国会会議録

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保育士は正規雇用に 田村智子氏 「政治の喫緊課題」

日本共産党の田村智子議員は13日の参院決算委員会で、保育士など公務職場で増加している非正規雇用の問題を追及、保育士不足の解決に向けた処遇改善が「政治の喫緊の課題だ」として正規雇用の拡充や定数削減中止を求めました。

 田村氏は、市区町村の保育士について、非正規職員が2012年に全体の53%に増えた実態を指摘。13年間も正規職員を採用せず15年度末時点で34歳以下の保育士がゼロとなった東京都江戸川区や、同様のやり方で公立保育所の全廃を狙う中野区の例を示し、「人材育成が大きくゆがむ」と批判。大阪市では非正規のみの募集で保育士が確保できず、15年度までの3年間で公立保育所の定員を394人も減らしたと述べ、「正規職員を採用しないやり方が、もっとも切実な住民要求に応える業務を後退させている」と追及しました。

 高市早苗総務相は「(雇用形態や処遇は)自治体が責任を持って適切に判断すべきだ」と無責任な答弁に終始しました。田村氏は「これでは保育士の処遇改善にも逆行する」と批判しました。

 田村氏は非正規職員の不安定な働き方の実態を示し、公務労働者の経験などに見合った正規雇用化や、短時間勤務者の任期なし雇用の制度化を要求。消極的な答弁の総務相に対し「正規化を進めるという安倍政権の宣伝はまったくの看板倒れだ」と批判しました。

 

2016年4月15日(金) しんぶん赤旗

 

(速記録 2016年⒋月13日 決算委員会)

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 公務職場における非正規の問題についてお聞きをします。

 まず、基本的な認識として、自治体の恒常的な公務は正規で充てるべきであると政府は述べてきました。その理由をお聞かせください。

○政府参考人(北崎秀一君) お答えいたします。

 地方公共団体の運営においては、一つには、公務の中立性の確保や職員の長期育成を基礎とし、二つには、職員が職務に安んじて精励することを通じ、能率性を追求し、質を担保することが求められております。このために、基本的に競争試験を通じた成績主義に基づき採用される任期の定めのない常勤職員、いわゆる正規職員が中心となることを原則としているものと承知をしております。

 以上です。

○田村智子君 総務省は、二〇〇五年、八年、一二年に、非常勤・臨時的任用の公務員の実態調査を行っています。

 資料を配付いたしました。これは、総務省の調査を基に、正規、非正規の人数とその割合を計算したものです。

 〇五年と一二年の比較で見ますと、非正規の職員は全体で四十五万六千人弱から六十万三千人超に、割合も一三%から一八%近くにまで増えています。中でも、保育士等、ここを見ていただきますと、市区町村、一番右側になるでしょうか、非正規の割合、これ、二〇〇五年は四二%、二〇一二年は五三%にまで増加をしています。この総務省の調査では、週当たりの平均労働時間、臨時的任用で三十七時間を超えているんです。そうすると、正規職員とほとんど変わらない働き方だということも分かります。

 一昨年も私、決算委員会でこの非正規の問題取り上げました。当時、新藤総務大臣は、非正規の職員増は住民サービスの向上に充てられているのだろうという答弁でした。保育に当てはめて言えば、延長保育などに短時間勤務の保育士を充てているという説明だと思います。

 しかし、延長保育等が進んでいるからというだけではとても説明が付きません。五割を超える非正規の職員がいる、これは恒常的業務を非正規の任用の保育士が担っているということになるのではないでしょうか。

○政府参考人(北崎秀一君) お答えします。

 地方公共団体においては、早朝保育や延長保育など多様な行政サービスに対応していく必要があるとともに、働く側におきましても様々な働き方へのニーズがあります。一方、公立保育所の運営に当たって、将来の民営化を見据えたり、一時的な保育需要の増加に対応する必要がある場合もございます。これらのニーズに対応するための人的体制の確保については、各地方公共団体が法令に基づき責任を持って適切に行うべきものであります。

