国会会議録

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新国立競技場問題「官邸、最後まで抵抗」参院委・田村議員 首相と文科相の責任追及

白紙撤回に追い込まれた新国立競技場の建設計画について4日の参院文教科学委員会で審議が行われ、日本共産党の田村智子議員は安倍内閣の責任と見直しの中身をただしました。

 田村氏は7月9日の委員会で見直しを求めたにもかかわらず、同日、ゼネコンとの一部工事契約を締結した責任を追及。下村博文文科相が、その時点では「見直しは困難な状況」との認識だったと釈明したのに対し、田村氏は不要な出費を増やしながら「反省が感じられない」と批判しました。

 下村氏は、6月に安倍晋三首相に見直しを進言したものの、五輪に間に合うか確認を指示されたと説明。田村氏は、「最後まで見直しに抵抗したのが安倍総理と官邸だ」として、下村氏の責任とともに、厳しく追及しなければならないと強調しました。

 また、田村氏は競技場計画の白紙化により、周辺の計画も見直すべきだと主張。下村氏は旧建設計画を前提にした都営霞ケ丘アパートの取り壊し計画は「東京都の都市計画だ」と答弁しました。

 田村氏は“都営住宅に住む人を追い出して巨大施設をつくるなど世界の恥だ”“神宮外苑の緑、風致地区にふさわしい国立競技場こそ求められる”といった住民の声が十分に反映された計画の見直しを行うべきだと求めました。                                                                                                                                                          

2015年8月5日 しんぶん赤旗

 

 【 文教科学委員会 8月4日 議事録 】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 七月十七日、新国立競技場建設計画の白紙撤回が決断をされまして、私は歓喜の声を上げた一人です。

 世論調査でも七割から八割が見直しを求め、建築家の皆さんは問題点を具体的に指摘をし、一円にもならないのに代替案も作成して政府の決断を求めてこられた。こうした国民の世論と運動が白紙撤回に直結したと確信をしていますが、余りにも遅過ぎる決断だったと言わざるを得ません。

 七月九日、本委員会でまさに新国立競技場建設の集中審議が行われていました。私も、計画の見直しの必要性を示して、このまま契約に突き進んでは駄目だと強く要求をいたしました。ところが、この同じ日に、同時並行でスタンド工事の資材調達、三十二億九千四百万円の契約を大成建設としてしまった。

 七月九日の契約、これは一体誰の判断なんでしょうか。この契約での支払はどうなるのか、お答えください。

○参考人(河野一郎君) 七月七日の国立競技場将来構想有識者会議におきまして、実施設計に基づき議論いただいた方針で進むことについて御賛同を得られたことを、同日に文部科学省に御報告いたしました。これにより、契約を進めることについて御了解をいただき、これを踏まえて、日本スポーツ振興センターとして工事契約を締結したところでございます。

 また、契約した金額について戻ってくるかどうかということにつきましては、現在、弁護士との相談の上、契約解除に向けて手続中であるため、まだ具体的な数字は申し上げられる段階にはございません。

○田村智子君 下村大臣も七月九日の契約、了承していたということですか。

○国務大臣(下村博文君) ちょっと繰り返しになりますが、新国立競技場の整備については、今年の四月、JSC、河野理事長から私に、当初の整備内容では二〇一九年春の竣工は困難であり、工事費も高額に上る見込みである旨の報告があったため、直ちに工期を間に合わせるための更なる協議及び工事費の縮減について検討を指示いたしました。

 また、私自身も、様々な関係者、田村委員含め国会からもいろんな意見があったわけでございます。これについては謙虚に耳を傾け、また自分なりにできるのかどうかということについての研究を行ってまいりました。

 七月上旬の時点では、二〇一九年のラグビーワールドカップに間に合わせるということが前提でありました。文科省及びJSC共に、これにかなう工期の案は考えられなかったことから、ザハ氏のデザインを基にした計画により、最小限の資材調達等に必要な契約をJSCが施工予定者と締結したというふうに承知しております。

○田村智子君 九日は文科省の了解得ていたというから大臣も了承していたということですよね、そうですね、うなずいていらっしゃる。九日というのはまさに集中審議なんですよ、この問題、契約していいのかどうかということで。私は、オリンピック会場の見直し、これは開催国の責任であってIOCは反対しないはずだという問題提起をした。お隣の松沢議員は、ラグビーワールドカップの会場、新国立競技場を外すことは問題なくできるというふうに指摘をされた。事態は、私たちが指摘したとおりに進んでいるわけですよ。

