国会会議録

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待機児対策で保育基準が後退 保育の質下げ許されない 田村智子議員批判 参院決算委

日本共産党の田村智子議員は9日の参院決算委員会で、厚生労働省が待機児童解消の緊急対策を口実に保育士配置基準を緩和した問題を追及し「保育の質を引き下げる規制緩和は許されない」と批判しました。

 田村議員は、3月に死亡事故を起こした認可外施設(東京都)は、保育士が半分以上いればよいとする「企業主導型保育」の先取り施設であり、昨年の死亡事故14件のうち9件は、有資格者が3分の1でよいとする認可外施設で起きていると指摘しました。

 塩崎恭久厚労相は、人員配置の低さと事故の関係について「要因はさまざまだ」と言い訳。田村氏は、「知識と専門性を培った保育士の配置こそ必要だ」と主張しました。

 田村氏は、安倍政権が待機児童緊急対策や保育士不足を口実に、児童福祉施設最低基準を改定(4月1日)し、人員配置基準を大きく緩和したことに言及。定員超過や延長保育の受け入れでは認可定員を上回る分の職員は無資格者でよく、人員配置基準の歯止めも保育士が3分の2でよくなることを指摘し、「長ければ長いほど、預ける子どもが増えれば増えるほど無資格者が増えていく」と批判しました。

 田村氏は、認可定員60人の保育所の実際の配置に比べて、有資格者が5割程度でよくなる実態を示し、「有資格者を3分の2でよいと恒久化するのは、越えてはならない一線だ」と厳しく批判しました。塩崎厚労相は、「専門職とチームを組んで保育する」と弁明。田村氏は、「やるべきは最低基準の引き下げではなく、保育士の処遇改善だ」と強調しました。

2016年5月10日 しんぶん赤旗

 

 

【 議事録 2016年5月9日 決算委員会 】

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 初めに、熊本の地震に関して緊急に一問お聞きをします。

 被災した方々につきまして、医療費の窓口負担、これは徴収猶予という扱いが今取られています。しかし、その扱いについての周知徹底が遅れていたということもありまして、例えば益城町でも、医療機関で自宅が全半壊したという方からも医療費の徴収が行われたということをお聞きしています。今後、周知が行き渡って、一度支払ったその医療費の自己負担分返還を求められる、この場合に医療機関がどういう対応をするのかということが課題になってくると思います。

 東日本大震災のときには、こういう場合には保険者が本人に一度支払った医療費を返還する、こういう事務連絡が出されていますけれども、やはりこういう対応、早め早めに手を打つことが求められると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 医療費の一部負担金、窓口負担ですね、これにつきましては、熊本地震で被災をされて対象となる保険者に加入をされている方は、医療機関等の窓口に被災して住宅が全半壊等をしているといった旨を申し出ていただければ一部負担金の支払が当面猶予される、さらに、熊本県内の全ての市町村国保、それから高齢者の医療制度、それから協会けんぽ、これに加入されている方々につきましては猶予された一部負担金は免除をされると、こういう扱いになっております。

 しかし、今お尋ねのとおり、免除の対象となる方が医療機関の窓口で誤って支払ってしまうというケースがあった場合につきましては、東日本大震災の際の取扱いと同様に、後日、保険者に申請いただくことによって還付を受けることができるようにする必要があると考えておりまして、今後、事務連絡等で速やかに示してまいりたいと考えているところでございます。

○田村智子君 あわせて、これは厚労省というより県が対応しなければならないことなんですが、ちょっと厚労省にも関心を持っていただきたい点を要望しておきます。

 熊本市から遠隔避難をした高齢者の方が、避難先の自治体で介護サービスを利用しようとした、ところが、ケアマネから、避難先に住所を変更しない限りショートステイと入所は利用できない、通所サービスの場合は利用できるけれども、その場合も、熊本市の担当ケアマネを呼んできてもらって、家族と御本人とで担当者会議を開いて新たにケアプランを作成した上で署名、契約しなければ駄目だと言われてしまって、事実上、介護サービスが受けられないという事態になってしまっている、こういう案件が直接に私の下に寄せられました。