 その際、いわゆる正規職員を適切に配置するとともに、必要に応じ臨時・非常勤職員を任用するなど、それぞれの組織において最適な人員構成を実現することで、最も効率的な行政サービスの提供に向けた様々な工夫が重ねられているものと理解をしております。

 以上であります。

○田村智子君 五割超えて非正規の方が働いていて、今のような説明はとてもじゃないけれども通用しないと。まあ後の方でももっと見ていきたいと思います。

 そもそも自治体の仕事というのは、この間、政策的にも、例えば子ども・子育て新制度が始まっています。介護の要支援の方は地域支援サービスに移行をされました。困窮者自立支援も始まっています。業務量は相当に政策的にも増えているはずなんです。ところが、定員削減は今も止まらない。となれば、基幹的、恒常的な業務を非常勤や臨時的任用の職員が担っているとしか考えられないわけです。

 ところが、こういう実態をつかみたくても、例えば総務省に職種ごとの非正規の割合を示してほしいと、私、この質問に当たって資料要求しました。この配付した資料では、保育士等、看護師等、教員等とありますが、この部分については私の事務所で計算をしたものなんですよ。一向に出していただけないんです。民間については、毎年の労働力調査で非正規労働者の割合など実態の把握がなされています。ところが、地方公務員についてはこれが出てこない。

 是非、これは大臣にお願いしたいんですけれども、実態つかむ必要あると思います、今のような御説明が通用するような実態なのかどうか。まず、毎年定員調査、公務員について行っているんですから、併せて非正規の任用の公務員について、職種ごとに、任用種別ごとに人数等を調査すべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(高市早苗君) 臨時・非常勤職員の実態調査につきましては、これまで必要に応じて、平成十七年、平成二十年、平成二十四年の三回実施しました。その後、総務省として平成二十六年七月に通知を発出して、地方公務員の臨時・非常勤職員について、地方公務員法等における制度の趣旨、職務の内容に応じた任用、勤務条件の確保に関して助言を行いました。各地方団体におかれましても、それぞれの実情に応じて、通知の趣旨を踏まえた対応について検討を進めていただいていると考えています。

 このような検討ですが、各方面との様々な調整も必要で、一定の期間は要すると考えています。今後の取組状況をしっかりと見極めますとともに、適切な時期に実態について調査を実施します。取組の進捗状況についてフォローアップは行い、臨時・非常勤職員の必要な勤務条件の確保に取り組んでまいります。

 ただ、毎年調査を実施すべきという御指摘かと思いますが、臨時・非常勤職員の数が約六十万人に及んでおり、また勤務形態が様々でございますので、毎年行うということになりますと、地方公共団体の事務負担も考慮しましたら、そこは少し慎重に検討すべきだと考えております。適切な時期に調査は行います。

○田村智子君 民間ではやっているんですから、公務はできないという話にならないと思いますし、もうコンピューター化されているわけですから、給与支払の実態などを見れば出てくるはずなんですよ。是非やっていただきたいということを重ねて要望しておきます。

 先ほど例に挙げた保育士なんですけれども、今、保育士不足の解決のため、処遇の改善ということが政治の喫緊の課題になっています。公立保育所というのは保育士の処遇を保障してきたし、公私間格差の是正で民間の改善を進めるということが今求められていると思います。

 ところが、この公立保育所にも定員削減が激しく行われている自治体があります。東京都江戸川区、この十三年間正規の保育士の採用はしていません。そのため、今年三月の時点で三十四歳以下の正規の保育士は誰一人いません。ゼロです。三十九歳以下の保育士よりも五十五歳以上の方が圧倒的に多いという、こういう事態にまでなっています。中野区も十年にわたって退職者を不補充、足りない人員は非正規と、こういうやり方で公立保育所を減らす、あるいは中野区は全廃を目指しているわけです。これは保育政策としてもちろん看過できないやり方ですけれども、自治体の専門職の育成という観点からも大きな問題があると思います。

