国会会議録

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参議院決算委員会速記録(2016年1月21日) 学費の高騰と奨学金問題

参院決算委員会 2016年1月21日(木曜日)の記録です

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 まず、甘利大臣に質問いたします。
 週刊誌の報道は、大臣と大臣の事務所がお金を受け取ってURに口利きをしたというものです。この報道が事実であれば、あっせん利得罪に問われる可能性が極めて高い。だから、大臣は午前中の質疑で、記事を読んで驚いたというふうに答弁をされたのではないでしょうか。
 あっせん利得罪に当たり得ると、この報道はですね、そういう認識を甘利大臣はお持ちなのか。また、午前中、調査するというふうに言われましたが、その認識の下で調査をするということですか。
○国務大臣(甘利明君) 午前中も申し上げましたように、私は秘書がそういう行動をしていたということは初めて知りました。これは真実であります。ですから衝撃を受けたわけであります。週刊誌報道のような行動を秘書がしていたということは全く知りませんでした。
○田村智子君 これは大臣自身も問われているわけですね。これまでも民主党の議員、質問されていましたが、大臣室と地元事務所で二度にわたって五十万円を大臣御自身が受け取られたという報道がされているわけですよ、計百万円です。
 大臣は、午前中の質疑では、この報道されている日付にその場所で当該人物と会っているということはお認めになりました。午後の最初の質疑で五十万円を受け取ったかということを大分聞かれましたけれども、しかし、これについてあなたは、記憶が曖昧だという答弁しかされていません。
 これ、秘書がやっていたことは全く知らなくて驚かれたというんですね。全くやっていないことが書かれたら、五十万円受け取ったと報道されたら、驚くのが普通じゃないですか。
 五十万円受け取ったと、このことを否定されないんですか。
○国務大臣(甘利明君) 事の経緯を御説明をいたします。
 週刊誌報道を読みました。二年二か月前、ですから平成二十五年の十一月中旬ですね、千葉のS興業の顧問、顧問と称される一色さん、この方はS興業の顧問ですね、そして、その方とS興業の社長一行が大臣室を訪問したいと。秘書からは、S興業の社長は私の熱烈なファンだからという連絡がありました。その三、四名が初めて大臣室に二年二か月前に来られました。そのときの録音があると。最初に大臣室を訪問されたとき、秘密に録音機を持って入られるということがどういう目的なんだろうか、それ以降全て秘密裏に録音を取って、文春によると数十時間ですね。それに……(発言する者あり)いや、文春に書いてあることですから。それにちょっと衝撃、ショックを受けたんですけれども。その録音によって大臣室で行われていることが報道されていましたけれども、それと、先ほど来言っていますけれども、私の記憶の一部が違うんであります。ですから、ただ、向こうは録音が全部最初からあるんだと、全て、最初に出会ったときから最後まで全部秘密裏に録音しているんだということですから、録音があるとしたら何で私の記憶と違うんだろうかということで、それを精査をしないと、ここで発言したことというのは議事録に残りますから。
 ですから、それを、別に何もしゃべらないということじゃないんです。ちゃんと精査したらちゃんと申し上げますと申し上げているんです。逃げ切るなんということは一切言っていませんから。だから、その精査をさせてくださいということをお願いしているわけです。
○田村智子君 結局、どんなに聞いても、長く答弁されても、五十万円の受領ということを否定されないんですよ、一言も。
 これ、もう総理にお聞きをいたします。
 現職閣僚が大臣室で五十万円を受け取り、口利きをしたという疑惑なんです。これは、政治資金報告書への記載漏れなどとは全く次元が違う、あっせん利得罪など、大臣の資格そのものが問われる重大な疑惑です。大臣が調べるから、甘利大臣が調べるからそれでいいではとても済まされないです。これはあなた自身が、総理自身が真相究明に責任を持つべきだと思いますが、いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に甘利大臣から、速やかに必要な調査を行い、その上で自ら国民に対する説明責任を果たしていくと、こう明確に述べておられますから、そのようにしっかりと説明責任を果たしていただきたいと、こう考えているところでございます。
○田村智子君 これはもう内閣自体の責任ですよ。こんなあっせん利得の疑いが持たれるような大臣がTPP交渉を行った、こんなことは断じて認められないですよ。徹底的な解明を今後も求めます。
