国会会議録

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保育所確保 緊急に 参院予算委で田村智子氏 国の支援・解雇防止など提案 保育所の待機児童問題

日本共産党の田村智子議員は14日の参院予算委員会で、「保育園落ちた」という匿名ブログを機に改めて社会問題となっている待機児童問題を取り上げました。田村氏は緊急対策を提案するとともに、父母が求めている認可保育所の抜本増設と保育士の処遇改善に向けて、保育予算を抜本的に拡充するよう求めました。(論戦ハイライト)


首相「研究していく」

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(写真)質問する田村智子議員=14日、参院予算委

 田村氏は、東京都だけで2万人を超える「保育難民」が生まれていることを指摘。「非常事態という認識で緊急対策を実施すべきだ」と述べ、(1)公共施設を活用して自治体の責務で緊急の保育を実施する(2)公立保育所の分園設置や改修に緊急の財政支援を行う(3)企業による雇い止めや解雇の防止―を提案しました。

 田村氏が、東京都の杉並区や世田谷区では一昨年、公的施設を活用した保育室や仮設園舎などで受け入れ枠を拡大したことを示すと、安倍晋三首相は「指摘のあった、さまざまなアイデアについては研究していきたい」と答えました。

 田村氏は、政府が待機児童の数を正確に把握し、保育所増設・保育士の処遇改善に踏み出すよう要求。希望に合わない保育所を保護者側が断った場合、待機児童から外しているのは問題だと田村氏が指摘すると、塩崎恭久厚労相は「厚労省の待機児童の定義に基づいたものだ」と正当化しました。

 田村氏が、全産業の平均年収より166万円も低い保育士の平均年収(323万円)の引き上げは急務だとして「大幅賃上げの目標を示すべきだ」と求めると、首相は「(保育士は)専門性と、経験が重要だ」と答弁。塩崎厚労相は、先送りしている2%の賃上げ(400億円)に向け「最優先で取り組んでいかなければならない」と答えただけにとどまりました。

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 田村氏は、公立保育所が保育士の専門性と経験を高める役割を果たしてきたにもかかわらず、政府が「コストがかかりすぎる」と民営化・民間委託を促進してきたと批判。EU(欧州連合)では国内総生産比1%を保育・幼児教育へ充てることを目標としていることを示し、「すべての子どもの福祉のために大幅な予算増を行うべきだ」と強調しました。

都内認可保育所 2万人超入れず

 認可保育所に申し込んだものの入れなかった乳幼児が、東京都内だけで2万人を超えることが14日の参院予算委員会で明らかになりました。日本共産党の田村智子議員と党都議団が都内の全自治体を対象に問い合わせた結果、入所できなかった不承諾数として判明したもの。都内62自治体のうち、14区30市町村から回答がありました。田村氏は回答のなかった自治体を含めると2万6000人に達するとみられると述べ、緊急対策を求めました。

予算委員会で使用したパネルです

2016年3月15日(火) しんぶん赤旗

 

