国会会議録

国会会議録
派遣先企業責任明確に 参院内閣委 田村氏がただす

 日本共産党の田村智子議員は25日、参院内閣委員会の「女性活躍推進」法案審議で、派遣労働の実態把握や正社員化について派遣先企業の責任を明確にすべきだと主張しました。

 法案では労働の実態把握と分析、それに基づく行動計画策定を企業に義務づけますが、派遣労働者については、派遣元が労働条件に責任を負う仕組みになっておらず、派遣先企業にも義務づけられていません。

 田村氏は、安い労働力として派遣労働者が増えるなかで、派遣先で実態を把握しなければ、ブラックボックスになってしまうと指摘。「女性の活躍推進法案で、派遣先の派遣労働者の男女比率、直接雇用の目標・実績を明らかにするよう検討すべきだ」と主張しました。

 高階恵美子厚労政務官は、派遣先企業も労働者本人の能力や意欲を把握した正社員化など雇用形態の転換を推進しキャリアアップにつなげる努力をしてほしいと述べました。

 田村氏は、衆院での法案修正で追加された「(女性に対する)職種及び雇用形態の変更の機会の積極的な提供」等の文言について、「派遣社員から正社員への直接雇用や、管理職への登用の道をひらくことも当然、含まれると思うがどうか」と質問。修正案を提案した民主党の泉健太衆院議員は、「派遣社員から派遣先の正社員への転換も含まれ、管理職への登用もありうる」と答えました。

 同法案は同日、日本共産党を含む賛成多数で可決されました。

                                                                     2015年8月26日 しんぶん赤旗

 