 これ、私どもも、党の県議が直接に聞き取って、県にまともに対応しなさいということを求めていきますけれども、是非介護保険の通知、これ周知などを行って、避難をした方、ただでも大変なんですから、そういう方が介護を受けられないような事態にならないようにこれは対応をお願いしておきたい。御答弁はいいです。是非、今日にでも、どうなっているんだとお聞きをいただきまして対応していただきたいというふうに要望しておきます。

 それでは、今日は、今国会で焦点となっている保育所の待機児童対策についてお聞きします。

 安倍内閣は、市町村が関与しない企業主導型保育で五万人の受皿をつくるということを待機児童対策の柱にして、これを推進するための法律、これは内閣委員会で私も質問をいたしましたけれども、既に成立をしています。企業主導型保育は認可外の事業で、資格のある保育士さんは保育をする方の二分の一以上置いていればいいとか、施設や設備は認可外施設に準ずるという、こういう基準になってしまっています。これでは保育の質が置き去りにされる、命に関わる事故が起きかねないということを私は内閣委員会でも厳しく指摘をいたしました。

 実は、この法案の審議のさなか、今年三月に、この企業主導型保育が行おうとしている、複数企業が共同で設置をするという事業所内保育所で死亡事故が発生していたということが四月に入って分かりました。キッズスクウェア日本橋室町、育休明けで通い始めた一歳二か月の子供さんがうつ伏せ寝で一人だけ部屋に置かれて、約二時間後に死後硬直が始まったと思われる状態で発見されました。本当に痛ましい事故です。

 まずお聞きします。保育施設における死亡事故の報告、直近の死亡事故の件数、そのうち睡眠中、またうつ伏せ寝が確認されたという件数、これを教えてください。

○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。

 平成二十七年中に報告のあった教育・保育施設等の死亡事故の件数は十四件でございます。その十四件の施設類型別の内訳につきましては、幼保連携型認定こども園が一件、認可保育園二件、小規模保育事業一件、地方単独保育施設一件、その他認可外保育施設九件でございます。また、死亡事故発生時の状況といたしまして、睡眠中は十件でございまして、そのうち、うつ伏せ寝は六件でございました。

○田村智子君 これ、うつ伏せ寝は、報告書にうつ伏せ寝にしていたということが書かれていたもので確認できたものが六件ということなんですよ。死亡事故の圧倒的は睡眠中なんです。この事故に遭われたお母さんは、家ではこの子供さん、一度もうつ伏せ寝にしてこなかったんですよ。寝返りをするようになってからも、隣で寝ている子供が動いたという気配がすると自然に目が覚めてという。これ当然、乳幼児突然死というのがうつ伏せ寝のときに起きやすいんだということをお母さんたちは知っているわけですよ。何で保育園でうつ伏せ寝にして死亡する、こういう事故が後を絶たないのかと。

 うつ伏せ寝の死亡事故は厚生労働省も繰り返し注意喚起を行って、二〇一〇年からは死亡事故報告の際にうつ伏せ寝の件数を集約するようにもなっています。それでもなお、睡眠中が最も多い、うつ伏せ寝が確認される。

 厚労大臣、なぜこんなことが起きているんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 御指摘のように、保育施設で子供が命を落とすということはあってはならないことでありまして、重大事故が発生しないように全力で取り組まなきゃいけないというふうに思っております。

 保育園における保育の内容等について厚生労働省が定めました保育所保育指針の解説書で、これは平成二十年にこのうつ伏せ寝について書き込んだわけでございますけれども、うつ伏せ寝にして放置することは避けなくてはならないこと、それから、うつ伏せにする際には、子供のそばを離れないようにして、離れる場合には、あおむけにするか、他の保育士等が見守るようにすることとなっております。あわせて、認可外保育施設の指導監督基準、ここにおきましても、乳児を寝かせる場合にはあおむけに寝かせることとするなど、うつ伏せ寝に関しては注意喚起をしてまいっているところでございます。

 さらに、本年三月三十一日には、重大事故の予防や事故発生時の対応に関するガイドラインを作成をいたしました。その中でも、医学的な理由で医師からうつ伏せ寝を勧められている場合以外は、乳児の顔が見えるあおむけに寝かせることが重要だと。そして、何よりも、一人にしないこと、寝かせ方に配慮を行うこと、安全な睡眠環境を整えることは窒息や誤飲などの事故を未然に防ぐことにつながることについて定めて、施設、事業者及び地方自治体に対して周知を行っているところでございます。