【速記録 予算委員会 3月14日】

○田村智子君日本共産党の田村智子です。
 今、保育所に申し込んだけれども入ることができないということが大問題になっています。保育園落ちたという匿名のブログに共感の声が次々と広がって、国会前のスタンディングや二万八千人近いネット署名へと広がっています。
 政府は一貫して待機児童ゼロということを掲げていますが、では、三月現在、申し込んでも保育所に入れなかったという人がどれぐらいいるのか、調査を行っていますか。止めてください。止めてください。止めてください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 保育所に入所できない保育者からの署名につきましては、そうした方々の大変な御苦労、切実な思いが伝わってまいりました。安心して子供を育てていただくために、仕事と子育てが両立できるよう、働くお母さんたちの気持ちを受け止め、待機児童ゼロを必ず実現させていく決意であります。
 その上で、保育所に申し込んで利用できなかった方々には様々な事情があると認識をしており、これをよく分析をし、保護者の方々が希望どおり働けるようにしっかりと対応していく考えであります。厚生労働省を中心に地域とも連携し、利用状況の実態把握等に努め、子育て家族の切実な声に応えられるように取り組んでいきたいと考えております。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今、総理から基本的なスタンスについてお話を申し上げましたけれども、この調査につきましては、毎年この時期は四月の保育所などへの入園に向けて利用申込みに対する認定が行われている時期でございまして、現段階で利用先が決まっていない申込者については、今後、市町村が年度末に向けて丁寧に利用意向と、御本人のですね、それから空き定員とのマッチングをするという作業をしてその数を減らしていくということをこれからやっていくわけでございまして、そうした努力を自治体の皆様方に今きめ細かく全力を挙げてやっていただいているところでございます。
 一方で、待機児童問題で御苦労されている方々を確実に減らしていくためにも、自治体とも厚生労働省も当然のことながら連携をして、この現状の把握を絶えずしていきたいというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 これ、今が問題なんですね。今どのぐらいいるか。
 私は、この実態をつかまなければと、今月の初め、党都議団と共同で都内の全自治体に問合せを行いまして、保育所の申込者数、一次募集での未内定者数、つまり不承諾通知を受け取った方がどれぐらいいるかということを調査をいたしました。(資料提示)回答があったのは、都内六十二自治体のうち十四区三十市町村で、集計すると約二万人、申し込んだ方の三五%が不承諾。ここには、江東区、大田、練馬、足立区、江戸川区など規模の大きい区の数字が入っていませんので、これらの数字を考慮いたしますと、恐らく東京全体で二万六千とか二万数千という規模に上ると思われるわけです。
 総理、先ほどの御答弁はもういいです。この二万人を大きく超える、二万数千人もの方々が保育園落ちた、言わば保育難民とも言えるような状態になっている、このことをどう認識されますか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今申し上げたように、実際はもう動いているわけでございますので、確定的に、最終的に何人入ることができなかったかといういわゆる待機児童、最終的に四月一日現在にどうなるか、それを今確定するということはなかなか難しいということが言えると思います。
 それから、報道などでは今幾つか、昨日ですか、ありましたけれども、それらは、基本的にあそこに明示的に書いてあるのは、認可保育所、これにどれだけ入れなかったかということが指摘をされているわけでありまして、それをお調べいただいて、共産党の皆様方も今お調べいただいたのも多分そうなんだろうと思うんですけれども、これから、例えば東京都だったら認証保育所、ここに行かれる方もおられるわけでありますし、いろんな形で最終的な行き先が決まっていくわけで、最後に残るのが本当の待機児童ということになりますので、今どうなっているかということについては動きがございますので、先ほど申し上げたとおり、市町村が今必死になってマッチングをして、働いている状況や距離とかいろいろなことを、兄弟とかですね、子供さんが何人おられるとか、そういうことで割り振りを今一生懸命マッチングで努力をされているというふうに理解をしているところでございます。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 基本的には厚生労働大臣が答弁をさせていただいたとおりでありますが、各自治体との情報共有や意見交換を緊密にして実態をしっかりと把握をして、安心してお子さんを育てていくために、仕事と子育てが両立できるように、働くお母さんたちの気持ちを受け止めながら待機児童ゼロに向けて施策を進めていきたいと考えております。