 総務省は、冒頭の質問でも、長期的な人材育成、この必要性が強調されたわけです。通知などでもそのことが示されてきました。公立の施設がありながら、そこで業務が行われていながら、その業務を担当する専門職を長期にわたって採用しない。これでは人材育成が大きくゆがむと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(高市早苗君) 今の個別具体の事例についてお話がございましたけれども、地方公共団体では、質の高い公共サービスを効率的、効果的に提供するという観点から、それぞれの地域の実情に応じて公共サービスの内容ですとか提供方法ですとか、提供主体に工夫を凝らして地域のニーズに応えておられると認識をしています。総務省としましては、各地方公共団体の正規職員の定員管理につきましては、地域の実情を踏まえながら自主的に適正な定員管理の推進に取り組んでいただくように助言をしております。

 この地方公共団体の職員数ですが、平成七年から二十一年連続して減少していますが、各団体においては、厳しい財政状況の中で公共サービスを十分に確保するために、民間の能力ですとかノウハウを活用する民間委託の推進などを計画的に進めていただくことなどによって総職員数を抑制する一方で、行政需要の変化に応じて防災などの職員数、それからまた福祉事務所や児童相談所などの職員数を増加させるといった形で、地域の実情に応じてめり張りのある人員配置を行っておられます。

 引き続き、各団体に応じて、これは地域の実情に応じて適正な定員管理を推進していただく、めり張りのある人員配置によって正規職員の人材育成にも取り組んでいただくということが重要だと考えております。

○田村智子君 若い保育士が全員非正規というのが果たしてサービスの質を向上させているんだろうかと非常に疑問ですし、もう一つ事例を挙げましょう。

 大阪市、二〇一三年度から三年間、やはり保育士の正規採用をしていません。任期付職員、非常勤の職員で補充をしているわけです。ところが、これでは保育士が確保できない。二〇一四年度、三歳児を中心に百三十四人、一五年度、ゼロから二歳児で二百十五人、今年度、ゼロ歳児を中心に四十五人、この三年間で三百九十四人も公立保育所の定員を減らしてしまいました。大阪市は、入所を申し込んでも認可保育所に入れなかったという子供さんは毎年約三千人いるわけですよ。公立保育所が四百人も定員減らしちゃっているんですよ。私、一体何やっているんだろうかと怒りを禁じ得ません。

 大阪市の資料を見ますと、正規の保育士、平均の給与の月額、約三十六万円です。任期付きの方は十八万八千六百円ですよ。これ正規で募集すれば保育士確保がこれほど困難になるということはまず考えられない。正規の職員を採用しないというこのやり方が、最も切実な住民要求に応える業務を後退させている。こういう実態をどう思われますか。

○国務大臣(高市早苗君) 個別団体が取っておられる方針についてコメントすることは差し控えたいと存じます。

 保育所を含めて、どのような業務に任期付きの職員を充てるか、また処遇などにつきましては、各地方公共団体において制度の趣旨を踏まえて責任を持って適切に判断されるべきものと認識しております。引き続き、やはり各団体において地域の実情に応じて正規職員の適正な定員管理を推進するということとともに、必要に応じて任期付きの職員を含めた多様な勤務形態の職員を適切に活用されて、公共サービスの確保に工夫を凝らして取り組まれるということが重要だと考えております。

 それぞれの自治体において、首長がいらっしゃいます。また議会もあります。そのような中で、住民の声を聞き、そしてまた地域の実情に応じた対応をしっかり取っていかれるということが何より重要だと考えます。

○田村智子君 待機児の問題を解決するためには、自治体が持っている基準を緩和しろということは政府を言ったわけですよ。定員減らしているようなところに対して、だったら正規で雇いましょうよと、保育士の確保に努力してくださいと、私は、それぐらいのことを言ってもいいんじゃないだろうかと本当に思いますね。

 東京の公立保育園、これ非正規の職員について調査が行われて、それをまとめた「私たち非正規保育者です」という本が昨年出版されました。これを読んで、本当に驚きました。

 例えば、非正規の場合、任期は半年以内で、更新回数にも上限があります。まあ実際には上限の年限を超えて任用される人が、空白期間を置くなどして、多いわけですね。そうすると、この中で出てくる実態は、半年働いた後、半年後にまたお願いねと言われる、でも、私も遊んで暮らしている場合ではない、しかも退職扱いになってしまうので社会保険の手続も全てやり直さなければならない、こういう声が出ています。

