国会会議録

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個人情報保護に例外 同意ない医療データ化批判 田村智氏
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(写真)質問する田村智子議員=25日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は25日の参院内閣委員会で、患者の病歴や治療などの医療情報を集積して研究開発に利活用する匿名加工医療情報法案について「医療情報の取得、第三者移転は本人同意が原則とした改正個人情報保護法の例外をつくるものだ」と批判しました。

 同法案は、本人が拒否しなければ、特定の個人を識別できる状態で医療情報を第三者の認定匿名加工医療情報事業者に提供できるようにするもの。5月30日の改定個人情報保護法施行前に同法の例外をつくる狙いです。

 田村氏が、改定個人情報保護法に対応して医学研究倫理指針が改定され、日本医学会と日本医師会が連名で歓迎声明を出したと指摘し、なぜ例外を設けるのかとただしたのに対し、石原伸晃経済再生担当相は医療の産業化のために必要だと述べました。

 田村氏は、本人が情報提供を拒否しても、すでに提供されたデータは削除する仕組みがないとして、少なくとも事業者にデータ削除を義務づけるよう要求。石原氏は「難しい」と拒否しました。

2017年4月29日(土) しんぶん赤旗

 

【4月25日 内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 まず、本法案と個人情報保護法の整合性についてお聞きいたします。

 本法案によって、医療機関は、患者さん個人の医療情報をオプトアウト、つまり本人が拒否しない限りは自動的に提供されるという手続で、国が認定した匿名加工事業者に提供可能となります。一方で、個人情報保護法は、二〇一五年に改正され、人種、思想、社会的身分、犯罪歴などに並んで医療情報を要配慮個人情報とし、本人同意なしの取得及び第三者への提供を禁止しました。医療情報は、オプトアウトの手続では取得も提供もできないということです。この改正理由として、要配慮個人情報は、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものだからだと内閣府自身が説明をしてきました。

 改正個人情報保護法は、五月三十日に施行で、石原大臣が所管大臣です。施行直前になぜ要配慮個人情報である医療情報について本人同意という大原則を外そうというのでしょうか。

○国務大臣(石原伸晃君) 今回の法案は、匿名化された医療情報をAI技術などと組み合わせて、医療分野やあるいはヘルスケアの分野等々で研究開発を推進して、医療の質の向上、さらには、その情報によって新たな産業をつくり出すことを通じまして健康長寿社会の実現につなげることを目的としている法律案でございます。そして、これは喫緊の課題であるということは多くの方々が認識をしているところでございます。

 確かに、今、田村委員が御指摘になりましたとおり、平成二十七年の個人情報保護法の改正によりまして、個別の医療機関レベルで医療情報を医療機関側が匿名加工し、これを製薬会社などの第三者に提供することが可能になる、施行は委員の御指摘のとおり五月三十日でございます。しかしながら、医療分野の研究開発というものを推進していく上では、多数の医療機関のデータを適正かつ確実に整備、匿名加工する、すなわち、はやり言葉ではございますが、ビッグデータ化することによって利活用者に提供することがやはり必要である、言葉を言い換えますと、nの数をある程度確保しないことにはなかなか利用する利点がないわけでございます。

 このため、個別の医療機関レベルを超えた、すなわち個人情報保護法の委員御指摘のことを超えた大量の情報の収集、匿名加工を専門に行うことのできる事業者を国が認定するという特別な枠組みを設けるとしたのが今般の法律の内容でございまして、そこはそのように御理解をいただければと思います。

○田村智子君 今のは、本人同意の原則を抜きにしたというのの説明になっていないんですよ。本人同意してやればいいだけの話ですよね。

 医療分野の研究で個人情報をどう扱うか、その指針となっているのが、文科省と厚労省が連名で告示をしている人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、個人情報保護法の改正を受けて、この倫理指針は、文科、厚労、経済産業の三省合同会議で改定についての協議が行われて、今年二月末に改定が告示をされました。その柱の一つが、改正個人情報保護法にのっとって医療情報の取得と提供について本人同意の適切な手続ということを追加した、これが柱なんです。オプトアウトについては、本人同意を受けることが困難な場合と限定した上で、あらかじめ研究目的等を通知又は公開し、研究が実施又は継続されることについて拒否できる機会を保障するとしています。