○田村智子君 これ、今調整中なんだと、だから年度末に数字見ればいいんだというんじゃ私は遅いと思っているんです。
 三月五日、保育園落ちたの私だという国会前のスタンディングに私も当事者からお話を伺うために駆け付けました。生後二か月の赤ちゃんをだっこしたお母さんは派遣社員で、四月に仕事復帰しなければ契約を切られてしまう、産休明けで受け入れてくれる保育所は限られている、どうしたらいいのか、真っ暗闇の中にいるという方、あるいは四月からどうなるのか不安でいっぱいだという方、これ、いろいろ当たり尽くしているんですよ。保育が確保できないために仕事辞めなければならない、こんな事態を放置するわけにはいきません。非常事態という認識で緊急の対策に国も自治体も乗り出すべきだというふうに思います。
 そこで、私、提案をしたいというふうに思うんです。これ過去にも、調べてみますと、緊急対策に動いた自治体はあるんです。例えば二〇一四年の春、杉並区では公的施設を活用した保育室を複数設置して二百人規模の緊急受入れをしています。世田谷区では同じ年、四月開所予定の保育園が間に合わないという事態に対して、都有地に仮設園舎を建てて百八十人を受け入れています。こういうことに学んで、幾つか提案をしたいと思います。
 まず、自治体による緊急の保育です。公共施設を活用する、公立保育所の元保育士に当たるなど、保育士さんの確保も自治体自ら努力をする、こうやって促していただきたい。小規模保育については、自治体が施設の整備や運営をする場合にも国庫補助の制度の対象となります。このことも是非周知をしてほしい。
 それから二つ目に、国による新たな財政的な支援です。公立保育所に対して国は今補助金を出していません。しかし、定員拡大のための分園設置や改修など、公立保育所に対しても緊急の財政措置が必要だと思います。また、国有地の活用。今、特養ホームは従来の二分の一の費用で貸し出すというふうに制度が変わりました。保育所についてもすぐに同じ扱いにしてほしいと思います。
 そして三点目、企業に対して呼びかけてほしい、解雇、雇い止めを起こさないと。四月から働き始める予定だというお母さんの内定を取り消さないように呼びかけるとか、育児休業中の雇い止めや解雇は育児休業法違反に当たるんだと、こういうことも今緊急に周知することが求められると思うんですね。
 もっと知恵出せると思います、政府の皆さん。いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) おっしゃるように、先ほど申し上げたように、これは自治事務ではありますけれども、これは子供のことですから、厚生労働省としては、やっぱり責任を持って市町村と連携をしてできる限りの努力をするというのは当然のことだと私も思っておりまして、今お話がありましたように、市町村にきっちり協力をするということで、厚労省が先頭を切ってやるということは、それは当然やらなきゃいけないというふうに思っております。
 あと、使える助成金などについては、もちろん改めて市町村に分かっていただくように努力をするべくやっていきたいと思いますが、もう既に、今、先ほど申し上げたように、一回目の認定で入れなかったということが分かっていて、次の第二次、第三次とやっている真っ最中なものですから、今すぐ集めるというわけにはなかなかいかないので、今、電話連絡などでいろいろ連携を取って、例えば東京都とか都道府県を通じてやっていることが多いわけでありますけれども、そのような国で何ができるのかということについても下ろしていきたいというふうに思っております。
 企業がそういうふうに今お話しのようなことをするというのは、それはある意味当然のことでありますけれども、今回、御案内のように、企業については、企業の主導で保育園をつくるということについて今回の二十八年度の予算の中でも入れているところでございまして、それはこの年度末に向けて、あるいは四月に向けてのすぐのことではございませんけれども、そのようなことで企業にも理解をいただくということは当然のことだというふうに思います。
