国会会議録

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TPP断念こそ国益 固執するほど不平等に 参院特 田村氏、薬価問題示し追及

日本共産党の田村智子議員は24日の参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、安倍政権がトランプ米次期大統領をTPPにつなぎとめようとしていることを「さらに米国の要求をのまされることになる。国益や主権を自ら差し出すものだ」と批判し、TPPを断念するよう迫りました。


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(写真)質問する田村智子議員=24日、参院TPP特委

 トランプ氏は、TPP離脱を表明する一方、自由貿易協定(FTA)などで日本にさらなる市場開放を求めると公言しています。

 田村氏は、米国はTPPから離脱しFTAを求めてくるか、離脱しないとしても米国に有利になる再交渉を求めてくるかだと指摘。安倍首相が「国益を差し出すことはしない」と述べたため、田村氏は「離脱を表明した国をつなぎとめようとしている。再交渉を求められるのは明らかだ」と反論しました。

 田村氏は、日本の薬価に米国政府と米国製薬業界が異議申し立てできる制度を2000年に実現するなど米国の意見を反映した“屈従の歴史”を告発。TPPに固執することは「日本から不平等条約への道を突き進むものだ」と強調しました。

 田村氏は、高額な医薬品が見込みを大きく超えて使われたときに価格を引き下げる日本の「市場拡大再算定制度」について、米国製薬業界が撤廃し市場価格に任せるよう求めていることを指摘。米国の「年次改革要望書」も市場拡大再算定はじめ日本の医薬品制度を繰り返し批判してきたことを示しました。塩崎恭久厚生労働相は「(田村氏が示した16項目のうち)受け入れたのは9項目だけだ」と強弁しました。

 田村氏は、2012年の「日米経済調和対話協議記録」が「市場拡大再算定制度が与える不合理な影響を取り除くための方法について引き続き検討していく」と明記していたことを紹介。TPPの日米交換文書でも日本の医療保険制度を協議事項としていることを示し「TPPが仮に発効すれば市場拡大再算定が条約に基づいた協議事項になる」とただすと、厚労省も対象になることを認めました。 

2016年11月25日(金) しんぶん赤旗

【議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 アメリカの次期大統領トランプ氏がTPPからの離脱を明言をいたしました。となれば、アメリカの今後の対応は二つしかないと思います。一つは、言われているように、二国間のFTAを日本にも求めてくること、そして二つには、仮にTPPの枠からすぐに離脱しないとしても更にアメリカに有利になるような再交渉を求めてくると、この二つしかないというふうに思うんですね。

 総理にお聞きしたいんです。それでも総理はアメリカをTPPにつなぎ止めようとする、更にアメリカの要求のまされるということに私はなっていくんじゃないかというふうに思います。それは日本の国益や経済主権を自らアメリカに対して差し出すことになるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 再三この委員会でも申し上げておりますとおり、日本の国益を削る、あるいは国益を差し出すということはしないということは申し上げておきたいと思います。

○田村智子君 これまでの議論のときの時点と違うんですよ。今や離脱を表明したときにつなぎ止めようとしているんですよ。どうしたって日米協議求められることになるでしょう、再協議求められることになるでしょう。そう思わないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) ここは、まさにTPPの持っている利点、意義について、我々は粘り強く腰を据えて説き続けるということだろうと思っております。

○田村智子君 そうやってアメリカと協議を続けていくということになる。そうすると、これまでも日米協議によってアメリカがいかに日本の主権を侵してきたか、これ、今日、私は医薬品の問題に焦点当てて質問したいと思うんですが、安倍総理、先ほどから、たとえ発効しなくても国会で承認することに意味があるとおっしゃる。TPPがそんなにすばらしいものなのかということについても一言言っておきたいです。

 TPPによって医療が受ける影響、これを厳しく批判しているのは、紛争地域や最貧国での医療活動を行っている国境なき医師団です。TPPによって新しい薬、新薬を開発する製薬企業の利益が守られ、途上国で救える命が救えなくなるのではないか、こういう懸念が繰り返し示されてきました。例えばエイズの治療薬。アメリカの製薬企業が開発した新薬は価格が余りに高くて、薬があっても使えない。新薬を基にして別の国で安い薬が作られたことでやっと各国での治療が大きく進むようになったわけです。

 アメリカは、これでは新薬メーカーの利益が損なわれると、こう主張して、新薬の特許権、研究データ、この保護を強めることをTPPに盛り込ませました。これでは安い治療薬が使えなくなる、患者の命よりも製薬メーカーの利益を守るのか、これがTPPへの懸念であり、怒りなんですよ。