 九日にやるべきは、こうした問題提起を真剣に検討することであって、契約に踏み切ることではなかったはずなんです。国会審議を受け止めてと言っていますけれども、右から左に聞き流しているんですよ。可能だった見直しの決断をしなかったんですよ。それどころか契約にまで踏み切ってしまった。下村大臣はこの責任をどう自覚されますか。

○国務大臣(下村博文君) 国会での各党の御意見等踏まえて、それも踏まえて、今回、総理が最終的にゼロからの見直しについて、これは政治決断をされたわけでございます。私としては、前提条件としてラグビーワールドカップを間に合わせると、そのための見直しができないかということについて、総理からも、指示の中で研究をしてきたところでございます。ですから、前提条件としてラグビーワールドカップに間に合わせるということがあったわけでございます。

 今御指摘ありましたが、後でまた御質問があるかもしれませんが、松沢委員からラグビーワールドカップはほかの会場ですればいいじゃないかということでありましたが、これは政府がラグビーワールドカップの新国立競技場の開幕戦や決勝戦をするということを決めたという経緯ではありませんでしたから、これは関係者とのやっぱり協議の中で、政府が勝手に決められるということではありませんでしたから、私自身がラグビーワールドカップをなしに新国立競技場を見直すという前提では、これは考える立場ではありませんでしたので、間に合う前提でするということになると、この七月の七日時点では見直しが困難な状況であるということの中で、JSCの方で七月九日について契約、施工予定者と締結をしたものであります。

○田村智子君 むざむざと払わなくていいお金を広げちゃったんですよ。そのことに対する本当真摯な反省というのが全く感じられませんね。

 今日、冒頭に大臣が述べられた説明についても質問をいたします。私も一番気になったのは、六月にザハ案と見直し案について総理に状況報告をしました。その際、総理から更に研究を進めてほしいとの指示がありましたと。これが一体どういうことかなというふうに思っていたんです。先ほど、民主党斎藤理事への答弁で明らかになってきたのは、大臣は六月十七日に槇文彦氏と会談をして、これは見直しは必要じゃないかというふうに思われた。そして、六月二十二日に総理に会って見直しをすべきであるというお話をした。ところが、総理は代替案で間に合うのかと難色を示した。ということは、総理が求めた研究というのは、この指示というのは、間に合うかどうかに限定したものであって、ザハ案の問題点とかというのはもう脇に置くと、あるいは、ラグビーのワールドカップ、これは会場変更可能かどうかと、こういう研究、これだってできたはずなんですよ。

 そういうことも脇に置いて、ただ間に合うかどうか、代替案で大丈夫なのか、ここにブレーキを掛けるような指示であったということなんですか。

○国務大臣(下村博文君) 私の方で、六月にザハ案と、それから今御指摘ありましたが、槇案含めた見直し案について、総理に説明をいたしました。槇さんグループにお会いしたときに、ラグビーワールドカップにも間に合う見直し案ということを提示されました。ですから、私が総理の方に説明をしたのは、先ほど申し上げましたが、ザハ案を行った場合のメリット、デメリット、それから、槇案含めた見直し案に変えた場合のメリット、デメリット、これについて説明を申し上げました。

 その中で、見直し案についても、ラグビーワールドカップも含めて、間に合うのかということについて明確な私の方もはっきりとした専門家からの根拠がなくて、間に合うと言う専門家の方々もおられましたし、間に合わないと言う方もおられたということも含めた報告を申し上げたということでありましたので、総理の方から、そもそも見直し案でオリンピック・パラリンピックに間に合うかどうかも確信が持てないということから、工期を更に短くできるかどうか、そういう研究を進めてほしいという指示があったところであります。

○田村智子君 先ほど斎藤理事への答弁の中では、私は見直すべきであったということで総理にお話をしたんだという答弁、明確にあったんですよ。私、下村大臣の責任を不問に付すつもりは全くないんですが、下村大臣が六月中にも見直すというその決断をする機会があったのに、それすらもブレーキを掛けたのは官邸だったんじゃないかと、この責任も問わなければならないと思っているんですよ。

 先ほども、菅官房長官も、国際的な信用が失墜すると、見直しなんかとんでもないという記者会見をやったと。さらに、七月十日の日に、安保特の方ですけど、民主党の辻元議員が質問して、見直し必要じゃないかと。総理大臣は、安倍総理は、検討しているというような答弁もされたんですよ。だから、その日に菅官房長官が記者会見で記者から質問で、検討しているのかと、見直しの含みがあるのかということを問われて、いや、検討は終わっているんだと、見直しはあり得ないと、ここでも否定をされるんですよ。

