日本共産党の田村智子議員は17日の参院予算委員会で、困窮する母子世帯に就労自立の押し付けはやめるべきだと追及しました。
政府は2003年以降、就労による自立に力点を置いた支援を行ってきましたが、効果が出ていません。田村氏は、低賃金の不安定雇用が改善されないもとで就労を強要しても長時間・早朝深夜労働を強いるだけだと指摘。母子世帯では子どもと一緒にご飯を食べる時間もない実態を示し、「児童扶養手当等の現金給付を充実させることこそ求められる」と強調しました。
塩崎恭久厚労相は「就労による自立促進が支援の基本だ」としながらも、「総合的な取り組みを充実させる」と答えました。
田村氏は、児童扶養手当について、支給開始から5年経過後、就業活動の証拠や病気診断書などを提出しないと、一律に「就業意欲がない」として手当が半減されると指摘。厚労省は09年度以降、2万2000人を減額しており、「証明書の取得に時間がかかった」などやむを得ない理由の人が3割にも上ることを明らかにしました。田村氏は「貧困対策に逆行している」と5年経過後の減額をやめるよう求めました。
田村氏は、生活保護を受けるシングルマザーには中卒の割合が高く、高校卒業資格取得の支援が必要だと指摘。ところが、生活保護実施要領では、小さい子どもがいても、働かなければ修学支援を受けられないとして見直しを求めました。
塩崎厚労相は「子どもの貧困対策の観点から何ができるのかを考えていきたい」と述べました。
2016年3月18日(金) 赤旗
【 議事録 3月17日 予算委員会 】
○委員長(岸宏一君) 次に、田村智子さんの質疑を行います。田村智子さん。
○田村智子君 子供の貧困対策を進める上で、貧困率が五〇%を超える母子世帯の収入を増やすということが必至です。
厚労大臣にその認識と施策についてお伺いいたします。
○国務大臣(塩崎恭久君) 子供たちの未来が家庭の経済事情などによって左右されることがあってはならないというふうに考えております。特に、経済的にも様々な困難を抱えている一人親家庭にはきめ細かな支援が必要だというふうに考え、このため、昨年十二月には、すくすくサポート・プロジェクトと呼んでいる、すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクトと、そこで就業による自立に向けた就業支援を基本としつつ、子育て・生活支援、そして学習支援などの総合的な支援を充実することといたしました。
一人親家庭の収入を増やすための就業支援としては、具体的には就職に有利な資格の取得を促進するための給付金の充実や貸付事業の創設、それから自立支援教育訓練給付費の支給額の引上げ、さらには、民間委託でございますけれども、求職者支援訓練における一人親が利用しやすい託児サービス付きの訓練コースなどの設定、あるいはマザーズハローワークにおける一人親支援の体制の充実などを行うこととしておりまして、これらの施策を通じて、一人親家庭の就業支援に取り組み、その経済的安定を図ってまいりたいと思っております。
○田村智子君 政府は、二〇〇三年以降、今御答弁あったとおり、就業支援ということを政策の柱にしてきました。それでは、十年以上が経過をして、就労収入、就業状況、母子世帯、改善しているのでしょうか。
○政府参考人(香取照幸君) 母子家庭のお母様御自身の年間の平均就労収入でございますが、私ども、全国母子世帯等調査というのを行っております。平成二十三年度で同調査によりますと百八十一万円となっております。同じく、同調査で平成十五年の数字が百六十二万円でございましたので、こちらは増加してございます。就業率でございますが、同じ調査で、平成十五年が八三・〇、平成十八年、八四・五、平成二十三年が八〇・六ということになってございます。
○田村智子君 資料の一を見ていただきたいんです。これOECDの調査です。
一人親世帯、働くと、諸外国は貧困率が劇的に大きく改善をします。ところが、日本だけが全く改善をしていないと。果たして就労による自立支援というのが有効と言えるのか、大臣、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 我が国の一人親は、今お話がありましたように、一人親家庭は約八割が就業しているわけでありますが、そのうち約半数がパート、アルバイトなどの不安定な就業形態にございます。
経済的にも様々な困難を抱えておりまして、このため、正社員など安定的な就業に結び付くようなきめ細かな支援が必要であるというふうに考えておりまして、先ほど申し上げたように、昨年十二月のすくすくサポート・プロジェクトの中では、まず第一に、児童扶養手当の第二子以降の加算額の増額、さらに、自治体の相談窓口のワンストップ化の推進、放課後児童クラブ等の終了後に学習支援等を行うことができる居場所づくりの推進、一人親家庭などの保育料軽減の強化など、現物給付と現金給付とバランスを組み合わせて総合的な支援を行うこととしておりまして、これらの取組を通じて一人親家庭の自立の促進に全力で取り組んでまいりたいと思っております。