 こうした保育中における安全確保に関する情報が現場の保育士や保育施設にしっかり周知することが死亡事故等の重大事故の防止につながると考えておりまして、関係者一丸となって重大事故の再発防止に全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

○田村智子君 これ、平成二十年から周知していても毎年起きているんですよ。キッズスクウェアの事故では、保育士資格を取得して四年目の方が施設長で、この施設長が背中をさすって寝かせるようにと無資格の職員に指示をしていました。しかも、顔は壁の側を向かせて寝かせておいたので、発見されるまで誰一人顔を見て様子を確認した者はいないという、これが実態なんです。

 多くの母親は、子供の命を守るためにうつ伏せ寝について当然のように知識を持っています。なぜこの当然の知識が保育士にないのか。保育士はそれを上回る知識を培い、事故などへの対応を身に付ける、これが求められている。じゃ、そういう制度的保障があるのかということを私は検証すべきだと思います。

 例えば、保育士国家試験の受験科目、八科目あります。事故対策というのは子ども保健という科目に入るんですけれども、この子どもの保健という科目の中には大きな項目は七項目あります。ここには出てきません。さらに、二十二ある細目の中の一つという扱いで、調べてみれば、過去の試験問題でもほとんど取り上げられていません。保育士養成の課程において、もっとこの安全教育、徹底することが必要だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 御指摘のように、保育士の養成を行うことでこういった事故が起きないようにするということは大変重要な点でございます。

 この養成を行う施設におきましては、国の定める法令とかあるいは通知に基づいて保育に関する専門的知識や技術を習得させるために必要な教育を行うわけでありますけれども、保育現場における事故防止及び安全対策につきましては、保育対象の理解に関する科目であります今お話のあった子どもの保健、この教授内容に含まれているわけでありますが、この科目は、講義形式で四単位、演習形式で一単位の履修を必要としておりまして、一定の教育は行われているというふうに考えられます。

 なお、おおむね十年に一度の保育所保育指針の改定、この指針の改定につきましては昨年末から検討を始めておりまして、この改定に合わせて養成課程についても見直しを行う予定でございます。重大事故の防止につきましては、新たにガイドラインの作成等を行ったことから、養成課程の見直しに当たっては、ガイドライン等も十分踏まえて議論を行って、しっかりとした指針を作ってまいりたいというふうに考えているところでございます。また、養成課程の見直しについてもそのようにしてまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 これ、最も必要な知識の一つだと思いますので、是非とも検討してください。

 それから、保育士になってからも、これは繰り返し身に付ける研修が必要だと思います。

 加藤大臣にお聞きします。

 公定価格では、保育士一人当たり年二日研修を保障していることになっていますが、現場は大変忙しく、また、公定価格の保育士配置基準というのは実態から乖離しています。こんな公定価格どおりの保育士配置ではとても回せないというような基準になってしまっているんですね。やはり公定価格の水準、大幅に引き上げて、研修が一人一人について保障されるようにするべきではないかと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) 今、田村委員も御指摘のように、既に公定価格の中には、制度としては、基本分単価の設定に当たって、保育士の研修機会を確保する観点から、常勤保育士一人当たり年間二日分の研修代替保育士費用を追加的に評価をしているところでございます。また、さらに、質の向上を実施するための〇・三兆円の財源が確保された場合には、現行の年間二日分を年間五日分とする改善を図ることとしております。

 また、研修ではありませんけれども、例えば厚い人員配置の下でキャリアアップの体制を整備した保育所を支援するチーム保育推進加算の創設もさせていただきました。

 いずれにしても、保育士の配置やあるいは処遇の更なる改善、これは財源の確保が必要でありますが、それと併せて今後とも検討していきたいと、こういうふうに思っております。

○田村智子君 この保育の事故は、やっぱり認可外における死亡事故というのが認可施設と比べても発生率が桁違いに高いわけです。先月、内閣委員会、参考人質疑が行われまして、京都華頂大学の藤井教授、子供一人当たりにすると認可外は六十倍だというふうにも指摘をされています。

 二〇〇九年、保育施設における死亡事故報告が初めてまとめられて、その分析を行った長野県立こども病院副院長の田中哲郎氏、次のように指摘しています。認可外保育施設の事例の中には、保育体制の不備や観察不足があったと考えられ、認可保育所よりも事故の発生率が高いと。