 今日は元々質問を準備していたものがありますので、そちらの質問に移ります。
 これまで私は子供や若者の貧困の問題を繰り返し国会質問で取り上げてきました。安倍総理も、子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはならない、こういう認識を繰り返し示してこられました。
 それでは、安倍政権の三年間というのは、子供や若者が未来に希望を持てるような政策が本当に進んだと言えるのか。今日は大学生に焦点を当てて質問いたします。
 十八日の予算委員会で我が党小池議員が、家庭の経済状況で大学進学率に明らかな差があるということを示して、自助努力だけでは解決できないという認識があるかということを文科大臣にただしました。馳大臣は、その認識があるという答弁をされました。
 これは、直接的な問題はやはり学費負担だと思います。大学入学した年に納める初年度納付金、国立大学で八十二万円、私立大学は、平均額ですが、文科系百十五万、理科系百五十万、医科歯科系は四百六十一万円にもなるわけです。
 総理、これは余りにも高い。多くの家庭で自助努力の限界を超えていると思いますが、いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 家庭の所得や両親の学歴が児童生徒の学力と密接に関係があることや、家庭の経済状況によって大学等進学率に差があることなどが各種調査で示されていることは認識しております。子供たちの輝かしい未来が本人の努力以前に、家庭の経済状況によって失われてしまうようなことがあってはならないと考えています。
 このため、来年度予算において幼児教育について、所得の低い世帯の保育料を、第一子の年齢に問わず、第二子は半額、第三子は無償にするとともに、高校生等奨学給付金を拡充いたします。また、大学等の無利子奨学金を一・四万人増員し、授業料免除を五千人増員することなどを盛り込んだところであります。
 貧困の連鎖を断ち切るために教育の機会均等は重要であり、今後とも、教育費負担を軽減し、希望すれば高校にも専修学校、大学にも進学できる環境を整え、子供の勉学意欲に応えていきたいと考えております。
○田村智子君 お配りした資料を、パネルを御覧いただきたいというふうに思います。(資料提示)
 これは、OECDの調査を国会図書館がまとめたものなんですね。OECDは、高等教育の授業料水準、奨学金の公的補助の水準、それぞれ高いか低いかということを四つの分類にしています。
 低授業料で、授業料が安くて高補助、奨学金などが充実している、これは北欧諸国とドイツ。ドイツは長く授業料無料だったんですが、財政難を理由に九〇年代に授業料徴収に転じました。しかし、学生の要求運動を受けて、今再び無償化がどんどん進んでいるわけです。
 次に、授業料は高く、また補助も高い、これはアメリカやイギリスなど六か国です。このうちイギリス、九〇年代の終わりに授業料を有料として、その後値上げも行われました。しかし、大きな批判が起こって、卒業後に所得に応じて支払う、言わば出世払いの制度となりました。また、学費値上げをした際には、奨学金の水準を給付、貸与とも引き上げています。
 それでは、授業料が安くて補助も低いという国はどうか。これはフランスなど七か国。フランスの学費は登録料と健康診断料で年間三万円足らずです。これも経済的要件で免除があり、八段階で最大年七十八万円弱の奨学金が給付をされる制度があります。
 最後、授業料が高く補助が低い、日本、韓国、チリの三か国です。このうち韓国は、二〇〇八年から給付制の奨学金をまず生活保護受給者からスタートをさせて、今、低所得層、中所得層へとその対象を広げています。チリは昨年、低所得層の授業料を国立、私立とも無償化するということを決定いたしました。これ、今年から始まります。日本はどうかと。国際的に明らかに高い学費です。しかも、国としての給付制の奨学金はありません。
 総理はよく、地球儀を俯瞰する外交とおっしゃる。では、地球儀を俯瞰したときに、日本の高学費、低補助、これは余りにも際立っていると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(馳浩君) お答えいたします。
 国によって奨学金を含む教育費の負担軽減のための方策については様々な制度があり、一概に比較することは困難であると考えております。
 文部科学省としては、意欲と能力のある学生等が家庭の経済状況にかかわらず大学教育を受けられるようにすることは教育の機会均等を図る上で極めて重要なことと考えており、大学段階における学費負担の軽減に努めております。
○田村智子君 これ、明らかにもう際立っているんですよ。異常なんですよ。