 また、非正規だからといって子供の家庭情報を教えてもらえないまま保育をやっているとか、トイレ掃除や布団の片付けなど、これは全部非正規がやることになっていて、子供の着替えを手伝っている途中でもその子供のそばから離れてそういうことを非正規の方々、やっていくと。これは私は、子供たちにとっても、あるいはそこで働いている方々にとっても悪影響をとっても広げていると思います。

 安倍総理は、非正規の正規化を進めるんだと、これは強調されているわけですよ。じゃ、公務員どうするのか。まさに政策が問われています。一九五〇年代、六〇年代、定員外の職員という存在が非常に問題となって、このときは財政措置も行って定員化が進められました。常勤職員の比率を上げるために、今も財政措置を含めた具体的で有効な対策を取るべきではないのかということを求めたい。

 また、あわせて、既に十年、二十年、非正規で同じ職場で働いているという方います、同じ業種で。こういう方々がペーパー試験でもう一度ゼロからの出発でいいんだろうかと。その方々の積んできた経験、その知識に見合ったような正規採用の方法も検討すべきじゃないかと思いますが、大臣、是非ここは前向きな答弁をお願いしたいと思います。

○国務大臣(高市早苗君) 先ほど来、保育の現場のお話をいろいろいただきましたけれども、やはり、例えば今挙げていただいた大阪のお話でございますが、これも民間保育所との連携によって保育サービスが全体として低下しないように努めておられます。公立保育所だけで見ると、入所定員の減少ですとか、またニーズが少ない地域において閉鎖するといった事例もございます。

 また、全国各地、それぞれ地方公共団体で御判断いただくことですけれども、公設民営化によってやはりサービスは低下しないようにと、必ずしも公務員の正規ということではないけれども、それぞれの園で採用するという形で取り組んでおられるところもございますので、やはり地域の実情に応じてしっかりと行政サービスの質の低下がないように工夫をして取り組んでいかれるということが重要だと思っております。

○田村智子君 それでは非正規の処遇改善にもならないし、保育士の処遇改善にもつながっていかないというふうに思うんですよ。

 今日、私、対決というよりもできるだけ提案型で質問をしているのに、こうも冷たく答弁が返ってくるというのは本当に、むしろ腹立たしくなってきます。

 もう一つ提案型で私、お願いしたいことは、恒常的な短時間勤務の職員、これを公務の場でどう位置付けていくのかということ、ここは是非前向きに検討いただきたいんです。

 例えば保育所では、朝や夕方の延長保育を短時間勤務で担う保育士さんが必要です。本人も短時間勤務ということを希望する場合もあります。また、難病を抱えていらっしゃる、あるいは障害をお持ちの方、これ週四十時間では働けないけれど、もっと時間が制限されていれば働けるという方はいらっしゃるわけですね。ところが、短時間勤務の場合、公務では任用期間がどうしても区切られてしまう。大体一年で区切られてしまう。これでは不安定な働き方を余儀なくされてしまうわけです。

 こういう方々の公平な処遇を保障するという観点から、私は是非、短時間、任期なしという雇用の制度化、これを検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(高市早苗君) 任期の定めのない短時間勤務職員制度ということですが、長期的な人事管理に困難が予想されるといった御指摘もございます。様々検討すべき課題があると考えています。民間においても契約期間の定めのない短時間正社員制度といった雇用形態については、現時点ではまだ一般的と言い難い状況だと認識をしております。ですから、基本的に任期の定めのない常勤職員を中心とする公務の運営の原則というものは維持されるべきだと考えています。

 やはり、民間労働法制の今後の議論の動向ですとか、あと短時間の正社員制度の普及状況ですとか、あるいは国家公務員における動向、こういったものを踏まえながら、様々な観点から議論、検討していく必要があると思っております。

○田村智子君 ダイバーシティーとか多様な働き方、その本人の状態に応じた多様な働き方というのは、今政策的に進めようと言っているわけですよ。それを公務の職場でどうするかということを問うているわけで、今の御答弁ずっと聞いていますと、これ、公務が最も取り残されていきますよ。非正規の処遇の改善とか非正規の正規化とか、何にも手を打たないということになってしまう。それではとても、何というんでしょうか、本当にもう、安倍政権は雇用を応援します、労働者を応援しますと、全くの看板倒れだというふうに言わなくちゃいけないというふうに思います。

