批判しましたが、聞く耳を持ちませんでした。隠れ待機児童問題への政府の責任を、総理はどう認識されますか。

 多くのお母さん、お父さんは、保育士の配置など、最低基準を満たした認可保育所を求めています。ところが、総理の所信表明演説には、保育の受皿整備と言いながら、認可保育所という言葉はありません。希望しても入れなかった子供を待機児童とし、この需要に応える認可保育所の増設を政策の柱にすべきではありませんか。

 このような政治の責任を棚上げし、消費税率一〇%の口実に少子化対策を持ち出すなど言語道断です。大企業への減税や優遇税制を維持し、庶民増税を行えばどうなるか、一六年度決算で税収等はマイナス一・五%です。主要な税収である所得税、法人税、消費税が全て減収となったのは、リーマン・ショックの影響を受けた二〇〇九年度以来のことです。

 消費税八%の実施以降、実質家計消費は、四十三か月中三十八か月、前年同月比マイナスとなりました。消費の減少が企業の国内売上げを減少させ、それが賃金の抑制につながり、また消費を減少させる、この悪循環が所得税、消費税減収の根底にあるのではありませんか。また、法人税率を引き下げ、大企業優遇税制を拡大したことが、法人税収を空洞化させているのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 暮らしと景気を直撃し、税収構造も悪化させる消費税一〇%への増税中止を求め、質問を終わります。(拍手)

   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 田村智子議員にお答えをいたします。

 森友学園への国有地売却についてお尋ねがありました。

 政府から独立した機関である会計検査院が第三者的立場で検査を行い、今般国会に報告が提出されました。その報告については、真摯に受け止める必要があると思っております。

 先日の参議院予算委員会において財務省から、この報告の内容を重く受け止め、これをしっかり検証した上で、国有財産の管理、処分の手続等について必要な見直しを行っていくことに尽きるという答弁がありました。

 国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たっては、国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。私としても、国有財産の売却について、業務の在り方を見直すことが必要と考えており、関係省庁において今後の対応についてしっかりと検討させてまいります。

 米国製の装備品と今後の防衛関係費についてのお尋ねがありました。

 防衛装備品については、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づいて、米国製を含め計画的に取得しており、また、イージス・アショアを中心として弾道ミサイル防衛能力の抜本的な向上を図っていく考えです。防衛関係費についても、F35A戦闘機など、FMSによる取得経費を含め、中期防衛力整備計画に定める五か年間の経費総額の枠内で計画的に計上しているところです。

 安全保障環境が厳しさを増す中、今後とも防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保していく考えです。

 沖縄の負担軽減についてお尋ねがありました。

 ヘリパッドについては、従前の施設を既存の訓練場の中に移設することにより、北部訓練場四千ヘクタールの返還を実現しました。沖縄の米軍施設の約二割に当たる、本土復帰後、最大の返還です。地元から早期返還の要望を受けていた二十年越しの課題であり、負担軽減に大きく寄与するものと考えています。

 もとより、米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上での大前提です。トランプ大統領訪日の際にも、我が国の立場をしっかりと伝え、安全に対する地元の懸念を軽減する重要性を再確認しました。

 また、ヘリパッドの移設により影響を受ける方々に十分配慮を行うことは当然であり、騒音についても、米側と協力し、更なる軽減に努めてまいります。

 雇用の在り方についてお尋ねがありました。

 働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会へ。こうした社会を実現するために、長時間労働の是正が必要です。

 そのため、労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能となる現行の仕組みを改め、具体的な上限を法定し、違反には罰則を科すこととします。

 具体的には、時間外労働の上限は、月四十五時間かつ年三百六十時間と法律に明記します。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めます。これは実効性があり、かつ、ぎりぎり実現可能な水準として労使が合意に達した内容であり、それに沿って法定するものであります。

 若い世代の結婚、子育ての希望をかなえるためには、安定的な経済的基盤の確保が必要です。非正規雇用を取り巻く雇用環境については、不本意ながら非正規の職に就いている方の割合は前年に比べて低下し続けている。働き盛りの五十五歳未満では、二〇一三年から十九四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っているなど、着実に改善しています。また、正規雇用に就く方はこの二年間で七十九万人増加し、非正規雇用に就く方の増加を上回っています。