○田村智子君 これ、シングルマザーの低賃金の働き方というのはほとんど何も解決をしていないんですよ。それでも就業支援だ、働いて自立しろと求められる。そうすると、どうなっていくのか。
今度は総務省にお聞きします。
社会生活基本調査では、六歳未満の子供を持つシングルマザーと二親世帯の母親と、これで一日当たりの仕事時間と育児時間、こういう比較ができる調査を行っています。また、朝八時、夜七時に仕事をしている割合、それぞれ示していただきたいと思います。
○政府参考人(會田雅人君) お答えいたします。
平成二十三年社会生活基本調査の結果から一日の仕事の平均時間を見ますと、六歳未満の子供のいる母子世帯の母は四時間十六分、二親世帯の母は一時間三十四分となっております。同様に、育児時間について見ますと、母子世帯の母が二時間二分、二親世帯の母が三時間二十二分となってございます。
それから、朝の時間帯と夕方の時間帯についての御質問でございますが、お尋ねの六歳未満の子供についての世帯についてのデータはないことから、母子世帯と二親世帯全体について平日の状況で見てみますと、朝八時から朝八時十五分までの間に仕事をしている人の割合は、母子世帯では一六%、二親世帯では八・五%、夜七時から七時十五分までの間に仕事をしている人の割合は、母子世帯で一〇・二%、二親世帯の母が三・五%となっております。
同様に、育児をしている人の割合で見ますと、朝八時から八時十五分までの間に育児をしている人の割合は、母子世帯の母で三・五%、二親世帯の母で九・五%、夜七時から七時十五分までの間に育児をしている人の割合は、母子世帯の母が三・五%、二親世帯の母が八・〇%となっております。
○田村智子君 今の数字を聞いても、シングルマザーの子供さん、どうなっているんだろうかという数字なんですよ。これ、育児の時間は二親世帯の母親の六割ぐらいです。夜七時になっても一割が働いているということは、晩御飯も一緒に食べることができないと、そういう働き方をしているシングルマザーが多くいるということです。
子供の視点に立ったとき、私は、やっぱり児童扶養手当等の現金給付を拡充して、もっと子供さんと接する時間をシングルマザーに保障することが必要だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 一人親家庭に対して、就労による自立を促進することが支援の基本だというふうにやはり考えております。
その際、育児時間を犠牲として働くのではなくて、仕事と育児の両立ということが可能なように持っていくことが大切だというふうに考えておりまして、そのためには、一人親が安定した職に就き、就労収入によって経済的に安定した生活を送ることができるようにするということが重要であって、そういう意味では、先ほど触れたすくすくサポート・プロジェクト、昨年十二月に取りまとめたものの中では、就業による自立に向けた支援を基本としながらも、子育て生活支援、そして学習支援など、総合的な取組を充実することとしておりまして。
今、児童扶養手当についてお触れをいただきました。すくすくサポート・プロジェクトの中に入っておりますが、この児童扶養手当につきましては、一人親家庭の生活の安定と自立の促進を図るための現金給付でございますけれども、それだけで就労収入の代替となるようなものではございません。一人親の仕事と育児の両立のためには、やはり安定した職に就けるようにすることが大切だと思います。
いずれにしても、今申し上げたすくすくサポート・プロジェクトに基づいて、一人親家庭の自立を全力で総合的に支援してまいりたいと思っております。
○田村智子君 先ほどのOECDの調査、やっぱり日本だけが働いても貧困から抜け出せないという状態。これがなぜなのかということをしっかりと私は見るべきだというふうに思います。児童扶養手当、これ抜本的な拡充が必要だと思いますし、所得制限を強めてきてこの手当額を減らしてきたという政策を取ってきたわけですから、この方向転換がどうしても必要だと、このことを強調しておきます。
次に、児童扶養手当なんです。これだけ大切、命綱と言われていますが、今、支給期間五年で支給額を減らすという措置がとられています。二〇〇八年度以降、この実施状況がどうなっているか、お示しください。
○政府参考人(香取照幸君) 御答弁申し上げます。
児童扶養手当につきましては、受給開始から五年を経過した時点で、障害、疾病等があって就労が困難である、こういう事情がないにもかかわらず就労や求職活動等を行っていないという方につきましては支給額の一部停止を行うという措置がございます。
