「女性活躍推進」法案の参考人質疑が6日、参院内閣委員会で行われ、今野久子弁護士(東京法律事務所)、矢島洋子氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、松浦民恵氏(ニッセイ基礎研究所)が意見陳述しました。
女性労働者差別の訴訟に37年間たずさわってきた今野氏は、女性差別撤廃条約批准と男女雇用機会均等法制定から30年たっても出産後の女性の離職率は6割と変わらず、男女の賃金格差や女性の4割が年収200万円以下という実態を告発。法案で女性活躍の実態を把握するなら、正規・非正規の雇用形態別の集計、コース別人事の集計も必要で、賃金については必須項目とすべきことや「1日あたり、週あたりの労働時間の上限などの法規制が必要」と主張しました。さらに、派遣法改定や労基法の労働時間規制をなくすことは女性活躍に逆行し、女性の労働権確立に向けて実効性ある法体系全体の検討が求められると述べました。
日本共産党の田村智子議員は、派遣労働者の実態は派遣先で把握すべきではないかと質問しました。今野氏は「女性が実際に働いている派遣先において実態を把握すべきだ」と答えました。
「総合職」「一般職」に分ける雇用別コース管理についての田村氏の質問に、矢島氏は「総合職への転換が可能であるべきだ。入り口(採用時)にコースを分けるのは企業にとっても可能性をつぶすことになる」と答えました。松浦氏も、非正規への両立支援や管理職登用の必要性を述べました。
( 2015年08月13日 赤旗)
【 内閣委員会 8月6日 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日はありがとうございました。
お一人ずつに一問ずつということでお聞きをしたいというふうに思います。
まず、今野参考人にお願いをします。
意見陳述の中で、やはり職場における女性の活躍を妨げる要因を取り除くという一体性のある政策あるいは法律が必要なんだということで、派遣労働法の改定案についても言及をされておられました。まさに同時並行で派遣労働法についても今、国会審議が行われているところです。この法案に照らして、この派遣労働者の問題でお聞きをしたいんですね。
派遣労働者については、男女間の就業年数の差異であるとか、あるいは管理職比率であるとか、こういうのは派遣元企業において実態を把握し、それを分析する、女性の活躍についても雇用主である派遣元企業が行動計画を作るというふうに言っているんですが、私は非常にここに疑問を持っています。そんな行動計画やら実態把握が果たして可能なんだろうかということも考えなければいけないというふうに思っているんですね。
それで、この派遣労働者をどういうところで女性の活躍というこの行動計画で位置付けるのか、あるいは実態把握をしていくのか。私は派遣先でやるべきだというふうに思うんですけれども、その他、育児休業法であるとか均等法とも照らして、少し今野参考人に、派遣労働者、この法案でどうするのかということについてお聞きをしたいというふうに思います。
○参考人(今野久子君) 今のこの法案の状況からいけば、事業主は派遣労働者については派遣元です。そうしますと、実際に働いているのは派遣先なわけですけれども、先ほど私は、事業場の中で実態把握をするときに、正規と非正規を分けてというか、それについて、男女の割合だとか何かも調査というか実態把握をすべきだということを申し上げましたが、その非正規の中にも、私は、派遣労働者をどれくらい使っているのか、それから、更に言えば、派遣労働者については正社員化という問題がございますので、正社員化がどれだけ進んでいるのかというのもやはり把握すべき事項の中に入れるべきではないかというふうに思っています。
それから、育児休業の取得とか何かの問題が起こってくると思うんですけど、それについても、例えば自分のところで働いていた女性労働者が育児休業をどれほど取っているのかというふうなこともやはり把握していく必要があるのではないかというふうに思っています。やはり、今、日本の派遣労働について言うと、派遣先の労働者との均等待遇の原則、ルールというのが、これが規定されていないという問題があるわけで、そういう点でいうと、この派遣労働者の女性は、派遣労働者は非常に、特に登録型は雇用が不安定で、いろんな、育児休業とかそういうものに関してもなかなか取得できないという問題があるわけですね。そういう点からいって、やはり派遣元だけではなくて派遣先もこの実態を把握すべきではないかというふうに思っています。
以上です。
○田村智子君 ありがとうございます。
もう一問、今野参考人にお聞きをしたいんですけれども、労働時間の問題で、長時間労働の是正が必要だということでかなり突っ込んでお話をいただきました。私も、三十代、四十代の男性の時間外勤務というのは非常に時間長いんですね。世代の中でも最も子育て世代と言われるところの世代が大変に残業時間が長いと。こういう問題を男女問わず解決をしていかなければ、これは、両立支援といったときに、女性の両立支援というだけじゃなくて、男性にとって仕事と家庭の両立をやっぱり支援しなきゃいけない、男性も家庭生活を送る権利がある、育児をする権利があると、それが妨げられているんじゃないかというふうにも思うわけです。こうした長時間労働の問題が非常に家庭全体に与える影響としては、過労死という問題まで起きていると。
今野参考人、過労死案件も扱ってこられたというふうにお聞きをしていますので、やはりこの過労死という問題が、亡くなられた方だけでなく、女性の活躍とも照らしてもやっぱり大きな影響を与えるというふうに思いますが、その点、具体の事例もありましたら含めて御紹介いただければと思います。