【内閣委員会 8月25日 議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 多くの女性が携わっている派遣労働についてこの法案でどうなるのかということを私は本会議で取り上げました。派遣労働者が現に職業生活を送っている派遣先企業で実態把握、分析を行い、行動計画にも派遣労働者を直接正規に雇用する目標などを盛り込むべきだと主張しましたが、塩崎厚労大臣は、雇用関係がないので派遣先への義務付けは難しいと答弁をされました。
 それでは、お聞きします。派遣元企業による実態把握で、例えば派遣労働者の割合が男性より女性の方が多い、派遣のままで勤続年数が女性の方が長い、こういうことが分かったとして、これは女性の地位向上に資することになるのだろうか。また、労働時間はそもそも派遣元で把握ができるのか。長時間労働の改善が派遣元でできるのか。法の趣旨に照らしたとき、一体、派遣元での実態把握が女性の活躍、地位向上にどのように資することになるのか、御説明ください。
○大臣政務官(高階恵美子君) 田村委員の御指摘は、実際に働く場所での実態をつぶさに捉まえた上でこの趣旨が反映されるようにといったようなことだと思います。
 まず、派遣労働者におきましては、雇用関係がどうあるかということを押さえる必要があると私ども考えてございまして、雇用主である派遣元が責任を持って状況把握、課題分析、行動計画の策定等に取り組むべきと、これが大前提と考えてございます。そして、派遣元が派遣労働者を採用する際には、公正な採用、選定を行っているかどうかとか、あるいは妊娠、出産を経て働き続けられる環境となっているかどうかなど、課題を分析した上でその事業展開に生かしていく、その結果を踏まえた必要な取組を行っていくべきと考えております。
 また、これに加えまして、実際に派遣される先、その場所におきまして長時間労働が是正されるといったことや職場風土改革を行っていただくといったようなことについては、派遣元と派遣先がしっかり連携をしていただきながら進めていただくといったような構造を効果的ではなかろうかと考えてございまして、そういうことからいたしますと、派遣先にとりましても職場全体で進められる、こういったようなことの取組を進めていければといったように考えております。
 本法案の成立の際には、派遣元と派遣先が協力しながら進めていくこと、これが効果的な取組になっていくように、具体的なありようについて審議会等でも議論を深めていただきたい、このように考えてございます。
○田村智子君 衆議院における修正で、基本原則を定める第二条に、「職業生活における活躍に係る男女間の格差の実情を踏まえ、」という文言が加えられました。また、女性に対する機会の積極的な提供及びその活用という項目の中に、「職種及び雇用形態の変更」という文言も加えられました。
 修正提案者にお聞きをいたします。女性の個性と能力が十分に発揮できるよう雇用形態の変更など積極的な提供、これは具体的にどういうことなのか。派遣先企業が派遣労働者を直接雇用する、正社員化して管理職への登用の道も開く、こういうことも含まれると考えますが、いかがですか。
○衆議院議員(泉健太君) 御質問ありがとうございます。
 御質問のとおり、衆議院においては、第二条の第一項の積極的な提供及びその活用をすべき職業生活に関する機会の例示の中に「職種及び雇用形態の変更」、これを追加する修正を行いました。
 これは、今お話がありましたとおり、賃金格差が存在をすること、そして非正規労働者の七割弱が女性であるということ、男性労働者の二割強が非正規労働者であるのに対して女性労働者の六割弱が非正規労働者であること等の職業生活における活躍に係る男女間の格差、この現状を踏まえますと、職種及び雇用形態の変更といった職業生活に関する機会の積極的な提供、活用、これ自身も女性の職業生活における活躍を推進する上で重要であるというふうな考え方から、我々から与党に対して修正を求め、受け入れていただいたものであります。
 そして、雇用形態の変更ということについては、パートや契約社員から正社員への転換、そして御質問の派遣社員から派遣先の正社員への転換も含まれるというふうに認識をしておりますし、そして正社員への転換の後、その能力や実績に応じて管理職に登用されることもあり得るというふうに考えております。
○田村智子君 ありがとうございます。
 現在、厚生労働委員会で派遣法の改定案が審議をされているわけです。現行法では、派遣労働の受入れは、原則として臨時的、一時的な業務であり、同じ業務で三年を超える派遣の受入れは禁止をされているけれども、これを撤廃するということが狙われています。労働者を入れ替えれば、その業務にはずっと派遣労働者を充てることができ、常用代替が大規模に生じるという危惧と批判が広がっているわけです。これに対して政府は、派遣元企業に派遣先への直接雇用の働きかけを義務付けたこと等を理由に、常用代替にはならないとか雇用の安定が図られると説明をしているわけです。
 私は、この派遣法改悪案、これはもう断固反対ですけれども、しかし、この政府答弁からも、派遣先での直接雇用が進むということが派遣労働者にとって雇用の安定だと政府も言わざるを得ないんだということがうかがえるわけです。