○田村智子君 国有地の活用や財政支援、いかがですか、財務大臣。
○国務大臣(麻生太郎君) この社会福祉の分野につきましては、国有地に関しましては、優先的売却とか定期借地権による貸付けというのを通じて積極的に進めてきたところです。
 特に、この保育所につきましては、二十五年の四月から取りまとめられた待機児童解消加速化プラン、これを踏まえまして、これまでに介護施設の二倍近い件数というものを、国有地を提供いたしております。事実、保育関係を見ますと、二十二年で三つぐらいのものが今保育関係では五十七、介護関係で三つぐらいだったものが三十一と、約倍近いものを、介護施設よりは多いものをいたしておりますので、こういったものが、昨年十一月に一億総活躍国民会議で取りまとめられた緊急対策におきましても賃料の減額といった国有地の更なる活用とされておりますので、国有地の減額貸付け等の負担軽減策を講じてきたところでありますので、今後とも、保育所を含め、必要な社会福祉施設整備に対して国有地の有効活用をされますことに積極的に対応してまいりたいと、これまでもやってきたとおりであります。
○田村智子君 それだと従来なんですよ。総理は介護離職者ゼロを掲げた、それで国有地の賃料は今までの二分の一にするということが急遽決まったんですよ。総理が旗を振れば緊急策踏み出せる、踏み込んだ財政支援もできるはずなんです。総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 待機児童ゼロというのは、安倍政権において非常に重要なこれは目標であり課題であると思います。このプランの下で、保育の受皿拡大のペースは我々の政権になってそれ以前よりも約二倍のペースで進んでいるのは事実でありまして、二〇一三年度と二〇一四年度の二年間で約二十二万人分の受皿拡大を達成をしております。その過程でも、働くお母さんたちのニーズの把握に努め、昨年四月から、現に働いていなくても、求職活動中などであっても申し込めるようにいたしました。同居親族がいても、具体的状況に応じて保育の必要性を認めるようにしたことなど、申込みの要件を緩和したわけであります。
 この申込みの要件を緩和をしておりますが、当然これ申込みは多く受け付けられることになってくるわけでありますが、そうした需要に対応いたしまして、昨年末の緊急対策に盛り込んだとおり、二〇一七年度末までの保育の受皿、整備量を四十万人分から五十万人分に上積みすることとしたわけでありまして、これにより待機児童を必ず実現をしていく決意であります。
 さらに、待機児童の数は地域によって差があることから、特に待機児童が集中している地域と連携し対応策を検討することとしております。
 保育士不足の要因としては、企業も含め待遇の問題があるというふうに認識をしておりますが、この春に取りまとめるニッポン一億総活躍プランの中で具体的で実効性のある待遇の改善策を示し、不足している人材も確保していきたいと考えておりますが、また、今委員からも御指摘もいただきました。これは、この問題については与野党はないというふうに思いますので、様々なアイデアについては研究もしていきたいと、このように考えております。
○田村智子君 是非、具体的に緊急策が取れるようにお願いしたいと思います。
 一点だけ強調しておきたいのは、緊急の保育というのは、保育室の面積や保育士の配置など、やはりこれは認可施設の基準に見合うように進めるということは必要だと思いますし、これが固定化して質の悪い保育が普及しないようにということは強調しておきたいというふうに思います。
 抜本的な問題というのも考えてみたいんですけれども、一つは、政府が待機児童ゼロということを掲げて保育所を増やす努力をしてきたと。まあ確かに保育所は増えています。しかし、その待機児童というのは余りにも実態から懸け離れているのではないかという問題提起をしたいんです。
 これは川崎市の待機児童数の資料です。二〇一五年四月一日現在、認可保育所に申し込んでも利用できなかったのは二千二百三十一人。ところが、待機児童数はゼロです。京都市も二年連続待機児童はゼロですけれども、調べてみますと、昨年、保育所申請をして入れなかったという方は六百三十七人います。この待機児童ゼロというのは余りに実態と懸け離れていると思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど少し申し上げましたけれども、この川崎の例でございますが、これは認可保育所等に入所できていない方が二千二百三十一人となっているわけでございますけれども、このうち川崎が、東京でいえば認証保育所、いわゆる地方単独で補助をして一定の質が確保されているという保育施設に入っている子供が一千三百四十七人おられます、半分強ですが。それから、育児休業を取っておられる方という方が、これはいろいろ解釈ありますけれども三百四十八人おられて、それから、他に入園可能な施設があったけれども特定の園のみを希望されていた方が四百七人おられます。ハローワークなどの求職活動をされていない方が百二十九名となっておりまして、これらの方々が二千二百三十一人いたということから待機児童数がゼロというふうになったものでございます。