 さらに、別の論文。平成十六年四月から二十五年十二月までの百十七か月の保育時における死亡事故について分析した論文があります。ここでは、ゼロ歳、一から二歳などの乳幼児の保育には、職員の子供の疾患についての知識、乳幼児の観察方法、異常発見時の応急手当てなど高い専門性が必要であり、同時に、監視のために十分な職員配置が求められ、子育て経験者ならば誰でも業としての保育ができるというものではない、こう指摘がされています。

 認可外の保育施設では、保育士の資格を持った人は三分の一以上いればいいよとか、企業主導型では二分の一以上でいいよと、こうされてきました。こうした人員配置基準の低さが死亡事故発生と無関係ではないと私は思いますが、厚労大臣の見解を伺います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 平成二十七年に発生をいたしました死亡事故の件数を見ますと、認可保育所で二件、地方自治体が独自に支援をしている保育施設で一件、そしてその他の認可外の保育施設で九件となっておりまして、認可保育園等に比べますと認可外の保育施設における死亡事故は多くなっていると言えるわけであります。

 死亡事故の原因は様々もちろんあるわけでありますので、施設の類型との因果関係を分析することはなかなか難しいわけでありますが、子ども・子育て支援新制度の対象でございます認可保育園などや地方自治体が独自に支援をしている保育施設では、一定の基準を満たすことを条件に公的助成そして公的関与が行われている一方で、その他の認可外の保育施設では公的な助成が行われておらず、基準についても最低限の指導監督基準にとどまっていることも死亡事故の件数の多さの背景にあるというふうにも考えられるわけであります。したがって、待機児童解消加速化プランでは、新制度の対象であります質の確保された認可保育園等の受皿を大きく増やしていくこととしているわけでございます。

 なお、この重大事故の発生防止の取組につきましては、先ほど来申し上げているように、内閣府等とともに設置をした専門家による検討会において、昨年十二月に最終取りまとめをいただきました。先ほど申し上げたガイドラインを本年三月三十一日に作成をし、そして、重大事故の再発防止のために、地方自治体による事後的な検証の実施を求める通知も発出をしたところでございまして、こうした取組に加えて、国においても、事故通告の傾向分析、あるいは再発防止の提言などを行うために四月二十一日に内閣府に有識者会議を設置したところでございまして、今後とも自治体と連携をいたしまして重大事故の防止に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 聞いたことになかなかお答えいただいていないんですけど、明らかに認可外での死亡事故発生率は高いわけですよ。やはり、当然に知識と専門性を培った保育士の配置を認可外の保育所でもどう進めるかということが求められているんだということを指摘しておきたいと思います。

 ところが、今、厚労省やっていることは全く逆行しているんですよ。児童福祉施設最低基準そのものを、これは認可保育所のものです、四月一日に改正をして、附則として九十四条から九十七条までが追加をされました。これ、まず、詳しくは後ろで言いますけれども、お聞きしたいんですけど、保育士の配置基準を定めたこの最低基準、第三十三条第二項、これ、年齢区分ごとに、例えば乳幼児だったら三人に保育士一人などの配置を決めた条文なんですけれども、これ、保育所の開所時、子供の人数に応じて常に満たすべき基準だと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(香取照幸君) 御指摘の省令の規定でございますが、保育園における年齢別の職員配置基準を示したものでございます。この基準につきましては、保育園における保育時間の間常時満たすべき基準ということで運用してきております。また、この規定は、いわゆる従うべき基準ということになりますので、都道府県等において条例を定める場合におきましても、これを下回る基準を設けることはできないということになってございます。

 なお、本年一月、御指摘のように改正によって規定を設けたわけでございますが、これは当該三十三条第二項の特例規定ということで時限的に適用することとしております。これは、特例的な取扱いに当たりましては、一定の要件を設けることによりまして、質の確保を図りながら、多様な人材の活用を図りつつ保育所の定員の確保を図るということで行ったものでございます。

○田村智子君 これまで厚労省の皆さん、待機児童対策を理由に、例えば、面積基準の緩和とか、園庭はなくていいとか、緊急時の避難設備もいいよとか、様々な設備面での規制緩和はやってきました。これ自体問題なんですが、ただ、三十三条二項に定める保育士配置の基準には手を付けてこなかったんですよ。それは、子供の安全や、やはり保育の質に直結するからです。