 ならば、女性の活躍推進法で、派遣先を協力にとどめずに、協力するんだということにとどめずに、やっぱり派遣労働者が増えているのかどうかという実態を明らかにしたり、派遣労働者の男女の比率とか、直接雇用、正社員化の目標や実績、これを明らかにしていくんだという方向、これやはり検討すべきだと考えますが、いかがですか。
○大臣政務官(高階恵美子君) 派遣労働に従事する女性たちがどんな就業意向を持っているかといったようなことを踏まえながら、直接雇用に向けた道筋を開いていく努力、これは様々な形で工夫していく余地があるのだろうというふうに考えますし、今議論いただいております派遣法の中でもこうしたやり取りがされているところであります。
 委員の御指摘も踏まえながらこの先の対応も考えてまいりたいと思いますが、現時点におきましては、私どもといたしましては、女性の活躍に向けて、継続就業できるような環境の整備というのが非常に重要だというふうに考えてございまして、長期的な視点に立って、例えば結婚、妊娠、出産という中で就業を継続できるようにするにはどういう工夫が必要かといったようなことを考えていきたいというところであります。
 一義的には雇用主である派遣元が責任を持ってこういった状況把握、課題分析、行動計画策定に当たっていただきたいと考えているわけですが、派遣先についても、労働者の意欲と能力をしっかり伺いながら、この方々の雇用形態の転換を推進していく、キャリアアップにつなげていく努力をお願いしたいといったようなことを考えてございます。
 現に派遣労働で働く方々は百二十七万人ほどと承知しておりますが、このうち七十万人ぐらいが女性ということになっておりますし、様々な暮らし方と併せて、働きたい意欲を生かせるような工夫、いろいろ取組を進めていかなければならないというふうに考えてございます。
 本法案が成立いたしました暁には、派遣労働者を含めた全ての女性の活躍につながっていくよう、御指摘もしっかり踏まえて、派遣先が把握することが効果的な状況把握項目などについても審議会でしっかり議論をさせていただきまして、整理を進めてまいりたく存じます。
○田村智子君 今後の審議のために、具体化のためにもちょっと指摘をしておきたいのは、雇用関係がないから、派遣先での実態把握等、これ求めることできないという認識を示されたんですけれども、これはほかの法制度から見ても私はいかがなものかと思うんです。
 そこで、局長にお聞きします。
 労働者派遣法では、労働時間の管理、マタニティーハラスメント、セクシュアルハラスメントについて派遣先事業主にどのような責任を課しているのか、簡潔に御説明ください。
○政府参考人(安藤よし子君) お答え申し上げます。
 派遣労働者の派遣就業に関しましては、労働者派遣法第四十四条第二項に基づきまして、派遣先のみを、労働時間や休憩などに関する労働基準法の主な規定につきまして、当該派遣労働者を使用する事業とみなして、その責務を負うということになっております。
 また、労働者派遣法第四十七条の二に基づきまして、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止、セクシュアルハラスメント対策、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置に関する男女雇用機会均等法上の規定につきまして、派遣先も派遣元と同様に当該派遣労働者を雇用する事業主とみなしてその責務を負うというふうになっているところでございます。
○田村智子君 ほかの法制度でも派遣先の使用者責任というのは明確に定めているわけです。私、何でこんなに派遣にこだわるかといいますと、やはりこれまで企業は、派遣労働者、とりわけ女性、本当に都合よく使ってきたわけです。
 これは、私、二〇一一年の予算委員会で取り上げた事例ですけれども、日産自動車が製造業派遣が禁止の動きがあることを見越して、大量の派遣労働者を直接雇用の有期契約に切り替えたという案件がありました。これ、延べ契約期間は最長でも三年未満だと一方的に決定をされたんですけれども、この対象となった労働者は全員女性でした。
 この後、製造業派遣禁止は結局骨抜きとなって、一方、労働契約法の改定で、有期契約は通算五年超えれば無期転換しなければならないこととなった。そうすると、今度は恐らく有期の直接雇用から派遣労働への切替えということが大きく進む、また都合よく使われるということが目に見えるようなんですよ。
 また、ほかにも相談のあった案件で、JR東日本の旅行案内業務、偽装請負の相談がありました。請負業務のはずが実際にはJRの社員から指揮命令を受けていたというものですが、これはたった一人の男性正社員の指揮命令の下、三桁の労働者が偽装請負で働いていたのですが、これも全員女性でした。
 事務職派遣とか一部の専門業務派遣は女性の比率が相当に高いです。非正規の七割は女性です。派遣だから、非正規だからと不安定で低賃金のままの待遇を合理化するということは、実態としてはこれは女性への間接差別を放置するに等しいと私は思います。
 派遣先における女性派遣労働者の実態、これ明らかにすることがこうした事例に照らしても必要だと思いますが、高階政務官、もう一度、感想的でもいいです、一言いただけますか。
○大臣政務官(高階恵美子君) 私どもといたしましては、やはり一人一人の労働者を保護していく、守っていくということ、これ非常に重要な観点だというふうに考えておりますので、先生御指摘のように、実態をしっかり踏まえながら対応していく、そういう努力は重ねて続けてまいりたいというふうに思います。