○参考人(今野久子君) この三十七年間で私は、出産したときには、子供が生まれたときには父親がもういなかったという過労死事件を三件やっております。そのいずれもが、やはりかなり成果を求められて長時間労働に追われているという、こういう状況です。
亡くなってから、仕事上どういう生活をしていたか、どういう働き方をしていたかということを私どもは調査をして労災認定などを受けることになるわけですけれども、そういう中で、やはり実際に長時間労働ですと家族的責任は果たせません。果たしたくても果たせません。そういうことからいうと、やはり家族的責任を、これは男性に対する差別でもあるかなというふうに思うんですけれども、男性も女性もやはり生活時間というものは確保して、生活時間をどうし、それから生活と仕事の両立を図るというのが、ある意味ではそういうことができる働き方というのが必要ではないかなというふうに思っています。
それを、働かせているのは企業の側ですから、仕事を与えているのは企業の側ですから、そういう点で、働いている人に対して、労働時間を短くできるかどうかというのは労働者の責任だよというわけにはいかないと思うんですね。そういう点で、やはり職場における労働時間規制、それから、逆に言うと、過労死だとか大事な人材を失うということは企業にとっても痛手です。そういう点から考える。
それから、メンタルの問題が起こってきたりなんかしています。私ども、よく労使の代理人で一致できるのは、やっぱりこれメンタルの問題で大事な労働者が働けなくなっているという問題は絶対改善していかなければいけないということがよく言われます。そこは意見が一致します。そういう点でいえば、やはり労働時間規制に関しては法的な規制というのをもう掛けていかなければならないというふうに思っております。
○田村智子君 国が作る基本方針の中にやっぱり労働時間の問題どうするのかということは、これはもうお三方の参考人の方からも提起された問題だというふうに受け止めています。
次に、矢島参考人、お願いしたいと思うんですが、私、横文字に弱くて、ダイバーシティーって何だろうなと調べてから来たんですけど、多様な立場にある多様な方が多様な働き方ができるようにと、これ、なかなか確かに今後考えていく働き方の在り方として一つ私たちも検討していかなければならないことだなというふうに思っているんですけれども、その点で、御自身も経験をされているコース別雇用管理の問題なんです。
私は、これは非常にある意味硬直した、多様な人生やら多様な働き方というのをコースということに当てはめてしまうようなやり方ではないんだろうかなというふうに思うんですね。採用時から、つまり自分が働き始めるときからそこそこ働いて出世はしなくていいよという一般職を選ぶ、そうじゃなくて、ばりばり働いて家庭は犠牲にしちゃってもいいよと、これ最初から選ばせてなんというのは非常に矛盾が大きいんじゃないかというふうに思うんですね。コース別雇用管理そのものもやはり検討が必要じゃないかというふうに思うんですが、その点いかがでしょうか。
○委員長(大島九州男君) 委員の皆さんに御協力をお願いしたいんですが、私語を慎んでいただくようによろしく御協力をお願いいたします。
○参考人(矢島洋子君) 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと思います。コース別については、もちろん制度を設けている中で、その後転換が可能であることというのも非常に重要な要素ではありますけれども、そもそも入口のところで本当に分ける必要があるのかということは私も疑問に思っておりますし、それは企業にとっても大きなチャンスを逃すことであると思います。
実際に入社した後、一般職であっても、様々なその会社の仕事に適した仕事、あるいは、今までですと総合職の人しかやっていない仕事だけれどもすごく、一般職で入ってもチャンスが、向いているというようなことも往々にしてあるわけですよね。そういうことの可能性を全部あらかじめ潰してしまうということがあると思いますので、できればやはりそれは企業にとっても一括で採用して適材適所ということがいいのではないかと思いますし、その中で、今、ライフステージに応じて働き方が実際に一般職であろうが総合職であろうが変えられるということができてくれば、ある程度企業の側の行動も変わってくるのではないかと思います。
一方で、今、地域限定正社員というようなものも出てきておりますが、これも、地域限定ということで、転勤をしないというような要件だけが異なるというようなことも言われていますけれども、しかし、実質的にやはりその中でキャリア形成の見方が異なってくれば与えられる仕事についてもやはり差が付いてきてしまう可能性もありますので、こういったことも、本当に転勤はあらかじめできるできないという可能性だけで分けていいのか、そんなことが本当にできるのか、今は男性でも介護の問題などで転勤を免除される方も非常に多うございますので、あらかじめその見込みで分けることが本当に妥当なのかどうか、こういったことも検討される必要があるかと思っております。
以上です。
○田村智子君 ありがとうございます。
松浦参考人にお願いをしたいんですけれども、均等支援と両立支援の両輪が必要なんだ、両方やっていくことが必要なんだという問題提起、なるほどなと思いながら聞いていたんですけれども、先ほども少し非正規の問題が出てきたんですけど、やっぱりその両方から言わばこぼれ落ちているような存在として非正規雇用の問題があるんじゃないだろうかということを大変危惧をしています。