 ところが、今回、附則によってここに手を付けたんです。保育士じゃない者を置いていいということにしたんですよ。後で詳しく言いますが、厚労大臣、これは保育の質を引き下げるというものではないんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 安倍政権では、待機児童の解消に向けて待機児童解消加速化プランというのをやっておりますが、それに基づいて、質の確保された保育の受皿整備を従来の二倍以上のペースで進めてまいっているところでございます。また、女性の就業が今後更に進んでいくことを念頭にいたしまして、保育サービスの整備目標量を四十万人から五十万人に上積みをいたしたところでございまして、今後そのために必要となる保育人材の確保、これを進めなければならないというふうに思っております。

 そうした中で、保育士の有効求人倍率というのは二倍を超えて、東京都は五倍ということでありますが、保育士の確保は大変厳しい状況にあることから、保育士資格の新規取得者の確保、保育士の就業継続の支援、離職者の再就職の支援といった総合的な保育士の確保策を強化をしているわけでありますが、具体的には、保育士として五年間の勤務で返済を免除する奨学金制度の拡充であるとか、予算面の拡充を、保育料の一部の支援等々やっておるわけでありまして、こうした取組に加えて、今御指摘の保育の受皿整備が一段落するまでの緊急的、時限的な対応として、本年四月から朝夕などの時間帯における保育士配置要件の弾力化などを実施することとしたわけでございます。

 ただし、保育園等における保育は生涯にわたる人間形成の言ってみれば基礎を養う、培うものでありますから、専門的知識と技術を持つ保育士が中心となって行うことは大原則であるわけであります。その考え方に変わりは全くないわけで、これらの特例の活用に当たっては、保育の質を担保するために保育士を全体の三分の二以上配置をすること、それから保育士に代替する者に子育て支援員研修等の必要な研修の受講を促すことなどを求めて、専門職である保育士と一定の知識等のある者とがチームを組んで保育をする体制としておるところでございまして、保育の質を担保することとしているわけであります。保育の質をしっかり担保しながら保育の受皿整備を進めてまいらなければならないと思っております。

○田村智子君 長々答弁しなければならないんですよ、やっぱり、そうやって。質が低下するから。言い訳しているんですよ。

 お聞きします。今時限的と言ったんだけれど、それじゃ何年何月と切っているんですか、あるいは待機児童が何人までと、何人以上というふうに限定を掛けているんですか。短く答えてください、限定しているかどうかだけ。

○政府参考人(香取照幸君) 待機児童の解消につきましては、御案内の待機児童解消加速化プランというものに基づきまして、今大臣から御答弁申し上げましたが、保育の受皿の拡大について政府を挙げて取り組んでいるところでございます。

 今回の特例は、待機児童を解消し、保育士確保が困難な状況の背景にある受皿の拡大が一段落するまでの間の緊急的、時限的な対応ということになっております。

 それから、対象地域のお話でございますが、これにつきましても、対象地域の限定はしておりませんけれども、保育対策は基本的に自治事務でございますので、当該特例をどのように活用するかというのは各自治体の判断ということになりますので、一義的には条例等を制定する都道府県の指定都市、中核市において御判断いただくと。これを踏まえて、各保育所において御判断するということだと考えております。

○田村智子君 そうなんですよ、何年間ともなければ、地域の限定もないんですよ。

 じゃ、何を定めたのか。これは、保育士の一部を都道府県知事が保育士と同等の知識及び経験を有すると認めた者、これでいいっていうんですよ、置き換えて。あるいは幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭で代替できるということなんですよ。じゃ、この県知事が資格を有しないという人を充てるというときに研修を要件とするんですか。これも短く端的にお願いします。

○政府参考人(香取照幸君) 御指摘の都道府県知事が保育士と同等の知識、経験を有すると認める者についてでございますが、この特例につきましては、一つは子育て支援員の研修を修了している方、二つ目には保育園において保育業務を従事した期間が十分にある方、そして家庭的保育者等が想定されるという旨を自治体に対して通知をしているわけでございます。

 さらに、十一時間開所等に伴いまして認可基準上の保育士数を上回って必要となる保育士に関する特例につきましては、この特例により配置される方につきましては保育士資格の取得についても促していくということで、これらを通じまして保育の質の確保というものを図ってまいりたいと考えております。

