国会会議録

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人のお金を巻き上げることが成長戦略か カジノ法案 田村議員が批判 参院審議入り

カジノ解禁推進法案が、7日の参院本会議で審議入りしました。提出者が法案の趣旨説明をし、各党が代表質問。公明党は質問を見送りました。日本共産党は田村智子議員が質問に立ち、「犯罪行為である賭博を解禁し、人のお金を巻き上げることが成長戦略とはあまりに情けない」と批判しました。

 カジノ解禁法案は日本で初めて民営賭博を合法化する法案です。田村氏は、競馬など現在の公営賭博との対比で、「公営主体だけに賭博運営を許可してきた現在の法的根拠を葬り去り、賭博規制の仕方を根本的に変え、賭博の民営化を広げる根拠になる危険性さえある」と追及しました。

 提出者の西村康稔(やすとし)議員(自民)は、政府が「合理的かつ適切な実施法を制定する」と答弁。菅義偉官房長官は「議員立法なので国会での審議のゆくえを見守りたい」と述べるだけで、具体的な民営賭博拡大の歯止めは何も示されませんでした。

 カジノ解禁がギャンブル依存症を深刻化させるという懸念は推進派からも出ています。提出者は、カジノの収益の一部を依存症対策にあてるとしています。田村氏は「これは麻薬を解禁し、麻薬販売業者から納付金を集めて依存症対策をとると言っているようなもので、まさに“マッチ・ポンプ”だ」と批判。新たな依存症を増やさない対策は「カジノ解禁をやめる以外にない」と迫りました。

 提出者の小沢鋭仁(さきひと)議員(維新)は、依存症対策について、「具体的には実施法で決める」と述べ、具体策は示しませんでした。

 質問に立った民進党の小西洋之(ひろゆき)議員は、党として「本法案に明確に反対することとした」と強調しました。

2016年12月8日 しんぶん赤旗

 

