日本共産党の田村智子議員は22日、参院東日本大震災復興特別委員会で、九州電力が川内原発の免震重要棟の設置を再稼働後に撤回した問題を取り上げました。
田村氏は九電が新規制基準適合性審査の申請では2015年度中に「免震重要棟の設置」を行うとしていたのに、昨年12月に計画を撤回したことにふれ、「最初から作る気がなかったのではないか」と指摘。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「九電から変更について安全性をどう向上するか審査会で十分な説明がなく再度の検討を求めている」と答弁しました。
田村氏は、緊急時対処所として暫定施設があればよいとした規制委員会の判断自体が甘く、福島第1原発事故の教訓が生かされていないと厳しく批判した上で「(免震棟と比べて)安全性が落ちるのであれば許可しないということか」と質問。田中氏は「事業者は継続的に安全性の向上をはかるべきであり、これに逆行する申請は相当に慎重な検討が必要」だと答弁しました。
田村氏は、九電が、鹿児島県と県議会、薩摩川内市に免震重要棟の設置について同様の説明を繰り返していたことにふれ、「住民にとってはウソをつかれたのと同じであり、九電に厳しい指導をすべきだ」と要求。高木陽介経済産業副大臣は「説明不足のため住民の理解を得られていない」と開き直りました。田村氏は、川内原発は再稼働の許可条件を満たしておらず、原発を止めるべきだと求めました。
2016年3月30日(水) 赤旗
【 議事録 東日本大震災復興特別委員会 2016年3月22日 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
九州電力が川内原発に免震重要棟を建設しないとした、このことについて質問をいたします。
東京電力福島第一原発の事故から五年、改めて事故直後に何が起きたのかを検証する報道もありました。私もNHK特集などを見ましたけれども、現場の方々があらゆる手だてを尽くしても原子炉の危機的状況を抑えられず、事態がより深刻な方向へと進んでしまう、本当に過酷事故への対応が困難であったということを改めて突き付けられました。
この厳しい局面で原発の構内にとどまって事故対応を続けることができたのは、免震重要棟があったからです。ここだけは地震による損壊がなく、被曝を避けながら職員が最前線の拠点として様々な事故対応をすることができました。外からの放射性物質の遮断という点ではこの建物でも不十分だったという指摘もあって、まさにぎりぎりで踏みとどまる拠点だったと言えると思います。
改めて、原子力規制委員会委員長にお聞きをします。この福島第一原発の事故を省みたとき、免震重要棟が果たした役割というのは極めて大きかったと思いますが、いかがですか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 東日本大震災の際、福島第一原子力発電所の緊急時対策所、いわゆる免震重要棟ですが、地震によって機能を損なうことがなく、事故対策の拠点として一定程度機能していたというふうに認識しております。
大規模な自然災害が発生しても緊急時対策所が機能することが重要であり、新規制基準においては、緊急時対策所が基準地震動や基準津波に対して機能を失わないことを求めております。
以上です。
○田村智子君 それでは、九州電力が川内原発の免震重要棟を建設しないとしたその経緯を見てみたいんです。資料もお配りしました。
二〇一三年の七月、川内原発一、二号機について、新規制基準の適合性の審査、これを九州電力は行いました。ここには、緊急時対策所として、①免震重要棟の設置(平成二十七年度)、②代替緊急時対策所の追加設置、被曝評価の実施とあります。免震重要棟を平成二十七年度中に造るが、それまでの間は代替施設を設置すると、こういう申請だったことになります。規制委員会は、これらの申請書に対して二〇一五年五月までに最終的な認可を行い、この年の九月に一号機、十一月に二号機が通常運転となりました。その直後の十二月、突然、九電は免震重要棟を建設しないとして、規制委員会に工事の変更申請を提出しています。
この免震重要棟の設置というそもそもの申請は二年半前ということなんです。平成二十七年度と書いてあるということは、どんなに遅くとも今年三月末には完成しているという申請だったということなんですね。ところが、完成時期直前になって、造らないという変更申請を出してくる。これ、どう考えてもおかしいんですよ。九州電力は最初から免震重要棟を造る気がなかったんじゃないのかと、こう疑わざるを得ないと思うんですが、委員長、いかがでしょうか。規制委員長、お願いします。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 今先生御指摘のように、昨年十二月十七日に九州電力から、既に許可を受けた免震重要棟内の緊急時対策所の設置を取りやめ、耐震構造の代替緊急時対策所を緊急時対策所として利用したいとの変更申請がありました。その後、本年一月二十六日の審査会合において、そういった変更がどのように更なる安全性向上につながるのかの説明を求めました。ところが、十分な回答が得られなかったということがありまして、再度よく検討するよう指摘しているところでございます。九州電力には、審査会合での指摘を踏まえ、一層の安全を追求すべく、緊急時対策所についていま一度よく検討していただきたいと思っております。