 財政難から大学学費を値上げした国というのは日本以外にも確かにあります。しかし、ドイツでもイギリスでも、国民生活に著しい影響を与えた場合には新たな負担軽減措置がとられているんですよ。ところが、日本では、国民所得が減少をし続けてもなお学費値上げの政策が続けられました。
 二枚目の資料です。
 これ、初年度納付金、大学の初年度納付金と、それから児童のいる世帯の所得の推移を見ています。これ、児童のいる世帯の所得、平均所得、一九九六年の七百八十二万円がピークで急激に減少する。二〇一三年には六百九十六万円。ところが、国立、私立ともこの二十年間で約十万円も初年度納付金は値上げがされているわけです。これが何を招いたかです。
 次の資料です。
 日本政策金融公庫の二〇一四年度の教育費負担調査、学生の世帯年収の分布をグラフにしたものです。国公立大学で五三%、私立大学で五四%が最も所得の高い階層、年収八百万円以上になっています。これ、国公立高校や、ここにはありませんけど、短大、専門学校を見ても、この八百万円以上の層というのは三割台なんですよ。これ見ても、低所得層が大学進学からはじき出されたような状態、これは明確だと思います。
 実例を挙げます。東北地方のある母子世帯。娘さんは大変成績が優秀で学年トップ、高校一年で簿記三級に合格するほど優秀です。これ、大人でも四割ぐらいしか合格しないような試験だといいます。お母さんは、何とか進学させたいと以前から学資保険を毎月少しずつ積み立ててきた。しかし、十八歳になれば児童扶養手当がなくなる。生活費だけでも苦しい。学費は余りに高くて、積み立てたお金ではどうにもならない。お母さんは、娘は高校のキャリア教育などで大学に興味を持っている様子だと。でも、家庭の経済状況を知っているから、大学進学についてはもうしないと決めていて、大学のことは一言も家で話さない。これ、お母さん、どれほど切ないか。娘さんの気持ちを思うと、本当に胸が痛みます。
 総理、国民所得が減ってもなお高学費、低補助の政策を続けたんですよ。これが今や教育の機会均等を掘り崩している。総理、答えてください。そういう認識おありですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我が国においては授業料免除や奨学金の充実によって学生の経済的負担の軽減に努めてきたところでありまして、先ほども申し上げましたが、来年度予算においては、大学の授業料免除については国立で五万九千人、私立では四万五千人に支援を行うとともに、大学等の奨学金については無利子奨学金では四十七万四千人、有利子奨学金では八十四万四千人、合わせて百三十一万八千人に貸与を行うなど施策を講じているところであります。
 そして、無利子奨学金につきましては、年収三百万円以下の世帯の学生には学力の基準を満たせば全員貸与する制度となっておりまして、今例として挙げられた方は成績がトップという方でありますから当然この学力の基準を満たすということになるんだろうと思いますが、そういう方については全員貸与する制度となっておりまして、その上で、来年度予算では全学生の一四%に当たる学生に貸与することとなるわけでありまして、こうした仕組みをしっかりと活用していただきながら学生が経済的な理由により学業を断念することがないよう授業料減免の充実を図ってきたところでございますが、今後とも努力を重ねていきたいと思っております。
○田村智子君 今、来年度予算で負担軽減進むというような説明があったんですけれども、その来年度予算の編成に向けて、財政制度審議会、この建議見たら何が書いてありますか。国立大学の運営費交付金を総額で削減する方向を示して、授業料引上げの議論が必要だと、こんなことまで書かれているじゃありませんか。本当に異常ですよ。
 国民所得落ち込む、学費は上がる。じゃ、この下で今総理が言われたような施策が取られてもう学生生活がどうなっているか、お示ししたいと思います。
 東京私立大学教職員組合連合が、十四大学、約四千三百人からのアンケート調査を行いました。学生への仕送り額の平均は、九四年度には十二万四千円、これが二〇一四年度八万八千五百円に激減しています。家賃を除く生活費、これ計算してみると、一日僅か八百九十七円。
 馳大臣にお聞きします。これで学生たちはどうやって生活をしていけばいいんでしょうか。
○国務大臣(馳浩君) お答えいたします。
 学生への家庭からの給付額が減っていることについては認識をしております。仕送りだけでは大学に進学することが困難な方々が家庭の経済事情によらず大学教育を受けられるように、奨学金や授業料減免の充実など、学生への経済的支援の充実を図ることが重要と考えております。
○田村智子君 今の答弁では、やっぱり学生はアルバイトで稼ぐか奨学金を借金するか、それしかないわけですよ。