 この倫理指針の見直しの過程では、医療情報を要配慮情報として規制強化すれば医学研究への影響が出る、こういう懸念は確かにありました。しかし、議論がまとまった段階で医師会、医学会は合同で記者会見を行って、次のように見解を示しているんです。医療、医学の進歩に向けた学問分野での研究が滞ることなく、その研究成果が国民の健康及び福祉の発展に寄与することを改正個人情報保護法が妨げないという方向性が打ち出されました、このことは極めて評価できるものだと。日本医学会の高久会長は、疫学やゲノムの研究などが倫理指針の見直しによって阻害される懸念が出ているが、十分に個人情報を守りながら医学研究を進めるという現在の方向は間違いないと考えていると、こう述べているわけです。

 この倫理指針の内容を法律にして、より厳格に実施を求めるというのならば理解できます。ところが、反対なんですよ。日本医師会や日本医学会の見解さえ顧みずに、本人同意原則に背を向ける、どうしてこういう法案を出す必要があるんでしょうか。

○政府参考人(大島一博君) 倫理指針についてのお尋ねございました。

 倫理指針と対象となるいわゆる学術研究は、例えば、本人の同意を得て患者さんを集めまして、既存の医療にはない新しい手術方法ですとか新薬等の投薬を行いまして、その結果を分析するものと認識しております。

 他方、今回の法案は、個人が識別できないように匿名加工された医療情報の適正な利活用を通じて医療分野の研究開発を促進するものでありまして、言わば既に行われている医療におけるデータを事後的に解析しようとするものです。患者に最適な医療の提供、あるいはより確実な医薬品等の副作用の発見などのためには、こうした患者等の個人から提供された事後的な、統計的な分析を通じた利活用も不可欠と考えています。

 今回の法案は、こうした取組の促進に向けまして、情報セキュリティーや匿名加工技術などについて厳格に審査を受けた認定事業者を認定するという仕組みを新たに創設した上で、認定した後も安全管理措置を義務付けておりまして、例えば、法令違反の疑いがある場合には立入検査や是正命令、それに従わない場合には認定の取消しや、あるいは罰則の規定があります。この罰則の規定は個人情報保護法よりも重い量刑を設定しておりまして、そういったことを通じまして信頼できる匿名加工情報の利活用の枠組みをつくろうとするものであります。

 このように、国の監督、規制を受ける事業者による匿名加工ということを前提とした利活用に限った仕組みでございますので、あらかじめ本人に通知し、本人が拒否しない場合には医療機関は認定事業者に医療情報を提供できるという形にしたものでございます。

○田村智子君 医療機関から出されるのは匿名化なんかされていないですよ。それも本人同意に背を向ける理由には全然なっていないです。

 個人に由来する医療情報を匿名加工して集積しビッグデータにすることが必要だと、だから認定というやり方で匿名加工事業者を規定するんだと、こういう説明なんですね、ぎゅっと縮めると。

 しかし、医療のビッグデータは今も集積されています。百億件余りのレセプト、特定健診情報を収集するナショナルデータベース、四百万件のデータを収集するナショナルクリニカルデータベース、今年度からはDPCデータベースシステムが稼働し、年八百億件のデータが集積される。これらは資料でもお配りしました。厚労省が所管する主な医療データ集積システム、それぞれ私、担当部局に確認をいたしましたが、どこも改正個人情報保護法の規定に従うという、そういう御回答だったわけですね。

 改正個人情報保護法にのっとって政府の監督の下で既にデータ集積は行われていて、これを生かすということを考える、だったら分かります。発展的な運用を検討する、それも分かります。そうではなくて、わざわざ個人情報保護法の例外をつくる本法案でなければできないような医学研究というのがあるんでしょうか。

○政府参考人(大島一博君) 今委員御指摘ございましたように、厚労省が運営するレセプト情報・特定健診等の情報データベース、NDBと呼ばれています、それから外科系の学会が設立しましたNCD……(発言する者あり)はい、分かりました。こういったNDBあるいはNCDといったデータベースございますが、NDBにつきましては、レセプト又は特定健診として定められた項目のみのデータベースでございまして、問診内容ですとか生体検査や画像検査の結果、あるいは治療予後に関する情報は含まれておりません。また、NCDは疾患や診療科が外科に限定されております。