 今日はちょっともう一つ、どうしてもトップランナーについても聞きたいので、次に進みます。

 高市大臣、昨年十一月、経済財政諮問会議でいわゆるトップランナー方式、提起をされました。これは自治体業務の民間委託や指定管理者制度を更に推進するために、歳出を抑えた自治体の事例を基準にして地方交付税を積算するというやり方で、単位費用が計上されている二十三業務について適用する方針だと。今年度予算では既に十六業種について実施が始まり、来年度からは残る九業種について検討をしていくと。

 学校用務員事務、今年度から五年掛けて小中学校一校当たり三百七十万七千円の基準額を二百九十二万七千円に引き下げると。用務員の事務の経費というのは、まさに人件費だと私は思うんですね。安倍政権、賃上げとあれだけ強調しながら、じゃ、学校の用務事務というところは民間委託をして賃下げをしろというふうに求めるということなんでしょうか。

○国務大臣(高市早苗君) 賃下げをしろということではございません。

 地方交付税の算定において、二十八年度から学校用務員事務を含めて十六業務についてトップランナー方式を導入することにしています。具体的にもう既に多くの団体が民間委託などの業務改革に取り組んでいる業務について、業務改革を行っている団体の経費水準を単位費用の算定基礎とするものでございます。この算定に当たりましては、地方団体への影響も考慮して段階的に反映するということで、学校用務員事務については五年間掛けて反映するということにしております。

 また、地方交付税は一般財源でございますから、その業務をどのような手法、そして雇用形態で実施するかということは地域の実情を踏まえて、これは地方団体において自主的に判断されるべきものでございます。そして、給与につきましても、地方団体が直接雇用する場合には給与決定原則などを踏まえて地方団体において判断されますし、また委託を行う場合も、この委託先の事業者における労働法令の遵守や雇用労働条件等の適切な配慮について、これを業務改革の推進に関する総務大臣通知においてしっかり要請をしております。

○田村智子君 どう説明をされようと、学校用務という仕事を民間委託で経費を減らせと、人件費下げろと言っているのと同じなんですよ。

 学校用務員の方々、毎年国会に要請に来られていて、むしろ定数化を求めておられます。校舎など日常的な管理や修繕は、そのまま教育環境の改善につながっています。仕事は多種多様で、経験や応用力、技術力も問われる仕事だと私も直接お話を伺って実感しています。それを国のこの基準額でいえば年収三百万円に満たない仕事にしてしまうということですから、これは民間に賃上げと要望しておきながら、民間委託で賃下げしろと言っているのと同じだというように言わなければなりません。全く矛盾しています。

 さらにお聞きします。来年度以降のトップランナー方式の導入、図書館の管理について、指定管理者制度導入で業務改革を行うという対象とされています。これ、二〇一〇年の十月に参議院内閣委員会で社民党、又市議員がこの指定管理者制度の問題を取り上げて、当時の片山総務大臣は、御自身が県知事のときの判断にも触れて、図書館でありますとか博物館でありますとか、そういう知に属する部分は指定管理の対象から最初から外した、そんなものは明らかになじまないと、こう答弁をされたわけです。

 当時は、指定管理者に業務委託をした市営プールで死亡事故が起きるなど大きな問題になって、同じ年の十二月には指定管理者制度の運用改善の局長通知も出されています。ここでは、公共サービスの水準の確保という要請を満たす最も適切なサービスの提供者を、議会の議決を経て指定するものであり、単なる価格競争による入札とは異なるとあります。制度の趣旨は行政サービスの質を上げることにあるのであって、コストカットのツールとして使うものではないという通知なわけです。

 高市大臣は、この見解を引き継がれますか。

○国務大臣(高市早苗君) まず、片山大臣の御答弁ですが、平成二十二年十月二十八日の参議院内閣委員会ですね、これは、鳥取県知事時代に指定管理者制度を検討されたときの経験を答弁されたものと伺っております。