 これは厚労省が従来からお示しをしているいわゆる待機児童の定義というものに基づいたものでありまして、今申し上げたような方々についてどう考えるかというのは、それはいろいろ御意見があることはよく分かっておりますが、優先順位的に本当に待機児童としてどういう数字を考えるべきかというときに、今のようなことでゼロという形になっているというふうに御理解を賜りたいというふうに思います。
○田村智子君 今ので除かれていったその二千二百三十一人、どういう方々か。自力で懸命に探し回ってやっと認可外の空きを見付けたと、焼き肉屋だったところで、窓があっても開かない、保育士は年度途中で総入替え、園長も替わった、ここで大丈夫かと不安だけれどもそこに預けていたという方。あるいは、上の子供さんに障害があって朝小学校の登校に付添いが必要だと、自宅からかなり遠い保育所なら空きがあると言われたが断らざるを得なかった、これは特定の保育所を希望したからはじかれ、育児休業をやむなく延ばした、あるいは仕事を辞めるしかなかった、この方々は、保育所に入れなかっただけではなくて待機児童にもなれないということなんですね。
 となると、政府の言う待機児童ゼロって一体何なのか。例えば、首都圏のある自治体の職員にお聞きしましたら、待機児童を減らすよう号令が掛かり、みんなで保護者に電話をした。ここには通えないだろうなと思いながら、自宅から遠い保育所を指定し、本人が断ると待機児童から外していった、これが待機児童対策なのかとつらくて仕方がなかったと、こういうお話もお聞きしました。
 これは、私、おかしいと思うんですよ。やるべきは数字の操作じゃないです。やっぱり、認可保育所に入りたい、そういう人がどれだけいるのか、この数を明らかにして保育所の整備を行うべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) さっき申し上げたように、私どもの待機児童の定義にのっとって今申し上げたところでありまして、その内訳はどうなっているのかということを今御説明を申し上げたわけでありますので、例えば地方単独で川崎市が独自に補助金を出して保育園としてやっていらっしゃるところに入っていらっしゃる方がこの二千二百三十一人のうちの千三百四十七人入っていらっしゃるということを申し上げているので、これはこれで、やはり一応本当の意味での待機児童という意味では除かせていただいているということであります。
 しかし、そうはいいながら、やはり希望どおりにいくということが最終的には必要ということは、そのお気持ちはよく分かりますし、兄弟、子供さん二人いて、上のお子さんと下のお子さんが離れたところにいて毎日二つ通わなきゃいけないというようなことは、朝晩大変な御苦労であることはよく分かっておりますから、そういう意味で私たちは、またこれから働く女性が、働きたいと考えていらっしゃる女性が増えてくるわけですから、そうなれば潜在的な需要にも応えられるようにということで、今回四十万から五十万ということで広めにこれを取って、さらに、今御指摘のような、本当に希望どおりにいくような余裕があるようなものになれるかどうかということを今追求をして、そちらに目指して頑張ろうということでやっているわけでございます。
○田村智子君 これ、二千二百三十一人が入れなかったのに、不承諾だったのにゼロ人と。これだと、保育園落ちたという事態は全然解決にならないですよ。足りないのがどれだけかということを実態に即してきっちりと示すべきだと強く求めておきたいと思います。
 これまでも、保育士が足りない、保育所増設の足かせとなっているのは、保育士さんの処遇改善、これが進まないからだというのは与野党共が一致するところです。
 これは、三月十日、予算委員会の公聴会で連合の逢見事務局長が提出した資料を基にしたものです。保育士の平均年収三百二十三万円、全産業平均よりも百六十六万円も低くなっています。
