日本共産党の田村智子議員は3日の参院決算委員会で国立大学などでの若手研究者らの雇い止め問題を取り上げ、「無期契約へ転換を促していくべきだ」と是正を求めました。
田村氏は、日本の科学研究発表の減少が国際的に指摘される背景には、国立大学などへの運営費交付金の削減があると指摘。「基礎的研究費どころか人件費も足りず多くの国立大学が窮地に追い込まれている」と述べました。
また、退職でポストが空いても補充できず305人の教授職削減を発表した北海道大学の例や、大学や独立法人の若手研究者が急減している実態を紹介。「危機的だ。研究に大きな穴があきかねない」と若手研究者の常勤ポスト増への転換を求めました。
鶴保庸介科学技術担当相は、「ご指摘のような話はたくさん聞いてきた」と述べましたが、運営費交付金の抜本的拡充には背を向けました。
田村氏は、有期契約が5年を超えると無期契約に転換が迫られる改正労働契約法の施行から5年となる2018年を前に、東北大学では教職員3000人を今年度で雇い止めにする宣言が出されていることを示し、「多くの研究機関で職員が今年中に首切りされる危険性がある」と指摘。厚労省に対し、無期契約への転換を避けるために事後的に雇用期間に上限を設けることは「労働契約法違反ではないか」とただしました。同省の山越敬一労働基準局長は、「紛争解決に援助を求められれば、必要な助言・指導に努める」と答えました。
2017年4月4日(火) しんぶん赤旗
【4月3日 決算委員会議事録】
○田村智子君 続いて、日本共産党、田村智子、質問いたします。
今日、学術研究の問題で、研究者の身分の問題に関わって質問したいと思います。
科学誌のネイチャー三月二十三日号、特別企画ネイチャーインデックス二〇一七ジャパンで、日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ十年間で他の科学先進国に後れを取っていると、こういう指摘がされて日本のマスコミでも大きく報道されました。
資料の二枚目、三枚目が内閣府がこの中身のポイントをまとめた参考資料です。どういうことが書かれているか。
高品質な科学論文に占める日本からの論文の割合は、二〇一二年から二〇一六年にかけて六%下落。高品質の自然科学系学術ジャーナルに掲載された日本の著者による論文数は、過去五年間で八・三%減少。二〇〇五年から二〇一五年では、十四分野中十一分野で減少。材料科学及び工学、これ日本が得意とする分野、ここで一〇%以上の減少。日本政府の研究開発支出額は世界でトップクラスであるものの、二〇〇一年以降横ばい。一方で、ドイツ、中国、韓国など他の国々は研究開発への支出を大幅に増やしている。この間に日本政府は大学への支援を削減、大学は長期雇用の職位を減らし、研究者を短期契約で雇用する傾向と。
これらが科学技術力を落としているという指摘なんですけど、科学技術担当大臣、どう受け止めますか。
○国務大臣(鶴保庸介君) 御指摘のとおり、全世界の論文数が増加しておる中で、我が国の論文数のシェアは順位が低下しております。また、国立大学法人の運営費交付金額も近年まで減少傾向ではありました。
ただ、政府としては、こうした状況に懸念を強く持っておりまして、平成二十九年度予算におきましては、国立大学の運営費交付金の対前年度比二十五億円と、僅かではありますけれども下げ止まりをさせていただきまして、また、科学研究費助成事業の対前年度比は十一億円を積み増しさせていただきました。
このほかにも科学技術予算全体の底上げが必要であるという認識の下、昨年十二月に経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会を立ち上げまして、官民投資拡大イニシアティブをつくります。大学等への民間資金や寄附の拡大などの施策を進めさせていただきました。
これらの取組を通じて、科学技術イノベーションの一層の活性化を図りたいと考えております。
○田村智子君 これ、ネイチャー誌でも、予算が抑え込まれた、あるいは削減されたことで、やはり若手の研究者の問題、非常に注目しているんですね。
ネイチャー誌の中で書かれているのは、例えば北海道大学が今後五年間で二百五人の教授職を削減すると発表、同じように三十三国立大学が退職などによって任期の定めのないポストが空いても補充できていないと、こういう指摘をしています。私のところにも、新潟大学で最近、人件費確保のため教員六十人削減、これ発表されて大変な衝撃が広がっているということも寄せられています。
これ、運営費交付金が今や基礎的研究費どころか人件費にも足りなくなっている、多くの国立大学が、あるいは研究施設が窮地に追い込まれているということを示しているんだと思います。
特にこの間、日本政府は競争的資金は拡充してきたんです。しかし、競争的資金というのはプロジェクトですから、そのプロジェクト期間中の雇用ということしか保障されないわけですよ。その中で何が起きているのか。
資料の四枚目になるでしょうか、大学教員の年齢階層の構造、これ文科省の資料ですけれども、三十九歳以下が一九八六年から二〇一三年で一〇%近く落ち込んでいるわけです。他の年齢階層と比べて急激な減少傾向です。また、独立行政法人の研究者数、二〇〇七年から二〇一〇年、人数は全体も若手も増えている。ところが、常勤で任期なしという方が減少していて、中でも三十七歳以下は二千百六十人から一千六百九十八人へと急減しているわけです。
この実態、非常に危機的だと思うんですよ。今後どんどんいわゆる団塊世代以上の方々が退職をしていったときに、研究に大きな穴が空きかねないような事態だと思いますが、その危機感は共有いただけますか。
○国務大臣(鶴保庸介君) 私も、あちこちの研究機関、そしてまた大学等も訪問させていただき、先生が御指摘のようなお話はたくさん伺ってまいりました。
なお、その意味においては、こうしたことについてしっかりとした手だてを打っていかなければならない、先ほど申しました科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブをつくらせていただいたのも、そうした危機感を背景にしておるものであると理解をしていただければと思います。