 しかも、アメリカは何でTPPから離脱って話になっているか。それは、アメリカの製薬業界がこのTPPの中身ではまだ新薬の保護が足りないという要求。アメリカというのは、製薬企業、圧倒的な開発力持っています。しかも、その薬の価格は世界の中で群を抜いて高いです。それは日本に与える影響も決して小さくはありません。

 そこでお聞きします。TPPあるいは今後の日米協議でアメリカの製薬企業の要求が日本に更に持ち込まれてくることになれば日本でも医薬品の価格が高くなっていく、そのことによって国民の医療費負担や保険料負担が一層重くなる、そういうことが起こるんじゃないんでしょうか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) TPP協定には、薬価決定に対する外国企業の介入のような我が国の公的医療保険制度に影響を与える内容はこれ一切含まれていないわけでございまして、今、田村委員の御質問は、更に今後TPPに米国にしっかりと参加するよう促していく中においてそういう譲歩をするのではないかという趣旨の答弁かもしれませんが、そうであるとすると、我々が今、薬価を決定する仕組みに米国を介入させるということは決してないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

○田村智子君 それでは、具体的に見ていきたいんです。

 現に今も、特にアメリカの高過ぎる薬価、これは日本の医療保険に影響を与えています。今年九月二十日、国保新聞は、昨年度の医療費について、高額薬剤の影響で一・五兆円増という記事を掲載しています。これは厚労省の発表に基づく記事なんですね。

 塩崎厚労大臣にお聞きします。二〇一五年度の医療費総額の伸び、薬剤費の伸び、高額薬剤が与えた影響について簡潔に御答弁ください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今年の九月に公表いたしました二十七年度の医療費の動向、このお尋ねだと思いますが、概算医療費は四十一・五兆円となりまして、前年度の四十兆と比べて一・五兆円おおよそ増加をした。そして、伸び率で見ますと対前年度比で三・八%というふうになっておりまして、平成二十四年度以降二%程度で推移していたのと比較をいたしますと高い伸びになっているというふうに思います。

 中でも調剤医療費というのがプラス九・四%と高い伸び率でございまして、これは、C型肝炎治療に用いる抗ウイルス剤など高額薬剤による影響があったものと見られます。また、新しいC型肝炎治療薬による医療費の伸びの影響は、正確には算出はできないわけでございますけれども、調剤医療費における実績等から推測をいたしますと、大まかに言って医療費の伸び一%程度に相当する規模ではないかというふうに考えているところでございます。

○田村智子君 今御答弁のありましたC型肝炎治療薬、これ、ソバルディとハーボニーというものですけれども、副作用が少なくてよく効く薬が使えるようになったわけで、これは患者さんが本当に待ち望んでいたこと、私自身もこれは本当によかったというふうに歓迎をしております。

 同時に、こうした医療の進歩と医療保険の維持をどうしていくのかということが問われてくるわけです。ソバルディは、患者さん一人当たり一日、日本の価格で六万一千八百円という薬です。治療に必要なのは十二週間分、約五百二十万円。ハーボニーは、一日八万円、十二週間で約六百七十三万円。この二つの薬剤が広く使われたことで医療費の総額が一%増えたというのが昨年度の状況なんですね。

 日本は医療費の自己負担の上限がありますから、この薬剤を全部患者さんが負担したわけではありません。それでも、毎月一万とか二万円とか、こういう負担に苦しんでいる患者さんは決して少なくありませんし、医療費の総額が増えれば、それは保険料に跳ね上がることになります。特に、国民健康保険料、今本当に負担が重くて、国保税や国保料は所得の二割を超えて負担をしている世帯もあるわけで、家計を本当に押し潰すほどになっています。

 厚労大臣、こういう高額な薬価は、患者負担また保険料負担を考えても、何らかの対応、対策、これ取っていくことが今後必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) これまで、米国から我が国の薬価制度について薬価引下げの反対も含めて要望はあったわけでございますけれども、今お尋ねの革新的でなおかつそれが非常に高い値段の医薬品の登場というものが最近特に多くなって、それは特にバイオ医薬品が多いわけでありますが、この医療保険財政に与える影響が懸念をされているわけでございます。今回、例えばオプジーボにつきましては、効能、効果の追加等によって当初の想定を超えて大幅に市場規模が拡大したことを踏まえて、国民負担軽減の観点とか医療保険財政の持続性に与える影響などを考慮して、今回、二年に一度の改定の年ではないけれども、緊急的に薬価を引き下げるということにいたしました。