 ところが、じゃ、学生、アルバイトで働こうとする。これ、派遣など非正規雇用が社会人の中にも広がっていますので、学生のアルバイトの賃金がデフレスパイラルの渦の中に巻き込まれているわけですよ。ブラック企業対策プロジェクト、これ、大学の先生方やNPO法人が立ち上げたものですけれども、二〇一四年、全国二十七の大学の協力の下、学生バイトの実態調査を行いました。調査結果によると、時給の平均値、全職種で見ると九百四十四円、塾、家庭教師でも千二百十七円なんですね。そうすると、どういうバイトになっちゃうか。実例紹介します。
 東京大学に、先ほど来支援だと言っている授業料免除、これを受けて入学したAさん、親は自営業を失敗して仕送りは全くなかった、生活費のため奨学金月五万円を借り、さらに月十万円以上、多いときで十七万円を自分で稼いだ、夕方四時から深夜零時まで八時間、塾で添削のアルバイト、帰宅は午前一時半、それから勉強するという毎日です。大学の講義がない日は昼間もスーパーの店頭販売など日雇派遣で一日七時間働いた。それでも彼女は奨学金という借金を三百万円以上抱えて卒業しています。このAさんは、私は授業料が免除されたから何とかなった、弟は地方の国立大学で、家計状況は変わらないのに減額にしかならなかった、私以上に大変だったと思うというふうにお話しされているんです。
 これまで御答弁あったとおり、授業料の減免、奨学金、これを利用しても一日八時間、七時間、学生が働かなければならない、これ、どう思われますか。
○国務大臣(馳浩君) お答えいたします。
 多くの学生がアルバイトに従事し、中には長時間アルバイトをする者もいることは認識しております。アルバイトにより学業に支障が出るようなことは望ましいことではないと考えております。
 近年、経済情勢の悪化により家計の状況も厳しくなる中で、学生の高等教育への進学機会をより確保するため奨学金事業を拡充してきているところであり、今後も学生が安心して学ぶことのできる環境の整備に取り組んでまいりたいと思います。
○田村智子君 本当むなしくなってくるんですけど、これ、私立大学だともっと大変ですよ。
 これ、もう一例紹介します。
 私立大学一年生B君。授業料と生活費のため奨学金は月十二万円を借りる、さらに、夜十時から朝五時や六時までコンビニでバイトをする、自宅で仮眠して大学へ行って、空き時間は大学でも仮眠すると。それでも月九十万円の授業料に足りなくなって後期分を滞納した、このままでは、ああ、年、年ですね、九十万円の授業料に足りなくて後期分は滞納になった。大学からはこのままでは除籍になるという通知が来て、もうこれ以上大学にいても借金が増えるだけだ、中退を決意せざるを得なかった。B君の知人は、結構頑張ったんですけどね、この言葉に胸が詰まったというふうに言っていました。
 この先ほど紹介した学生バイトの調査、アルバイト経験者の四二%が夜十時から朝五時の時間帯で働いたことがあると、こう回答をされているんです。このように長時間労働、深夜労働で、これでは学業成り立たない。そうすると、短時間高収入のバイトがあるんだといって今や風俗産業が入り込んでいる。一月六日付け東京新聞が報じています。大手アダルトビデオプロダクションが、奨学金返済ナビというサイトで何の仕事かを隠して女子学生を募集していたという記事です。確かにインターネット検索をしますと、奨学金の返済、学費の支払という言葉で女子学生をターゲットにする情報が次々と出てきます。
 今度は総理にお聞きしたいんですね。雇用の流動化が必要だといってリストラ、合理化の旗を振り、派遣労働など非正規雇用を爆発的に広げたことで親世代の収入の底が抜けた。それでも受益者負担だと学費を上げ、払えなければ奨学金を借りればよいと頑として給付制奨学金に踏み出さない。あなたたちが進めた政策がここまで若者たちを追い詰めている、こういう認識、おありですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この給付制の奨学金につきましては、財源の確保や対象者の選定など、導入するには更に検討が必要と考えております。同時に、先ほど申し上げましたように、学生の負担の減免に努めているところでございます。
 ただ、今委員がおっしゃった前提の経済の状況については、これは全く我々考え方が違うわけでございまして、五十四歳以下の働き盛りの方々のこの世代につきましては、正規から非正規に移る方よりも非正規から正規に移る方がこれ増えているのは現実に実態でございまして、そうした中におきまして総雇用者所得もしっかりと増えてきているというのも実態でございますし、また、パートの時給はこれも二十二年ぶりの高い水準になっているのも事実でございまして、その点のこれは分析は違うわけでありますが、いずれにいたしましても、給付型奨学金については、財源の確保、そして対象者の選定など、導入するには更に検討が必要であると考えております。