ただ、若手研究者については、多様な研究経験等を積み重ねて能力の向上を図ることもまたこれ重要なことでありまして、こうしたキャリアパスを明確化するとともに、キャリアの段階に応じて高い能力と意欲を最大限引き出せる環境を整備することを目的にしております。そのため、科学技術イノベーション総合戦略二〇一六に基づいて、テニュアトラック制や卓越研究員制度のように、優れた若手研究者が安定したポストに就きながら独立した自由な研究環境の下で活躍することができる制度の導入を推進しております。
また、シニア研究者については、年俸制の導入や外部資金による任期付雇用への転換など取組を進めることとしており、若手の常勤ポストの拡充を期待をしておるところであります。
○田村智子君 今言ったテニュアトラックが雇用の安定に結び付けるということだったんですけど、今日皆さんのところにお配りされている会計検査院の国立研究開発法人における研究開発の実施状況、これの四十八ページ見ますと、テニュアトラックでどれだけ任期なし、安定的なそういう雇用になったか。これ、二十七年度末で百五人と、二十三年度との増加率は僅か一・九%なんですよ。
これ、基礎的研究経費を削減してきた下ではこういう小手先のことをやっても若手研究者の安定雇用には全く結び付いていない、このことを直視すべきだと思いますし、この間このことがノーベル賞を取ったような方々からずっと言われ続けているんですよ。
同じこの会計検査院の報告の四十四ページ見ますと、例えばここに、研究者の中で任期なしのいわゆる無期雇用の研究者の割合というのも出ているんですね。理化学研究所を見てみますと、研究者の数が二千六十一人、そのうちの八四%がこれ任期のある、つまり有期の雇用になっているということなんですよ。やっぱりこの改善は本当に急がれるというふうに思います。
特に、この問題では、こういう有期雇用の皆さんが実は今年度中に雇い止めに遭ってしまうんじゃないかという、こういう危惧が出てきています。労働契約法が、有期契約五年を超えた場合、本人の申出で無期契約に転換するということを使用者に義務付けています。ただし、研究職の場合は特例で十年というふうにされてはいるんですけれども、研究を支える方というのは、研究者だけではなくて、それを支える職員という方もいらっしゃるんですね。この職員の方の首切りというのが今年中に行われる危険性、非常にあります。東北大学は既に三千人の教職員を今年度で雇い止めするというふうに宣言をしているわけです。
今日は労働基準局長にも来ていただきました。
今年二月、消防試験研究センターが、つまり、これまでは契約に上限設けてこなかったんだけれども、いきなり契約の上限というのを持ち出してきての雇い止め、こういうことをやろうとしたんですね。そのことについて、ある非常勤の職員が東京労働局に申立てをしました。
東京労働局長は、助言、指導で、雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり、労働契約法十九条第二号に該当する可能性が高く、事後的に無期転換を防止するために雇用回数に上限を設けたことについて、客観的に合理的な理由を欠き、違法とされる可能性は否定できないと、こういうふうに助言、指導を行っているわけです。
一般論としてお聞きをいたします。
これまで上限設けてこなかった、ところがいきなり上限持ち出してきた、これ、今後も契約が繰り返されるであろうということが期待されていた。このような場合には労働契約法十九条に違反する可能性が高いというふうに私は思いますし、労働者から労働局に相談があった場合には助言、指導など厳正な対応が求められると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山越敬一君) お答え申し上げます。
一般論としてお答え申し上げたいと思いますけれども、御指摘の個別労働紛争の解決促進の関係の法律でございますけれども、こうした紛争につきまして、当事者間の話合いによる解決を促すために紛争の解決につきまして援助を求められました場合には、都道府県労働局長が必要な助言あるいは指導をすることができると定められておりますので、こうした援助を求められた場合には、法律の規定に従いまして、必要な助言や指導に努めてまいる所存でございます。
○田村智子君 では、加藤大臣にもお聞きしたいんです、働き方改革という観点から。やはり無期転換を進めていって、不本意な非正規をなくすという方針を政府は取っているわけです。ところが、足下の独立行政法人で、資料でお配りした最後のを見ていただきたいんですけれども、労働契約法が適用される八十一の独法のうち、じゃ契約に上限設けませんよと言っているのは七法人にすぎないわけですよ。どんどん雇い止めが起こる危険性が今増しているわけです。
これは足下ですから、政府の、しっかりと無期転換が促されるようなやり方、これを促していくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 委員、科学技術分野における非正規のことに関しての御議論だというふうに思いますけれども、特に不本意で非正規の職に就く方々の正規化を支援していくというのは、これは働き方改革の中にも盛り込ませていただいておりますし、当然、科学技術分野においても必要な対応だというふうに考えております。
先般決定いたしました働き方改革実行計画においても、キャリアアップ助成金を活用していく、あるいは、今委員御指摘のありました有期雇用契約の無期転換が二〇一八年から本格的に行われることを踏まえて、周知徹底、導入支援、相談支援を実施するということにしているわけであります。
このような一般的な施策も適宜活用していただきながら、科学技術分野の実情を踏まえて適切な対応がなされるべきと考えております。
○田村智子君 これ、労働契約法というのは、最終的には裁判に訴えて闘うというようなことになっちゃうんですね、不本意に首を切られた場合に。そうしたら、もう何年も何年も掛けて裁判やらなきゃいけないということになるわけですよ。それを防ぐためにも、やはり今年度のことが非常に重要なんです。
今年度中にやはりちゃんと無期転換が独立行政法人の中でもやられるように是非とも政府で取り組んでいただきたいと、このことを申し上げて、質問を終わります。