 となると、これ下村大臣の責任は重大です。しかし、その大臣の決断をもストップを掛けてきた、そういう官邸の動きというのはあったんじゃないですか、どうですか。

○国務大臣(下村博文君) ストップを掛けたということより、私の方で見直し案にすべきではないかということについて総理に説明を申し上げました。

 ただ、そのときに、私としては、ラグビーワールドカップにも間に合うという前提での見直し案、それについて本当に間に合うのかどうかということについては更に専門家の方々から精緻な情報等を上げてもらう必要があるということで、総理の方から本当にその工期を短くできるのかどうかという研究を進めてほしいという指示があったわけでありまして、こちらの方も、その時点でもう絶対見直し案、間違いなく間に合うと、ラグビーワールドカップも間に合うということが確証できたという段階ではまだなかったということであります。

○田村智子君 七月十七日に、総理があたかも自分の英断であるかのように見直しと言ったと。とんでもないですよ。見直す機会はいっぱいあったのに、最後の最後まで抵抗してきたのが安倍総理と官邸ではないのかと、このことも私は厳しく今後追及していかなければならないと思うんです。

 下村大臣の責任はもう間違いないんですね。二年間、何度も見直しの機会ありましたよ。総工費一千六百二十五億円、これが示されたときだって、そもそも消費税八%が決定しているのに五%で積算した、資材や労務単価も一年前の金額で試算をしたと。一体、一千六百二十五億と最初に出した額は、上限額なのか現実的な見積りなのか、何の数字か今やもう分からないんですよ。このときに一体どんな計画になっているんだと、これしっかりと検証することできたはずなんです。

 今年に入ってからも、実施設計の開始から一年も経過してから、これ昨年ですか、技術的提案というのを公募しなければならなかったんですよ。これ、実施設計を完成させられないんですよ、技術的提案というのを受けなければ。技術的提案なんというのは、日本の公共事業の中で一度も経験がないことなんですよ。それぐらい行き詰まっていたんです。

 その時々でしっかりと検証をしてこなかった、巨大事業であるにもかかわらず。この責任というのは、引き続き私も指摘をしていきたいというふうに思います。

 今日は残る時間で私も白紙撤回の中身についてお聞きをしたいんです。

 現行計画の白紙撤回というのは、何をゼロベースにするのかと。撤回された巨大計画の出発点は、JSCにつくられた有識者会議が百二十八項目もの要求をまとめて、これに全て応えるデザインというのを国際コンペで公募をした、ここにあります。観客席は八万人、高さは七十メートル、開閉式の屋根、敷地はこうですと。このデザイン公募の要綱、これをゼロベースにするということでよろしいですか。

○国務大臣(遠藤利明君) 先ほどお答え申し上げましたが、閣僚会議を中心に整備計画を行っておりますが、ゼロベースで検討を行う対象は、東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムである新国立競技場の本体の設計、施工のみと指示をいただいております。新国立競技場の敷地についてまで白紙で見直すということは考えておりません。

○田村智子君 これ、とんでもないんですよ。だって、規模を見直すわけでしょう。総工費も見直すわけでしょう。だけど、これだけの敷地で造りますということは見直さない。これじゃ、巨大施設造りますよと言っているのと同じなんですよね。

 では、下村大臣にも確認したいんです。公募要項では、人工地盤で現在都営住宅が建っている場所まで、道を挟んで、道の上に、まさに下の道路を暗渠にしちゃって、人工地盤造って敷地広げると、こういうことも可能ですよという募集要項だったんですよ。これ、ゼロベースじゃないんですか。

○国務大臣(下村博文君) 今、遠藤大臣からお話ありましたように、閣僚会議を中心に整備計画の見直しを行っておりますが、ゼロベースで検討を行う対象は、東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムである新国立競技場の本体の設計、施工のみであり、新国立競技場の敷地についてまで白紙で見直すことは考えておりません。

 都営霞ケ丘アパートの敷地については、新競技場をメーンスタジアムにふさわしい八万人収容とするために一体的に整備する必要があることから、東京都の都市計画において、都立明治公園の再配備として公園、広場等を整備し、バリアフリールートとして活用されるということとなっており、東京都において計画が中止されるということは想定しておりません。

 人工地盤につきましては、スタジアムの本体と一体不可分のものであり、見直し対象と考えていますが、新国立競技場の敷地についてまで白紙で見直すことは考えておりません。

○田村智子君 都立霞ケ丘のところは人工地盤で造ってつなげるから敷地になっちゃうんですよ。人工地盤なければ競技場は道路で隔たれますから、それは敷地にならないですよね。そこをどう東京都が利用するかというのは、それは東京都の問題ですよ。そこは含まれないということでいいんですね。敷地に含まれてないということでいいんですね。