 それから、指定管理者制度ですが、地方自治法第二百四十四条の二第三項におきまして、公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要があると認めるときに管理を行わせることができるということになっております。

 この点、平成二十二年十二月、これは私ども野党でございましたが、地方公共団体に発出した通知で改めて確認するとともに、「指定管理者制度は、公共サービスの水準の確保という要請を果たす最も適切なサービスの提供者を、議会の議決を経て指定するものであり、単なる価格競争による入札とは異なるものである」という助言がされています。

 また、昨年八月に発出した地方行政サービスの改革の推進に関する留意事項について、これも助言通知でございますが、平成二十二年通知について、その内容を十分に踏まえて対応されたいとして踏襲することとしまして、民間委託の推進や指定管理者制度の活用等の業務改革を推進するとともに、行政としての責任を果たし得るよう適切に評価、管理を行うことができるような措置を講じるよう要請をしております。

 地方公共団体におかれましては、やはりこれをしっかりと受け止めていただいて、適切に実施方法についても選択をしていただきたいと考えております。

○田村智子君 私は、大臣にこそ受け止めていただきたいというふうに思うんですけれども。

 これは文科省にも、今日、図書館の問題なので来ていただきました。二〇〇八年、社会教育法一部改正法案の審議が行われた際、当時の渡海文科大臣は、図書館の指定管理制度の導入の問題点について、指定期間が短期であるため、長期的視野に立った運営というものがなじまないというか難しい、職員の研修機会の確保や後継者の育成などの機会が難しくなるという趣旨の答弁をしています。また、このときには附帯決議が付いていまして、社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討することというふうにされています。

 文科省、この考えに変わりはありませんか。

○政府参考人(有松育子君) お答え申し上げます。

 今先生御指摘の国会答弁ですけれども、それは図書館におけます指定管理者制度の導入に当たっては、長期的視野に立った運営の観点や職員の研修機会の確保、そして後継者の育成など、人材養成の観点などからの懸念を払拭する必要があるという考えを当時示されたものと承知をしております。

 文部科学省といたしましては、引き続きまして、図書館をめぐる指定管理者制度に関する課題について、制度を所管している総務省とも情報を十分に共有するとともに、適切な制度の運営に配慮をいただくように十分連携を図ってまいりたいと考えております。

○田村智子君 佐賀県武雄市立図書館、TSUTAYAの経営母体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ、CCCの指定管理者としてTSUTAYA店舗との一体的施設となって二〇一三年四月にリニューアルオープンしました。このとき、TSUTAYAから大量の古本を購入していたとか、歴史的郷土資料が廃棄されてしまったとか、あるいはスターバックスは併設されたけれど、そのために本の読み聞かせのスペースがなくなったとか、朝九時から夜九時まで開館しているけれど、初年度の経営費は三千万円の赤字。翌年、人件費を一千万円削減しても一千七百万円の赤字。これ、トップランナーと言えるんだろうかと思うわけですね。ちなみに、これを強行した市長さんは現在CCC子会社の社長さんになっておられると。

 高市さんにお聞きしたいんです。図書館というのは、蔵書の選定、資料収集、図書館学に基づく分類、利用者がこういう本をという求めに応じて専門知識と図書館のネットワークを通じてどこまでもこれに応える、あるいは学校教育や社会教育との連携を図る、本当に専門性の高い仕事です。指定管理者制度で一体どのような業者がそのノウハウを生かすことができるのか、どうしたら民間で公共サービスが向上するとお考えなのか、お答えいただいて、終わります。

○委員長(小泉昭男君) 高市大臣、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(高市早苗君) はい。

 この指定管理者制度でございますが、公共サービスの水準の確保という要請を果たす最も適切なサービスの提供者を議会の議決を経て指定するものでございます。ですから、図書館を含め地方公共団体の公の施設を最も効率的、効果的に管理できる主体が何であるかということは、それぞれの地方公共団体の実情に応じて異なるものでございます。直営、民間委託、指定管理者制度といった事業の実施方法はもとより、指定管理者の選定の基準についても地方の実情に応じて適切に選択していただきたいと考えております。

○田村智子君 終わります。

 


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