日本共産党の田村智子議員は25日の参院決算委員会で、羽田空港の増便にともない国交省が東京都内の住宅密集地を低空で飛行するルートを計画している問題を取り上げ、住民生活を脅かすとして撤回を求めました。
田村氏は、計画に対し都内各地の住民から騒音や安全性への不安が出ていると指摘。大井町(品川区)付近では高度305メートルの低空飛行により、走行中の地下鉄レベルの騒音が発生するとされるなど各地の影響を示し、今まで海に落ちていた機体付着の氷の塊や、部品が保育所や学校、病院がひしめく住宅街に落ちる危険を指摘しました。
国交省の佐藤善信航空局長は「羽田空港の機能強化は不可欠。関係自治体に説明していく」と答弁しました。
田村氏は、国交省による住民説明会は会場にパネルを張り出すのみだと批判。国交省職員によるまとまった説明を行い、質問に答える説明会開催を求めました。石井啓一国交相は「ホームページや特設電話窓口などを活用し、住民の幅広い理解がもらえるよう努める」と述べました。
田村氏は、「原則として国は、飛行ルートを設定する上でさまざまな制約を関係自治体などと取り決めている」と述べ、大田区との間では「京浜島上空を飛行しない」としている事例を紹介。「自治体との約束をほごにするのか。住民の安全性をさしおいた(空港の)機能強化はありえない」と批判しました。
2016年4月19日 しんぶん赤旗
(議事録 4月25日 決算委員会)
○田村智子君 では次に、羽田空港の増便に伴う航路の変更についてお聞きします。
羽田空港を発着する国際線の便数を増やすために、現在、国交省は東京都心上空を飛行する新設ルートを計画しています。
資料をお配りしました。見てください。
これ、南風到着便、午後三時から七時、東京二十三区の北西から南東方向にまさに都内を縦断するわけです。そうすると、港区の麻布や、あるいは恵比寿、渋谷の付近などでは、スカイツリーよりも低い約六百十メートル、五反田駅や品川駅周辺で四百五十メートル、大井町付近で三百五メートルと、住宅密集地をかなりの低空で飛行することになり、昨年から、品川区、大田区を始め住民の方々から騒音や安全性への不安が出されています。
二〇一三年十一月、国交省の資料では、「首都圏空港の機能強化に係る検討について」にこのようにあるんですね。陸域への騒音影響軽減のため、基本的にできるだけ海上方向に飛行ルートを設定する必要がある、防災のため石油コンビナート地区上空を回避する必要がある。これは当然のことだと思いますが、国交省はこの基本的な姿勢を変えたということでしょうか。
○政府参考人(佐藤善信君) お答え申し上げます。
羽田空港の飛行経路につきましては、これまで、陸域での騒音影響を可能な限り抑制するという観点から、羽田空港が東京湾に面するという地理的条件を生かし、東京湾を最大限に活用するという考え方で設定してまいりました。現在でも、陸域への騒音影響を最小限に抑えたいという考えに変わりはありません。
一方で、急増する訪日外国人旅行者の受入れ、我が国の国際競争力の強化、地方創生、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への対応等のため羽田空港の機能強化が不可欠となる中、あらゆる方策を技術的に検討した結果、飛行経路の見直し以外実現方策がないというのが現状であります。また、最新の航空機は、かつての航空機に比べ、大幅に音が静かになっているということも考慮させていただきました。
こうしたことから、国土交通省としては、できる限り環境影響等を小さくした上で、飛行経路の見直し等により羽田空港を機能強化することを関係自治体、そして住民の皆様に提案させていただいた次第であります。
○田村智子君 これ、一時間の発着回数は今の八十回から九十回に拡大をして、一時間最大四十四機の着陸ということになるわけです。予想される騒音、高度六百メートルの渋谷区で六十八から七十四デシベル、約三百メートルの品川区で約七十六から八十デシベル、大井町は最大八十四デシベルというふうに見込まれるわけです。これどれぐらいかというと、幹線道路周辺の騒音というのが七十デシベル、走行中の地下鉄の車内が八十デシベルということで、かなりの騒音が町を覆うことになります。
これ、国際競争力のためには住民はこの騒音を我慢して当然ということなんでしょうか。国交大臣にお聞きします。
○国務大臣(石井啓一君) 我が国にとりまして必要不可欠である羽田空港の機能強化を実現するために、できる限り環境影響等を小さくした上で飛行経路を見直させていただきたいと、関係自治体、住民の皆様に提案をさせていただきました。
国土交通省といたしましては、より多くの住民の方々に幅広い御理解をいただくことが重要と考えまして、二回にわたり、延べ三十四会場、合計九十五日間、住民説明会を開催をさせていただきまして、一万件を超える多様な御意見をいただきました。
今後は、こうした声も踏まえまして、飛行経路の運用方法の工夫、環境対策、安全対策など多面的に検討した上で、できる限り環境影響等を小さくするよう対策を具体化してまいりたいと考えております。
○田村智子君 今安全対策というふうに言われたんですけど、例えば成田空港の周辺、昨年度は五件、氷の塊や部品の落下があって二十数年来最多となり、千葉県の知事から国交省航空局長宛てに対策を強く求める緊急要請を出されています。
羽田空港は落下物ゼロという報告なんですが、これは海の上に落ちているので確認のしようがないということなんですね。特に着陸直前というのは、車輪を下げるときに、上空で機体に付いた氷の塊、これが一緒に落下してしまう、こういう事故は珍しくないわけです。