 今後も、非正規から正規への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金などを通じ、正社員転換をより一層進めてまいります。また、同一労働同一賃金の実現など、働き方改革に取り組んでまいります。こうした取組を通じ、働き方にかかわらず安心して家庭を持つことができる環境の整備を進めます。

 なお、平成二十七年の労働者派遣法改正は、派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ、均衡待遇措置の強化などを内容とするものであり、非正規雇用を拡大する規制緩和や少子化に拍車を掛けるものとは認識しておりません。

 次に、無期転換ルールについては、それを避ける目的で雇い止めをすることは法の趣旨に照らして望ましいものではないということを申し上げます。このため、無期転換ルールの適切な運用のため、都道府県労働局に特別相談窓口を設置するなど、企業や国立大学法人などへの周知や啓発指導にしっかりと取り組んでまいります。

 また、国立大学法人に対しては、国立大学の学長等を集めた場において無期転換ルールに関する情報提供や制度説明を行ってまいりました。今後とも必要に応じて、重ねての情報提供や制度説明を行ってまいります。

 教育費負担についてのお尋ねがありました。

 どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば、高校、高専にも、専修学校、大学にも行くことができるようにすることが重要です。そのため、政府としては、真に必要な子供たちには高等教育を無償化することとし、授業料の減免措置の拡充と給付型奨学金の支給額の大幅増加を実施することとしています。

 また、無利子奨学金については、本年度から、低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消しました。現在、高等教育の無償化などについては与党においても議論が行われており、政府としては、与党の提言も踏まえ、十二月上旬に新しい経済政策パッケージを取りまとめる予定であります。

 また、義務教育段階における制服代、教材費及び給食費については、家庭の経済状況が厳しい児童生徒に対して就学援助を実施し、これまでもその充実を図ってきたところであります。

 いずれにせよ、教育費負担の軽減については、優先順位を付けて諸施策の充実を図っていくことが重要であり、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。

 待機児童の範囲と保育の受皿整備についてのお尋ねがありました。

 待機児童数については、今年度から、市区村町における運用上のばらつきを是正するため、その調査方法を整理し、育児休業中の方であっても復職の意向が確認できれば、待機児童に含む等の見直しを行いました。

 待機児童解消は安倍内閣の最重要事項の一つです。本年六月に子育て安心プランを策定しましたが、今般、更にこれを前倒しし、二〇二〇年度までに三十二万人分の保育の受皿整備を進めることにしました。

 こうした保育の受皿整備に当たっては、認可保育園を始めとする保育の受皿の拡充と保育の質の確保、向上を車の両輪でしっかりと進めてまいります。

 税収の減少要因等についてお尋ねがありました。

 平成二十八年度の一般会計税収は、前年度比で〇・八兆円下回りましたが、二十七年度に生じた一時的な要因である一兆円弱を除いた実力ベースでは前年度を上回る水準となっており、政権交代以降、税収が増加している基調に変化はありません。

 御指摘の実質消費については、世帯当たりの消費を捉える家計消費で見ると、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっていますが、一国全体の消費を捉えるGDPベースでは、二十八年以降、プラス傾向で推移しています。

 また、法人税改革については、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベース拡大により、財源をしっかり確保しつつ行ってきたところです。

 アベノミクスにより着実に雇用・所得環境の改善は続いており、今後とも更なる経済の好循環の拡大を進めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(麻生太郎君) 田村議員から、国有地売却に関する検査報告書についてお尋ねがあっております。

 本件土地の管理、処分に関係した職員への対応につきましては、検査報告書に記された事実関係を精査した上で、これまでの会計検査院の指摘への対応の例なども踏まえつつ、適切に処理してまいりたいと考えております。

 また、行政文書のより適切な管理のほか、今後の国有財産管理、処分に係る手続の見直しを行うことなどを通じて、財務大臣としての責任を果たしてまいりたいと考えております。(拍手)


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