 我々としては、やはりイノベーションは大事にして、新しい薬が出てきて健康を守ることができるようにする、このことは大変大事であり、一方で、国民皆保険、そしてその持続性、これも大事にしていくということも大事だということでありまして、もちろん国際的な議論も、これ実はOECDの方が高額で、しかし有効な薬の今後の扱いについての議論を深めていますが、そういったところでの議論あるいは外国での価格などをよく見ながら、高額薬剤への対応を含めて、薬価算定ルールはしっかりと絶えず見直していきたいというふうに思っております。

○田村智子君 今オプジーボで御答弁いただいたんですが、今日五〇%引き下がるんですよね。ソバルディやハーボニーもこれ四月に三二%の引下げを行っています。

 このソバルディ、ハーボニー、開発したのは米国の製薬メーカー、ギリアドです。このギリアド、報告書を見ますと、二〇一五年の営業利益率は七〇%を超えています。これは他の製薬メーカーを見ても異常な利益率なんですね。アメリカというのは、製薬企業が薬の価格を自由に決めています。よく効く薬、たくさん売れている薬、これは商品価値が高いのだから価格が高くて当然、開発した企業が大きな利益を得るのも当然だという考え方、これがアメリカの考え方なんです。

 一方、日本は国民皆保険の国です。必要な医療が誰に対しても保障されるということが原則で、薬の価格も、政府の機関である中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協が製薬企業からの意見も聞きながら公定価格を決めて、公平に、また有効に治療が受けられるようにしています。一度決めた薬価も、御答弁のとおり、二年ごとの見直しで価格を引き下げるという方向での審議が行われています。だから、ソバルディやハーボニーもこの仕組みの中で見直されました。問題は、この国民皆保険の立場で高額薬価を引き下げるという日本のルールに対して、アメリカの製薬業界が反発を強めていることです。

 今回の薬価引下げについて、米国研究製薬工業協会、いわゆるPhRMA、これはどのような意見を示していますか。

○政府参考人(鈴木康裕君) 米国の製薬業界の反対意見についてお尋ねでございます。

 薬価の見直しに当たりましては、中医協において関係団体から意見聴取の機会を設けて議論を行っておりますけれども、御指摘の米国研究製薬工業協会、PhRMAでございますけれども、二点意見がございました。一点は、市場拡大再算定の特例については、そもそも市場拡大再算定自体を撤廃すべきという御意見、それからもう一つは、オプジーボの緊急的な薬価改定については、日本における新薬開発や効能追加への意欲をそぐことにつながるおそれがある旨の意見が表明をされております。

○田村智子君 今御答弁のあった廃止しろという市場拡大再算定、これは、高額な医薬品が見込みを大きく超えて使われたときに価格の引下げを行うという日本の薬価ルールです。PhRMAはこれをやり玉に上げて、薬価を引き下げるルールは撤廃されるべきだ、もっと言うと、売れている薬は市場価格に任せるべきだというふうに求めているわけです。これはPhRMAの要求だけではありません。

 資料一を御覧ください。パネルを御覧ください。(資料提示)

 これは、アメリカ政府が日本政府に規制改革を迫って毎年出してきた年次改革要望書、悪名高き年次改革要望書ですね、この中から医薬品に関する事項というのを抜粋したものです。二〇〇三年以降、市場拡大再算定の廃止という言葉、赤くしているので分かると思います、その言葉が繰り返し出てくるんです。

 厚生労働大臣、日本の薬価引下げのルールに対してアメリカは繰り返しその廃止を求め、これが日米協議の争点になってきたのではありませんか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今資料でお配りをいただいた要求がございますけれども、ちなみに、私どもこれ見てみますと、言ってみれば受け入れたものと受け入れていないものがございまして、受け入れているのがこの中で九項目だけでありまして、あとは全部お断りを申し上げているということでございます。

 今のオプジーボなどについてのこの特例の扱い、これについて廃止をせいという要求は来ているということでございますが、私どもは、これをやることが、今申し上げた皆保険の持続性を守っていくことが、そのために必要だということで私ども新たに特例を今回導入をしたわけでありまして、しっかり治療には使うけれども、この言ってみれば価格については、今申し上げたように、再算定を特例的に行って、予定よりも売行きが上がったようなところはしっかりと見直していくというルールは、我々はこの保険財政を守るためにもやらなきゃいけないというふうに考えております。

