中学校や高校の部活動の過熱化が成長期の子どもを苦しめ、教職員の多忙化を招いていることに対し、文部科学省が来年度をめどにガイドラインづくりを計画していることが8日までにわかりました。日本共産党の田村智子参院議員の質問が後押ししたものです。
文科省は4月、教職員の業務負担軽減策を考える省内会議を設置。特に部活動に焦点をあてて、検討をすすめてきました。
来年度の早い時期に教員、生徒、保護者を対象に部活動の実態を調査。中間まとめをうけて、適切な休養日のあり方などをスポーツ医科学の視点から研究し、ガイドラインをつくります。教職員の負担を軽減するために、外部指導者の積極的な導入も視野に入れています。
省内会議でのこの間の議論を受けて、今月中にも、部活動を含めた教職員の業務全体の改善策にかんする提言を発表する予定です。
田村議員は3月10日、参院文教科学委員会で教職員の異常な休日出勤の実態を示し、過重労働の一因である部活動のあり方を検証すべきだと要求。昨年5月にも同委員会で子どもの成長にとって部活動の休養日が必要だと提起し、いずれも文科省は必要性を認めました。
子どもの成長を主眼に
日本共産党の田村智子参院議員の話 運動部活動についてとりあげた質問には、さまざまな意見が寄せられました。夫が教員、子どもが生まれたばかりという女性からは「このままでは夫が過労死するのでは」と悲痛な訴えもありました。スポーツ障害、燃え尽き症候群など、子どもにとっても勝利至上主義的な部活動は悪影響を与えています。文科省の取り組みとともに、それぞれの学校で、子どもの成長を主眼に部活動のあり方について話し合うことが求められていると思います。
土日どちらか休養日に子どもの自治にもとづく教育を
中高部活動の指針
なかでも、部活動の顧問を断りにくい青年教職員は過酷です。全教青年部の実態調査アンケート(11~12年)では、約4割の顧問が土日とも活動していました。青年部は文科省交渉を繰り返し、部活動が長時間労働を招く最大の要因だとして改善を求めてきました。
国際調査(13年)でも中学教員の部活動(課外活動)の指導時間は日本が最長で、参加国平均の3倍以上でした。(グラフ2)
部活動は学校の教育活動の一環として学習指導要領に位置付けられていますが、教育課程外のため参加を強いるものではありません。ところが、全員入部を強制する学校があるなど生徒の選択の自由が脅かされています。
関係者の意見を
勝利至上主義に陥った部活動はときに教員による体罰をまねき、過度な練習が成長期の子どもに与える影響も懸念されてきました。
「学校や部活によって二極化していると思う」。息子が中・高とサッカー部に所属していた東京都在住の母親(49)は言います。中学時代は月曜が休み、土日も公式戦直前以外はどちらかは休み。朝練がなく練習時間も適度で「けがもなく楽しめたようだ」と振り返ります。一方で、練習試合で他校の顧問が理不尽に怒鳴る姿を見かけ、「顧問の姿勢でもだいぶ違う。だれもが心からスポーツを楽しめるようにしてほしい」と願っています。
全教の中村尚史教文局長は「子どもたちの要求に基づく運営が本来の姿です。それなのに競技者育成という役割まで担わせられるなど、矛盾が大きくなった」と話します。
そのうえで「少なくとも土日のどちらかは完全な休養日にするなど、実効性のあるガイドラインが必要です」と語りました。
ガイドラインづくりの過程については、教職員組合やスポーツ医科学の専門家、子どもの発達にかかわる研究者など「関係者の意見を十分に聞いて合意づくりをしてほしい」と訴えます。全教も部活動のあり方について議論を始める予定です。
運動部活動の研究者である神谷拓さんも、今回のとりくみはおおむね妥当としながらも、「過去の同様の施策がなぜ実行に移されなかったのか、検討が欠かせない」と言います。
対外試合や内申書、競技成績の評価など、子どもや教師を活動に駆り立ててきた要因や制度を直視すべきだと強調。「同時に“ゆとり”をもって指導できるような、子どもの自治にもとづく教育内容がセットで示されないと、ガイドラインが実効性のあるものにならない可能性がある」としています。
(堤由紀子)
2016年6月9日(木) しんぶん赤旗