御指摘のとおり、一昨年九月に設置変更許可を行った際は、免震重要棟内に新たな緊急時対策所を設置することを含め許可を行っており、原子力規制委員会としても、事業者が免震重要棟を設置するものと考えておりました。
ただし、法的には事業者がその内容を変更する申請を行うことは妨げられないというところがございますが、事業者からの申請内容が審査基準に適合しているかどうか、法に基づき審査を行うことは原子力規制委員会の役割でありますので、厳正に確認して対処していきたいと思います。
○田村智子君 緊急時対策所の設置というのは、今御説明のとおり、新規制基準の一つなんですね。この免震重要棟の設置を申請して許可を受けた、それを造らないと。その変更に対して十分な説明が行われていないと今委員長お答えになりました。これは許可条件に反した状態にあるというように思うんですが、なぜいまだ稼働がされているんでしょうか。これ、止めてしかるべきだと思いますが、いかがですか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 先生御指摘のように、今、川内原発は稼働しております。それで、その稼働の要件として、これを造らなければ稼働できないというふうには法的にはなっておりませんけれども、事業者の申請の中でそういった約束をしておりますので、これについてはきちっと守っていただく必要があるということで、今私どもとしては事業者にそのことを求めているところでございます。
○田村智子君 これ、今、緊急時対策所としてその代替施設がその役割、機能を果たし得るのかどうか、まさに審査中だとお答えになったんですね。なのに動いている。私、異常な事態だと思いますよ。
その代替施設、我が党の議員も実際に現場見ています。そうすると、全く狭い、平家だと。そこに百人が作業できるという机や椅子が並んでいるだけで、横になって休める場所もない。トイレは工事用の仮設トイレが一つ置かれているだけだと。おかしいですよ。これでどうして緊急時の対応ができるのか。椅子に座ったまま寝るのか。食料や水の備蓄さえできないようなスペースで、どうやって泊まり込んで事故対応をするのか。明らかに再稼働の許可条件に私は違反していると思います。
そもそも規制委員会は、免震重要棟が建設中で本年度中に完成するかどうか、このことを全くチェックしていなかったんじゃないんでしょうか。免震というのは建物の基礎部分なんですから、昨年再稼働する前から工事していなかったらおかしいわけですよ。もう完成間際になっていなかったらおかしいわけですよ。
免震重要棟を造られなくてもいい、暫定の施設があればいい、これで再稼働を認めたというのは余りにも私は判断そのものが甘いと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(櫻田道夫君) 既に行いました設置変更許可の内容についてのお尋ねでございますので、政府参考人の方からお答えいたします。
平成二十六年九月十日に、川内原子力発電所に対しまして設置変更許可を出しておりますが、その際に許可した申請内容というのがございまして、こちらを見ますと、緊急時対策所につきましては、代替緊急時対策所又は免震重要棟内の緊急時対策所を設置するとなってございます。そして、代替緊急時対策所は免震重要棟内の緊急時対策所の設置をもって廃止すると、このようになってございます。裏返しますと、免震重要棟内の緊急時対策所の設置をするまでの間は代替緊急時対策所で緊急時対策所の機能を満たす、このような申請になってございます。
この申請に対しまして、私どもは、新規制基準への適合がなされるのかどうかということについて厳正に審査を行いまして、代替緊急時対策所のみをもって新規制基準への適合がなされるものというふうに判断をいたしまして、二十六年九月十日の設置変更許可を行ったということでございます。
したがいまして、現時点において、この川内原子力発電所の状態が新規制基準に適合していないということではございません。
○田村智子君 一体、福島第一原発の事故から何の教訓を得ているのか。今事故が起きたら対応できないですよ。平家で、寝る場所もなくて、備蓄の場所もない、仮設のトイレ一個だけ、こんなのでどうして緊急時の対策ができるのかということです。