○田村智子君 これで保育経験がどれくらいかというのを質問レクのときに聞きましたら、一年ぐらいあればいいと言うんですよね。常勤として入った経験が一年ぐらいあればいいと言うんですよ。

 これは元々、確かにお話あったとおり、昨年度限りとされて、早番とか遅番のときにどうしても保育士さん一人ともう一人必要だよというときに一年限りの緊急措置としてやられたことを、今度はこれを最低基準に書き込んで恒久化してしまったということなんですよ。これで、保育士一人プラス保育士以外の者、最低限保育士二人配置というのもこれでよくなってしまったわけです。しかも、認可時よりも保育時間が長くなっているような保育所、あるいは定員を超えて子供を受け入れている保育所、ここは保育士さんを更に認可時よりも増やさなきゃいけない、増やす分は保育士資格のない人を充てていいということにしてしまったわけですよ。

 ということは、長ければ長いほど、保育時間が、あるいは定員を上回って受け入れれば受け入れるほどこれは保育士でない者がその保育施設の中に増えていくって、こういうことになるんじゃないんですか。それで、限定されているのは、ただ一つの歯止めは、保育士でない人は三分の一だよと、これしか歯止めがないんじゃないですか。

○政府参考人(香取照幸君) 定員が増えますと今お話しのように三分の一ということですが、保育士以外の方も増えますが、そもそもそれに伴って保育士資格の要る者も同じように増えていくことになりますので、大きくなればなるほど資格外の人が増えるという構造ではないと思います。

 今回の三分の一につきましては、御議論確かにいろいろあろうかと思いますけれども、私どもとしては、保育現場において保育士と保育士以外の人がチームを組んで対応する、言わばそういう形で保育士の業務をサポートするという形でこういった支援員の方々を活用すると。全体として非常に大量の待機児童を抱えている中でどのようにして保育の定員を確保していくかという中で様々御議論させていただき、保育団体あるいは自治体とも御議論させていただいて今回の措置を実施したというものでございます。

○田村智子君 これどうなるかということを私、試算をしてみました。資料を御覧ください。認可定員六十人、十二時間開所、定員一二〇%で子供を受け入れている実際の保育園を基にした試算です。

 保育のコア時間、八時三十分から十六時三十分、人員配置の最低基準は八人、保育士は三分の二でよいとなると六人、非資格者が二人になります。十六時三十分から十八時、保育士四人、非資格者二人、これをモデルにした、実在するA保育所としますけれども、この保育所では実際には最低基準を上回る保育士配置をやっているわけですよ。下にありますけれども、八時三十分から十六時三十分には十一人の保育士がいます。恐らく多くの保育所が同じような人員配置をしていると思います。

 これ、規制緩和を求めてきたのは企業ですよ。そういう企業が利益を目的にして国が言うぎりぎりのところまでの保育士配置でいいよということになってしまうと、真面目にやっている保育所と格段の差が認可保育所でも出てしまうということになるわけですね。有資格者五割程度になっちゃう。

 二枚目は認可定員九十人の例ですけれども、これで見ると、八時三十分から十八時三十分まで全ての時間帯で保育士と非資格者は二対一、こういうことが起き得るという結果になってしまったわけですよ。

 これ実は、こういう基準について検討した保育士等確保対策検討会、厚労省の保育課長は、重大事故がいつ起きているかと質問されて、午睡中、お昼寝ですね、午睡中と食事中とプール遊びの時間の三つの時間帯に多く発生するというのが専門家の間でも言われている、実際に発生しているのもそういう時間帯だ、こういう説明を行っているんです。だから、この検討会の報告書は日中のコアタイムの保育の質確保に最大限配慮することが必要だと、こう書かれたんですよ。ところが、出された最低基準はこのコアタイムでさえも保育士は三分の二でいいと。

 今度の規制緩和は厚労省が踏み越えてはならない一線を越えた、こういう規制緩和だという認識が、厚労大臣、おありですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほどお答え申し上げたとおり、待機児童が解消を求められるほどたくさんおられるという状況、一方で、保育士の人手不足ということでなかなか有効求人倍率も高いと。そういう中で、どのようにして質の確保をしながら保育所の整備を行っていくか、受皿をつくっていくか、こういう問題を同時に解決をしなきゃいけないというふうに考えております。