○田村智子君 もうアベノミクスの果実を待っていたら、学生たち、どんどん追い詰められますよ。果実になんかなるかどうかも分からない。
 これまでの答弁を聞いていても、結局、学生への国の支援というのは、奨学金の貸付けしかないということが本当によく分かるんですよ。自民党政権は、学費を値上げしていく、このことへの対応も、貸付額を増やすということでしかしなかった。その結果、このパネル見てください、多額の借金を抱える若者が増え続けています。
 これは、大学、大学院修了時点で、日本学生支援機構の奨学金借入れの総額が五百万円以上となった貸与者の人数と割合です。二〇一〇年度七千四百三十一人だったものが、二〇一四年度には何と二万二千三百四十一人ですよ。ギャンブルしたわけでも浪費をしたわけでもありません。大学や大学院で学ぶための借金というわけなんですよ。
 ある女子学生に私聞きましたら、この額を返すとなると、毎月二万、三万を二十年間返さなきゃいけないんです。ある女子学生、有利子奨学金借りている方。月二万二千円だから返済できるでしょうと言われると。でも、これで二十年間返し続けたら、利子だけで百万円になるんだと。せめて利子の分だけでも軽くならないでしょうかというメールが私の元に届きました。でも、こんな検討全くないですよ。給付制もいつ検討されるか分からない。
 実は、こういう貸与制の奨学金制度というのはドイツにもあります。しかし、半額給付、半額貸与で、総額百四十万円を超える部分は返済免除になるんですよ。こうやって返済額を減らすという支援があって初めて奨学金と言えるんじゃないでしょうか。馳大臣、いかがですか。
○国務大臣(馳浩君) お答えいたします。
 大学等奨学金の事業規模全体を伸ばしてきたこともありまして、総額五百万円以上の奨学金を借りる学生等が増えていることは認識をいたしております。
 平成二十二年度以降、経済情勢の悪化により家計の状況も厳しくなる中で奨学金事業を拡充してまいりましたが、これは学生の高等教育への進学機会をより確保するための措置でもあります。例えば無利子奨学金の規模は、平成二十二年度と平成二十八年度予算案を比較すると、約四〇%拡大しております。
 一方で、奨学金の返還負担の軽減の観点も重要であることから、これまでも返還猶予、減額返還などの仕組みを設けておりますが、例えば平成二十四年度以降は、保護者年収が三百万円以下の場合には本人所得が三百万円を超えるまで返還猶予できる、いわゆる所得連動返還型無利子奨学金制度の仕組みを設けるなどの返還負担の軽減策を講じてきたところであります。
 そこで、給付型奨学金の導入については今後の課題として更に検討しつつも、まずは、より柔軟な所得連動返還型奨学金の制度設計を進め、これを平成二十九年度進学者から導入し、奨学金受給者の返還負担をより軽減すべく取り組んでいるところであります。
○田村智子君 これ、所得に連動して返済するようにというのは、これはもう緊急に必要だと思います。しかし、今検討されている中身を見ると、返済総額は減らないんですよ。後ろへ後ろへとずれていくだけなんですよ。しかも、五百万円以上の借金というのは有利子奨学金を受けている方ですよ。この有利子については、所得連動型の検討さえやっていないじゃないですか。検討するかどうかも分からないと書いてあるんですよ。これでは学生の皆さんはやっぱり卒業してからも家計の状況に左右され続けると、こういうことになってしまう。
 本当に、麻生大臣にも私お聞きしたいんですね。財務省は、冒頭でも指摘をしましたけれども、国立大学の授業料の値上げの議論、これが必要だといまだにあおっている。また、給付制の奨学金というのは、実は民主党政権のときに文部科学省は予算要求までやったんですよ。ところが、財務省は僅か百四十七億円の予算さえも認めなかった。
 でも、こんな高学費、低補助のこの政策は、私は破綻していると思います。真剣に学費の値下げ、給付制奨学金、検討すべきだと思いますが、麻生大臣、いかがですか。
○国務大臣(麻生太郎君) 御指摘のあっておりますいわゆる給付型奨学金の導入ということですけれども、これは返還金で新たな奨学金を貸与するという今のシステムと全く異なりますから、したがいまして、単なる財政支出と、新しい財政支出ということになりますでしょう……(発言する者あり)そこは認めてくださいよ。そこは認めてくださいよ。財政支出の話で、ばらまきの話とすり替えないでさ。単なる財政支出になりますので、結果的には将来世代から借金して今の奨学金に充てるということと同じということになりかねませんから。
 また、卒業後、多額の収入を得るということになった方からも返済不要ということになりますと、これは大学に行かなかった方との不公平が生じるということにもなりますよといった問題がありますので、財政当局を預かる私どもとしては適当ではないと思っております。
