国会会議録

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保育士給与改善訴え 配置基準充実 田村智氏求める
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(写真)質問する田村智子議員=22日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は22日の参院内閣委員会で、政府の保育士の「処遇改善策」が現場に混乱をもたらしている実態を示し、保育士全体の給与引き上げと職員配置基準の改善こそ必要だと主張しました。

 田村氏は、4月から実施される処遇改善加算では、一部の職員にだけ月4万円の昇給を義務づけているため、所長や主任保育士との逆転が起きたり、他の職員との格差が大きくなったりして「人間関係を崩しかねない」との声が現場から上がっていると紹介。加藤勝信少子化担当相は「対象者の選定など現場に負担をかけている」と認め、「実情に応じ柔軟に配分できるようにしていく」と答えました。

 田村氏はまた、実在する保育所をモデルに、国基準(公定価格)の人員配置と実際の保育士配置を比較すると3人分の給与が保育所の持ち出しになっていると指摘。一方、配置基準が手厚いこども園の公定価格で試算すると、持ち出しが1人分になることを示し、せめて保育所と認定こども園の公定価格の格差をなくすべきだと主張しました。

 加藤氏は「認定こども園は幼稚園、保育所由来の加配を両方取ることができる特殊性があるのは事実だが矛盾はない」としつつ、全体の配置基準の充実を図っていきたいと述べました。

2017年3月30日(木) しんぶん赤旗

 

 【3月22日 内閣委員会議事録】

今日、本当は取り上げようと思っていたのは、やはり保育士の処遇改善の問題で、これは昨年来、その抜本的な処遇改善が必要だということはもうみんなの共通の認識になったと思います。来年度の予算の目玉にもなっている案は、これ今の質問にもありましたし、九日は自民党の岡田委員からも指摘されたように、四万円アップというこのやり方は非常に混乱を来しているわけですね。それはなぜかといえば、やっぱり現場の要望を置き去りにしたことが大きな要因だと私は認識しています。

 私、保育の関係者から何度もお話をお聞きしてきましたが、現場の要求というのは、常勤保育士の賃金単価全体が低過ぎると。加えて、国の職員配置基準が実態と乖離していて、その低い賃金単価さえも保障することが困難だと。何でここに手を付けないかということなんです。

 改めて、お示しをしました資料を見ていただきたいと思います。これ、実際にある保育園、A保育園としますが、この人員配置を公定価格に照らして比較をしたものです、実際と公定価格。ゼロ歳児八人、保育士配置の最低基準は子供三人に一人で、公定価格では二・六人。公定価格ではこの小数点以下は全部足し上げた上で四捨五入するんですけど、そんな配置は不可能ですから、実際は三人を配置しています。一歳児十二人、二歳児十二人、公定価格ではこれを合わせた配置で四・〇人。実際には、一歳児に三人、これは自治体独自の加配一人を含んでいます、二歳児には二人で、合計五人。三歳児十三人、公定価格では〇・八人、実際には一人。四歳児十五人、五歳児十四人、公定価格ではこれも合わせて〇・九人。実際にはクラスを分けて一人ずつ配置をしています。

 このA保育所では、加えてフリーで動ける保育士を一人配置しています。公定価格でも同じような位置付けでチーム保育推進加配一人というのを置けるようにしていますが、これで公定価格全部足し上げると九人。実際の配置は十二人ですから、保育士三人分の給料は保育所の持ち出しということになってしまいます。

 この児童の人数に応じた保育士配置、これだけ実態との乖離があるということをどう考えるかと。特に、年齢ごとにクラスをつくって保育士を配置する、これは子供の発達や安全を保障するために多くの保育所が当然のごとく行っていることです。なぜ公定価格で認めないのか。

 認定こども園では、既に三歳児、四歳児、五歳児はそれぞれ分けて保育集団にして公定価格を採用しています。これ改善が必要だと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(西崎文平君) 子ども・子育て支援新制度における公定価格の設定に当たりましては、人件費、事業費、管理費のそれぞれについて標準的と考えられる経費を積み上げて設定しており、そのうち人件費の額につきましては、子供の人数から各施設、事業が満たすべき職員配置基準等をベースに計算しているところでございます。

 その上で、いわゆる〇・七兆円のメニューにおきまして、三歳児に対する人員配置を十五対一により実施する場合に必要な人件費を加算によって評価するために、三歳児配置改善加算を新たに設けたほか、保育標準時間認定を受ける子供の公定価格を設定するに当たっては、保育士の勤務シフトを組みやすくするとともに、保育士の負担軽減を図るため、三時間分の非常勤保育士の人件費をプラスするなどの対応を行っているところでございます。

 なお、一歳児や四、五歳児の職員配置の改善につきましては、いわゆる〇・三兆円メニューとして整理しているところでございまして、引き続き、必要な財源を確保しながら実現に努めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 資料の一番右の欄を見てほしいんですけど、これ、A保育園の児童数で認定こども園の公定価格にした場合どうなるかというのを試算したんですよ。そうすると、これ十一人になりますので、実態に近づくわけですよ。保育所の公定価格では九人、認定こども園で試算すれば十一人、この格差は説明が付かないと思いますよ。