御質問の二〇〇八年以降でございますが、平成二十年になりますが、一部支給停止措置がとられた人数につきましては福祉行政報告例において統計を取っておりまして、これが二〇〇九年から、平成二十一年から統計を取っておりますので、実績で申し上げます。
二〇〇九年、平成二十一年度は三千六百九十一人。二〇一〇年、平成二十二年でございますが、この年度は三千六百十五名。二〇一一年、平成二十三年度は三千九百八十七人。二〇一二年、平成二十四年度は四千四百二十一人。二〇一三年度、平成二十五年度は三千二百七十五名。直近、二〇一四年のデータがございまして、平成二十六年度は三千百十五人ということになってございまして、二〇〇九年から二〇一四年の六年間累計いたしますと、合計二万二千百四名ということでございます。
また、ちなみに、一部支給停止の場合の児童扶養手当の額でございますが、二分の一ということになりますので、平成二十七年度で申し上げますと、満額が四万二千円でございますので、一部停止の場合には受給額は二万一千円ということになるということでございます。
○田村智子君 六年間で延べ二万二千人もの方々から手当を半額してしまったわけですね。これ、減額した理由、生活への影響などの調査は行っていますか。
○国務大臣(塩崎恭久君) この児童扶養手当の一部支給停止という制度そのものは、血も涙もないというわけでは決してないわけでございまして、それは理由があって導入をされた制度でございます。
受給者の自立を促進するため、受給開始から五年を経過して、障害、疾病などの就業困難な事情がないにもかかわらず就業や求職活動等をしていないという方について支給額の一部を停止するという、こういう制度でございまして、税金を大事に使うという考え方でこのような制度が導入をされているわけでございます。
平成二十六年二月に自治体を通じて、平成二十五年九月末時点での一部支給停止の措置がとられた方を対象にその理由を調査しました。それによりますと、手続をするつもりがなかった、手続が面倒など、やむを得ない事情なく手続をしなかった方が五〇・九%、手続の時間的余裕がなかった、証明書取得に時間を要したなど、やむを得ず手続できなかったが二九・八%となっておりまして、こうしたことを踏まえて、一時支給停止措置の適用除外に係る手続につきましては、児童扶養手当受給者が制度を理解しやすいように丁寧に説明していただくことや、母子・父子自立支援員など関係部署とも連携を図るなど、受給者の立場に立ったきめ細かな対応について自治体に対して御尽力いただくようにお願いをしておるところでございます。
一部支給停止の措置がとられた方も引き続き児童扶養手当受給者であることから、毎年の現況届などを通じて自治体で受給者の状況を把握しているものと考えております。このため、政府による追跡調査は必ずしも必要ないかなと思いますが、いずれにしても、今回、児童扶養手当を改正をいたします。その周知の際に、この制度につきましても再度徹底をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 これ、聞きましたら、一斉に送って、それで就業証明とか、働いていない人はその理由の証明を提出しなさいと、それがなければもう減額と。今の答弁でも、調査した人のうち減額された人の三割はやむを得ない理由だった、これ、とんでもないことですよ。
家計の状況は改善していないのに命綱の児童扶養手当を半減させられたら、子供さんはどうなるのかと。これは、子供の貧困対策に逆行するやり方だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今申し上げたように、どういう事情で就職活動、求職活動がなされていないかということについて私どももしっかりと把握をしていくことが大事かなというふうに思いますし、やむを得ない理由なのかどうかということも含めて、先ほど申し上げたように、この制度自体が徹底をされているように私ども努力をしなきゃいけないと思いますので、今回の改正を機に更に徹底をし、そして、やむを得ない理由であるにもかかわらず手続が取れないとか、そういうことであれば、そこのところは市町村にもそれなりの対応を寄り添ってしていただくようにしていきたいというふうに考えます。
○田村智子君 そんなの減額する前にやるべきですよ。減額されたら家計を直撃するわけですから、こんな五年減額の措置というのはやめるべきだということを強く申し上げておきます。
もう一点、なぜシングルマザーが働いても低収入なのかと、その要因についても考えたいと思います。
資料の中に、二〇一一年、社会保障審議会に提出されたものを、四枚目かな、入れています。生活保護を受けているシングルマザーの約五割が高校を卒業していないという調査があるんです。