○田村智子君 要求されたものを丸のみしていたら大問題なわけですよ。確かに、市場拡大再算定は、廃止と求められても確かに今継続している。それはそうです。

 しかし、日本政府は、じゃ、こうやって何度も要求されている、これきっぱりと拒否をしているのか。していないですよ。こういう求められた要求に対しては、日米経済調和対話協議記録というのが出されているんです。どんなふうな話合いしたかというまとめですね。その中でこの市場拡大再算定についてどう書いてあるか。日本国政府としては、必要不可欠な構成要素であると考えているとしながら、市場拡大再算定制度が与える不合理な影響を取り除くための方法について引き続き検討していくというふうに記されているわけです。これが協議の結果なんですよ。

 結局、アメリカの製薬業界の不利益にならない方法を検討していくというふうに約束するから、いつまでたっても繰り返しこれを廃止しろ廃止しろと求められてきているんじゃないんでしょうか。

 今後です。仮にTPP協定、これ発効すると、そうすると、医薬品の価格決定の手続について各国協議、これ約束されています。さらに、日米交換文書、いわゆるサイドレターでは、価格決定の手続にとどまらず、将来の医療保険制度についても日米の協議事項とするということ、これをアメリカから求められて、日本政府はこれ受け入れるというふうに表明したんですね。そうすると、TPPが仮に発効すれば、市場拡大再算定の廃止ということが今度は条約に基づいた協議事項になっていくんじゃないですか、厚労大臣。

○政府参考人(鈴木康裕君) サイドレターについてのお尋ねでございますが、これは薬価算定ルールが含まれるかということでございますけれども、御指摘の交換文書においては、日米は附属文書に関してあらゆる事項について協議はする旨、用意をする旨を確認はしてはおります。

 御指摘の交換文書は、しかしながら法的拘束力はないものでございまして、我が国ではこれまでも米国を始めとして各国との協議に誠実に対応してきております。交換文書によって新たな義務を負うものではございません。

○田村智子君 もう一度確認しますが、今後、仮にTPP発効がしたとして、この市場拡大再算定の廃止ということは協議事項から、じゃ、聞き方変えましょう、協議事項から排除されるということはあるんですか。

○政府参考人(鈴木康裕君) 附属文書に関する事項については協議する用意がある旨を確認はしておりますけれども、それを受け入れるということではございません。

○田村智子君 だから、協議するということですよ。そうすると、今度は作業部会がつくられて、更に強くアメリカからの要求がされていくと、これ目に見えているわけです。

 先ほど塩崎大臣は、市場拡大再算定の廃止、これを求められても、あるいは協議をしても、これ意見を聞くだけだ、今後も制度改正しないと、この間、TPPに関するいろんな議論では必ずそう言うわけですよ。アメリカからの意見は聞くけれども制度変更はしないと。だったら協議事項にする必要ないんですよね。わざわざ協議事項にすると。私、到底そういう答弁は納得できません。

 これまで、アメリカの要求でどれだけ日本の薬価制度が変えられてきたのか。先ほど九項目受け入れたと既に御答弁いただいたんですけれども、もう一度この資料の一を見ていただきたいんです。例えば一九九九年に薬価算定手続に上訴手続を設けるというふうに書かれています。これは、日本が決めた薬価に対してアメリカの政府とアメリカの製薬業界が異議申立てをできる制度というのが要求されたわけです。これは確かに次の年に実現しているんですよ。異議申立てはアメリカからできることになったんですよ。

 じゃ、二〇〇三年、ここには、赤字の下の方ですね、薬価算定組織の初会合で意見の申出、議論の機会の確保というふうに書いてあります。これ、まさに新薬の価格を決めるというこの協議の中に開発した製薬企業が直接意見を言って議論に加わると、こういう制度を要求しているわけですけれども、これは結論としてどうなったんでしょうか。

○政府参考人(鈴木康裕君) 申請者の意見の表明についてお尋ねでございますが、二〇〇六年度の薬価制度改革におきまして、国内外を問わず、関係団体の意見も踏まえ、新たに二〇〇六年四月以降に薬価収載される医薬品について原価計算方式での薬価算定を希望する企業など、一部の企業は薬価算定組織に出席して意見表明を行うことができるといたしました。その後、二〇〇八年度薬価制度改革において全ての企業が薬価算定組織に出席して意見表明を行うことができるというふうにしたものでございます。