 この法案は、そういったデータ、既存のデータベースには存在しない情報も含めまして情報を収集しようという形でございますので、今までにはなかった研究ができると考えております。

○田村智子君 私の質問は、発展させてそういうこともできるでしょうという質問なんですよ。ごまかしていますよ。

 本人が同意していない研究、本人に目的も知らされない研究、それをデータの売り買いによって進める、これは個人情報保護法の例外つくらなければできないんですよ。究極の個人情報である医療情報の生データをオプトアウトの手続だけで認定匿名加工医療情報作成事業者に提供し、今後、匿名加工された情報は様々な事業者に販売されることになります。製薬企業やヘルス産業の企業に提供された場合には、詳細な研究内容は企業秘密でしょうから公表もされないでしょう。

 究極の個人情報の提供が成果になって社会的に生かされたのか、人類全体の福祉の発展に還元されたかどうかも分からないんじゃないのかというふうに思いますが、大臣、ちょっと短めでお願いします。

○国務大臣(石原伸晃君) ただいまの田村委員と政府委員との御議論を聞かせていただいておりまして、委員はオプトインの方法で今ある制度を拡充していけばそれで十分ではないか、しかし、その一方で、こちらの政府委員側の答弁は、私も先ほど答弁させていただいたように、委員御指摘のとおり質の高い医療情報というものは幅広く存在しているんですけれども、いわゆるアウトカムデータに関する情報の利活用というものは残念ながら進んでおりません。

 さらに、先ほど、n、要するに分母をどれだけ取るかということが重要であるというお話をさせていただいたわけですけれども、個別の医療機関だけでの対応では医療分野の研究開発に資するための大規模な医療情報を利活用することが困難である、ここはある程度、今日の午前中の審議等々を通じてコンセンサスができているのではないかと思っております。ですから、今回の匿名事業という方々を国が設定する仕組みを設けたわけでございます。

 そしてまた、委員の御指摘はオプトアウトだけでは十分じゃないんじゃないかという御指摘でございますが、そこは匿名加工をするということで、一番肝腎な個人の情報とこの匿名加工されたものは突合できないようにやる責任が事業者の側に生じているということで、この大量のデータを使ってこれからのヘルスケアあるいは医療の発展に資する研究に役立てていただきたい、そのためにこういうものを仕込ませていただいたというふうに御理解をいただければと思います。

○田村智子君 既に医療機関を超えて八百億件のDPCデータが集積されるんですよ、今年。聞いていることに本当にお答えいただいていないんですね。

 じゃ、そのオプトアウトで大丈夫なのか、手続についてお聞きします。

 医療機関など医療情報取扱事業者は、本人に、認定匿名加工医療情報作成事業者にあなたの情報を提供しますよ、申出があれば情報提供を中止しますよと、これを通知しさえすれば即医療情報を提供することができるんでしょうか。それとも、一定期間、拒否の申出があるのかどうかを待つことが義務付けられるのか。それらを府省令でルールを示すのかどうか、併せて簡潔に。

○政府参考人(大島一博君) 手続を定める省令におきまして、個人情報保護法令で定めがありますのと同様に、すぐではなくて、本人が提供の停止を求めるのに必要な期間を置く旨を定めることを考えております。

 この期間に関しまして、具体的な必要な期間という言葉でいくのか、具体的な期間を示すかどうかにつきましては、個人情報保護法令では具体的な期間を示されていないということも参考にしつつ、施行までに検討したいと考えます。

○田村智子君 昨日の質問レクでは省令考えていないと言っていたんですけど、一歩前進したのかなというふうに思いますが、しかし、それ期間も示さなければ、例えば一週間とか二週間とか一定期間、じゃ置きましたと、しかし通知なんですよ。通知というのは説明の必要もないんですよ。拒否の申出の必要性が理解できないまま一定の期間が経過するということは大いにあり得ます。通知って、例えば問診票の、書いてもらいましょうと、初診のときに、そのときに一枚ペーパー渡せば通知したということになるわけですからね。