厚労省は、先ほどの御答弁でも、キャリアアップのために資格取得を奨励していると言います。しかし、ヘルパーとか看護師とか、そういうのも高卒を要件とする資格です。こういうの多いです。高校卒業資格を得られるような支援をする、これは自立支援の上でとても大切だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(香取照幸君) 一人親家庭の自立支援のためには良い条件で就労していただくということはもちろん重要でございまして、私どもの調査ですと、母子家庭のお母様のうち最終学歴が中卒であるという方は約一三・三%ということでございまして、こういった方々につきましては、高等学校卒業程度の認定試験、これに合格していただくように働きかけるということがお話しのような就労促進のためには非常に重要だと考えてございます。
このため、平成二十七年度から、様々な事情で高等学校を卒業されていない一人親家庭の親の方がこの高等学校卒業程度認定試験、いわゆる大卒認定というやつですかね、これに合格できますように、講座を受講する場合にはその費用の最大六割を支給するという事業を実施してございます。
こうした取組を通じまして、厳しい環境にある一人親家庭の皆様方に対しましても就労を通じた自立を支援してまいりたいというふうに考えてございます。
○田村智子君 そういう支援は働きながらということが条件なんですよ。乳幼児抱えて働きながらということになると、これはとても大変な負担です。
生活保護を受けているシングルマザーが高校で学ぶ場合、保護費の扱いがどうなるかも教えてください。
○国務大臣(塩崎恭久君) 生活保護制度におきまして、利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件としていることでございますので、稼働能力のある方についてはその知識や技能を生かして就労していただくことが原則でございます。一人親家庭の親についても可能な方はやっぱり就労していただくべきであって、就労しながら高校に就学する場合には、自立助長の観点から高等学校等就学費を支給できる取扱いを設けているところでございます。
○田村智子君 これは最後の資料にもお配りしているんですけど、QアンドAです、生活保護の実施要綱。これをやっぱり読むと、働いているということが条件で高校に行っていいよと、十八歳以降だと。
私、ちょっと事例を示したいんです。二十代の女性、婚外出産でシングルマザーとなって生活保護を受給。幼少期から虐待を受け、中学校にまともに通えなかった。我が身を守るために家を出て、真面目に働いてきた。ケースワーカーは、自己肯定感が著しく低い彼女には高校卒業というキャリアが必要ではと、高校入学の話をした。彼女は自立のために高校で学びたいという思いを便箋二枚にびっしりと書きつづった。丁寧な字で書かれたその一行一行に、ケースワーカーは心を揺すぶられたと言います。中卒であるがゆえに職場でもばかにされてきた彼女に今何が必要かを考えたとき、まず高校で学ぶことではないのか、保育所に子供を預ける昼間、高校に通わせてあげたいと、これがケースワーカーさんの言葉です。
現在の生活保護の実施要綱、十八歳超えるとまず働くことが原則。しかし、シングルマザーは、働いて、勉強して、家事や育児も全部やれというのかということになってしまうんですね。これ、この人の自立に資するならば、本人に意欲があるならば、昼間学ぶということも保障すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 一人親家庭の親の学び直しというのが大事であって、それを支援する観点から、先ほど来お話にあったように、平成二十五年度から新たに、就労しながら高校に就学する場合に高等学校等就学費を生活保護において支給をすることにしたわけでございます。
御指摘の就学と就労の両立、これについては、例えば通信制高校あるいはネットなどを通じて行うということですが、これの活用などの工夫もあり得るものと考えておりますけれども、今後は、平成二十五年度の見直し後の自治体での運用状況等を把握する中で、生活保護の原則との関係にも留意をしながら、子供の貧困対策の観点から何ができるのかを考えてまいりたいというふうに思います。
○田村智子君 これは実施要綱の見直しということも御検討いただけますか。
○国務大臣(塩崎恭久君) それは、今申し上げたように、この生活保護の原則というものを押さえながら就学と就労をどう両立をさせていくのかということをよく議論をして決めていかなければならないと思いますので、今結論としてどういうふうになるかということは分かりませんが、いずれにしても、子供の貧困対策の観点から何ができるのかをしっかり考えてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 これ、やっぱり十八歳を超えたら働けという大原則ができてしまっている。これは、子供の貧困対策のため、私、大きな見直しが必要だと、これ今後も是非議論していきたいと思います。
終わります。
○委員長(岸宏一君) 以上で田村智子さんの質疑は終了いたしました。(拍手)