○田村智子君 だから、これも二〇〇八年に完全実施なんですよ、アメリカから求められたとおりに。二〇〇一年からは今度は補正加算という言葉が何度も出てくるんですね。これは、新薬は、同じ病気に対して既に使われている薬の価格、これを基準にして有効性などを評価して、その元々使われている薬を基準額としたところに上乗せ、加算というのをしていって価格を決めます。この中で最も大きな加算が画期性加算というもので、これは新しさとか、これまでと比べてよく効く、それから治療方法が改善される、こういう要件を全て満たしたときに評価されます。

 アメリカは加算を増やすように、割合を上げるように、下限を引き上げるようにと、こういうことを繰り返し求めてきましたが、それでは、二〇〇〇年以降、画期性加算についてその加算率の推移をお示しください。

○政府参考人(鈴木康裕君) 新薬の有用性評価についてお尋ねでございます。

 新薬の有用性を評価する画期性加算、御指摘のものでございますが、この加算率については、平成十二年、二〇〇〇年から平成二十年、二〇〇八年までの累次にわたる薬価制度改革を経まして、最大四〇%から最大一二〇%まで引き上げております。なお、この加算の引上げについては米国のみならず、イノベーションの支援といった観点から内資企業からも御要望があったものでございます。

○田村智子君 これ、表にしました。二〇〇〇年にこの画期性加算は一律四〇%でした。ところが、二〇〇八年は最大一二〇%にまで引き上げられました。つまりは、類似薬の二・二倍の価格にできるということです。その下にある有用性加算というのは画期性加算よりも評価の基準が緩いものなんですけれども、これも大幅な引上げが行われていることが分かります。

 もちろん、新薬というのは研究開発の時間も掛かるし費用も掛かります。そのことを評価して価格を決めるというのは当然のことですし、必要だと私も思います。しかし、研究開発の経費が一体どれだけ掛かったのか、あるいは、どの薬と比較してどれくらい効くようになったのかというようなデータ、企業がどんな説明をしたのか、それに対してどういう審議が行われたのか、全て非公開なんですよ。製薬企業は意見も言えるし審議内容も分かる、しかし国民にとっては完全なるブラックボックス。実はこういう審議のやり方、製薬業界、意見も言うし、データも出す、だけどそれは全部非公開よと。これもアメリカが要求して、日米協議の中で実現したものなんですよ。

 厚労大臣、新薬決定の手続、加算率の引上げ、これらはアメリカからの要求が何度もあって、そしてその要求に添う方向で制度改定が行われてきた。これ事実だと思いますが、お認めになりますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど保険局長から御答弁申し上げたとおり、これは国内外問わず様々な要望が来て、私どもにとってプラスになることはやりますし、プラスでないことはやらないというのが基本であって、先ほどお配りをいただいたこの対日要求の中で九つ受け入れたということを申し上げましたが、十六拒否をしていますから、いいものは取るし駄目なものは取らないということで、これは内外ともであり、先ほどの画期性加算でも、これはよくピカ新なんか言っていましたが、そういうことが国内にとっても大事なことだったというふうに思います。結果として、さっきも申し上げたとおり、イノベーションの促進や薬価決定の透明性を確保する観点から、薬価の画期性加算の加算率の引上げや、あるいは意見陳述機会の拡大を実施をしたものであって、これらは当然内資企業からも要望があったものであるわけであります。

 一方で、米国から廃止や拡大の回避を再三要請されてきた、先ほど来出ております市場拡大再算定、これにつきましては、国民皆保険を堅持する観点から、これを維持するということを守ってきましたし、また、平成二十八年度の診療報酬改定においては、企業の予想販売見込額を大きく超えて極めて市場規模が大きくなった医薬品に対応するため、市場拡大再算定の特例を創設をしたと。このことから、薬価を高くしてほしいという米国の要求を一方的に実現をしたものでは決してないということでございます。

○田村智子君 要求されたものがそのとおりに、先ほど言った九項目については受け入れてきている。強く要求してきているのは、これ見ても分かるとおり、米国なんですよ。こんなふうに毎年次毎年次、対日要求なんというのをまとめて、それによって協議求める。条約に基づくものでもないですよ。こうやって求められて、それを受け入れてきたということがもう事実として分かることだと思います。アメリカの要求はとどまるところを知らないわけですよ。

 これ、二〇〇六年以降を見てください。赤字になっていないところなんですけど、米国製薬業界代表を中医協部会委員にしてほしいと。中医協というのは、さっき言ったとおり、日本の薬価制度、薬の価格を決める、そこの場所ですよ。そこに米国の製薬業界の代表を入れろと、ここまで要求をしてくるわけですよ。これは日米協議やればやるほどアメリカの製薬業界の利益のために制度変更を求められるだけだと、これ目に見えていると思います。