 そうすると、一定期間が経過してから、いろいろ問題考える機会があった、データ流出の事件など見ていたら不安になった、自分の医療情報を提供してほしくない、こういう結論を出す場合もあるでしょう。その場合、これもう既に質問ありましたが、情報提供の拒否を医療情報取扱事業者に申し出たら、既に提供されている、加工業者に提供されているその生データ、これ廃棄する仕組みにはなっていないというふうに思いますが、確認です。

○政府参考人(大島一博君) 法案の規定の中では、既に提供された過去に遡った医療情報の削除を求めるところはございません。

 なお、ただし、認定事業者が本人の希望に応じて任意にこうした削除等の対応を行うことは可能であります。今後、基本方針や認定基準を策定するに当たりまして、こうした運用についてどうすべきか検討はしてまいりたいと考えます。

○田村智子君 これは、匿名加工を行う事業者には個人の名前も入った生データ、保有され続けることになるわけですよ。そこには、遺伝子情報というのは本人同意だという規定があるんですけれども、それだって後から取り戻したいと思う人だっていると思います。そういうのさえ手元に残され続ける、あっちゃならないですよ。

 私、やっぱり本人同意とする、これは再検討すべきだし、また、せめて医療情報の提供を拒否したら提供済みのデータを消去するんだと、これを保証する、これ最低限のルールだと思いますが、大臣いかがですか。

○国務大臣(石原伸晃君) 本人が提供を拒否した場合にはその医療情報を提供しないという仕込みは講じられているというふうに政府委員の方で答弁をさせていただきました。それは、ある意味では本人の関与というものを、関与の機会というものを確保している。しかし、委員の御指摘はそうではなくて、遡って、気が変わったらもう一回元に戻してくれ。それはまた、政府委員の答弁の中でありましたとおり、事業者の側が任意でそれを行うことができる。

 しかし、元々、そもそも論でございますけれども、匿名加工されたデータでございますので、そこまで心配であるということをおっしゃるのであるならば、せめて匿名加工するデータはイコール生データで誰もが使ってしまうといっているふうに思われるように誤解をすることもありますので、そこのところはやはり切り離していただいて、匿名加工されたデータというものと個人がつながらないと。個人がつながらない以上は、気が変わったとしても、誰のデータだか分からないわけでございますので、過去に遡る必要はなく、事業者側の任意、こういうふうに整理をさせていただいたと御理解をいただければと思います。

○田村智子君 匿名加工したのが消去なんて、それはできたらおかしいんですよ、個人が特定できちゃうから。生データが加工事業者に行っちゃうでしょうと、それを消去しろというふうに求めているんですから、これは是非検討して、せめてそこは検討してほしいと思います。

 EUでは来年から新たな法規制が導入されて、医療情報などのセンシティブ情報の取得、第三者提供について本人同意を原則とする、また本人申出に基づきデータを取り戻す、別の事業者に移管させるデータポータビリティーを義務付けました。さらに、EU域外にデータを移転するには、当該国と同等のデータ保護の規制が行われているかどうか、また移転を行う企業に、EU法と同程度のデータ保護を行う、そのことを義務付けるというところまでEUはやっているんですよ。私は、日本はこれ見習うべきだと思いますよ。

 更にお聞きします。

 この法案は、既になし崩し的に進行している医療情報の集積とビジネス利用、これにそれでは歯止めを掛けることができるのかどうか。

 マーケット調査会社富士経済、医療関連業界向けにビッグデータ分析サービスの動向調査を行っています。「二〇一六年 医療ITのシームレス化・クラウド化と医療ビッグデータビジネスの将来展望」、これにまとめられているんですが、この中に主要な参入企業として二社が出てきます。

 日本医療データセンター、保険者である健康保険組合の約百団体、約三百万人分のレセプトデータを個人を識別できない形でデータベース化し、解析、活用できる体制を構築していると。これ、認定も何も受けていないただの民間事業者です。

 もう一つがメディカル・データ・ビジョン。DPC分析ベンチマークシステム、EVEの累計導入数が七百六十八病院となっている。そのうち二百三十病院分、実患者一千二百九十四万人分の二次利用の許諾を得ており、製薬企業向けビジネスとしてデータの利活用サービスを展開していると。