 これまでの処遇改善の議論は、三%引き上げたと、あと二%どうするかと、こういう議論なんですけど、私は率直に言ってそれでいいのかなと思います。保育士の平均年収を全産業平均と同等にするには五〇%の賃上げが必要ということになるわけで、やはり、来年からすぐというわけにはいかないと思いますが、それぐらいの処遇改善が必要だという議論をして大幅な賃上げの目標を示すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) このことについてはもう何度も御説明を申し上げてきているわけで、人材を確保することが大事だということはもう当然のことでありますし、既に消費税引上げに伴って三%引き上げ、そしてあと、三千億という中で約四百億がこの職員の処遇改善に充てられるべきものとして一体改革の中で考えられたことでありますので、これについても最優先で取り組んでいかなきゃいけないということですけれども、何分にもこれは毎年のことでありますから、安定財源をしっかりと確保するということも当然大事なことでありますので、私どもとしては、ニッポン一億総活躍プランの中で具体的にまた実効性のある待遇の改善策をお示しをして、不足している人材を全力で確保してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○国務大臣(加藤勝信君) 御指摘ありますように、様々な調査でも、就業している保育士の方、あるいは就業していない保育士の方にもお伺いをいたしますと、希望しない理由あるいはどういう問題点があるか、そのトップに給与、処遇の問題が上がってきているということを認識しております。
 今、私どもとしても、まず実態をしっかり把握して、それに対して対応していかなきゃいけない、そして、もちろん保育士の方の崇高な仕事ということも踏まえながら、このニッポン一億総活躍プラン、国民会議でしっかり議論をさせていただいて、具体的で実効性のある待遇の確保、改善策を示していきたいと、こう思っております。
○田村智子君 これ、私、首都圏で保育士さんや施設長さんからもお話を伺ったんです。政府は保育を子守程度に考えているから給料の水準が低いままなのではという声を何人もの方からお聞きしました。乳幼児が家族以外の大人に安心や信頼感を持てるか、その最初の体験が保育園になる、子供一人一人にどう寄り添うか、どう働きかけるか、それが子供の自己肯定感を育み、人との関わり方を学ぶことにつながる、乳幼児期の保育は成長の土台を耕すもの、私たちはそういう自覚で保育をしていることを知ってほしい。
 これ、総理にもお聞きしたいんです。保育士は専門職であって、経験を積むことでその専門性は高まっていく、そういう職業だと思いますが、いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 保育園は生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期、それは委員の御指摘のとおりだろうと思います。子供がその生活の大半を過ごす場所でもあるわけでありまして、したがって、ここで働く保育士は子供たちの人間形成に大きな役割を担っていることは事実であります。保健や福祉、教育などにわたる専門性と一人一人の子供の個性に応じた援助をするための経験が重要であると考えております。
 日頃から、職場内や職場外での研修、自己研さんにより、一人一人の保育士が保育の専門性を高めていただきたいと考えております。
○田村智子君 それでは、要請しておきたいんですが、総理、これまでも、春にまとめる一億総活躍プランの中で具体的で実効性のある待遇改善策を示すとおっしゃられてきました。是非、専門職であり、経験を積んで働くことがその専門性を高めると、この中身がしっかり入るようなプランを是非とも検討していただきたい、これは要望しておきます。
 保育士が経験を積んで専門性を高める、このことを処遇の面で保障してきたのが公立保育所です。ところが、公立保育所はコストが掛かり過ぎると、民営化、民間委託など一九九〇年代以降、急速にこれが進み、今も続いています。
 例えば中野区、公務員削減のため公立保育所を全廃するとして、保育士の新規採用をもう十年以上にわたって全く行わず、人手が足りない分は処遇も悪い不安定な非正規で補うということまでやっています。コスト削減政策は民間保育所にも及んで、公立と民間の給料の格差を埋める補助制度、次々と廃止をされ、民間保育士の給料も大きく引き下げられました。