【12月8日 本会議 議事録】

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、IR法案、すなわちカジノ・賭博場解禁法案について質問いたします。
 本法案が衆議院で拙速に審議されたことに対し、新聞各紙は、「危うい賭博への暴走」朝日新聞、「人の不幸を踏み台にするのか」読売新聞、「唐突な採決に反対する」毎日新聞など、厳しく批判する社説を一斉に掲げました。産経新聞も「およそ超党派の議員立法には似つかわしくない姿ではないか。」と警鐘を鳴らしています。
 会期を延長した途端、四野党の反対を押し切って法案付託を強行し、僅か六時間弱の審議で強行採決、与党内でさえ法案への態度を決められず、推進派議員の中からも、こんなやり方はおかしいという声が上がっています。一体、このように強硬かつ異常な議会運営を止めようという与党議員はいないのでしょうか。
 法案そのものに対しても、問題点、懸念の指摘が相次ぎ、直近の世論調査ではカジノ解禁に反対との回答が約六割と、賛成を大きく上回っています。国民大多数が反対する悪法を、しかも短時間の審議で強行採決するなど、決して許されません。参考人質疑、政府質疑も含め、徹底審議を尽くすよう強く求め、以下、質問を行います。
 IR、統合型リゾートとは何かについて、発議者は、カジノのみならずホテルや会議場などを一つの区域に含む統合施設と説明し、ある発議者は、カジノの面積は全体の三%程度にすぎないと殊更に強調しています。しかし、海外の例を見ても、面積では数%でも施設全体の売上高の八〇%以上を稼ぎ出す、それがカジノです。カジノ抜きにIRは成り立ちません。IR法案の本質がカジノ、賭博場解禁であることを認めますか。
 そもそも、カジノは賭博であり犯罪です。刑法第百八十五条には、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。」とあり、また百八十六条には、「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。」とあります。法務大臣、なぜこのように刑法で賭博が禁じられているのか、御説明ください。
 賭博が刑法で禁じられている理由として、最高裁の判例に基づく法務省の答弁では、人々を依存症に陥れ、仕事を怠けさせ、賭けるお金欲しさに窃盗、横領などの犯罪まで誘発して公序良俗を害する、また、賭博が横行すればまともな経済活動も阻害されると指摘しています。明治以来、賭博は刑法によって厳しく禁止されてきた。それは、賭博が歴史的に多くの重大犯罪を生み、たくさんの人々の不幸を招いてきたからにほかなりません。発議者は、刑法が賭博を禁じていることの重みについて真剣に考えたことがあるのでしょうか。答弁を求めます。
 本法案では、特定複合観光施設とは、民間事業者が設置及び運営をするものをいうとしています。今まで公的主体だけに限定的に認めてきた賭博を歴史上初めて民間にも解禁するということです。これまで賭博が公的主体に限定されていたのはなぜか、本法案で民営賭博がなぜ認められるのか、発議者の見解を求めます。
 衆議院法制局は、この法案によって、カジノ運営業者は内閣府の外局として設置するカジノ管理委員会の規制に従うことになるから、外から規制を掛けるので民営賭博でも許されると説明しています。しかし、こんな仕組みで許可されるのならば、公営ギャンブルである競馬、競輪、競艇も、規制を掛けるという法律の枠内にあれば民間主体でやってよいことになります。
 本法案は、長年、公営主体だけに賭博運営を許可してきた法的根拠を葬り去り、賭博の規制の仕方を根本的に変え、IRにとどまらず、今後更に賭博の民営化を広げる根拠となる危険性さえあります。発議者は、このような重大な危険性をはらんでいることを自覚しているのでしょうか。
 先ほど紹介した最高裁の判例では、賭博は、国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれすらあるとしています。ところが、IRは、安倍内閣の政策の柱である日本再興戦略二〇一六の中でも観光振興策とされています。安倍内閣も発議者も、カジノ、賭博場解禁を成長戦略の目玉に掲げているのはどういうことでしょうか。国民経済に重大な障害を与えるものがなぜ経済成長の目玉なのか、発議者及び官房長官、お答えください。
 そもそも、賭博は人の弱みに付け込んで人をギャンブル依存に陥れ、人の不幸によって利益を上げるものです。だから、世論調査でも多くの国民が反対の意思を示しているのではありませんか。犯罪行為の賭博を解禁し、人の金を巻き上げることが成長戦略とは余りに情けなく、恥ずかしいとは思いませんか。発議者と官房長官に答弁を求めます。
 最後に、ギャンブル依存症対策について発議者にお聞きします。
 衆議院の質疑でも、ギャンブル業者から納付金を集め、そのお金でギャンブル依存症対策を行うという答弁が繰り返されました。これは、麻薬を解禁し、麻薬販売業者から納付金を集めて依存症対策を取ると言っているようなもので、まさにマッチポンプではありませんか。そもそも、何をもって依存症対策と言っているのか、具体的な例示を求めます。
 これまでの答弁や説明を聞いても、病院でのカウンセリング窓口を増やす程度の対策しか見えてきません。しかし、ギャンブル依存症は、内臓疾患を伴うアルコールや薬物の依存症と比べても病院につながることが難しく、病院での治療は、多重債務や横領などを起こし重症化してからになる事例が多いと聞きます。重症化してから対応する、それでは対策とは言えません。そもそも、依存症にならない対策があるのでしょうか。新たなギャンブル依存症を増やさない対策は、カジノ解禁をやめること以外にないのではありませんか。
 カジノ推進者が称賛するシンガポールのカジノでは、本人や家族などの申出で入場を禁止する自己排除制度、自国民からの入場料徴収など、ギャンブル依存症対策として厳格な規制を行いました。しかし、開業から四年で入場禁止者は二十万人を超え、自己破産も急増、大王製紙の前会長が会社の金をバカラ賭博につぎ込み百六億八千万円を失ったのもシンガポール・カジノです。
 推進派の皆さんは、カジノは世界百二十七か国で実施されている、先進国で日本だけやっていないと主張しますが、日本は既にパチンコによるギャンブル依存症が深刻な社会問題となっています。この上、民間賭博を解禁すれば、まさに世界一のギャンブル国家、依存症国家になってしまいます。
 こんな前代未聞の悪法を会期末目前にして成立させるなど、断じて許すわけにはいきません。徹底審議で問題を明らかにし、廃案とするため全力を尽くすことを表明して、質問を終わります。(拍手)

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