今までは海に落ちていた。今度は住宅密集地に落ちる危険性がある。一体どのように人や住宅を直撃する危険性を避けるのか、このことはどうですか、大臣。
○政府参考人(佐藤善信君) お答え申し上げます。
ねじなどの部品や機体に付着した氷など、航空機からの落下物への対策は重大な課題と認識をしております。このため、航空会社に対しまして、出発前の点検や整備を徹底するとともに、部品の落下が発見された場合には報告を求め、原因分析と再発防止策を徹底するよう指導しているところであります。また、国、航空会社、空港会社から成る会議を定期的に開催し、落下物の発生状況等について情報共有を進め、関係者が連携して対策を検討しております。
引き続き、地域住民の皆さんの不安の払拭に向け様々な対策に取り組むとともに、適切な情報発信に努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ、氷の塊とかは整備していても難しいわけですよ、上空で付いちゃうわけですから。これが住宅密集地に落ちたらどうなるかということなんですね。だから陸路は取らないようにしてきたわけですよ。
国は、飛行ルートを設定するときには様々な制約を関係自治体と取り決めています。例えば大田区との間では、原則として航空機は京浜島上空を飛行しないという約束をしています。また川崎市では、市の防災計画に、東京国際空港に離発着する航空機は原則として川崎石油コンビナート地域上空を避け、適切な飛行コースとするとあるわけですよ。
ところが、資料を見てください。これ離陸なんですけど、離陸してすぐに川崎のコンビナートを飛ぶわけですよ、Bと書いてあるところですけど。これ、この僅かな距離で、川崎にあるような、三千フィート、九百メートル、なるんですか、石油コンビナートの上。こういう新ルートの設定は自治体との約束をほごにするものだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 京浜島や川崎石油コンビナート地域の上空飛行につきましては、騒音、安全性等への地元からの懸念を受けまして、航空局として自主的に制限を設けてまいりました。
今般、羽田空港の機能強化が不可欠となる中、あらゆる方策を技術的に検討した結果、飛行経路の見直し以外実現方策がないのが現状でございます。そのため、国土交通省といたしましては、飛行経路の運用方法の工夫、環境対策、安全対策など多面的に検討し、できる限り環境影響等を小さくした上で、飛行経路の見直し等により羽田空港を機能強化させていただきたいと考えております。
今般の飛行経路の見直しによりまして、南風のときの午後三時から七時に限りまして京浜島や川崎石油コンビナート地域の上空を羽田空港が離発着する航空機の一部が飛行することとなりますが、引き続き、関係自治体等との協議を進めていくとともに、住民の皆様へ幅広い御理解をいただけるよう努めてまいりたいと思います。
○田村智子君 これ、川崎コンビナートでいえば、安全性の問題で防災計画で九百メートル以上と決めているわけですよ。それを時間を制限すればほごにしていいなんということにならないですよ。安全を差しおいた機能強化なんというのはあり得ないですよ。
住民の皆さんは国交省の説明に全く納得していないですよ。先ほど、九十五日間説明会をやってきたと言いますけれども、十八会場でやられている説明会、オープンハウス型なんですよ。パネルが張ってあるだけで、来場者が来て自分で見る、そして質問があればそこにいる職員に質問する、で、それに答えてもらう、こういうやり方なんですね。
住民からは、そうではなくて、教室型でまとまった説明をやり、まとまった質問ができて、誰が責任を持って回答したかということが明らかになるような説明会をやってほしい、再三にわたって求められています。これ、大田区議会では、オープンハウス型ではない説明会を求めるという、こういう陳情も採択をされました。ところが一向に行われない。また、この飛行空路のところには、住民だけではありません、保育所、幼稚園、学校、病院、これもひしめいています。そういう利用者の皆さんにも私は説明が必要だと思います。
大臣、これオープン型しかやらないという対応なんですよ、説明を聞いても。教室型やると国交省約束してくれないんですよ。住民が求めれば、自治体が求めれば教室型の説明会も行うということ、せめてこれはこの場で約束をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 羽田空港の機能強化につきましては、より多くの住民の方々に幅広い御理解をいただくことが重要と考えております。そのために、住民説明会につきましては、できるだけ多くの方に参加していただくこと、参加者一人一人について意見、質問、懸念等を聴取し、きめ細やかな情報提供を行うことが望ましいと考えたところでございます。
このような観点から、専門家の意見も聞きつつ関係自治体とも調整した結果、オープンハウス型で開催することといたしまして、これまで二回にわたり住民説明会を行ってまいりました。また、空港周辺等の特に影響が大きい地域につきましては、オープンハウス型説明会に加えまして、住民の方々の御意見等をよりきめ細やかにお伺いする機会を設けてまいりました。
羽田空港機能強化の実現に向けまして、ホームページ、特設電話窓口等を活用し、引き続き住民の皆様の幅広い御理解をいただけるよう努めてまいりたいと存じます。
○田村智子君 これ、住民は全く納得していませんので、重ねて教室型の説明会も求めて、終わります。