 こうした過去の政策には、保育士を専門職として評価する考えはみじんもありません。処遇改善どころか、処遇の引下げを政策的に進めてきてしまった、この反省に立ってこうした政策はもうやめるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 認可保育所につきまして、公立、私立を問わず児童福祉法に基づいて最低基準を遵守するということとなっているわけでありまして、基本的な保育の質が公と私で分かれて異なるということではなく、同様に今担保されているということが法律的に裏打ちされているわけでございます。
 保育の実施責任はこれは市町村に今ございまして、自治事務として行われているわけでありまして、まさに地域の子供たちをどう育てるかということだと思いますが、民間委託とかあるいは民営化の選択は、保育ニーズや地域の実情に応じてそれぞれ責任者たる市町村が適切に判断をするべきものというふうに考えているわけでありまして、先ほど来、専門性ということがありましたけれども、保育士が長く勤められる環境をつくってその資質を継続的に上げていくようにすることは、保育の質にとっても人材確保のためにも重要でありまして、公立保育所においても、あるいは民間の保育園においても、そのような取組は進むようにしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 それは市町村が勝手に公立保育所を潰したんじゃないんですよね。それは、公立保育所への運営費補助金もやめてしまう、一切お金出さない、そしてまた民間にできることは民間に、公務員は減らせと、こういう政策を国が旗振って進めてきた、これ間違いがないことですよ。それらが保育士の処遇を大きく引き下げる役割を果たしてしまった。私は、しっかりその反省に立って政策の転換をしなければならないということは強く申し上げておきたいというふうに思います。
 それで、次のパネルを見ていただきたいんですけど、やっぱりこれは保育にコストが掛かり過ぎるということでやられてきた攻撃だったんですね。
 それで、EUでは、一九八〇年代から保育の質についてということを議論をしていて、加盟国で保育がどうなっているかという状況調査なども行い、一九九六年には各国が取り組むべき保育サービスの質の目標、十年間の計画が提起されました。この中で、保育や幼児教育の公的支出は、少なくともGDP比一%以上であるべきだというふうにされたんです。
 資料はOECDの調査からの抜粋、直近のデータで二〇一一年のものになっています。フランスはGDP比で一・二四、イギリス一・一二、これイタリアも一%には届いていないんですが、予算の規模を急激に拡大したということがよく分かるんです。
 翻って日本はどうか。日本は、実は六〇年代から七〇年代にポストの数ほど保育所をということで、これ保育の予算のGDP比、実はフランスよりも高いんですね、平均よりも。ところが、その後、さっき言った国庫補助の制度というのをどんどん変えて、公立保育所にもうお金出さないというような攻撃があって、予算は減っていきます。一九九九年、〇・一九%にまで落ち込みます。それで少子化ショックだってなって増やしていくんですが、まだ〇・四五%。これは他の国々と比べてもやっぱり大きく不十分だというふうに言わなければならないと思いますが、総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) いずれにいたしましても、我々、この保育については、待機児童を実現するために、今までの倍以上のペースで保育所をこれは、の受皿をつくってきたわけでございまして、二十万人、四十万人、そして四十万人を更に五十万人にしていくわけでございまして、しっかりとそれを実現をしていきたいと、こう思っているところでございます。
 いずれにせよ、お父さん、お母さんが安心して子育てできる、そういう環境をつくっていきたいと思っております。
○田村智子君 これ是非、EUの取組を学んでみてほしいと思うんですね、調べてみてほしいと思うんです。
 なぜフランスなどは保育や幼児教育の公的支出、これほど急増させたのか。EUやOECDで繰り返されている議論は、乳幼児期のケアと教育がいかに大切かということなんです。子供への財政的支援は早ければ早いほど大きな効果を持つ、乳幼児の基礎ステージをしっかりと耕すことが次のステージでの学習を生むんだ、乳幼児期の保育や教育は公共財産である、こういう議論がされています。
 だから、EUの目標を見ますと、保育士の給料も小学校の教員と同等であるべきだとしているんですよ。実際調べてみると、ヨーロッパのほとんどの国がこれを達成しています。ベルギー、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ポーランド、ポルトガル、スペイン、トルコなど、小学校の教員と同じなんです。日本は六割なんですよね。