 DPCデータというのは、病名、治療法、投与した医薬品、副作用などなどを統一記号化したもので、これは匿名化データであって個人情報ではないとされているので確かに違法ではないんです。しかし、元々のデータは公的医療保険を財源とする診療情報であり、一企業がビジネス、つまり自らの利益のために活用するというのは倫理的に大きな問題だと思います。

 今回、皆さんは、認定事業者がそういうビッグデータ化するんだ、認定するんだ、認定するんだ、言われています。その認定のルールを作れば、こうやって無原則に広がっている民間企業に対して何らかの規制を行うことができるんですか。

○政府参考人(大島一博君) 今御指摘がありました民間の事業者は、委員御自身も御説明されましたが、あくまで医療機関から情報を得る段階で匿名された形で情報を得ています。今回の法案での仕組みは、医療情報を個人情報のままで認定事業者がいただきまして、それで匿名加工をするということで、事業内容といいますか、事業形態が基本的にその点で異なっていると考えます。

 したがいまして、御指摘のような事業者に対しては、現行の個人情報保護法でも匿名加工基準を当てはめるといった規制は行われておりますので、こういった個情法での対応が基本でありまして、本制度のような新たな規制を導入することにはなっておらないものでございます。

○田村智子君 これ事前にいろいろ厚生労働省に聞きましたら、こういう日本医療データセンターとかメディカル・データ・ビジョンとか、大変なビッグデータ集積やっているよ、ビジネス化既にやっているよということをうちの事務所の方でお話ししたら、厚労省はその実態の把握もやっていなかったんですよ。

 今度、この法案作って、認定だと、厳密な認定だと言っても、そうやって野放しになっている企業を、それじゃ、あなたは認定されていないからといって規制することにもならないわけですよ。何のためにやるのかと言わざるを得ないですね。

 最後に、大臣にお聞きしたいというふうに思います。

 私、冒頭の方で紹介しました倫理指針、これに基づいて医療機関や、あるいは医学研究というのをやられてきたわけですよ。その倫理指針には前文というのがあります。こう書いてあるんです。

 「人を対象とする医学系研究は、医学・健康科学及び医療技術の進展を通じて、国民の健康の保持増進並びに患者の傷病からの回復及び生活の質の向上に大きく貢献し、人類の健康及び福祉の発展に資する重要な基盤である。また、学問の自由の下に、研究者が適正かつ円滑に研究を行うことのできる制度的枠組みの構築が求められる。その一方で、人を対象とする医学系研究は、研究対象者の身体及び精神又は社会に対して大きな影響を与える場合もあり、様々な倫理的、法的又は社会的問題を招く可能性がある。研究対象者の福利は、科学的及び社会的な成果よりも優先されなければならず、また、人間の尊厳及び人権が守られなければならない。」と。

 私は、ビッグデータを経済産業の起爆剤だと、何に利用できるのか、何に利用されるのか分からないままに期待値ばかりをどんどんあおる、そして法律によって倫理を後退させる、こんなことはあってはならないと思いますが、大臣の見解をお聞きします。

○国務大臣(石原伸晃君) 決して倫理を後退させているという意識は私どもにはございません。

 倫理指針もしっかりと認めさせていただいておりますし、これまでの議論の中で、委員の言うところのいわゆる生データ、個人の出生地から、どういう生活環境でどういう既往症がある、そしてどういう薬を適用している云々、あるいは健康診断等々のデータ云々、こういうものが個人を特定できるものであることは事実でございますけれども、それを本制度ではビッグデータ化することによりまして、本人の権利利益を保護するための措置というものを何重にも適切に講じさせていただいておりますが、委員のお話を聞かせていただきますと、どうも業者は信用できねえ、生のデータがすぐ表に出るんじゃないかという御懸念でございますので、今後、基本方針や認定基準を作成していくに当たりまして、これは実際に法律が通りまして、実際に業者が決まりまして、意味のある情報を提供しない限り研究開発には資することにはなりませんので、どのような工夫が可能か、運用上どのような工夫が可能かということについてはしっかりと検討させていただきたい、こんなふうに考えております。

○田村智子君 終わります。


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