 この待機児童の解消に向けては、私どもの加速化プランに基づいて保育の受皿拡大を進めてまいっておりますけれども、保育士の確保が難しい状況を踏まえて総合的な保育人材の確保策を強化する中で、時限的な対応として保育士以外の多様な人材の活用を行うということでございます。

 この場合でも、保育園等における保育は、生涯にわたる、先ほど申し上げたように専門的な知識に基づく保育士が中心となって行うことが大原則でありますので、それは変わりなく、専門職である保育士と一定の知識等のある者がチームを組んで保育をする体制とするということで保育の質と受皿を両方確保していくということにしているわけでありまして、保育の受皿拡大は質を確保しながら進めていく必要があるということは何ら変わりがないことでありまして、今後ともこうした方針の下で両方しっかりと進めていかなければならないと考えているところでございます。

○田村智子君 これ、認可外の保育所では、この四月にも大阪でうつ伏せ寝の死亡事故が起きているんですよ。皆さん一体何を学んでいるのかと言わなければなりません。

 これまで必要な人員全て保育士だとされてきた小規模保育Aや保育所型事業所内保育についても同様の規制緩和が行われています。先ほどから保育士の確保が大変だから大変だからと。だから私たちは処遇の改善をやれと求めてきたわけですよ、これこそが求められていることではないのかと。

 これ、お聞きしますけど、総理は、じゃ、この保育士の処遇、来年度は二%引き上げて、更に経験年数による上乗せする、こうやって言っていますけれども、来年度はそもそも消費税一〇%に引き上げて保育士の処遇改善を行うということはずっと説明されてきました。その来年度、消費税一〇%に伴う処遇改善、何%というふうに説明されてきましたか。

○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。

 保育士等の処遇改善につきましては、政府の子ども・子育て会議におきまして取りまとめられたいわゆる一兆円超のメニューの中に位置付けられております。このメニューの中におきましては、消費税財源から確保する〇・七兆円で実施するメニューとそれ以外の〇・三兆円超の財源を確保して実施するメニューに分けております。

 政府といたしましては、平成二十七年度当初予算におきまして、いわゆる〇・七兆円メニューの一つとして、まずは三%分の保育士等の処遇改善は既に行ったところでございます。残りの更なる二%の処遇改善の実施につきましては、御指摘のとおり、残されたいわゆる〇・三兆円超のメニューの中に位置付けられているところでございます。

○田村智子君 元々二%は消費税の増税に伴ってやりますよと言ってきたことを、あたかも何か安倍総理が決断したかのように説明をされると。これじゃ、むしろ処遇改善を本気でやる気があるのかと、こういう疑問さえ湧くわけですよ。そこはやらずに、最低基準引き下げて保育士でなくてもいいよという。

 加藤大臣、私は余りに情けないと思いますよ。公共事業費や軍事費、まあ防衛予算と呼んでもいいですけれども、これは伸ばすんだと。だけど、保育の予算は、こうやって伸ばせと言っているところにけちけちけちけち、ことしかやっていかない、これでいいのかということが問われているんだと思いますよ。やるべきは最低基準の引下げじゃないですよ、保育士の処遇改善だと思いますが、加藤大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) 保育士の処遇改善については、ニッポン一億総活躍プラン、今取りまとめに向けて作業しておりますけれども、処遇の改善、多様な人材の育成、高齢者等の活用、生産性向上を通じた労働負担の軽減、やりがいを持って安心、快適に働ける環境の整備といった総合的な対策を盛り込んでいき、また安定財源を確保しながら二十九年度から実行していくこととしていきたいと考えております。

 保育士の処遇については、今政府委員からも御答弁させていただきましたけれども、三党合意では、一兆円で五%、そのうち消費税を充てる七千億で三%ということで、この消費税を充てる三%分は既に実施をしております。残りの二%は消費税以外の財源でこれを確保してこなきゃならない。その二%分もやろうという意思を示させていただいているわけであります。

 これに加えて、キャリアアップの仕組みを構築し、保育士として技能経験を積んだ職員について、全産業の女性労働者との差も踏まえながら、賃金差がなくなるよう追加的な処遇改善も行ってまいりたい、このように考えております。

○田村智子君 子供の命や育ちに時限的措置だから仕方がないなんということは絶対にあり得ないですよ。引き続き追及したいと思います。

 終わります。

 


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