 日本の保育施策というのは、少子化だから女性に働いてもらおう、それには保育の受皿が必要だ、とにかく受皿つくればいい、こういうふうになっていなかったか。待機児童の対策も、保育所増やしているけど追い付いていないんだと、入れないの仕方がないとなっていなかったか。あるいは、定員一二〇%とかお庭がなくていいとか、保育室の面積ももっと一人当たりの面積狭くしていいとか、こんな質を置き去りにしたものになってこなかったか。
 今、お母さんたちやお父さんたちは、こういう政治の姿勢全てに対してそれでいいのかという声を上げているんだと私は思います。EUのような議論と目標、今こそ日本に必要だと思います。全ての子供の福祉のために大幅な保育あるいは幼児教育の予算拡充する、これ必要だと思いますが、総理、もう一度お願いします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 保育の重要性については、もう既に述べてきたとおりでございます。言わば幼児教育の一環でございますから極めて重要であると考えておりますし、仕事をしながら、あるいは仕事をしなければならない方々にとって、保育所で受け入れてもらえるかどうかというのは極めて重要であるということは我々も認識をしております。
 そのために、言わばこの待機児童ゼロに向けて安倍政権になって倍のスピードで整備を進めてきているところでございますが、その中において、ただ量をつくればいいということではなくて、先ほど申し上げましたように、保育士の方々が経験を積んでいくことは重要であるというふうに認識をしている次第でございます。
 また、待遇につきましても、先ほど少し厚労大臣の方からも触れたところでございますが、処遇の改善におきましても、経験を積んだ保育士に対して十分な処遇が行われることが重要であることから、平均勤続年数が十一年以上の場合には加算率を更に一%引き上げるなどしている次第でございますし、また、研修の場の提供については、都道府県や市町村に対して、働く保育士の方々が専門性を高めるための研修の実施への支援も行っているわけでございまして、こうした意味から、専門性を高めていく上における支援も行っていきたいと思っております。
○田村智子君 これ、消費税の増税もやりましたと、それを処遇改善に充てますといいながら、それは二%とか三%という議論にしかなっていなくて、一体これでどうやって保育所増えていくんだろうか、こういう疑問が物すごくお母さんたちの中にあるというふうに思っているんですね。
 私たち日本共産党は、もちろん消費税増税やれなんていう立場ではありません。それは保育所にとっても経営を逼迫させる要因に現になっていますから、税金の集め方とか使い方、こういうのを変えれば消費税に頼らない道が開ける、こういうことを繰り返し提言をしているわけです。
 例えば、これ本会議の中でも追及しましたけれども、来年度の予算案見ても、法人税は新たな減税を行うといいます。昨年度の法人税の減税見ると、研究開発減税だけでも総額七千億円近い減税がやられている、そのほとんどは大企業だ、トヨタ一社だけでも一千億円を超える減税になっている、これでいいのかということも私たちは問題提起をしているわけです。
 とりわけ経済界は、今少子化の下で人材育成を叫んでいる。ならば、子供たちのために黒字大企業にはまともに税金納めてもらって、日本の未来を担うそういう子供たちの成長に力を貸してほしいと、そうやって経済界にもお願いをする、そんなふうにして財源確保するということが求められているんじゃないかと思いますが、最後に総理にお聞きします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 経済界に対しましては、この法人税減税を進めているのは事実でありますが、同時に、しっかりと賃上げを進めてもらいたいと、このように要請をしているわけであります。また、関連会社との取引条件の改善にもしっかりと取り組んでもらいたい。実際、その中において昨年は十何年ぶりの賃上げが成し遂げられたことは申し上げておきたいと、このように思います。
 今後とも、企業にも子育て等にも協力をしていただきたいと、このように思っております。
○田村智子君 終わります。

 
 

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