 一方、低所得者の世帯の学生に対しましては授業料減免措置がありますので、毎年の予算でその枠を拡充し続けておりますが、現在の無利子奨学金は二十年返済であり、返済負担は相当軽減をされております上、先ほど馳大臣からお話がありましたように、卒業後の所得が三百万円以下の方の場合は返還が無期限で猶予されているということになっておりますなど、相当に負担軽減策が図られておりまして、その対象者につきましても、平成二十八年度予算では拡充をいたしております。
 さらに、卒業後の所得について返済額が変わる所得連動返還型奨学金、今お話があっておりましたけれども、これ平成二十九年度から導入をいたすべく、今補正予算におきましてシステム改修などの対応を進めているところであります。
 いずれにしても、これらの制度を着実に運用していくことによって、将来世代へのツケ回しをできるだけ小さく抑えつつ、低所得者への十分な配慮を行っていくということは極めて重要なことだと私どももそう思っております。
○田村智子君 低所得者への十分な配慮がどこにあるのかというふうに思いますよね。これ、奨学金は返還してもらったお金が次の奨学金の原資だと。これじゃ、家計の苦しい人が家計の苦しい人を支えろと言っているのと私は同じだというふうに思うわけですよ。
 それで、総理にもお聞きしたいんです。
 これ、給付制奨学金、私もう踏み出すべきだというふうに思います。先日の補正予算の審議で、文部科学大臣はこれ必要だという認識を繰り返し示されて、安倍総理も馳大臣が答弁したとおりだというふうに言われているんですよ。
 ところが、安倍内閣の政策文書には高等教育での給付制奨学金について出てこない、やるという方向は出てこない。学生の実態や奨学金返済に苦しむ若者の姿を見れば踏み出すしかない。そうでなければ、どんなに総理が若者の未来が家庭の経済状況に左右されることがあってはならない、こう叫んでも、それは空文句でしかないというふうに思います。
 この場で、給付制奨学金に向かうんだと、検討を開始するとお約束いただきたい。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この給付制奨学金、給付型の奨学金についても、これは我々、全くそれは政策の選択肢としては取らないと言っているわけではないわけでありまして、それは馳大臣からも答弁しているとおりであります。
 やはり財源の確保が大切であるということでございまして、現在も限られた財源の中においてはできるだけこの減免を図る、学生の皆さんの減免を図るための拡充は行ってきているわけでありまして、大学等の無利子奨学金も今度は一万四千人、これ増員をしているわけでございます。
 そうした努力もしながら、またあるいは、若い皆さんへの支援は大学だけではなくて、例えば我々、幼児教育の無償化にも取り組んでいるわけでありまして、全体的なバランスの中においてどのようにこの限られた資源を配分をしていくかということで、我々もいろいろ悩むところはあるわけでありますが、最大限の努力をしているところでございます。
○田村智子君 これ、財源の確保と言われると。
 じゃ、安倍政権になってからの文教関係費、決算ベースで見ると、一二年度決算で四兆五千二百億円から一四年度は四兆三千三百億円に減っているんですよ。今までずっとGDPに占める教育予算の割合、OECD諸国の中で最低水準、最下位を争うような事態だと、こう言われながら、まだ減らすんですよ、文教予算。
 一方で、公共事業関係費、二〇一二年度決算五兆七千八百億円から翌年度決算は七兆九千八百億円、一四年度決算でも七兆三千億円と、枠は民主党政権から政権交代した後ぐっと拡大して、その拡大した枠がそのまま保たれたままでいるわけですよ。
 防衛予算はどうか、防衛関連費、一四年度決算で、これ決算ベースで初めて五兆円を突破した。奨学金は、給付制奨学金さえ、かつて文科省が要求したたった百五十億足らずのそのお金さえ増額を認めないんですよ。文教予算増やすことを認めないんですよ。科学研究費減らせば、文教予算全体は減らし続けているわけですよ。それでいて、若者に未来が開けるようなど、こんなことは私は到底言えるはずがない。
 こんな安倍内閣には若者の未来を語る資格はない。給付制奨学金の創設、学費値下げのために力を尽くすことを決意を表明いたしまして、質問を終わります。


質問の中で使用したパネル

参考 委員会の中で紹介した国会図書館の資料です

国立国会図書館 諸外国における大学の授業料と奨学金 調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 869(2015. 7. 9.)


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