○田村智子君 これは有村大臣にもお聞きしたいんですね。
 例えば、そうすると、今のこの法案の仕組みでいきますと、ある企業が正規雇用の中では管理職の女性比率を引き上げたと、そういう数字が実態把握の中でも現れてくると。しかし、一方で、コース別の一般職などを直接雇用にしていたものを派遣労働者に置き換えて、低賃金で管理職にもなれないという働き方は結果として多数の女性が担っていた、しかし、これは実態把握の中で数字としては見えてこないと。これ、実態把握で数字で見えてきた、それで評価をすればこの企業は女性の活躍に積極的な企業と言えるのかどうか、有村大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(有村治子君) 直接的な所管は厚生労働省ですが、印象を問われれば、やはり女性活躍は、午前中の答弁にも申し上げましたが、派遣労働者を含む非正規雇用の女性の対応というのは極めて大事な要素だと認識をしております。
 例えば、派遣労働者の労働時間については派遣先からの通知によって派遣元も把握する仕組みとなっているというふうに理解をしておりますが、先ほどの高階政務官も厚生労働省として御答弁のとおり、派遣元と派遣先が協力して効果的な取組を進めていただけるよう、厚生労働省において更に検討を進めていただけるものと理解をいたしております。
○田村智子君 今指摘したようなことは私現実に起こり得ると思うわけです。女性の派遣労働者の実態がブラックボックスになって事実上女性活躍の施策から置き去りにされてしまう、こういうことがあってはならないと思うわけです。
 派遣元だけでなく派遣先での実態把握、派遣労働者に関する行動計画が進むよう、重ねて対応を要求いたします。
 次に、マタニティーハラスメントについて取り上げます。
 政府の調査でも、第一子の妊娠を機に六割から七割の女性が仕事を辞めている、その理由として、五・六%が解雇された、退職勧奨があったと回答している。こういうマタニティーハラスメントというのは根絶しなければならないと思います。
 そこで、具体の事例として、日本航空の客室乗務員に対するマタニティーハラスメントについて質問いたします。
 JALでは、客室乗務員が妊娠した場合、飛行機への乗務は停止となり、産休に入るまでの間、地上勤務に就くか無給の休職となります。これは母体保護のためでもあって、制度がつくられてから長く、希望した客室乗務員は全員地上勤務に就くことができていました。ところが、二〇〇八年、生産性向上を理由に制度が変更され、地上勤務は会社が認める場合のみに限定をされてしまった。これは、労働組合の説明によりますと、妊娠した客室乗務員のおおむね三割が地上勤務を希望しているが、そのうち実際に地上勤務に就けたのは四割だと。全体から見れば一割程度にしかならないわけです。これは無給ですから、ボーナスや退職金にも影響が出ます。無収入だけれども、社会保険料の自己負担分や住民税というのは払わなければなりません。
 有村大臣、一般論でお聞きします。妊娠中に本人に働く意思があるにもかかわらず会社の命令で無給の休職を余儀なくされる、これは女性のみに大きな不利益をもたらすものであり、何らかの解決が必要だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(有村治子君) 田村委員からの御質問でもおっしゃっていただきましたとおり、個別事案のどのような判断がなされるかということに関してはコメントは差し控えなければなりませんが、一般論ということでございますので、御指摘の、妊娠した女性労働者に対して、妊娠中に働く意思があるにもかかわらず会社都合により無給の休職を強いることということがあるとすれば、これはやはり男女雇用機会均等法の目指すところ、志す意図というところには合致しないと考えられると言えることが妥当かというふうに思います。
 当然、女性の活躍を推進するためには、その大前提として、いわゆるマタニティーハラスメントを始めとするあらゆるハラスメントを根絶することが土台になるというふうに考えておりまして、この六月に、女性活躍加速のための重点方針二〇一五、初めての取組でも、厚生労働省とともに連携を始めまして、マタニティーハラスメントの防止については次期通常国会への法案提出も含めて検討をしているところでございます。そういう意味では、マタニティーハラスメントのない社会を厚生労働省とともにしっかりと官民挙げてつくり上げていきたいと考えております。
○田村智子君 JALで地上勤務を希望したのに無給の休職を命じられたAさん、マタニティーハラスメントだとして、今年六月、JALを提訴しました。
 Aさんは、契約社員としてJALに入社をし、その後、正社員となりましたが、それでも基本給は月三十万円ほどなんです。高い給料とはとても言えない。その上、お母さんの扶養もしている。このまま半年以上、実際七か月ですね、無給になったんですけれども、そうなるわけにいかないと、妊娠中に労働基準監督署や雇用機会均等室などを回って、祈るような気持ちで訴え、駆けずり回り、地上勤務に就けるようにJALを指導してほしいと訴えてきました。残念ながら、問題解決に至らず出産を迎えて、今提訴されたと。Aさんは、心身共に疲れ切った、なぜ本来喜ばしい妊娠を理由にこんな大変な思いをしなくてはならないのか、このままで終わらせるわけにはいかないと、提訴に至った思いを述べておられます。