田中委員長御自身もこれ問題だとお考えになっているということは、一月六日の記者会見でもよく分かります。記者から問われて、前提として許可を得ているわけですから、それは基本的に守っていただかないといけませんと、原則として、より安全な方向の変更ならそれは歓迎しますけれども、お金を節約したいからという変更であれば、やはりそこは相当厳しい審査をしていくことになると。私、そのとおりだと思います。
これは、そもそも申請出された免震棟と比べても安全性が落ちるのであれば許可できないという内容であると理解しますが、いかがですか。田中委員長の記者会見ですので、田中委員長、お答えください。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 法的な許可の条件については先ほど櫻田部長の方から御説明したとおりでありますけれども、事業者は継続的に安全性の向上を図るべきだというのが基本的私どもの考えです。これに逆行するように見える申請、こういった場合には相当慎重な検討が必要になりますので、そのつもりで私どもは臨んでいく、今後とも臨んでいきたいと思っています。
○田村智子君 これ、九州電力は、皆さんに出した申請書だけじゃないんですよ。ここに、その申請書を出した同じ日に鹿児島県にも薩摩川内市にも事前協議書というのを提出していて、そこにも免震重要棟を設置するということが明記されています。県は、こういう説明も受けて川内原発三十キロ圏内の全世帯に「原子力だより」というのを配布していますけれども、そこにも免震重要棟が設置されるんだという説明が行われています。
さらに、県議会です。九州電力は免震重要棟の建設について何度も県議会で説明しています。昨年六月の県議会では、九州電力技術本部原子力土木建築部長の大坪氏が、免震重要棟について、最後のとりでという表現まで行って造るんだと説明をしているんですよ。
ところが、いざ二号機まで再稼働してしまえば、費用が掛かり過ぎるから建設しないんだという、今年三月にできているはずの免震棟を建設しないと前言撤回をいきなりすると。これは、住民にとっては、うそをつかれた、だまされたのと全く同じだと私は思います。過酷事故など起こるはずがないという安全神話に使っている、そういう批判の声が地元では厳しく起きているわけです。
これは経済産業副大臣にもお聞きをしたいんですね。これまで原発については度々事故隠しが行われました。トラブルの隠蔽も行われてきました。虚偽の報告、説明ということは、ついせんだっても東京電力があのメルトダウンの基準持っていた、そのことを隠していた、このことが大変な問題として委員会の中でも追及をされています。
やっぱり、原子力の産業というのは、こうやって国民を何度も何度もだまして、挙げ句の果ての大事故にまで結び付いた、この経緯を見たときに、九州電力のこのようなやり方というのは全く許し難いことだと、所管省庁として厳しい指導が必要だと思いますが、どのような指導、対応されるんでしょうか。
○副大臣(高木陽介君) まず、今のずっと御質問をお伺いをしていて、御認識いただきたいことは、九州電力は、川内原発につきまして、緊急時対策所の整備を適切に行った上で、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められて再稼働をしていると。
その緊急時対策所の問題でございますが、今回の計画の見直しについては、九電の説明が不十分だったため、関係者始め多くの方々の理解を得られていないということは残念であります。経産省としては、九州電力に対して、安全を大前提に計画の見直しの内容、それをするのであれば、十分に検討するとともに、丁寧に説明を尽くすよう既に指導しております。
また、原子力規制委員会、今も委員長がずっと御説明をいただきましたけれども、緊急時対策所につきましては、免震でも耐震でも、性能基準を満たした上でそれを更に上回るものであればよいとしておりますので、これを踏まえて、現在、九州電力が計画の具体化に向けて真摯に検討しているものと認識をしております。
もう一つ申し上げたいのは、先ほどコストのことを委員おっしゃられました。
○田村智子君 コストのことは何も言っていないです。
○副大臣(高木陽介君) 委員言われました。
ただ、九州電力はコストのためにこのことを変更するということはいわゆる発表もしておりませんし、そのところはしっかりと認識をしていただきたいと、このように思っております。
○田村智子君 コストのことなんか今一言も言っていませんからね。
全くうその申請をしたと、こう言わざるを得ないんですよ。厳しい調査も求めたいと思いますし、指導を求めたいと思います。川内原発は止めるべきだということを申し上げて、質問を終わります。