○国務大臣(遠藤利明君) 敷地には含まれておりません。

○田村智子君 含まれてないんですね、はい、分かりました。

 じゃ、そこは敷地に含まれてないと。都立霞ケ丘団地の部分については、都営住宅の部分については、これは東京都の判断で──いいんですよ、後ろから事務方メモ回さなくていい。大臣がそう答弁しているからそれでいいじゃないですか。いいでしょう。そこは、東京都の都市計画でいいわけですよ。確認しました、そういうことで確認しました。

 私は、これ、周辺をどういう景観保ちながらやるかって非常に重要な問題なんですね。だから、敷地について本当にいろいろ考えていかなきゃいけないことはいっぱいあるんですよ。例えば、デザインの国際コンペの募集要項は既存の都市計画も無視をしたものでした。住民合意どころか、説明もないままに決定をされました。デザイン公募した時点で、神宮外苑の地域は高さ十五メートルを超える建築物は原則として禁止をされていた。この都の条例も都市計画も変更していないのに、募集要項は競技場の高さを七十メートル以内としたわけです。そして、都営住宅の住民に何の説明もなく、明治公園から道路を渡った都営霞ケ丘団地まで敷地をして、緑地を造ることも可能とした。環境アセスも住民合意もないわけですよ。

 募集要項によって都市計画変更を既成事実化したんだと、そんな権限はJSCにはないですよ。あるというんですか。白紙撤回、つまり敷地についての白紙撤回、これも当然だというふうに思うんですが、いかがですか。

○委員長(水落敏栄君) どなたに質問しますか、田村さん。

○田村智子君 どちらでもいいです。

○国務大臣(遠藤利明君) 敷地については見直すことはありません。

○田村智子君 じゃ、もう一回、遠藤大臣に確認します。それは明治公園部分のところまで延びますよということで、それが敷地の見直しをしないということでいいんですね。何の敷地のことを言っているのかよく分からないんですけど、元々国立競技場があった部分と、それから明治公園に広がりますよと、確かに一定の規模が必要なので、それぐらいの広さというのは必要かもしれない。それについては、そういう敷地ということでいいわけですよね。

○国務大臣(下村博文君) 先ほどちょっと答弁をいたしましたが、この人工地盤につきましては、スタジアムの本体と一体不可欠なものでありまして、見直し対象と考えておりますが、新国立競技場の敷地についてまで白紙で見直すことは考えておりません。

 この場合の人工地盤とは、東京体育館側とそれから競技場の敷地には八メートルの高低差がありますが、この競技場への平たんな歩行者アセスルートを確保するため、人工の地盤、通路を整備するということでの人工地盤、そういう意味であります。

○田村智子君 あの槇文彦氏ら建築家グループが示した代替案は、都営霞ケ丘アパートはそのままにして、それでも建ちますよ、あるいは陸上競技場のサブトラックも造れますよと、こういう案も提案をしているんですよね。そういうことも含めて検討するということでよろしいわけですよね。霞ケ丘団地の方まで延びないということでよろしいわけですよね。

○国務大臣(下村博文君) 先ほど答弁いたしましたが、この都営霞ケ丘アパートの敷地については、新競技場メーンスタジアムとしてふさわしい八万人収容とするためには、一体的に整備する必要があるということから、東京都の都市計画におきまして、都立明治公園の再配備として公園、広場を整備し、バリアフリールートとして活用されるということになっておりまして、東京都において計画が中止されることは想定しておりません。

○田村智子君 それは東京都の計画であって、国の計画ではないでしょうということを確認しているんですよ。そこはそれでいいわけですよね。

○国務大臣(下村博文君) 東京都の都市計画であります。

○田村智子君 先ほど申し上げたとおり、この都市計画というのは、じゃ東京都だけが決めたことなのか。全部違うんですよ。その新国立競技場、八万人で巨大なものを造りますよ、だから周辺も全部都市計画、変えてしまいましょうということでやられた。そこがゼロベースだから、私たちはこれから東京都に対しても、じゃ、どういう周辺整備、景観を保ちながらやっていくのかということも併せて求めていきたいというふうに思っているところです。

 やっぱり、七月三十日にも、神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会の主催でシンポジウム開かれましたけれども、都営住宅に住んでいる方を追い出して巨大施設造るとか、これが果たしてオリンピックレガシーになるんだろうか、世界の恥ではないのかという問題提起もありました。神宮外苑の緑は百年の歴史があって、東京都で初めての風致地区でもあるんだと、そこにふさわしい国立競技場を建設してこそオリンピックレガシーと言えるんだということもありました。

 今後の見直しについては、こうした地域住民の皆さんの声も十分に反映されることを求めて質問を終わります。


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