 厚労省にお聞きします。
 妊娠を理由に無給の休職を命じることは、男女雇用機会均等法九条三項、妊娠を契機とする不利益取扱いの禁止に違反するものではありませんか。
○政府参考人(安藤よし子君) 個別の事案についての判断につきましてはお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論としてお答え申し上げますと、妊娠をした女性が軽易業務への転換を希望した場合において、女性労働者が転換すべき業務を指定せず、かつ客観的に見てもほかに転換すべき軽易な業務がない場合であれば、無給で休業させたとしても男女雇用機会均等法第九条第三項により禁止される不利益取扱いには該当しないと解されますが、労働者から御相談があった場合には、この客観的に見てもほかに転換すべき軽易な業務がない場合と言い得るかどうかということも含めまして、都道府県労働局雇用均等室でしっかりと報告徴収を行い、法に違反する事業主に対しては指導を行うという対応をすることになります。
 一方で、本人が軽易業務への転換を望んでいないにもかかわらず妊娠を契機として休業させるというような場合には、これは本年一月に発出いたしました私どもの通達に基づきまして、特段の事情が存在するなどの例外に該当しない限り、不利益な自宅待機命令を行ったものとして男女雇用機会均等法第九条第三項に違反するものとして取り扱うことにしているところでございます。
 いずれにいたしましても、妊娠を理由とする不利益取扱いについては、引き続き、雇用均等室において法違反の事業主に対して厳正な指導を行っていきたいと考えております。
○田村智子君 今の局長の前段の説明なんですけれども、軽微な業務への転換を申し出たけれども、そういうポストを用意することができなかったら不利益取扱いにはならないと、無給でも。これ、三十年も前の法の解釈なんですよ。女性の活躍と言われているときに、いつまでその解釈を取るのかという問題も提起しておきたいというふうに思います。
 昨年十月の最高裁の判決では、妊娠や出産等を理由とする不利益取扱いは原則違法、無効であると判断し、例外的に違法でない場合も、そのことを事業主が証明する必要があるとされました。
 今御説明あった労働基準法六十五条三項、「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。」というふうに定めているわけですけれども、JALはこれに違反していないんだと、制度は公正に運用されていると述べるだけで、産前地上勤務を可能とするポストがどれだけあるのか、こういう情報も人事上の都合というのを理由に一切示していません。労働組合が繰り返し質問しても回答を拒否しています。
 本会議で私この問題を取り上げて質問しましたら、塩崎大臣は、出産、育児等を契機として不利益取扱いを行った場合は、原則として、男女雇用機会均等法等に違反することを明確化する通達を発出した、これにより、事業主が客観的な資料を提出し、法違反に該当しないことを明らかにできない場合、法違反と判断し、都道府県労働局において厳正に指導を行いますと明確に答弁されました。
 この答弁に照らせば、JALは不利益取扱いか否かを判断するのに必要な客観的資料を示す責任がある、それをしないならば労働行政による厳正な対応が必要になると思いますが、政務官、いかがですか。
○大臣政務官(高階恵美子君) 先ほど来議論になってございますとおり、一般論として、妊娠中の女性が軽易な業務への転換を請求した場合、使用者が客観的に転換可能な軽易な業務があるにもかかわらずそこに転換させず休業させた場合の労基法六十五条第三項違反といったことと、それから、今年の一月に出されました解釈通知の運用、こういったようなことに照らしますと、しっかりと事業主の側が、法違反に当たらない例外的な事情が存在すること等を書面等によって明らかに示していただく、こういう必要が出てくるかと存じますが、いずれにいたしましても、労働者の方から相談を受けた場合、私どもといたしましては、都道府県の労働局雇用均等室でしっかりと法違反に当たらないかどうかということも含めまして相談に当たらせていただくという体制になっております。
 そしてまた、その上で、必要な、違反等のことが確認された場合には、それなりの対応をしていくという段階に進んでいくと思いますので、いずれにしても、相談を受けた場合、それを放置しないで一つ一つ対応していくということが一人一人の皆様にお応えしていくことにつながるかと存じますので、その丁寧な対応については、労働局の方にも引き続き指導してまいりたいと考えます。
○田村智子君 JALは、機内食や機内販売商品の開発とか、あるいは乗務計画の策定に当たってのアドバイスなど、実際に、妊娠中ではない客室乗務員も地上勤務に現に就いているんですね。
 JALは巨大企業です。客室乗務員は、歴史的に圧倒的に女性です。女性の就業者が多い職場で、妊娠、出産というライフステージに対応した人事管理を戦略的に行わなければ、両立支援が前進するはずがありません。ましてJALは、二〇〇八年には次世代認定マーク、くるみんを取得しています。二〇一四年度には、女性活躍推進に優れた上場企業として、なでしこ銘柄にも選定をされています。その両立支援が、妊娠した女性労働者へ無給の休業命令だと。余りに情けない。日本を代表する企業の社会的な責任を考慮すれば、労働基準法六十五条三項の履行が無理だなんということは、こんなの許していたらいけないというふうに思うんですね。