元々、とりわけ有期雇用ということでお話をしたいというふうに思うんですけど、契約期間が定まっていて半年ごとで繰り返しているような方は、当然、将来管理職になるというような出世という意味での均等支援からはもう初めから除外の対象というふうになっているようにも思いますし、じゃ、両立支援というふうにいったときに、残念ながら、実態として、妊娠が分かれば、そのことを報告すれば、次の契約で満了でそこまでよというようなことをやられても、それは別に差別でやったわけじゃないんだ、妊娠したからが理由じゃないんだ、あなたがやっていた仕事が既に必要がなくなったから、それであなたは契約満了で辞めていただくんですよというふうに強弁をされてしまえば、それが合理的な理由なのかどうかというのはなかなか検証が難しいというか、事実上はもう裁判やるしかないような事態に実態ではなっているというふうに思うんですね。
そうすると、この二つの両立支援と均等支援、これ二つやっていくんだというときに、やはり、女性の六割が非正規という実態の中で、この非正規の方々にはこの二つの支援というのをやっていく仕組みをどうやっていったらいいんだろうか、ここの点は少なくとも変える必要があるんじゃないだろうかというようなことありましたら是非お聞かせいただきたいと思います。
○参考人(松浦民恵君) ありがとうございます。
非正規社員の両立支援のことについては、私は、二〇一三年の四月に労働契約法の無期転換というのが御存じのように施行されて、何というんですか、実際は無期のような働き方をしているにもかかわらず有期、有期、有期でずっと更新をし続けて、いつでも要は雇い止めできるような体裁を取っているというような、有期契約の悪用みたいなところはある程度そこのところで是正されていくのかなというふうに思っています。
ですので、五年たてば、有期でも通算五年たてば本人が希望すれば無期転換にできるというところでは、ある程度、有期労働者の保護、その前に雇い止めされちゃうんじゃないかと懸念されている点もあるんですけど、保護という意味では一つ規制ができたのかなというふうに思っております。
両立支援ということに関して言うと、今の育児・介護休業法の中で、期間雇用者も一年以上雇用されていれば育児・介護休業の適用がなされるんですけれども、難しいのは、その後の一年間の雇用見込みというのが要件に入っていることなんですね。あれがかなりやっぱり非正社員の両立支援のネックになっているので、今後その点については検討の余地があるのではないかなというふうに思います。
均等推進施策について言いますと、何というんですか、もう本当に一年、二年の有期であれば別ですけれども、有期でも何年かやっぱりその企業にいらしてコア的な仕事にある程度携わっている方については、私は必ずしも管理職登用とかということと無関係ではないと思っているんですね。
たしか今野参考人の御意見の中にもあったと思うんですけど、母集団を増やすということは非常に重要なんです。女性の管理職を単につくるといっても、いきなり管理職がぽっと湧いて出るわけではないので、裾野をいかに広げ、その中から引き上げる仕組みというのをいかにつくっていくかということが非常に重要なので、御指摘のとおり、今の女性労働者というのは正社員でも一般職的な働き方をしている人が非常に多く、なおかつその六割は非正規だということを考えますと、そこに母集団を広げていかないと私は管理職登用というのは難しいと思っておりますので、それは一体で進んでいくというふうに期待はしております。
以上です。
○田村智子君 最後、じゃ、もう少し時間がありますので、お一言ずつなんですけれども、これは、法案の中で、国は女性の活躍に向けての基本方針を持つということになるわけですけれども、これだけは国の基本方針の中で欠かすことはできないだろうということについて、この項目については欠かすことはできないだろうということについて考えておられることを、一言ずつで申し訳ないんですがお願いして、順番は委員長にお任せします。
○委員長(大島九州男君) それでは、一人一分以内でお願いします。矢島参考人。
○参考人(矢島洋子君) 済みません、すごく難しくて。ただ、私の中では、本当に、管理職というよりも、今の日本企業のこれまでの取組の段階からいえば、育児休業から復帰して時間制約がありながら働く女性たちのマネジメントという課題に是非企業が取り組むような形でこの法案が活用されることを期待しています。
以上です。
○参考人(今野久子君) 真の意味でのワーク・アンド・ライフ・バランスですね、それの確立が必要ではないかなというふうに思っています。そのためには、やはり長時間労働の解消というのはもう本当に最重要課題ではないかということです。
○参考人(松浦民恵君) 一言、盛り込む言葉が思い付かないんですけど、私がもう切にお願いしたいのは、女性活躍というのは、政策の面でも、企業の何か取組の面でもブーム的な取り上げ方をされることが非常に多いんですよね。今回初めて本気性、初めてと言うと失礼なんで初めてということはないんですけど、成長戦略の中で女性活躍推進ということを柱として位置付けていただき、本気性を持って取り組んでいただくということについて、それはいいことだと思うんですが、切にお願いしたいのは言い続けていただきたいということ、一時的なものではなくて、大事なんだということをメッセージとして伝え続けていただきたいということをお願いしたいと思います。
以上です。
○田村智子君 ありがとうございました。