 総理にお聞きいたします。総理は、もう冒頭から、日本の国益守るんだと、また、アメリカの言うままにならないと、これどんなにお聞きしてもそういう答弁を繰り返されます。しかし、歴史的に見て、アメリカの要求を本当に受け入れてきた。そのことが新薬の価格、実際引き上げてきたわけですよ。医療保険財源が、冒頭でも言ったとおり、圧迫されるような事態が今、日本の中で現実に起きてきているわけですね。

 トランプ氏が、来年一月にはもうTPPから離脱すると明確に意思表示をした、それでもTPPに残ってくれと日本政府が懇願をする。これでは、薬価の問題も含めてアメリカの要求を更にのみますよと、最大限の譲歩をする条件をこれ示していく、こういう道しかなくなっていくんじゃないのか。それはまさに、日本の経済主権を売り渡して不平等条約への道を突き進むことになると思いますが、総理の見解はいかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) こういう協議の場においては、それぞれの国が自分の国の国益を何とかこれ増していこうと主張するというのは、これ当然のことであろうと。日本もそうであります。それぞれの国が貪欲にこれを追求していくわけですね。しかし、こちらは理にかなわないものについてはしっかりとお断りをする。例えば、中医協に米国の製薬メーカーの代表が入るということは全くこれは考えられないわけでございます。

 そこで、言わば画期的な新薬ができた、それは委員もお認めになられたように、これは患者にとっては待ち望んだものが出てくる。問題は価格でありますが、画期的な新薬は大体これコストが相当掛かっているのも事実であります。言わばそこである程度の画期的新薬に対しては評価をしないと、難しい薬を作っていこうというこれインセンティブがそがれてしまうという難しさはあります。

 ただ、同時に、厚労大臣から答弁をさせていただきましたように、我が国は皆保険制度を取っていて、保険に収載したお薬については、まさに医療保険の中でお金を出していくということになっていくわけであります。そこで完全な市場経済の原理がこれ働いているということではないわけでございますので、我々は、その交渉の中から、また算定のルールの中から、薬価に収載する際に、保険に収載する際にこれは価格を決定をしていくわけでございますが、そこで私たちは、そのときに、使う患者さんがぐっと増えた場合はそれは当然減額をさせていただきたいということをずっと申し上げてきて、このルールは我々は大変真っ当なルールであろうと、こう思っております。

 一方、画期的な新薬を作るというインセンティブがなくならないようにするという必要もあるわけでありますし、よく話題になっているこのオプジーボについても、あれは一部のメラノーマにしか効かない、しかし一部の対象にしか効かないものは、いわゆる希少薬ですね、オーファンドラッグについて、そういうオーファンドラッグであったとしても開発をしようというインセンティブは必要でありますから、ある程度の薬価、画期的新薬であれば薬価を付けていく必要があるんだろうと思いますが、同時に医療保険制度の持続性も考えながら、我々は守るべき制度はしっかりと守っていきたいと、このように考えております。

○田村智子君 これは、今後も薬価ちゃんと引き下げていくんだというお話でした。

 しかし、例えばアメリカのイーライリリーという製薬メーカーがあります。ここは、カナダが自分たちの薬の特許権を認めなかったということで、これを訴えたんですよ、ISDSで。こういうことを実際やっているんです。勝てるかどうか分からない、だけど訴えることによって、また米国の製薬業界がアメリカ政府や米国議会に圧力掛けてカナダにどんどん働きかけることによって、この特許法の見直しを今イーライリリーは迫っているわけですよ。

 これがTPPじゃないですか。こんな製薬業界の要求がどんどん政府の交渉の中に入ってくる、これがTPPの仕組みですよ。ISDSの仕組みでもありますよ。日本の中でオプジーボを大幅に減額した、これ厚労省の中だって、こんな減額やったら企業から訴えられるんじゃないか、そういう危惧の声が起こっているということもお聞きをしています。

 私は、安倍総理の言う自由貿易協定、これをどんどん進めていくんだと。これをアメリカと協議をしてどんどん進めていったらどういうことになるのか。アメリカが求める自由貿易協定の自由というのは、患者の命の上に企業の利益を置くようなものですよ。

 そんな協議はもう絶対やるべきじゃない、だからこそTPP断念する、会期延長なんか絶対やらない、そのことを強く申し上げて、質問を終わります。


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