 これは、社会的責任を自覚した人事管理が行われるよう、積極的な働きかけ、こういうのも行っていくべきだと思いますが、もう一度政務官、お願いできますか。
○大臣政務官(高階恵美子君) 一律のお答えはなかなか難しいところがありますが、さはさりながら、相談を受けたこのような事案に関しましては、都道府県の労働局の雇用均等室の報告徴収において、しっかりと違反がないかどうか、そしてその後の対応についても厳しく指導に当たるように徹底してまいりたいと思います。
○田村智子君 もう一点、この件で聞きたいんですね。
 このAさんは、賃金保障と就労継続を求めたんです。JALはその両方を拒否したわけです。Aさんはやむなくアルバイトを認めてほしいと申請したが、これも拒否をしているんですよ。例えば、生産調整を余儀なくされた企業でも、労働者に自宅待機を命じた場合、賃金の六割を保障するというのが基本です。JALほどの巨大企業が妊娠中の女性を半年以上無収入にしてしまう、こういうことにも私は大きな問題を感じるわけです。
 妊娠中というのは、日常の生活費だけではなくて、出産準備の費用というのもかさみます。精神的にも不安定になります。そういう妊婦に対して収入源を会社が断ち切る、こういうことが許されたら、妊娠中の女性は収入保障をどこに求めたらよいのか、このことについても政務官の所見を伺いたいと思います。
○大臣政務官(高階恵美子君) 先ほどと繰り返しになってまいるかと思いますが、軽易な業務への転換を請求した場合、使用者が転換可能な軽易な業務が客観的にあるにもかかわらず当該業務に転換をさせず休業させた場合には、不利益な自宅待機命令を行ったものとして男女雇用機会均等法第九条三項の違反となります。また、このような行為は労基法六十五条第三項違反にも当たりますとともに、当該休業は使用者の責めに帰すべき理由に当たりますことから、労基法第二十六条に基づく休業手当を支払わなければ同条違反となるという位置付けにございます。
 客観的に転換可能な業務があるか否かといったことについては、個々の事業所の状況等に応じて判断されるものとなりますため、一律なお答えは難しいところでございますけれども、都道府県の労働局の報告徴収において、こういった事案の違反がないかどうかの厳正なる調査と、そして厳しい対応に当たるような指導を以後も徹底してまいりたいと思います。
○田村智子君 訴状を読んでいますと本当に腹立たしいんですけれども、JALは有休の取得さえも制限したんですよ、Aさんに対して。無給で我慢しろと妊婦を追いやったわけですね。
 国土交通省、政務官にもお聞きをしたいんですね。国土交通省は、建設業界と一緒に、もっと女性が活躍できる建設業行動計画を作って、「もっと女性が活躍できる建設業」地域協働推進事業というのを行っておられます。こういう業界全体への働きかけというのはとても大切なことだと思います。航空業界での女性の働き方、是非ここにも関心を持っていただきたいんです。
 客室乗務員が妊娠した場合、無給の産前休業を取らされてしまうというのは実は航空会社では一般的で、地上勤務への受入れもなく即無収入になってしまうということもお聞きをしています。客室乗務員というのは、航空の安全に大きな責務と役割を持っています。妊娠、出産の経験は客室乗務でも生かされるという、そういう経験にもなります。女性が経験を積んで働き続けるシステムがあってこそ、航空の安全を始め航空業界全体の発展にもなると。
 厚労省とも協力をして業界全体への働きかけに踏み出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(うえの賢一郎君) 御指摘の点、第一義的には労働行政を所管されます厚生労働省において適切に対応されるものと考えておりますが、全ての女性が輝く社会づくり、これは内閣の重要な課題でございますので、私ども国交省といたしましても、航空行政を所管する立場から、必要な協力につきましてしっかりやっていきたいと思います。
○田村智子君 航空会社が果たす社会的責務というのは本当に大きいと思いますので、是非国交省も一歩踏み出して、女性の活躍推進は安倍内閣挙げての取組だと当初は言われていて、今はどうなっているのかよく分かりませんけれども、是非大きく踏み出した施策を求めたいというふうに思います。
 私は、これまでの審議で働く女性が現実に直面している問題を指摘してまいりました。前回の審議では、賃金、昇格の事実上の差別、コース別雇用管理の問題、今日はマタニティーハラスメントの問題と。これらの問題は、どれもやはり当事者の方やあるいは労働組合の方が実態を告発したことによって初めて明らかになったものばかりなんです。もちろん、労働組合も女性の皆さんも今後も勇気ある告発を続けるだろうと思います。しかし、その後ろには声を上げることもできない多数の女性たちがいるというのも事実です。
 この法案がそういうこれまで見えなかった働く女性の実態を見えるようにする、これは女性差別の解消、女性の社会的地位向上への一歩になるものだと思いますし、そうしなければ何のための法律なんだということになってしまうと思います。そのために、私も、今後も厚労省等に積極的な提案も行いますし、この法律の施行を監視していく、そういう決意を申し上げまして、質問を終わります。

 |