 これ、児童数に対する保育士配置の最低基準の見直しも必要だという声は現場に物すごくありますが、せめて、すぐにできることとして、保育所と認定こども園の職員配置基準の格差、これはなくすべきです。それから、小数点を全部足し上げてから四捨五入するんじゃなくて、年齢区分ごとにちゃんと繰り上げる、せめてそれぐらいの改善、これすぐにやるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) 議員から資料をいただいておりますけれども、子ども・子育て支援制度における公定価格の設定に当たっては、各施設に求められる基準に対応して設定をしておるところでありまして、基準が共通……(発言する者あり)いや、基準が共通する部分については幼稚園、保育所と認定こども園の間で公定価格に差を設けないという方針の下でこれまでも設定をしているところであります。

 議員御指摘のように、一号認定こども園と二、三号認定こども園、これは同時に受け入れる施設が認定こども園でありますから、幼稚園由来の加算と保育所由来の加算の両方が算定可能になっているという特殊性があることは確かでありますけれども、幼稚園由来の加算は本来、一号認定の子供さん、保育所由来の加算は二、三号認定の子供さんに対する給付として反映されているところでありまして、基本的には差がないのではないかというふうに考えております。

 したがって、ただ、委員御指摘のように、全体としての充実を図っていくということに対しては、今、〇・三兆円分についてもまだ手が付いていないところもございます。それらを含めて、予算をしっかり確保しながらその充実に努力をしていかなければならないと考えております。

○田村智子君 もうこれ、現場が繰り返し求めている改善なんですよね。そのことに対しては応えないわけですよ。

 それで、やろうとしているその給料アップ、これ中身見てみますと、おおむね七年の経験を経た常勤職員のうち三分の一を副主任と任命することができ、そのうち二分の一は必ず月額四万円給与を上げなくては駄目だ、こういう制度だと。多くの保育所では、主任等の職務手当は一万円程度で、園長も同様だと思います。これでは、まず副主任が園長や主任の給与を上回ることになってしまうと。内閣府はこの指摘を受けて、じゃ、四万円アップ対象の職員のうち二分の一は六千円以上アップすればいいよと、残りの分はほかの職員の給与に充てていいよということも言っています。しかしこれ、園長の給与には充てられないんですね。小規模の保育園など、本当に園長さん御苦労されているんですけど、これ、変な格差が生まれてしまうわけですよ。こういう賃金体系にしてしまって現場が混乱している。

 加えて、ちょっともう指摘をしてしまいますけれども、しかも、二〇一八年度以降は、副主任は計六十時間の研修を受けることで他の保育所に移っても資格のように扱うというのが政府の案です。しかし、副主任全員が四万円加算されるわけではなくて、同じ研修受けて同じ副主任として発令されるのに、誰かは四万円、誰かは六千円と、これもう同一労働同一賃金でさえもないわけですよ。

 先日、全国の保育関係者が現場の実態を踏まえた処遇改善の要請行動を行いました。そのときに都内の施設長さん、こう言われました。月四万円アップというのは大変大きい、園の中から二人選ばなきゃいけない、誰をその対象にするのか本当に悩んでいる、これでは保育士の中に分断を持ち込み、職場の人間関係を崩しかねない、今回の政府案には怒りさえも感じると、こう言われているわけです。

 もうこれ過渡期ですから、来年度についてはちょっと柔軟な対応を考えてほしいんです。丸めて渡して、使い方は考えていいよと。それで、再来年度はもっと現場の声を踏まえたまともな処遇改善やってほしいと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) まず一点、園長とその他の保育士との賃金の水準でありますけれども、これ、公定価格においても実態面においてもかなりの差があるというふうに我々は認識をしておりまして、そういった意味において、園長に関しては今回の加算の対象にしていないと、こういうことであります。

 それから、今御指摘がありました今回の制度でありますけれども、これも基本的に、保育士の方の場合はもう五年未満で離職するという方が非常に多いということがあります。そういったことを踏まえながら、やはりキャリアアップの仕組みというもの、キャリアが上がっていくに従って賃金が上がっていくという仕組みをつくっていく、これが必要だと、こういうことで、対象者の選定等、今御指摘のように、現場にはいろいろ御負担を掛けることにもなりますけれども、保育士の方々が長く働き続け得る、こういう職場環境を整備すると、そういった観点でこの仕組みは重要であるというふうに考えております。

 また、いろいろ原則論ございますけれども、基本的には各園の事情等を勘案して柔軟に配分できるような仕組みとする予定でありますし、また、先般もこの委員会において、現場において様々な問題を抱えているというお話の指摘もございました。我々としても、キャリアアップの仕組みが円滑に構築されるようできる限りの支援はしていきたいと、こういうふうに考えております。

○田村智子君 これ、一番困っちゃっているのは、年功序列型で長く働けるように、本当に、長く働けば賃金がアップしていくということを頑張ってやってきた保育園で一番矛盾が起きちゃうんですよ。長く働いている保育士さんいっぱいいるのに、その中から二人選ばなきゃいけないと、どうするんだという問題になってしまっているんですね。

 もう率直に申し上げて、月四万円アップって聞けば、ああ、安倍政権頑張っているなと、そんな印象を与えるような政策を取っていたら駄目ですよ。現場が処遇改善で何を求めているのかと。今言った職員配置の問題、それから延長保育や土曜保育が正しく評価されていない、必要な人が配置されていない、研修とか年休とかこんなことも考慮されていない、この職員配置をどうするんだ、ここを本格的にやっぱりやっていかなければ処遇改善につながっていかないと、このことを強く申し上げて、質問を終わります。


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